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『仮面ライダーW』感想29

本編と関係ない凄くどうでもいい小ネタから入るのですが、アクセルのテーマソングである「LEAVE ALL BEHIND」をどーいう意味だろうとWEB翻訳かけてみたら、
「全て置いていきなさい」
て、名護さんの台詞みたいになった。
ニュアンスとしては、「全て――振り切るぜ」という事なのでしょうが(^^;
◆第37話「来訪者X/約束の橋」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一
鳴海探偵事務所のHPを作ろうと亜樹子がドタバタしている所に、トレンチコート姿の依頼人がやってくる。フィリップに見覚えがある様子の中年男はそれを誤魔化し、翔太郎に10年前に別れた家族の居場所探しを依頼する……。
(この冴えない依頼人が、俺たちの運命を大きく揺さぶる事になろうとは、この時は、まるで気付かずにいた――)
「お父様……いつの間にかこの食卓も、お父様と私、二人っきりですわね」
元々、特殊なスイーツ回を除けば最高でも4人ではあったのですが、序盤から園咲家を象徴するシーンとして食事シーンを頻繁に入れてきた事が効き、家族の減った園咲家の空虚さがよく出ました。
「我がミュージアムの計画も、いよいよ、最終段階に入った」
だがもはや、園咲琉兵衛はそんな事に頓着しない――いや或いは最初から、琉兵衛はそんな事を気に掛けてはいなかったのかもしれない。
「もうじき、我らの支援組織、財団Xからの使者が来る。覚悟を、決めておきなさい」
琉兵衛は若菜に、冴子に代わってガイアメモリ流通組織を取り仕切るように命じ、更にここで新たに「財団X」という名前が登場。ミュージアムの計画が最終段階に入ったという宣言と合わせ、物語が最終章へ入る事がわかりやすく告げられました。……にしても、「財団X」とはまた、生活密着型である今作の世界観をある意味では危うくしかねない、直球で子供心をくすぐる名称で来ました(笑)
……いや、私の中の子供心がくすぐられるだけで、本当の子供心がくすぐられるのかはわかりませんが(^^;
翔太郎が依頼人・山城の家族を探して街を回っている中、若菜から助けを求める電話がかかってきてフィリップは外へ。そして、その山城を探す、ゴスロリファッションに身を包んでイナゴの佃煮を持ち歩くという、謎の女がウォッチャマンを強烈な足技で暴行。通りすがりの照井の前で、ドーパントに変身する。
モンガー
と最初聞こえて何事かと思ったのですが、「ホッパー」でした。という事で満を持して、バッタ怪人が登場。素直にやりたくなかったのか、玉虫色というか、青や茶色が混ざり合ったような配色が独特。変身前のゴスロリ足技使いに関しては、印象的、というか、正直、あざとい(笑) まあ、井坂先生が強烈だったので、構成的な第3部の開始を飾るインパクトを重視したのでしょうが。
照井もアクセルに変身するが、飛び回るホッパーの素早い動きに苦戦。トライアルを発動しようとするが先に蹴り倒されて、逃げられてしまう。
「なんて無様な戦い方なの。貴方にはまだ、やるべき事があるのに」
突然現れた鬼コーチ、駄目出し。
まあ見ている側としても、前回の今回で変身し損ねるとは思わず、納得のご意見です(笑)
「貴方たちの運命……それは戦う事。この街に恐怖をもたらす、本当の敵と」
「本当の、敵?」
「ガイアメモリ流通組織、ミュージアム
井坂の言葉を受け、シュラウドを問いただした照井は、遂に“組織”の名前を知る――。
その頃、若菜を助けに向かっていたフィリップだが、それはフィリップを呼び出す為の嘘であった。
「もしもし、名探偵さん」
「もしもし、若菜さん」
遂に対面し、電話越しに会話する2人。冴子と違って、若菜はフィリップの顔を見ても、ミュージアムのマークする重要な存在である事はわからないと判明。
園崎家の一員という運命に押し潰されつつある若菜から姉と会社について相談を受けたフィリップは、封じていた疑いを正面から問いかける。
「その仕事って……ガイアメモリの流通ですか」
急所を突かれ黙り込んでしまう若菜に、再び電話をかけるフィリップ。
「もしもし、本当の若菜さん、ですか?」
「……もしもし、どうかしら」
フィリップ、ちょっと翔太郎の病気に感染していないか。
ひたすら甘酸っぱい2人は、それが“本当の自分”を見せられる道具であるかのように、電話でやり取り。
「もしもし……私達、こうしてずっと一緒にいられたら素敵でしょうね」
「……もしもし、僕も、そう思います」
「……じゃあ……そうする?」
勢い余って、全てを捨てて街を出ましょうか、と冗談めかして告げる若菜に、気取ったポーズで答えるフィリップ。
「いいですよ。本当の若菜さんがそうしたいなら、本当の僕もついていきます」
「ねえ、今の本気?」
「え? どうかなぁ」
フィリップ、絶対、翔太郎が感染している。
引っ張った割には対面はあっさりでしたが、互いの距離感を電話で表現。ストーカー回の「本当の若菜」というのを再びキーにしつつ、見ていて恥ずかしい感じのシーンになりました。……何だかこの後、不吉な予感しかしませんが!(おぃ)
というかお互いほぼ告白しているのにその後誤魔化してしまうのは、フィリップへたれという事なのか。まあお互い、色々と背負っているものがあるので素直に踏み出せず、“本当の自分”を名乗って電話をしながら、実際には未だ“本当の自分”を隠しているというのが、対面しながらも電話で会話するという形で描かれているという二重構造であり、甘いと同時に苦いシーンでもあります。
そして、2人にとって本当の本当の自分は果たしてどこにあるのか――?
調査を終えた翔太郎は山城に家族の居場所を伝えると、戻ってきたフィリップの前で、山城がフィリップを知っている筈だと問い詰める。
山城の正体は、10年前に死んだ事になっている有名な脳科学者。そして当時、山城同様に7人の高名な科学者が世間から消えていた。口をつぐむ山城の前に現れたは、シュラウドから風都の闇に潜む恐怖の根源の名を聞いた照井竜。
10年間、強制的にある研究をさせれていた山城博士が家族に会いたい一心で逃げ出してきた組織の名は――
ミュージアム……すなわち、園咲琉兵衛」
誘拐した科学者に研究をさせる! 明解な悪の秘密結社的存在を最初から置く、というのは今作のコンセプトの一つでしょうから狙い澄ましたものでしょうが、ここでお義父さんが、極めて古典的な悪の秘密活動をしていた事が判明。
最終章でミュージアムの背景を描くにあたって、次々と如何にもなネタが放り込まれてきて、何だか作っている側がとても楽しそうです。
フィリップは園咲琉兵衛とミュージアムについて調べようとするが星の図書館が不正な処理でフリーズしてしまい、検索する事が出来ない。だがともかくも、ここで遂に、主要キャラ達がガイアメモリ流通の黒幕をハッキリ認識するのであった。
(園咲家が、ミュージアムの中枢……若菜さん、やっぱり貴女は……)
その頃、裏切り者としてマスカレード軍団に追われていた冴子は、すっかり落ちぶれた姿になっていた。若菜に恨み言の電話をかけていた所をスミロドンに襲われた冴子はタブーメモリを失って海へ落ちるが、それを、白い詰め襟の男が見つめていた……。
琉兵衛が冴子に刺客を放っていた事を知り、動揺する若菜。ミュージアムのもう1人の処刑人であるイナゴの女は、事務所を抜け出して家族の元へ向かおうとする山城博士を抹殺しようとホッパーへ変身した所を、バイクで轢かれる。
やったよ翔太郎! 遂に、バイクで轢いたよ!!(ヒーローの証☆)
若菜はフィリップに助けを求めて電話をするが、フィリップはダブルに変身して意識を失ってしまい、運命は残酷にすれ違う――。
「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
高度な演算能力で相手の特性を見破るエクストリームはホッパーを追い詰めていくが、山城博士を人質に取られてしまう。自分を怪人にしたのは山城だと語るホッパーは更に衝撃的な事実を告げる。
「ほら、そいつの片割れの記憶も消したじゃない?」
アクセルが駆けつけて山城博士は難を逃れるが、動揺するフィリップは山城へと詰め寄る。
「僕の記憶を消した……何の記憶を?!」
「そ、それは……家族の、記憶を……」
「家族……」
うらぶれた姿でミュージアムの被害者めいていた山城博士が、ホッパーに詰め寄られて目が泳ぎ、どうやら倫理観吹っ飛び気味の人だったのでは……? と最後の最後で印象が変わった所で次回へ引く、というのがなかなか秀逸。


◆第38話「来訪者X/ミュージアムの名のもとに」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一
今度こそ剣を投げ捨ててトライアルを発動したアクセルは百烈キックの打ち合いの末ホッパーに逃げられ、山城博士を問い詰める3人。
「園咲琉兵衛は、私の研究に必要な、施設と予算を、全て用意してくれた。科学者と、してはねぇ、そんな、魅力的な誘いを、こ、断れる、わけがない」
やっぱり駄目な人でした(笑)
園崎家や鳴海探偵事務所、そしてゲストの山城博士と絡め、「フィリップの家族」という序盤に置かれたキーが再浮上。
亜樹子は沈み込むフィリップを励まし、事務所の3人で“家族写真”を撮るが、そこへ若菜から電話がかかってくる。
「この街から一緒に逃げて……」
一方、財団Xからの使者・加頭(白い詰め襟の男)は琉兵衛に計画の促進を催促する裏で、海に落ちた冴子を拾って何かを企んでいた。
「貴女は全てを失った。でもご心配なく。まだ逆転のチャンスは充分にあります。私の言う通りにすれば」
事あるごとに何かを落とす動作で特徴づけられている加頭は、第3部の暗躍ポジションになるようですが、台詞を読み慣れていないのか少々早口なのが、少し気になる所。顔は格好いい。
連行した山城を取り調べる超常課だったが、そこへイナゴの女が乗り込んできて、刃野や真倉を蹴り飛ばす。……なんか最近、刑事達は酷い目に遭ってばかりのような(笑)
「今度こそいただきまーす」
照井はアクセルに変身し、山城は逃走。ホッパーと戦うアクセルだったが一般市民を助けている内にホッパーを逃してしまい、自宅の前までやってきた山城は、捨てた家族の姿を目にするも、ホッパーによって急所を貫かれる。
相応に悪事に荷担している人なので家族と再会する事までは出来ないけど、一目見るまでは許す、というのは残酷ですが今作らしいバランスの取り方。
瀕死の山城は鳴海探偵事務所に連絡を取り、とりあえず若菜に呼ばれた駅に向かっていた翔太郎とフィリップは病院へと急遽Uターンし、またしても若菜とすれ違ってしまう。
「君の……君の……本……当の名前は――園咲……来人。園咲琉兵衛の、実の……息子」
ミュージアムの名前に続き、ここでフィリップの素性が判明。ラジオ回からファング回辺りの伏線が素直な所に収まりました。まあさすがに、ここで山城博士から誤情報という事は無いでしょうし。
「僕は決めた。……若菜さんと、この街を出る」
若菜と一緒に居ると互いに心が安らぐ理由を知ったフィリップは、男の決断として苦難の道を選ぶ。
「彼女は苦しんでる。僕が支えてあげなくちゃ。だって――家族だから」
ここまで、家族としては、翔太郎や亜樹子に冴えられてきたフィリップが、家族として若菜を支える決意をする、という形で一つの大きな転換が描かれました。このキーワードの使い方は良かった。
翔太郎と亜樹子に見送られ駅へと急ぐフィリップだが、一足遅く若菜はテラードーパントによって連れ去られてしまう。
ここで翔太郎がフィリップをバイクで送って行かないのですが(行きは、事務所→駅→病院、とバイク移動だった)、単純に駅と病院が近かったのかもしれないけど、翔太郎からすると因縁としても遵法精神からいっても本来若菜は見逃してはいけない相手の筈なので、街を出て行くのを見なかった事にする、のがギリギリのハーフボイルドという事なのか。
若菜を連れ去った琉兵衛は、風都の地下に広がるミュージアムの大工場を見せる。
「おまえの双肩には、この星の運命がかかっているのだ」
「この星の、運命?」
「若菜。おまえこそが、ミュージアムそのものだ」
駅の構内で若菜を探すフィリップに届く、若菜からの着信。
「もしもし若菜さん?! 今、どこに」
「後ろよ。来てくれたのね、来人」
「若菜さん……え? 来人?」
フィリップの前に現れたのは、喪服姿の若菜。
「来人……貴方の命を貰うわ。ミュージアムの為に」
いったい琉兵衛に何を教えられたのか、がらりと雰囲気の変わった若菜は衆人環視の中でクレイドールへと変身し、フィリップに襲いかかる。約束の橋で、クレイドールとマスカレード軍団に囲まれたフィリップは翔太郎に連絡を取ってファングジョーカーへと変身。
「あれが……若菜さんだ。あのドーパントが、僕の姉さんだ!」
マスカレード軍団を蹴散らすが、クレイドールの攻撃は一撃でファングジョーカーを変身解除に追い込み、クレイドールは「来人、貴方も自分の使命を思い出しなさい」と言い残して姿を消す……。
なおイナゴの女は、トライアルが割とざっくり9.7秒でメモリブレイクし、逃走しようとした所をスミロドンに始末されて死亡。アクセルTvsホッパーを真ん中に置いて、フィリップと若菜の交錯をクライマックスに持ってきて、一応ファングジョーカーの戦闘を付ける、という少々変則的な構成。イナゴの女は濃いキャラ付け+実力者ポジションだった割には、後編では刺身のツマ的に倒されてしまいました(^^;
色々と明かされつつ、財団Xや若菜の豹変など新たな謎も生まれ、物語は最終章へ。構成上のキーの狙い撃ちにはかなり成功している今作ですが、「家族の物語」という要素が、ここで繋がってきたのは良かった。出来ればお義父さんは、複雑な事情や目的がある人ではなく、シンプルな悪であって欲しいのですが、さてさて。
ミュージアムの名のもとに、無垢なるプリンセスから黒衣の女帝として覚醒した若菜。フィリップ=来人の使命とは何なのか。財団Xからの使者は冴子を利用して何を狙うのか。落ちぶれた冴子の運命や如何に。今度の男も、やっぱり駄目なのか?!
次回……激動、ではなく、一休み?(まあ今作は予告からは全くもって読めないのですが(^^;)