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『仮面ライダーW』感想27

◆第33話「Yの悲劇/きのうを探す女」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき
後に『仮面ライダーフォーゼ』でメインライターを務める中島かずきが、お試し?参戦。
午後3時――
「きのうを探して欲しいんです」
翔太郎好みの美女・不破夕子(平田薫/『魔法戦隊マジレンジャー』山崎さん)が持ち込んだ奇妙な依頼の正体は、「きのう」という名前の猫探しだった。鼻の下を伸ばす翔太郎は、普段なら嫌がる猫探しを、嬉々として引き受ける。
「困った事があれば鳴海探偵事務所に行け。知り合いに言われたんです。来て正解でした」
「無くした“きのう”を探すのは――探偵の仕事ですよ。どうぞ」
舞い上がる翔太郎は、お気に入りの帽子を被っていそいそと出発。亜樹子を交えた3人は、夕子が猫を見失ったという風都ホール周辺へと向かう。
亜樹子が「色気づきやがってぇ!」と唸るのですが、凄く、いつも通りのような……。
その頃、不審な連続交通事故を調べていた超常課の前で、事情聴取していた西山不動産の社長が何かに操られるかのような動きでいきなりビルの屋上からダイブをはかり、照井がそれをギリギリで救助。
男の腕には8の字のような奇妙な痣が浮かび上がっていた――。
(……昨日?)
という、久々にミステリアスな入り。
そして前半、やや寄り道めいた台詞やカットが多くて尺を詰め切れていないように感じる微妙なテンポの悪さがあり、初参加の脚本ゆえかと思っていたら、後半にそれが効いてくるという、トリッキーな構成。
翌日に園咲冴子の講演が行われる予定の風都ホールの近くで、ポスターに描かれたふうとくんを目に留める夕子の姿に、翔太郎は霧彦の事を思い出す。動くものを見つけた、と言う夕子と二手に分かれた翔太郎は、午後4時、ビルの上に砂時計のようなデザインのドーパントを発見し屋上へ。飛び降りたドーパントを追って、空中で格好良くダブルへと変身してその後を追う。
「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
戦闘は無人のホールの中にもつれ込み、ダブルはジョーカーエクストリームで講演台を破壊、逃走。砂時計に何かを打ち込まれた事に気付かないままドーパントを追うも見失ってしまった所で、猫を無事に発見した夕子と出会う。
「翔太郎さんのお陰で――全部うまく行きました」
満面の笑みを浮かべる夕子。
「本当にありがとう。これで……明日が楽しみです」
「え?」
一方、園咲冴子の元に翌日の講演会での凶行を予告した脅迫状が届いていた。心配する若菜をせせら笑って冴子は脅迫状を一顧だにせず、器用に左手だけウェザーになった井坂先生が脅迫状を燃やす。
姉と居候の「むしろ脅迫されてこそ一人前!」というノリについていけず部屋を辞した若菜は、琉兵衛が長く組織に関わってきた冴子ではなく、自分にエクストリームの光を見せた事について考え込む。
「お父様は私にだけあの光景を見せた。……なぜ?」
姫がここ数話の箸が転がっても大爆笑という危ういテンションから脱しているのですが、これはガイアメモリへの適合が進んで安定化したという事なのか、それとも、エクストリームの光に何らかの浄化効果でもあったのか。
翌日、冴子は若菜をともなって風都ホールでの講演へと向かい、探偵事務所には事件の協力を求めて照井が訪れ、翔太郎は昨日の思い出に浸って機能停止していた。
「ハナから左に期待はしていない。……借りたいのはフィリップの頭脳だけだ」
奇妙な事件の被害者は、強引な地上げを行っていた西山不動産の社長と部下二名。部下二名は何者かに操られているような動作で交通事故に遭い、社長は屋上からダイブを図り、それぞれ一命は取り留めたものの、現在は原因不明の昏睡状態に陥っていた。そして3人に共通しているのは、体に奇妙な8の字の痣が浮かんでいた事。
――午後3時
「さぁ、始めましょうか、左翔太郎くん」
不破夕子はガイアメモリを手にすると、砂時計のドーパントへと姿を変える。その名を、イエスタデイ。そしてその能力は、マーキングを行った任意の対象に、“昨日をリプレイさせる事”。
エクストリームも大概でしたが、もはや、生物でも物質でも現象でもなく……えー……これは何と言えばいいのでしょうか(^^; 懐が広いなぁ、地球の記憶。
エスタデイが能力を発動した事により、戦闘中にマーキングを受けた翔太郎は、夕子が事務所を訪れた所から、“昨日”のリプレイを開始。
ドーパントの能力自体は前半の戦闘中にピンと来たのですが、照井が持ってきた被害者の写真が、夕子が持ってきた猫の写真の代わりに使われたり、小技がとても丁寧で効果的。
事情がさっぱり理解できない照井は、図らずも夕子の代役を務める羽目になり、翔太郎から次々と意味不明の寝言を聞かされる。
「無くした“きのう”を探すのは――探偵の仕事ですよ。どうぞ」
「おまえの頭を探してこい」
「……よっしゃあ!」
ここは素晴らしかった(笑)
亜樹子は事務所を出て行ってしまった翔太郎を追い、慌てて検索したフィリップはドーパントの能力と、西山不動産の社員達がその能力により事故に遭った後で昏睡状態となった事を突き止め、照井も慌てて翔太郎の後を追う。
ただただ昨日をリプレイする翔太郎は、ドーパントを追いかけているつもりでビルから飛び降り、やむなくフィリップもダブルに変身。
事情を知っているフィリップがダブルに変身しなければ済むのでは……と思ったのですが、しっかり“変身せざるを得ない状況”を仕込んであって、これもお見事。
「さあ、おまえの罪を数えろ」
「え、昨日のつまみ食いがバレた?!」
ドーパントを追っているつもりのダブルは、ダッシュしながら決め台詞――が追いかけてきていた亜樹子に炸裂する(笑)
珍しく前半に決め台詞を入れていると思ったら、このギャグの為だったという、これも丁寧な小技。
エスタデイの能力により暴走する翔太郎はフィリップでも止める事が出来ず、棒を振り回しながら風都ホールに突入。風都のヒーロー・仮面ライダーは物の見事に仮面の暴漢と化して、冴子の講演会に乱入。“昨日”の通り、壇上の冴子めがけてジョーカーエクストリームを炸裂させそうになるが、間一髪、アクセルがそれを食い止め、バイクモードで体当たりしてホールの外に弾き出すと、そこでフィリップがエクストリームにより強引にイエスタデイの刻印を上書きして正気を取り戻す事に成功する。
だいぶ大変な事になっていたのですが、割とあっさり治ってしまいました。
どちらかというと、明日の新聞が心配だ!
「衝撃・仮面ライダー、風都ホールに乱入! やはりライダーは危険人物なのか?!」
みたいな。
昨日、猫を抱えた夕子と別れた埠頭でイエスタデイが姿を見せ、不破夕子の正体を現す。
「彼女の本当の名前は、須藤雪絵。須藤霧彦の妹だ。僕らには園咲霧彦と言った方がわかりやすいがね」
前半わざとらしく霧彦さんを回想していましたが、ここで、霧彦さんの肉親が登場。その目的は、園咲冴子への復讐なのか――?
「復讐? 馬鹿馬鹿しい。確かに兄さんはミュージアムに始末された。でもそれは、彼が必要じゃなくなったから。私は兄さんみたいなヘマはしないわ。――昨日は利用するためにある。この力で、私はミュージアムの幹部になるの」
夕子――雪絵は再びイエスタデイへと姿を変え、連続で放った飛び道具の一撃でアクセルが倒れていたり、結構な強さ。困惑する翔太郎だが、ドーパントを野放しにするわけにはいかない。プリズムディッカーを取り出すと、飛び道具を弾きながらイエスタデイへと突進してプリズム剣を振り上げる。
「ディッカー・チャージブレイク!」
翔太郎的に物足りなかったのか、もはや息を合わせるのと関係なく、技名がつきました(笑) それでこそ、ハーフボイルドです。
その斬撃が迫る中、雪絵はドーパントへの変身を解除する――。


◆第34話「Yの悲劇/あにいもうと」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき
変身を解いた雪絵を目にして、サイクロンジョーカーエクストリームは寸前でプリズム剣を止め、雪絵は笑いながら立ち去っていく。
「どうした? なぜ攻撃を止めた」
「生身の人間に攻撃はできない。翔太郎の一番の弱点を突いてきた。なかなか切れるよ、彼女」
それが“弱点”呼ばわりなのもどうかと思いますが、まあ確かに、後ろで仁王立ちの赤いジャケットの人は、生身の人間でも攻撃するしな。
「昨日は利用する為にあるだと……?」
竜巻り札X鳥夢が変身を解除し、改めて、エクストリームを発動するとフィリップの肉体も転送されてくる事がハッキリしました。エックス鳥はフィリップが任意に呼べるようになってるのか?
4人は一旦事務所に戻り、状況を整理。
前回フィリップが「恋愛」について調べていたのですが、
翔太郎

  • 思い込みが激しいタイプ
  • 感情的になりやすい
  • 単純
  • ハーフボイルド
  • 自己陶酔している
  • ハーフボイルド
  • 美人に弱い
  • お調子者
  • ハーフボイルド(赤字で強調)

不破夕子が翔太郎を好む
確率2%
とか書き並べてあるホワイトボードの前で(多分、背後には気付いていない)、フィリップの説明する不破夕子=須藤雪絵の裏を聞いて嘆息する翔太郎(笑)
だが、男の 助平心 純情を弄ばれ散々に利用されたにも関わらず、翔太郎は雪絵に何か違和感を覚えていた。
「俺の仕事は、まだ終わっちゃいねえ」
その頃、雪絵は冴子と出会っていた。
「会うのは初めてね、義理の妹なのに」
「元・義理の妹だけど」
ミュージアムへの協力を申し出る雪絵だが、デフォルトの選択肢設定が「→いいえ」になっている冴子さんに信用出来ないと攻撃を受け、それを軽々と回避。
「諦めないわよ。必ず私の力を認めさせる。――お義姉さん」
「元・お義姉さんね」
台詞のやり取りは洒落ていますが、タブーは最近(というかファングジョーカーと出会って以来)、戦闘ではさっぱりいい所が無いなぁ(^^;
井坂先生の見立てにより、イエスタデイはガイアメモリの毒素を砂時計の刻印として排出する事で、攻撃と自己防衛を兼ねているという事が判明し、井坂先生は雪絵のメモリの使い方に感心。一方で、タブーは更に完璧になれる、と冴子に申し出る。
「やっぱりあんた、昨日にこだわってるんじゃないのか?」
雪絵が西山不動産の関係者を襲撃する事で、霧彦と過ごした保育園を地上げから救った事を指摘する翔太郎だが、雪絵はイエスタデイに変身して逃走すると、再び冴子と接触ミュージアムに忠誠を誓うと告げて冴子に近づくと砂時計の刻印を打ち込む事に成功するが……翌日――。
雪絵を探す翔太郎達は、前日イエスタデイを取り逃がした公園で、雪絵と再会。
「私は許さない。絶対に許さない! 兄さんを殺したあなたをね!」
霧彦のスカーフを突き付け、翔太郎を糾弾する雪絵……その首筋には、イエスタデイの刻印が刻まれていた。
「さあ、永遠に昨日という監獄に囚われるがいい。園咲冴子!」
雪絵は“昨日”を繰り返し、そこに冴子が居るつもりでイエスタデイに変身し、その背後にはウェザードーパントが現れる。冴子に刻まれた筈のイエスタデイの刻印だが、強化されたタブーには通用せず、逆にそれを跳ね返されてしまったのだった。雪絵が24時間をリプレイし終え、その毒素で意識を失うまで後僅か……怒りの翔太郎達は、ダブル変身。
「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
「罪のない人生など、スパイスのきかない料理だよ」
ウェザーに殴りかかるが反撃で蹴り飛ばされた所に課長が走ってきてアクセル変身。アクセルは猛然とウェザーに斬りかかるが、相変わらずやたら格闘技の達者なウェザーにあしらわれる。
前回は色々な意味で大活躍だった照井ですが、今回はウェザーにこてんぱんにされるだけ(^^;
その間にダブルはエクストリームを発動し(飛んできた鳥が気絶したフィリップを吸い込んでから合体している事が判明)、プリズムブレイクにより刻印を上書きし、イエスタデイのメモリブレイクに成功。
「復讐などという小さなものにこだわっていると、彼女のようになるぞ?」
「言うな!」
「過去を振り向くのは嫌いでね。そろそろ、終わりにしよう」
ウェザーの灼熱ハンドに追い詰められるアクセルだがエクストリームが助けに入り、エクストリームとウェザーが初対決。Xサイクロンパンチと、Xジョーカーパンチが炸裂し、派手に転がるウェザー、というのは格好良く、改めてエクストリームの力見せ。
エクストリームはマキシマムドライブを発動し、ベルトからハードボイルドな竜巻が吹き出すとそれに乗って放つ割れない飛び蹴り「「ダブルエクストリーム!!」」を繰り出すが、ウェザーは蜃気楼で作り出した幻影で直撃を避けると逃走するのであった。
エクストリームはてっきり剣と盾固定で戦うのかと思いましたが、格闘戦と蹴り技も入れてきました。そして致し方ない面はあるとはいえ、ウェザーもそろそろ何とかしないと、全面売りに出されてしまう……。
「兄さんの言う通りだった……やっぱり鳴海探偵事務所を訪れて、正解だった」
「霧彦がそんな事を……」
無事に意識を取り戻す雪絵だったが、その直後、イエスタデイメモリの副作用により記憶を失ってしまう……昨日を守る為に力を振るった女は、昨日を失ってしまうのであった……と事件は幕を閉じる。
前編はトリッキーな構成に小技も効いて面白かったのですが、後編は平凡な出来。
特にラストは、どんな理由があってもガイアメモリの力で他者を傷つけた者は報いを受けなくてはならない、というのが今作のルールなのですが、“そのルールを守る為に強引にシステムが発動した”ような形になってしまいました。「昨日」というキーワードを重ねてモノローグで一見こじゃれた感じにまとめているのですが、いわゆるデウス・エクス・マキナ的な作劇であり、メタな色合いが強く、あまり美しく着地できませんでした。
単純に唐突にも過ぎますし、これなら“最初から昨日を失う前提でイエスタデイの能力を使っていた”ぐらいでも、今作の世界観と因果応報のバランスなら、成立できたような。
霧彦さんを補完しつつ、「復讐」というキーワードを終盤で照井へ引っ張った辺りは悪くなかっただけに、勿体ない。