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うちへ帰ろう――『Gのレコンギスタ』感想・第10話

◆第10話「テリトリィ脱出」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ/演出:荒木哲郎
アニメ『進撃の巨人』(見た事はない)の監督が絵コンテに参加、という事でちょっとした話題性を持ったエピソード。今作はここまで非常に濃厚な斧谷コンテ祭だったので、あーこの辺りはコンテ切った人の個性が出てるのかなぁ、というのが割と分かりやすく、その辺り分析しても面白そうですが、大変なのでしない(おぃ)
ややもすると、派手なサービス回かと思われたのですが、非常に重要な要素が一つ描かれ、極めて意味の大きなエピソードになりました。
前回ゲル法皇と会見の場を持つも、クンパ大佐に察知されてしまったメガファウナ一行。アーミーの動きに気付いたのかケルベス教官らがベルリを引っ張り出し、ベルリ、アイーダ、ノレド、ラライヤは急ぎメガファウナへと戻る。
……放置されるお父さん。
今作のちょっとわかりにくい所の一つですが、実働部隊は前線で間違いなく殺し合っている一方で、国家同士が明確に敵対し合っているわけではないので、あくまでそれぞれの前線は建前上“謎の ロ○ア軍 部隊”のようなものである事。その為、互いの権力者が懐に飛び込んできても、政治的・外交的なカードとしては考えるけれど、短絡的な荒事には走らない(これは、今の所出てきている上層部の人達が政治家だからという面もありますが)。
まあ同時に、お互いが、そこまではやらないだろう、と根拠の無い安心感に基づいている、という面も恐らくはあり、その内誰かが大火傷をする事になるのかもしれません。実際、謎の部隊レベルで言えば、カーヒルもクリムも、一線を踏み越えてやらかしているわけなので。
で、この辺り、前回長官がアイーダ親子のIDカードを作らせていたというのは抜け目なく、またそのシーンがわざわざ描かれていたという事に、“国家間の建前がある”、というものを重ねて窺わせます。
笑顔で握手をかわしながら、左手で相手にじわじわナイフを突き刺していっている状態というか。
アメリア側からするとそもそも、キャピタルのやっている事は、自分達の首に縄をかけていつでも吊せるようにしている、という事のようですが。
今回の件はいちおー形の上では、事故ってアメリアに不時着したウィルミット長官を、スルガン総監が自ら送り届けて下さった(※ただし摩擦は考えないものとする)という事になるのかなー。
ベルリ達はケルベス教官(ここで中尉と判明)らの先導で、メガファウナへ。道中、ラライヤがノレドの家へ行きたがり、前回からノレドの家についてちらほら言及があるのはどういう意図があるのかと思ったら、これは後半でわかります。
一方、アーミィは新型MS・ウーシァのお披露目式典中。
第3話でルイン・リーに殴りかかって印象的に登場した後は、小間使いみたいな役割の多かったベッカー大尉が、大はしゃぎで遂に前線へ。
また、ジュガン司令がチアガールに毒づいたり顔が崩れ気味になったりと、黄色い声援が嫌いなタイプらしく、人間味が増しました。ただのギャグというよりも、今作はこういう、人間24時間格好つけられていない、という辺りもこだわっているように見えます。姫様も立て続けに不細工な顔を披露しましたし、前回はクンパ大佐がお洒落フリルシャツでちょっと隙を見せましたし。
メガファウナへ帰還し、ガードによる諸々の補給に感謝の意を示す姫様。


「中尉の働きに、お礼を申し上げます」
「お礼のステップを、踏まれるほどの事じゃない」
(あ、お礼が言える人だったんだ)
ベルリ、目を見開いて驚愕。
……おーいベルリ、ねぎらいの言葉をかけてもらったのはもう忘れたのか。
それともあれは、レア度LV9ぐらいのご褒美という受け止め方だったのか。
まあ、ベルリとしてはもっと誉めてもらいたいのだけど、独白とはいえストレートにそうは言えない思春期の屈折がこういう台詞になるのでしょうが。
G−セルフは、ガードが持ち込んだ陸戦用の高トルクパックを調整中。緑色の装甲が全身を覆った姿に、ベルリが最初G−セルフだとわからない、というのはちょっと面白かったですが、見た目としてはトリッキーとかの方がおかしかったと思う(笑)
「遊びじゃないんですよ、教官」
「もう教官じゃない。戦友だよ、戦友」
テンション高いケルベス教官(とガード数名)、そのままメガファウナ一行へ。

「ケルベス中尉も、この船を守って下さるのですか」
「長官命令だけでは、ありませんよ。メガファウナは、ちょっと興味がありましてね。へへっ」
「ああ、軍艦好きなんですか」
「馬鹿にしました?」
「心強いです」
ここで軽く会話のやり取りをしながら、しずしずと出撃していく所までは格好良かったんですが、アルケイン(&姫様)……。
さてここで、海賊船への補給、新装備の横流しに留まらず、キャピタルガードの職員がとうとう海賊の仲間入り。ガードとアーミィが相当こじれているどころか、“敵の敵の敵は味方”ぐらいに捻れており、同じ国の内部だと考えると、かなり酷い状況です。今作はおしなべて、こういった敵味方の関係がさらりと描かれてしまうので、登場人物達がどのぐらいそこにリアリティを持っているのか、或いは垣間見える倫理観や死生観の違いが影響しているのか、というのは、正直わかりにくい部分。
エンタメ論も含めて色々思う所はあるのですが、長くなりそうかつ結局まとまらない可能性があるので、とりあえず割愛(^^; 今作のここまでの物語の組み方を見ると、物語の終盤ないし完結の暁にはなんとなくラインが見えるかな、という気はしておりますが。
キャピタルタワーでは、ウィルミット長官や法皇との太いパイプを手に入れたスルガン総監が、本国の艦隊行動を中止する方向へ動き、ウィルミットから「アンダーナットまで上がって、そこから大気圏グライダー使ったらすぐ帰れる。私にも出来たし」という、結構な豪速球を放り投げられていた。ゲル法皇ザンクト・ポルトへ上がる事となり、3人は軌道エレベーターへ。
一歩間違えると燃え尽きて死ぬ手段をさらりと他国の偉い人に進める母さん、自分のフィールドで実務に携わり出すと、有能かつ活き活きとしてきた上で、鬼畜。
一方、スクラム組んで聴衆大盛り上がりに応え、とうとうやってきた見せ場にテンション最高潮のベッカー大尉のウーシァ部隊が出撃。今回何度か入るのですが、密林で加速するシーンでの、足下の泥っ跳ねの描写が細かく格好良く、泥臭い地上戦の雰囲気を出します。
本日も前のめりであらせられる姫様は、迫るウーシァ部隊をレックスノーと共に迎撃する為に地上へ。
キャピタル・ガードにだけ任せられないって、姫様が」
「じゃじゃ馬娘がぁ!!」
艦長、とうとうキレる。
このままだと、頭髪が危ない。
プラモデルも発売されたし、そろそろ見せ場、そう、今回はあんなチンピラ顔ではなくて私の見せ場、と張り切る姫様はいきなり対艦ビームライフルを木にがつんとぶつけて動きの止まった所をウーシァに蹴り飛ばされる。
アクション的には、今回、ここが一番好きです(笑)
細かい所までの行き届いた描写と、姫様のアホの子ぶりが完璧な融合を果たした名シーンです、ハイ。
ベッカーのウーシァは加速からの大ジャンプで一気にメガファウナのブリッジに取り付くと、何故かコックピットから飛び出してブリッジのひさしにぶら下がり、G−セルフとラライヤの引き渡しを要求。ケルベス教官に負けては入られないとばかりの、強烈なテンションを見せる。
単純に撃沈が目的だったらメガファウナ御一行ここで終了の所でした(^^;
「人が話し合いをしてるんだから、引っ込んでなさい!」
ベッカー脳内では、脅迫=話し合いのようで、ウーシァは横から援護に入ったジャハナムを蹴り飛ばして撃退。この辺り、ウーシァの見せ場とともに、ベッカーがなかなかのパイロットである事が描かれています。ブリッジに銃を向けるウーシァを止めようとするアルケインだが吹き飛ばされ、高トルクパックの調整をじりじりと待つベルリは、ハッチに引っかかったアルケインの足先を見て焦る。
ここから一連の流れは、クライマックスにおける主役メカ出撃のシーンとして基本的な文法を抑えつつ綺麗に盛り上げてくるのですが、ベルリとハッパさんの会話が、非常にい味。


「ハッパさん! どんな強力なバックパックだって、使えなければ意味ないですよ!」
「当たり前の事を言うな! メガファウナを守れなきゃ、俺たちだって死ぬんだ!」

上へ登っていくアルケインの足先に、更に慌てるベルリ。

アイーダさん。無茶は駄目でしょ」
「惚れてんのか?」
「そういう事じゃないでしょ!」

ベッカーのウーシァに立ち向かったアルケインだが背後から組み付かれてフィンを剥がされ、ベルリの前で落下していく。

「ハッパさーーーん!!」

振り返って絶叫するベルリ、その時、かかるエンジン(的なイメージの何か)。

「出力が上がった! 行けるぞ!」

勇壮なBGMが流れだし、G−セルフ、いよいよ出撃。

「焦って飛び出して、死ぬなよ?!」
「恋を知ったんだ! 誰が死ぬもんか!」

ベルリの視点からはアルケインの足先しか見えず、状況を把握しきれない事が心配を募らせ、そこから、落下=喪失感と重ねて満を持しての出撃へと繋げる。今作は戦闘において上下の概念を繰り返し丁寧に入れているのですが、ここでそれをベルリの心情と重ねたのが、より出撃シーンを引き立てました。
そしてその喪失感を体験したからこそ、ノレドに突っ込まれる度に誤魔化してきたアイーダへの気持ちを、ベルリが自然と口にする。
これ、はっきりと口を開けて声に出して言っているのですが、ハッパさんには聞こえていたのかなぁ(笑)
基本、新技術大好きで、とりあえず目の前の実験装備をつけずにはいられないハッパさんですが、急にプライベートな話題を振ったと思ったら、一応パイロットの命は心配したり、出てくる度にいい味。
ウーシァに組み付かれたアルケインは地上を滑走しながら投げを打って切り抜けようとするが、ウーシァ、バックドロップで切り返し。ここでウーシァの上半身が180度回転する描写があるのですが、人型MSでは、有りそうで無かったギミックか?
出撃したG−セルフは、重量で落ちそうに(?)なったりしつつ、超加速から、カットシーとウーシァの足を次々とぶった切り。
「あれなら爆発はしない筈だ」
6話以降、そんな感じはありましたが、ベルリはなるべく人殺しをしないように戦っているのが、台詞で裏付けられました。まあ、あくまで“なるべく”で、ギリギリのやり取りで殺してしまったらその時はその時、という感じはどうもありますが。どんなに加減しても打ち所が悪くて爆発する時はあるし、機体は無事でも衝撃で中のパイロットが死亡する場合はあるし、そこまで責任取れません的な攻撃というか(特にこの後のベッカー機への攻撃見ると)。
「何がジャングルに潜り込んだんだぁっ?!」
というベッカーの台詞は、ミノフスキー粒子化での夜の密林での戦闘、という雰囲気がよく出ました。
ベルリは高トルクパックを単独で加速突撃させて囮に使い、アルケインを捕まえるウーシァの攻撃がそちらに向いた隙を狙ってG−セルフを懐に飛び込ませると、G−セルフパンチから追い打ちのキックを浴びせ、哀れウーシァ犬神家。
エアバッグで凄い事になっていたベッカー大尉ですが、普通に生きていたので、今作のMSの対G性能は、おしなべて高性能。……この後、沼に落ちてワニに食われたかどうかは、今後の展開のみぞ知る。
G−セルフの見せ場以外では、3話の一発ネタだとばかり思っていたレックスノーが、軽やかな動きを見せたのはポイント高かったです。次回も活躍……出来るのか?
高トルクパックを回収して再装着したG−セルフは、翼を失ったG−アルケインを背負って、メガファウナへ帰還する為に密林を加速。
「では、メガファウナへ帰ります」
あーーー、そうか、そう来るのか!!
ここで、ベルリにとってメガファウナが家=帰還する場所になる。
今回この帰投シーンを見て反射的に思い出したのですが、『∀ガンダム』第3話に、∀ガンダムを動かしたロランが、ソシエを背負ってハイム家へ帰るというシーンがあります。


「だいたい運転手なんだから、あたしを家に連れて帰るのが仕事でしょ」
「そうでしたね」

セルフオマージュの意図が有ったか無かったかはわかりませんが、つまりここは、ベルリ(G−セルフ)がアイーダ(G−アルケイン)を背負って、家(メガファウナ)へ帰る、というシーンなのです。
「あそこへ帰る事を、母だって許してくれます」
大きく飛び上がったG−セルフのキャノピーの向こうに、メガファウナの姿が見えるシーンがまた、素敵。
家へ帰る、というのは監督の持っているテーマ性の一つですが、10話かけて、ベルリにとってメガファウナが家になる、そういう物語構造だったのか。
今回ここまでも充分面白かったのですが、とにかく、ここが素晴らしかった。上述した∀第3話のシーンが物凄く好きというのもありますが、ここ一つだけ取り上げても、本当に良かった。何より私の中で、『Gのレコンギスタ』という物語の背骨が一つ、繋がりました。
で、前回からノレドの家の話が出たりラライヤがやたらにそこに行きたがるというのは、「家」というキーワードの暗示だったのだな、と実に鮮やか。そう見ると、ラライヤにとってメガファウナがまだ家では無い、という事になるわけですが、今作は今後、ラライヤの家を探す物語になっていくのかもしれない。
そしてこれは穿ちすぎな気もしますが、このベルリにとって非常に重要な転換点が描かれた回のサブタイトルが、「テリトリィ脱出」というのは、何とも趣深い。
思い入れ過剰で重要なシーンに見えているだけだと思われるかもしれませんが、ベルリの「では、メガファウナへ帰ります」という台詞の直後に合わせて、ちょっとセンチなピアノのBGMが流れ出しており、演出面からも、ここは重要なシーンである、という意味付けがされていると考えていいと思います。
ベルリとアイーダが無事にメガファウナへ帰り着いた頃、スルガン総監はアンダーナットに辿り着いていた。
「我が宇宙艦隊を、大統領が発進させるだと?」
アメリア国営放送の情報を聞いた(遠距離通信は不能だけど、低軌道まで上がってくると、地上の電波をキャッチ出来るという事か?)総監は大気圏グライダーを用いて急ぎ帰国の途につく事に。
ここで見送るベルリ母に、法王様のお話に感銘を受けました的な事を総監が言うのですが、ベルリ母がその話を広げるわけでも世間話で流すわけでもなく、仕事の話に切り替えて打ち切る、というのはちょっと面白い間合いと距離感。
目の前の人物に対して悪感情は無いのだけど、現状、これ以上個人的に親しくするのは避けたい、というような感情が窺えます。
細かい所ではこの後、法皇様に挨拶を済ませたベルリ母が画面外へ消える→(壁を蹴る効果音)→90度曲がって通路を流れていく、と低重力下での人の動きを短いセンテンスと省略した作画情報で鮮やかに表現していて、秀逸。また、宇宙空間では混乱のあったベルリ母ですが、キャピタルタワーの運行長官として、低重力下での活動には慣れている事も窺えます。
いつの間にやら軌道エレベーターの同じ便に乗り込んでいたクンパ大佐(働き者)はマスク達と合流し、更なる新MSの影。メガファウナは宇宙へと上がり、アメリア軍の宇宙艦隊を撃破するべく、スペースガランデンも宇宙へ。いよいよ、戦争が、キャピタルタワーに迫りつつあった――。
ラストを締めたスペースガランデン艦長(今回は声のみ)を演じるのは、『∀ガンダム』でハリーを演じていた稲田徹さん(好き)。
ラスト1分ほどで畳みかけるように次回へ繋ぐ状況を見せる、というのは富野演出としては珍しい印象を受けましたが、そんな印象がある、という程度のものなので、実際はそんな事もないかもしれません。
サービス満点の戦闘シーンから、極めて重要な転換点が一つ置かれたエピソードでしたが、それ以外にも、重要な要素が幾つかあって今回も盛りだくさん。
まずは、第1話から度々名前の出ていた「トワサンガ」が、月の裏側にあるスペースコロニーと判明。これにより「タブー破り」の意味が薄れたという言及があり、タブーを守って科学技術の発展を抑制していた地球に対し、地球の人達は知らなかったけれど、タブーの存在しない宇宙に住む人達が居た、という事の模様。
次に、G−セルフばかりでなく、ラライヤ・マンディの身柄も、アーミィの重要な確保目標であるというのがハッキリした事。これにより、物語の鍵を握る人物の1人である事は間違いないながら、ここまで明確に奪い合う対象として挙げられていなかったラライヤの現状での物語上の位置づけがわかりやすくなりました。
そして、キャピタル・ガードの一部がメガファウナへ出向し、現状、メガファウナキャピタル・ガードvsキャピタル・アーミィという対立構造が明確化。
その一方で、スルガン総監の意に反する形で、アメリア大統領が宇宙艦隊を発進させようとしている模様。予告にかなり際どいデザインのキャラクターが出ていましたが、あれが、アメリア大統領なのか? 最もまだ、スルガン総監が本気で宇宙艦隊の発進を止めようとしているのか、タワーで口にした方便なのかも、ハッキリしませんが。
この辺り、どこも色々、政治的なしがらみがある、というのは、今回キャピタルの首相が初登場して政治的パフォーマンスを行うシーンなどで暗示されてもいます。
予告のクリム・ニックがまた悪い顔をしていましたが、「メガファウナが家になる」という流れから考えると、メガファウナアメリア軍から孤立する、という可能性も展開としてはありそう。
次回、いよいよ今度こそ、本格的な宇宙戦闘が描かれるのか。あのマスク男は異常だ!!
さて本当は、メガファウナ内部で株がストップ安な姫様の操縦技術に関するエトセトラ、について今回の感想と合わせて書くつもりだったのですが、本文だけでだいぶ長くなってしまったので、後日また別項でまとめようと思います。