はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『仮面ライダーW』感想34

◆第44話「Oの連鎖/シュラウドの告白」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一
照井課長超格好いい祭で、個人的に大フィーバー。
「占いしてて気付いたよ。人は自分の幸せと同じぐらい、他人の不幸を願ってるってなぁ。俺はこれからも商売を続けるぜ。人の恨みを晴らし続けてやる。うへへへへへへ」
「恨み……」
エクストリームにはたかれてオールドは撤退するが、その捨て台詞を聞き、何やら暗い炎が点ってしまう依頼人
前編のラストでピンチを煽って作った引きを、後編の冒頭でだいたい一度片付ける都合上、敵の一時退却理由が強引になりがちなのは2話完結形式が多い《平成ライダー》の構造的短所の一つですが、エクストリームメモリは強すぎる(笑)
その頃、冴子は照井を精神的に追い込もうとシュラウドに関する暴露を続けていた。
「あの女が井坂先生を怪物にし、あなたの家族を亡き者にした」
「シュラウド……奴が俺の、家族を」
照井の立場からすると冴子の言動をそのまま鵜呑みにするのもどうかとは思いますが、素直にアクセル剣を受け取って修行に励んだり、井坂の今際の際の台詞を聞いてシュラウドに詰め寄るも「運命はミュージアムと戦う事」と吹き込まれて矛先を変えたり、課長は課長で割と、転がされやすい体質なのかもしれない。
ぶちぎれ照井はアクセル剣を引きずりながら、シュラウドが多分ポエムとか作って暇潰しをしている森へ。
「なぜ俺だった……?」
照井がシュラウドに選ばれた理由――それは、照井竜が精神干渉タイプのドーパントの攻撃に耐えられる、特殊体質である為だった。その為オールドの加齢もやもや攻撃が効かず、同タイプのテラーの攻撃にも耐性がある事を見込まれた照井は、シュラウドにとって願っても無い駒だったのである。
ライアーは……? と思いますが、あれは違うタイプの精神干渉なのか。この辺り、照井に「選ばれた理由」があった、というのは良いのですが、その理由付けは如何にも後出しという感じになってしまい、惜しい(^^;
「憎しみこそが、ダブルサイクロンアクセルエクストリームの源」
テラードーパント打倒の尖兵としてアクセルの力を与え、照井の復讐心を煽っていた事を認めるシュラウドだが、井坂にウェザーメモリを渡した件については、ここまで来て何故か口ごもるも、それを認める。
またしても衝動判定に失敗、むしろしない勢いの照井は生身でアクセル剣を振りかぶってシュラウドに襲いかかるが、シュラウドの銃撃で剣を弾かれる。
「とてもいい目をしている。憎しみに満ちた目」
車検を振り切りブレーキ壊れっぱなしの照井はアクセルに変身するが、シュラウドは銃にボムメモリを装着すると反撃。シュラウド、けっこう強い。照井の問いに対し、フィリップを追い込む為にオールドドーパントを利用して翔太郎を排除した事も認めるシュラウド。
「さあ、私を憎みなさい。もっと憎むのよ……!」
「俺たちは、貴様の道具じゃない!」
アクセルはトライアルを発動し、銃撃をかいくぐるとシュラウドの喉元に迫る。ハイキックと銃をお互いに突き付けて静止するのですが、脚を蹴り上げた状態で止まるアクセルTの体勢維持が地味に凄いような。
「殺れ。私の命を絶てば、おまえは完全なる憎しみの化身となる」
復讐の超兵器というと個人的にはダイナロボ(『科学戦隊ダイナマン』)を思い出す所ですが、これだけ憎悪と復讐を煽った末のダブルサイクロンアクセルエクストリームがどれぐらいトンデモなのか、ちょっぴり見てみたくなってきます(笑)
指先一つで高層ビルぐらい破壊できそう。
その時、加頭からの情報で照井を追っていた若菜がクレイドールとして登場し、シュラウドの命を狙う。
「その女の本名は園咲フミネ。私と来人の、実の母親よ」
長らく空いていた空白に埋まる、最後のピース。
アクセルTが割って入ってシュラウドは逃走し、若菜も帰還。衝撃の真実を知り、残された照井は、森の中に照井家の墓に供えられていた白い花が咲いている事に気付く……。
その頃、鳴海探偵事務所を二人の老女が訪れていた。一人はそもそもの依頼人の娘であり、もう一人はその娘の友達。娘を老化させられた復讐として、依頼人がオールドドーパントへ意趣返しを頼んだのである。
人を呪わば穴二つとはいうものの、母親のエゴと嫉妬により、親友同士の子供が老人にされるという事態に、いたたまれない空気になる事務所、そして怒りの炎を燃やす翔太郎。
劇団では、やられたからやり返しただけで当然の復讐だ、と娘達の目の前で母親2人が罵り合い、それを照井が一喝する。
「いい加減にしろ! 自分が何をやっているかわかっているのか」
「あたしはただ、娘の為に……」
「違う。あんたは自分の憎しみをぶつけただけだ。見てみろ。子供達を」
復讐はいつしか、誰かの為を言い訳に、自分の憎しみをぶつける行為に変質してしまう。
「愚かだ。あんたは」
己に言い聞かせるかのように、呟く照井。
剥き出しになった人間のエゴをゲストキャラを用いて描き、ここで今回のエピソードのお題と、照井の抱えるテーマである「復讐」が繋がる、というのは鮮やか。
2人の母親は泣きじゃくる娘達の姿に争いをやめ、そこへやってきた劇団長の老人が頭を下げる。
「親の子供への愛は、理屈ではないんですよ。もともとは、愛なんです。だから……許してやってください」
ここは正直、なんだかなぁ、という所。それで済ますには非常に納得しがたく、ぽっと出のサブキャラに強引にまとめさせるには、場が歪みすぎていました。今回のお題と繋げて亜樹子に「お年寄りの言葉は重みがある」みたいに言わせるのも、かえってくどくていやらしい(説得力の部分を「老人の言葉」だけに置いているわけで、逃げているといっていい)。
ここで「親子の愛」を持ち出さないとこの後の展開に綺麗に繋がらない為に多少の無理をしなくてはならなかったのでしょうが、これなら、困った時のおやっさんを持ち出した方がまだ良かったような気はします。おやっさんは今作全体の親でもありますし、多少無茶を言っても、世界観、という事で説得力が補強できますし。
まあここに関しては、照井に「理由」を与える事が必要だったのであり、この親子の揉め事がそれでまとかったかというとそうでもない、という解釈をして良いのかと思いますが、それにしてもどうしても、持ち出された理屈そのものにもやもやします(^^;
今回、前後編のエピソードとしても、1年間のドラマのエピソードとしても完成度が高かっただけに、ここが処理しきれなかったのは、とても惜しい。
「愛……」
照井は己の中に一つの答を見いだし、再びシュラウドの元を訪れる。
「覚悟は出来たの? 究極のダブルになる覚悟は」
「俺は、ダブルにはならない」
「なに?! だったら、何をしに来た」
「貴方を許しに」
課長・超格好いい。
以前に、左翔太郎が人の善意を信じる男なら、照井竜は人の悪意を背負っていく男ではないか、と書きましたが、その上で、その悪意を「憎む」のではなく「許す」事を選ぶ照井。
ここで照井が、数多の傷を負いながら、負の連鎖を止めようとする男に。
「貴方は、自分の復讐の為に多くの人間を巻き込み、傷つけた。貴方をそこまで駆り立てたもの、貴方を復讐鬼に変えたもの。それは――愛だ。息子への愛」
「そうよ、私は……来人を……愛していた」
かつて幸せだった園咲家――しかしある時から変質した琉兵衛は、来人を道具のように扱い始める。
「来人を渡せ。その子はもう、普通の子供ではない。地球の子だよ」
そうはさせまいと抵抗する妻に対し、琉兵衛はテラーに変身。
「フミネ、おまえにもう、用は無い。はははははははははは」
テラーの攻撃を受けて顔と声を失った園咲フミネは、園咲家を出、復讐鬼シュラウドとなる。
回想シーンで、旅行鞄に荷物まとめて出て行っているのですが、琉兵衛がトドメを刺すわけでも追っ手を放つわけでもなかったのは何か意図があるのか、それともただの話の都合なのか。出来れば前者であってほしいですが。
テラーの放つ絶対の恐怖に打ち勝てる強い感情は、研ぎ澄まされた憎悪しかないと信じるシュラウド(恐らく、実体験)は、愛する息子・来人を取り戻す為、全てを利用し、その日の為の舞台を作り上げてきた。照井についてきていたフィリップがこの真相を知り、動揺するシュラウドに対し、照井はそれを覆す事を断言する。
「今から証明してやる。オールドドーパントを倒し、闇の力に打ち克つのが、憎しみなんかじゃないという事を。――俺たち3人で」
課長・超格好いいぃ。
「3人?」
「俺と、フィリップと――左翔太郎だ」
その頃、老翔太郎は老けさせ屋と対面していた。
「おい、俺に勝てると思ってんの?」
「勝てる。さあ、お前の罪を、数えるんじゃ」
老翔太郎は杖で奮戦し、怒りの老けさせ屋がオールドに変身した所に、照井とフィリップが到着して、それぞれ変身。シュラウドが見つめる中、2人の仮面ライダーはオールドに立ち向かうと、ダブルを狙って放たれたもやもやを、アクセルが壁となって防ぐ。
「よく見ていろ、シュラウド。憎しみのダブルなど、必要無い」
アクセルはそのまま突撃するともやもやを自分に集中させ、ダブルがエクストリームに空中変身して背後からジャンプ斬り。もはやエクストリーム化する必要も無いのですが、こういう細々したギミックの使い方は好きです(笑)
オールドは反転して裏面を見せ、アクセルはトライアルを発動。ここで、アクセルのテーマ曲である「Leave all behind」が流れだし、アクセルはトライアル状態で右手にアクセル剣、左手にトライアルメモリを構える。
「俺は、ダブルではなく……仮面ライダー――アクセルだ!」
課長ぉぉぉ、超格好いいぃぃ!!!


何もかも振り切って
悲しみさえも throw away
絶望まで運んでいく Leave all behind
音に追いつくほど 時間を抜き去るほど
アクセル 空の果てまで走れ

憎悪を乗り越え、憎しみの連鎖を止める、罪を受け止め人を許す強さを見いだした仮面ライダーアクセルは、スピード特化のトライアルで超重量のアクセル剣を振り回して標的を微塵切りにするという、エンジン剣マキシマムトライアル流星斬りにより、オールドドーパントを千枚おろし。
「絶望が――おまえのゴールだ」
トライアルのマキシマムドライブはどうにも微妙でしたが、ここでこの合わせ技は、物凄く格好良かったです。むしろ、最初からこれをやるつもりだったと言われたら信じる。
オールドドーパントはメモリブレイクして翔太郎は元に戻り、そして照井は、墓に供えられていた白い花についてシュラウドに問う。
「あなたは、井坂に俺の家族を襲わせる所までは企んでいなかった。違うか?」
照井の言葉にシュラウドは、井坂にメモリを渡したのは、テラーに対する井坂の渇望を利用しようと考えただけであり、井坂があそこまで暴走するのは計算外であったと告白し、謝罪。
あくまで自己申告ではありますが、全て計画通りだといやらしいし、イレギュラーをも利用したというほうがしっくりは来ます。
そしてハッキリするのは、照井竜は、「許す理由」を探していたのだな、と。この「理由」が、劇団長の言葉だけだと白けるのですが、既にその前のシーンで白い花に気付いており、照井に必要な積み重ねの最後の一押しだったと考えれば、合わせ技一本でギリギリOKという範囲。
この辺り少々複雑なのですが、あのシーンで語られた理屈について視聴者としては全く納得できないけど、物語の中で積み重ねられてきた照井の「理由」としてはわからないでもなく、照井がそこで納得して受け入れられるならそれでいい、という程度には照井は好き。
勿論これは既に実行犯であるウェザーはぶっ飛ばし済み、というのも大きいのですが、その井坂先生に関してもメモリブレイク後は逮捕しようとしていましたし、照井の復讐に対するスタンスの変化はこれまでの物語の中で描かれています。その上で前回の冒頭では「仲間」について言及しており、それら全ての積み重ねとして、「貴方を許しに」というのが、罪と罰/贖罪と復讐、という今作のテーマに対する、照井なりの到達点なのだな、と。
「もう貴方は……誰も傷つける必要は無い。俺たちが園咲琉兵衛を倒す。――仮面ライダーとして」
そしてこの、憎しみに囚われず復讐鬼を解放する事が、照井にとってのヒーローの勝利、仮面ライダーアクセルである事の一つの意味なのでありましょう。
シュラウドは歩み去り、悩んでいたフィリップは翔太郎に促されて後を追うが、その姿は消えてしまう。
フィリップと感動の対話中にクレイドールにぼかーんされるのかと思いましたが、そんな事はありませんでした。
厳密に言うと、照井はシュラウドを逮捕しないといけないのではと思うのですが、この辺り、ドーパント犯罪がどこまで立件可能なのかは謎。それで無くても背後関係の事情聴取ぐらいしておきたい所ですが、格好いい流れなので、ツッコまないのが吉か(笑)
シュラウドの開発能力と資金源の背景については明言されませんでしたが、加頭の言動などから見るに、財団Xと繋がっていたと考えていい様子。綺麗に退場みたいな流れになりましたが、シュラウドはシュラウドの清算をしないといけないし、翔太郎の事をタイル目地にこびりついたしつこいカビみたいに嫌っていた理由も明かされていないけど、そこまで手を回している余地があるのかどうか。
その辺り、劇場版で拾うのかなぁ……というわけで、
「AtoZ、26本確かに。必ず財団本部に届けます」
26本の第二世代ガイアメモリが、加頭の手を離れて財団Xへ送られようとしていた。果たして、その描く運命とは?!
最終章を前に、照井竜/アクセルに焦点を合わせたエピソードで、非常に良かったです。与えられた力で亡き妹の言葉を守る為にヒーローたらんとしていた男が、暴走と彷徨と模索の果てに、自分なりの仮面ライダーアクセルに辿り着く、という姿が素晴らしかった。
長谷川脚本は井坂リタイア回が今ひとつしっくり来なかったのですが、改めて憎しみとは別の道を選ぶ姿を描き、それを補って余りある出来となりました。
前回、思わせぶりに加頭とすれ違っていましたが、アクセルの最後のマッチアップ相手は加頭になるのか。まだ、冴子/ナスカV3も生きているけど。今度は、照井が復讐の対象になる、というのも今作らしい因縁の組み方。
今回の前後編、いつにも増して亜樹子が照井にときめきパルスを送りまくり、最後は照井が亜樹子のボディタッチに普段より柔らかい態度を見せて何となく良い雰囲気というラストなのですが、オチのギャグなのか、真面目な進展なのかは、今の所判然としません(^^;
ドタバタする事務所の様子に、心のつかえが一つ取れたフィリップは、笑みを浮かべる。
「相変わらず騒がしいけど、やっぱり、この事務所はこうでなくちゃ」
次回、遂に琉兵衛の過去に触れ、物語が地球の記憶と園咲家、そしてフィリップの謎に関する核心に迫りそう……の前に、劇場版へ。