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『鳥人戦隊ジェットマン』感想6

◆第9話「泥んこの恋」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:川崎ヒロユキ)
トランがミシンと次元虫を融合させてファッションジゲンを誕生させる。ファッションジゲンの作り出した服を着た人間は、正気を失って服に精神を支配された悪人となってしまうのだった。
ファッションジゲンは頭部がミシンながら、下は洒落た衣装、というのはちょっと面白いデザイン。
その頃、子供時代にちょっといい感じだった幼馴染み・サツキと再会する事になった雷太が、浮かれて頭に大量のムースを乗せていた。
セーラー服姿の幼馴染みの写真を大切に持っていて、「さーっちゃん」とか話しかけるという雷太がなかなか危ない。
だが、久々に再会した幼馴染みは、雷太の思い出にあった純朴な少女ではなく、すっかり けばくなって 垢抜けていた。
かつてと全く雰囲気の変わったサツキとのデートに振り回される雷太だが……実はサツキはサツキで、雷太の前で背伸びをして都会の女を懸命に演じていた、という、文字通りの意味で不器用なカップルのお話。
雷太が気乗りしないデートで原宿を彷徨っている頃、4人はファッションジゲンの生み出した忍者と戦闘。更に海賊まで登場して竜が雷太を増援に呼ぼうとするが、凱はそれを止める。
「雷太を呼ぼうってんならやめとけ! あいつの場合、デートなんて一生に3回ぐらいしか無さそうだしな!」
人のモテ期は3回!(なお小学生ぐらいの時に一つ消費している模様)
だがその二人は、昼間からバーに入って飲めないお酒を飲んだサツキを雷太がたしなめた事からとうとう決裂。通り雨の中、走り去ったサツキがバイラムファッションにより女スナイパーへと変えられてしまう。イエローオウルに変身した雷太は、サツキの銃弾を浴びながらも、泥の中を突撃し、その必死の姿にサツキはファッション洗脳から解放される。
小学生の頃の、田舎の泥んこレースと、イエローオウルの必死の姿を重ねているのですが、雷太の蛙跳びが凄く謎です(笑) シーンそのものは悪くない筈なのに、どうしても笑える(^^;
そして洗脳から解放されて倒れたサツキがちょっとした崖の上から転がり落ちるのですが、イエローが受け止めるのかと思ったら、そのまま地面に落ちました、さっちゃん。
いいのか、それでいいのか。
「よく聞けバイラム! 人間を洋服なんかで変える事など出来はしない! なぜなら――人には心があるからだ!」
トランは帰宅し、ファッションジゲンvsジェットマンジェットマンの猛攻を受けたファッションは黄の岩石投げ連打を受けて巨大化するも、ハンマーで一発殴られ、すかさず必殺剣で瞬殺。
尺が無い(笑)
ジェットマンに会ったら、イエローオウルに伝えてほしいの。助けてくれて、どうもありがとう。サツキはあなたに……一目惚れしました、ってね」
「……うん、必ず伝えとくよ!」
雷太にそんな言葉を残して田舎へ帰るサツキだが、見送る雷太に向けてドアが閉まってからそっと、
「またね……イエローオウル」
と呟くのであった。
人間は外見ではなく内面の美しさが大事なんだ、というテーマを怪人の特殊能力と繋げ、服と心に絡め、過去エピソードも現在に活かし、オーソドックスな単発エピソードとしては綺麗な作り。
ただこれ、背伸びを諌めて“自分らしさ”を尊重するのではなく、過去の幻想を押しつける雷太が「今の君は僕の好みじゃないんだよ! この造花女!!」と女の子の努力を全否定する構造なので、女性からするとどうなんでしょう、とちょっと思う(笑)
結果的に本人達が丸く収まっているから良いといえば良いのですが。
また、話数的に恐らく設定と序盤のプロットを基に書いていて、まだ本編を見ていない可能性も高いと思うので、制作進行上やむを得ない摺り合わせの不足があったのかとは思われますが、あれだけ香に狂気を押しつけていた竜が雷太には異常に優しい為、本作全体の流れからすると連動性に欠け、少々物足りないエピソードになってしまいました。
正しい『ジェットマン』としては、
戦士が幼馴染みの女の子とイチャイチャするなど許されないぃぃぃ! 何故なら俺はリエを失ったカカカカカカカカカカカカカカカァ! 戦士には甘酸っぱいときめきなどいらないのだつまり貴様は泣いたり笑ったりできなくなるまDE、営巣の掃除をしているがいい! いいか貴様はそこで、一生ウサギ跳びを続けるのだ!! 復唱しろ! 復唱する前と後に、サーをつけろ、この◎×%##*!!
みたいな感じだと思われます。
次回、カップめん」……やっぱり昔見た時も、ここから次回予告が入ったのか?(^^;


◆第10話「カップめん」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:荒川稔久
この後、20年以上に渡り、戦隊シリーズを支える事になる荒川稔久の記念すべき戦隊デビュー回。
「一緒に幻の、カップめん食べない? 1983年ものの、名古屋地区限定版、オリンピックラーメン」
いきなり名古屋ネタ来ました。
アコの中学の先輩・龍田三夫は現在二浪中のカップめんマニアで、部屋の中にはカップめんコレクションとアコの写真。印刷ずれのカップめんの蓋をアコちゃんと一緒に見たいなーという、筋金入りの駄目な人だった。
「僕はやっぱり暗いのかな……」
「そんな事はナイジェリア」
その部屋にいきなり現れる、巨大なカップめん。
それはチャルメラの響きと共に降臨する、全てのラーメンの始まりと終わりを司るカップめんの神・ゴッドラーメンであった!
一応、ラディゲの最初の台詞をなぞっている(笑)
「ミーと一緒に、究極のカップラーメンを作ってくれるかな?」
「いいとも!」
こうしてせこいギャグを連発してくる神様に乗せられた先輩は、新たなカップめんを開発。バイラムの後援により完成した新次元ラーメン「陽気なアコちゃん」は派手な電波ジャックによるCM効果もあり、大ヒットを飛ばすのであった。
トラン「売れてるよ。1分で出来る、カップめん」
ラディゲ「ふん、愚かな。それほどまでに人間どもは、時間と手間が惜しいのか」
うん、裏次元伯爵様は、半日かけてスープとか仕込みそう(笑)
ただどう考えても売れている理由は、「10円だから」だと思います!
勿論、ゴッドラーメンの正体は、バイラムの怪人ヌードルジゲン。
「後は、このチャルメラを吹くだけデストラーデ


オレステス・デストラーデ
1989−1992年、西武ライオンズで活躍したキューバ出身の元プロ野球選手。
ジェットマン』放映の前年にあたる1990年シーズンには、〔打率.263 本塁打42 打点106〕という成績を残し、本塁打と打点の二冠に輝いた。1990−1992年まで、3年連続のパリーグ本塁打王であり、日本プロ野球史上初の、スイッチヒッターによる本塁打王でもある。秋山幸二清原和博と共に凶悪クリーンナップを形成し、森西武黄金時代後期の打線を牽引した。
アコちゃんラーメンを食べたものは、ヌードルジゲンの吹くチャルメラの響きを聞くと、ほんのわずかな時間も待てなくなり凶暴化してしまうのだ! と、ちょっぴり風刺的な展開。
街で突然多くの人々が暴れだし、凱が取り押さえた女子大生の胃の中からヌードル状の生命体――生きたラーメンが発見される。更に基地でアコちゃんラーメンを食べていた雷太が暴れだし、原因がアコちゃんラーメンと判明。先輩の元へ向かったアコは先輩を始末しようとしていたヌードルジゲンと遭遇し、戦闘に。
なるとブーメランやコーン爆弾など、間抜けな見た目からは予想外の多彩な攻撃を見せるヌードルに苦戦するアコだが、男を見せた先輩がアコを助け、そうこうしている内にヌードルはお湯切れで苦しみ出す(前半に伏線あり)。最終的にはお湯を奪われてしまうものの、先輩の奮闘が功を奏し、助けに来る黄色。
……黄色は未だアコちゃんヌードルの影響下でひたすら巻きを要求し、助けに来たというよりも、抜けだして突撃してきたっぽい(笑)
お湯が不足していたヌードルジゲンは自滅して巨大化し、ジェットマシンがカップめんの中に閉じ込められてしまうなどあったものの、今日もざっくりバードニックセイバーで瞬殺。
かくてトランによる日本ラーメン化計画は失敗に終わり、アコは先輩を少し見直し、先輩は男としてちょっぴり成長するのであった。
序章にあたる1〜6話まで+7話をメインライター井上敏樹が書いて作品の方向性を示した上で、この8・9・10話は、いわゆるオーソドックスな“戦隊もの”の文法を意識して書いてほしい、というオーダーだったのかと思われますが、その中でも、ギャグ満載の中にちょっぴり風刺を混ぜるという、古典の雰囲気の強いエピソード(荒川稔久はもともと上原正三の影響を大きく受けているそうなので、その色が出たのかもしれない)。テンポ良く進んで、面白かったです。
にしても、お見合い→あわよくば香とお付き合いしたい御曹司→雷太と満更でも無い幼馴染み→アコに片思いの先輩、と7話以降も色恋が必ず絡んでくるのはさすがに被りすぎた感じですが、これもオーダーあったのだろうか(^^;
ここまで参加した4人の脚本家ですが、
井上敏樹(当時32歳/1981年『Dr.スランプ』で脚本家デビュー。東映特撮には1984年『どきんちょ!ネムリン』で初参加し、86年の『超新星フラッシュマン』から連続して戦隊シリーズに参加)
◆荒木憲一(1987年『仮面ライダーBLACK』で脚本家デビュー。以後、東映特撮には『同RX』『機動刑事ジバン』『特警ウインスペクター』に各1〜3話参加)
◆川崎ヒロユキ(当時26歳/1988年『魔神英雄伝ワタル』で脚本家デビュー。東映特撮初参加)
荒川稔久(当時27歳/1986年『ドテラマン』で脚本家デビュー。東映特撮には『仮面ライダーBLACK』に1話だけ参加して以来)
と、井上敏樹以外の3人はいずれも当時デビュー3〜5年程度の若手であり、プロデューサー陣が今作にかけた意気込みと覚悟のほどが窺えます(荒木憲一は杉村升の弟子筋なので、いざという時のフォローも考えた起用だとも思われる)。
次回……何故か予告が無くなった。