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『侍戦隊シンケンジャー』感想29

◆第四十二幕「二百年野望」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子
同じ海岸で続けてアヤカシが暴れた事に引っかかりを覚えた彦馬は、これまでアクマロとその配下のアヤカシが活動した場所を地図に示してみる……が、見事にバラバラだった。
手元だけを映してマーカーを置いていくシーンにしっかり尺を取り、これは俯瞰にすると五芒星とか円とかになるお約束か……と思わせておいて、バラバラ、というフェイントが巧い(笑)
ところが、そこからアクマロが直接絡んでいた事件だけを残し、他を取り除くと、なんと千葉の海岸から新潟方面にかけて、日本列島を斜めに縦断するような一直線が残る。
「なんつうか……この世を真っ二つ、て感じだな」
隙間センサーの描写が割とご町内っぽかった今作ですが、知らない内に首都圏さえ飛び出して戦っていた事が図示されました。日本全国に町名単位で細かく仕掛けてあるとは、黒子、恐るべし……。
アクマロの狙いを検討するシンケンジャーは、過去の資料にあたってみる事に。千明でさえ何とか読める古文書だが源太は全く歯が立たず、そういえば源太は侍の教育を受けていないのだった、とすっかり馴染んだ出入りの寿司屋の素性を6人は久々に思い出す。資料調査をリタイアした源太は、差し入れの寿司を握りに屋台に戻り、密かに準備していたクリスマスツリーが登場……って、クリスマス回やる気あったのか(笑)
いやてっきり、侍にクリスマスなど無いのだ! とここしばらくの数話かけてロボット全見せみたいなバトルにより、クリスマス回のノルマを達成した事にする新手法だとばかり思っていました。
「打ち込んできた楔も、残すはあと一つ」
計画を進めるアクマロは、最後の楔を打ち込む為に新たなアヤカシを放つ。
「吾の望みも、ようやく……ほほほほほほ」
自らも人の世に出ようとするアクマロだが、ようやくその目的を突き止めたシタリがそれを止める。
「仕掛けているのは、裏見がんどう返し。そうだろう」
がんどう返し、て聞き覚えはあるけど何の事だったか(※歌舞伎で用いる場面転換の方法)、と調べて、ついでに画像検索したら、実際のがんどう返しの仕組みよりも、アクマロとシタリと十臓の画像ばかり出てきた(笑)
お陰で、「恨み」ではなく「裏見」と判明。
それは、人の世どころか、三途の川も消えてしまうかもしれない、極めて大がかりにして強力無比の術であった。だが、地獄に焦がれるアクマロは、自分も含めて外道衆の存在など、意にも介さない。
「地獄をこの目この身で味わえるなら、些細な事」
裏見がんどう返しの成立には、外道衆でも人でもない存在が必要となるが、そこでシタリはある男の存在に気付く。
「腑破十臓……おまえさんまさか!」
「そう、仕掛けは二百年も前より」
アクマロはシタリを叩きのめして人の世に向かうと、第23話で登場した、志波家の菩提寺の片隅にある古びた墓の中より、元の姿を取り戻した裏正を取り出す。全てはアクマロの悲願を叶える為の、長い長い仕込みだったのである……。
虫を使って人に苦痛を与えるアヤカシが楔の場所に出現し、一足先に立ち向かう源太。……なぜ、強化武装であるダイゴヨウを屋台の番に置いていくのか(笑) 確かに、大事な財産だけど!
源太の屋台はツッコんで欲しいのか欲しくないのか間合いが取りにくくて困るのですが、どう考えても源太、屋台で寝泊まりしてるしな! 何故かツリーが届けてもらえるしな! 職務質問への受け答えと逃げ足の速さなら任せとけ!
全員集合してナナシと集団戦になり、久々に殿が大筒を放つが、現れたアクマロがそれを弾き返す。アクマロはスーパー化した殿の斬撃を受け止め、「人の苦しみ、嘆き、悲鳴」により楔を打ち込む、というその目的を明かす。
3馬鹿がアクマロに挑み、逃げた虫アヤカシを追う、殿・桃・黄。
ここからはvsアクマロサイドと、vsアヤカシサイドで交互に展開し、最近生まれている温度差と距離感を、更に強く感じる所です(笑)
3対1でもアクマロは3馬鹿を圧倒するが、そこへ現れた十臓が、大事な話し相手を返せと背後からアクマロに剣を突き付ける。
「十臓さん、吾の望みはたった一つ。外道に生まれた以上、決して行けない、あの世――それも地獄を知る事。人の世では味わえぬ極上の嘆きと苦しみ、それを見たい、感じたいのでござりまする。その為に此の世に施したのが、裏見がんどう返しの術」
裏見がんどう返し……それは人間の嘆きや苦しみにより大地に直列に楔打ち込み、此の世に大きな隙間を作り出す秘術。その隙間から人の世が裏返り、現世に地獄が顔を見せるのである。
ここで、今作の特徴である“隙間”と繋げてきたのは面白く、大技に作品なりの説得力を与えました。
ただ、太夫の三味線を利用してまで打ち込もうとしていた楔が、割と簡単に腹ぺこで代用できてしまったり、楔を打ち込む条件が結構適当なのはちょっと勿体なかった所(^^; あまりエグい事が表現上出来ないという制約はあるにせよ、もう少し濃度の統一感は欲しかった所です。まあ本来なら、騒ぎを起こさずに“いつの間にか楔を打ち込む”為の三味線であったのが、御大将の横槍で計画が狂った、という事なのでしょうが。
両手に花の殿は連携攻撃から猛牛バズーカで虫アヤカシを外道伏滅するが、最後の楔は成立してしまい、裏見がんどう返しの為の切り取り線が大地に刻まれる。そして――
「地獄の隙間を切り開けるのは、やはり、人と外道の隙間に居るもの。そう、はぐれ外道である、あんたさんのような」
アクマロは十臓に向けて、復活した裏正を取り出す……。
巨大化した虫アヤカシに対しては、ハーレムシンケンオー、天下統一。
殿だから、正室と側室が居てもOKだ!(待て)
オオナナシ軍団に囲まれて苦戦するシンケンオーだが、カブト折神とカジキ折神を召喚し、テーマソングをBGMに、久々の初期侍武装を発動すると、派手な立ち回りでばったばったとオオナナシ軍団を薙ぎ倒す。アヤカシの飛ばす虫は虎折神のドリルで粉砕。巨顔ナナシは天空シンケンオーで切り倒し、天空唐竹割りで倒しきれなかった虫アヤカシは、大海シンケンオーからの折神大海砲で滅殺、というクリスマススペシャルコンボ。
最初から大海シンケンオーを繰り出さない殿に、微妙に、あー3馬鹿の所に戻るの嫌かなー、という気配を感じないでもないのですが、久々のシンケンオーの立ち回りが格好良かったので良し、という事で(笑) 挿入歌もシンケンオーのテーマが一番好きなので、フルサイズに合わせた充実の大暴れで、満足のバトルでした。
その頃、3馬鹿は蹴鞠で死にかけていた。
駆け戻った殿達の前で、
「君の力で地球を斬ってみないか?」
と誘いを受ける十臓は「興味無いな」と断るが、アクマロはここで、裏正を十臓の家族で作った、という恐るべき真実を明かす。裏正には、辻斬りを繰り返す十臓を最後まで止めようとした家族の魂が閉じ込められており、がんどう返しに用いれば、その魂は苦しみから解き放たれる……この最後の仕掛けを餌に十臓を釣ろうとするアクマロだが、突然、楔から光の柱が噴き上がって大爆発を引き起こす。
アクマロと、成り行きを覗き見していた太夫以外は派手に吹き飛んで全員気絶し、各所の楔で発生した光の噴出により、周辺が大きな爆発の被害に遭うという、いきなりの大スペクタクル。というか島、逃げ場無くて壊滅的では……(^^;
シンケンジャー。もう止められはいたしませんので、どうか、邪魔立て無用に」
十臓に誘いの言葉を残し、裏正を手にいづこへか飛び去るアクマロ。果たして十臓は、家族の魂の為に、地球を斬るや否や? アクマロの目論み通り、裏見がんどう返しの術はなってしまうのか、次回――クリスマスに死闘の華が乱れ舞う。