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『侍戦隊シンケンジャー』感想26

◆第三十九幕「救急緊急大至急」◆ (監督:加藤弘之 脚本:小林靖子
アクマロが謎の儀式を行うと黒い灰が降り注ぎ、それを浴びた人々は突然、異常なまでの猜疑心に心を支配されてしまい、相争うようになってしまう。
「ふふふふふ。我が術もこれでなった。後は、この炎を燃やし続けるだけ。どうか、消さぬよう頼みまする――お二方」
アクマロは十臓と太夫に祭壇の警護を指示し、かくして連絡の途絶した島を不審に思い、乗り込む事になるシンケンジャー……と、少々珍しいシチュエーションでスタート。
島という限定空間が舞台として設定され、ミッションスタート、とでもいった感じでなかなか盛り上がります。
バリケードが張り巡らされたり、突然の投石を受けたり、不穏な空気の漂う島内を、殿&茉子、流ノ介&ことは、千明&源太、という3つのコンビに分かれて捜索するが、赤桃の前には十臓、青黄の前には太夫、緑金の前にはアクマロ、がそれぞれ立ちはだかる。
「人が人との繋がりを無くし、ただ争うのみの、人として最下層な世界。これこそ、三途の川の水を呼び込むのにふさわしい」
此の世に修羅の巷を生み出すアクマロの妖術のこもった灰を浴び、千明と源太はお互いを疑って同士討ちをスタート。青と黄は太夫に敗れて川落ちし、赤と桃も十臓に苦戦を強いられる。
「シンケンレッド……おまえ、なぜ、弱くなった?」
「なに?」
「おまえは自分を惜しむようになった」
「……!」
赤は十臓の攻撃で変身解除レベルのダメージを受けるが、十臓は「つまらん」と言い残して立ち去り、殿は気絶。
一方、千明と源太は血走った目で周囲を警戒していた。
「源太のやつ……源太だけじゃない。みんな敵だ」
「敵ばかりだ……みんな俺を狙ってやがる」
石を投げられたりトラックに追いかけられたり、今回コミカルパート担当の2人ですが、なかなか楽しい偏執狂演技。源太が何もない所で魚丸を抜き身で振り回したり、かなりいい感じにキてます。
「おまえ……シンケンレッドにとどめもささずに来たようだが」
「あれはもう、面白くない。裏正が戻ってきたところで、あのまさに、骨の髄までバラバラになるほどの戦い、望むべくもないとはな」
十臓は殿を、ポイ捨て宣言。
一方的にアプローチをしてきた挙げ句の、なんかもう冷めちゃったーみたいな身勝手極まりない事を言われているとは知らず、茉子に応急手当を受けた丈瑠は、十臓の言葉に思い悩んでいた。
「気になってるの? 十臓が言った事。……前の戦いで勝ったのは、丈瑠の方じゃない。弱くなったとも思わないし」
「腕じゃない。十臓が言ってた通りだ」
――おまえは自分を惜しむようになった
「悪い事とは、思えないけど」
「少なくとも、1人で戦ってた時とは違う」
「うん、確かに。最初の頃の丈瑠とは、違うよね。特に最近は。どんどん、なんていうか……」
「お前達と戦うのが普通になってる」
「ていうか、みんなと一緒に居るのが、普通、て感じかな。私もそんな感じかな。流ノ介達も、そうだと思う。それって、いい事じゃない? 昔の殿様と家臣とは違うかもしれないけど、私達は、これが」
「違う!」
「え? ……丈瑠?」
「俺は……違う!」
茉子を振り払い、飛び出す丈瑠。
(俺はいつから――いや、わかってて目を逸らしたんだ)
「よりによって、あいつに……見透かされた」
(俺に許される筈なかった……もっと、強く!)
前回、ここまでの物語の積み重ねによる丈瑠の変化に焦点が当たりましたが、そこから一転、何やら怪しい雲行きに。源太加入からここしばらくは、周囲の変化に徐々に馴染んでいく……という形で丈瑠はある意味では話の中心に居るけど中心ではない、というような描かれ方だったのですが、最終クールに入って再び、丈瑠が物語の中央にやってきました。
丈瑠の(わかってて目を逸らしていた)という独白が、そのまま、じんわりと丈瑠をぬるま湯につけ込んでいた作品構造と重なっているという、なかなか構成の妙。
(丈瑠、どうしたの? 何を言おうとして……)
果たして、丈瑠の「違う」という言葉の意味は何なのか……再び歪な修羅たらんとする丈瑠は独り儀式の祭壇へ向かう。そこで太夫の攻撃を受けた丈瑠は負傷から回避動作が遅れるが、飛び込んできた茉子が丈瑠をかばって斬られる。
「茉子……。馬鹿、俺の事はいいから」
「忘れたの? 約束でしょ。命を預けるし、命を預かるって。その約束が丈瑠を弱くするとは思わない。一緒に居て、一緒に戦って、この世を守る。丈瑠……私が今言えるのは、それぐらい」
茉子は変身して太夫と切り結び、丈瑠はその言葉を噛みしめる。
「今は……この世を……守る為に――一筆奏上」
スーパー化したシンケンレッドは、右手に刀、左手にバズーカを構え、スローモーションでナナシ軍団を斬って撃って今回も派手に蹂躙。
基本、スピード感で見せていく戦隊のバトル演出では、早回しは小刻みに用いられますが、スローモーションというのはかなり珍しいか。今作はかなり、時代劇っぽさと戦隊らしさを融合しようと殺陣に凝っていますが、その虐殺っぷりと合わせて、かなり印象深い戦闘になりました。猛牛バズーカの描写は力入っていて、おいしい。
「此の世を守るか。それほどの価値があるとも思えんな」
「それは、価値を自分で手放したからでしょ!」
太夫と姐さんの絡みが継続されているのも、いい所。
「撃っていいぞ。もうやりあってもつまらん」
丈瑠に興味を失った十臓は自ら猛牛バズーカの銃口の前に立つが、スーパーシンケンレッドの射撃は十臓をかすめ、その背後の祭壇を破壊する。
「僅かだが残っているらしい。俺の肌を粟立たせるものが」
妖術は破れて島の人々は元に戻り、アクマロが来て十臓と太夫は撤退。置き土産の式神との戦闘では、青の進言を無視して殿がサムライハオーに変形し、さくさく大団円。
「これにて、一件落着」
一本締めも無く片付ける丈瑠の姿に、違和感を覚えて気にする女性陣、その背後では馬鹿をやっている男3人……と、なんだろうこの、悲しいほどの温度差(笑)
割と大胆に青、黄、緑、金をリタイアさせ、姐さんがいい役貰うというエピソード。家臣4人の中では、スタンスとしては姐さんが一番、丈瑠に対してフラットな物言いが出来るのですが、このまま終盤そういう役回りになっていくのか。個人的には、もうちょっと、イチャイチャしても良かったですが!(笑)
そして――
太夫……」
下は川だが心は砂漠、乾ききった三途の川に潤いを取り戻すべく、遂に、穀潰し・出陣。
働かない男が真剣を見せる時――次回、激震。