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『白暮のクロニクル』(ゆうきまさみ)4巻、読了


見た目美少年、中身88歳のオキナガ――現在、厚生労働省の管理下にある不老不死の種属――、雪村魁。按察使文庫で厄介になりながら連続猟奇殺人犯「羊殺し」を追う魁の元を、吸血鬼に関わる事件に興味を持つ梶田という青年が訪れる。梶田の話では、「吸血鬼」と関わりを持った妹が失踪したのだという。その二日後――首元に噛み跡を残した、失血によると思われる若い女の死体が発見される……。
「羊殺し」事件を背骨としつつ、オキナガ・魁と、厚労省の下っ端役人・伏木あかりが様々な事件を追いかけたり巻き込まれたりする構造の今作ですが、今回は、まるで吸血鬼を思わせる殺人事件が発生。
いわゆる伝承の「吸血鬼」に似た性質を持つ不老不死のオキナガが、政府に公認され、厚労省の管理下にあるというのが今作の世界設定の面白みですが、一方で世間一般はオキナガの性質を熟知しているわけでもなく、事件にオキナガが関わっているとなれば、世論の動揺は必死。と、事件は厚労省の上層部にも影響を与え、きなくさい雰囲気に。
単純なミステリ&オカルトではなく、行政の事情や腹芸が混ざって展開するというのが、物語にうまく奥行きをつけています。
この辺りの、いっけん柔らかいタッチから、シャープに世界が切り取られる感覚はゆうきまさみの真骨頂。
今巻では、1巻以来となる唐沢刑事が再登場。更に、癖のあるオキナガのグループが新たに登場し、とじわりじわりと世界が広がり繋がっていくという構造も非常に面白くて気持ちがいい。
前作『鉄腕バーディー』も、派手なアクションをしつつ、様々な人物や事象が絡まり合い徐々に繋がりほぐれていくという構造を取っていましたが、鮮やかな手並みの一方で、どうしても重要人物の登場間隔が空いてしまったり、伏線の解消が遠くなりすぎるという良し悪しがあったので、今作、巧いペースで進んでいってほしい所。
基本ここまで、それぞれのエピソードを1巻完結ペースで進めているのは、その反省を踏まえたのかなとも思える所ですが、いったいどんな絵図が見えてくるか、引き続き、楽しみ。
ところで今作を好きな方には是非、小説『屍鬼』(小野不由美)をお薦めしたい。探偵ものというわけではなく、吸血鬼ホラーを、因習漂う日本の山村に持ち込んで展開したという物語ですが、日本で描かれた(一種の)吸血鬼テーマとしては、大傑作なので。