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『百獣戦隊ガオレンジャー』感想2

◆Quest2「精霊王、起つ!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希
とりあえず、OPで5人の名前をチェック。
赤/獅子走、黄/鷲尾岳、青/鮫津海、黒/牛込草太郎、白/大河冴
………………1人だけあからさまな差別を受けているのですが、苛めなのか。
或いは、実は偽物の超人で、途中で死んでリタイアして、本物のアストロ超人と交代するのか。
ガオブラックの明日はどっちだ!
とは言うものの、感想書きからすると「草太郎」はかなり有り難い名前です。「走」とか「海」とか、一文字な上に一般名詞や動詞は文章に埋もれて読み取りづらくなるので厄介。まあ一番書きにくくて困るのは、ひらがな名前、その中でも最悪なのが「は」とか「の」とか「と」とか入ってる名前なのですが……つまり「春野はるか」は非常に厄介で困ってます、ハイ(笑)
横道に逸れました。
冒頭、オルグとは、世界に漂う邪悪な念や衝動のパワーが、物の姿を真似て具現化したものとナレーションで説明。それに合わせて、漂う陰の気がハリガネオルグと化してタクシーを襲い、それを猫だけが見ていた……と、こういったスリラー調の演出は、ヒーロー物の原点オマージュとして、なんだかんだ好きです。
「戦士になるつもりなら、今までの名前を捨てろ。俺はガオイエロー、おまえはガオレッド」
ガオズロックにやってきたレッドは仲間のプロフィールを知ろうとするが、4人の主導格であったイエローにばっさりと
「人間やめますか? 戦士やめますか?」
という2択を突き付けられる。
世俗との関わりを断ち、ただガオレンジャーとしてのみ生きるべし……やはり、カルトの匂いがガンガンします!
一緒に戦う仲間なのだし名前はともかく最低限の自己紹介ぐらいしろよ、とは思う所ですが、ヒーロー性と社会性の相克の問題に対し、「ヒーローになる事」=「社会を捨てる事」とし、二律背反そのものを最初に排除してきた、というのはなかなか面白い。
また同時に、戦隊における「変身後にコードネームで呼ぶか/名前で呼ぶか」という問題に、「名前を廃する」というアプローチを用いる事で、意識的に80年代っぽさを与えるとともに、「コードネームで呼ぶ」事へのリアリティを生み出そうとしています。
武上純希というと、戦隊初参加にしてメインライターを務めた『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)でも、(結果的に)「メンバーがコードネームを呼び合い素性を秘密にする」という作劇が取られましたが、こだわりのあるテーマ性なのかもしれません。
今作の用い方だと、どこかでコードネーム→名前、になるという展開が予想はされますが。
赤が持ち込んだTVに映ったニュースから、ハリガネオルグが活動する街へと飛ぶガオズロック。
ナレーション「もし君が、巨大な山が飛んでいるのを見たなら、それは、ガオレンジャーが、事件の現場へ向かっているのです」
出しゃばり気味のナレーションさんですが、こういう、仮想と現実をちょっとした遊び心でリンクさせる、というのは嫌いではありません。
これは武上さんが、初期《ウルトラ》シリーズ辺りを意識しているのかなー。完全に外側からではない、微妙に近い距離感から語りかけるようなナレーションは、何となくそれっぽい。
事件の街へ辿り着いた5人は手分けしてハリガネオルグを探し、ここで、黄がガオレンジャーになって1年、白と青が半年、黒は2ヶ月、とそれぞれの入信歴が判明し、割と経験値に差がある事もわかりました。
最も古株だと判明したイエローですが…………ん? という事は、「戦士になるつもりなら、今までの名前を捨てろ」というのはもしかして、俺ルール?
まあ、黄色の事情は今後語られていくのでしょうが。
露出はさほどでもないがやたら色っぽく喋るツエツエと、今のところ危ないナイフマニアぐらいの雰囲気のヤバイバから力を得たオルグの針金が街で暴れ回るシーンはCGと実写を合わせてなかなか面白く、戦闘員オルゲットも登場。
「何の目的で、こんな事をするんだ」
理由無く他者を害する生き物は居ない筈、と赤はオルグとの和平交渉を試み、動物扱いで感応を図ってみるが……
「聞こえねぇ……こいつには、心がないのか」
ここの、赤の愕然とした表情は良かった。
オルグの攻撃からレッドをかばってホワイトが負傷し、そこに駆けつける残り3人。……黄色と黒が同じ画面の中で2人並ぶと、大学の相撲部か柔道部かアメフト部のようです(笑)
「どんな動物の声でも、聞く自信があった。でもヤツの心の中には何も無かった」
オルグはおまえの好きな動物たちとは違う。……理屈抜きに叩きつぶすしかないんだ。どうする? おまえがリーダーだ。…………おまえが決めろ!」
「それしかないのかぁっ!!」
赤は立ち上がり、ガオレンジャー揃って変身。
赤が自分を拉致したパワーアニマル教団の言い分を鵜呑みにせず、オルグと話し合いを試みる、という展開は面白かったのですが、人語を解するから交渉可能と判断したのかと思ったら、いきなりの動物扱い→こいつには心がねえ!→攻撃を受ける→殺るしかない!、と全て赤の自分ワールド内部で処理してしまった為、赤の発言をどこまで信じていいのだろうか、という問題が発生してしまいました(笑)
ここは赤の脳内電波世界で片付けずに、誰にでも納得できる形で交渉不可能、を描いた方が「世界(人間)とオルグ」の関係性を見せるにあたっては良かったと思うのですが、赤の特殊能力を強調しようとした結果、虻蜂取らずになった感。
今作、立ち上がりで色々と面白いシュートは撃っているのに、すべからくゴールポストに直撃していて勿体ない(^^;
ガオレンジャーは針金と戦闘になり、破邪百獣剣でずんばらりん。1話−2話は、個人の能力と個人武器を派手に見せるのが概ねお約束ですが、2話続けて、合体武器のアピールを優先して個人武器の使用シーンがほとんど無いというのはかなり珍しいか。第1話自体、アニマリウムとパワーアニマルの描写にかなり時間を割いており、恐らく戦隊の初回としては戦闘シーンが短めだとも思われ、ちょくちょくアプローチを変えている事がそういった部分にも窺えます。
ここで5人は、ヤバイバとツエツエと遭遇し、針金はツエツエの「鬼は内、福は外」の魔法で巨大化。赤が再びライオンの声を聞き、5人は宝珠の力でパワーアニマルを百獣合体させ、巨大なる精霊の王、ガオキングが誕生する!
今作のもう一つ勿体ない所は、ごく単純にそこまで手が回らなかったのでしょうが、立ち上がりの基礎部分で色々と面白いアプローチを入れているのに、武器の合体やロボットの合体は「ライオンが教えてくれた」で凄く杜撰に始まってしまう事(笑) そこでもう一つ二つ手を入れられると物語に重厚さが出たと思うのですが、何とも痒い所に手が届き切りません(^^;
ガオキングはノーガードで針金の攻撃を受け止めると、連続攻撃から必殺のアニマル光線「天地轟明・アニマルハート」で撃破、という圧倒的強さを見せつける。……しかし、合体したのに必殺技が第1話と同じなのはどうなのか(笑)
こうして赤はオルグとの戦いの決意を固め、ガオレンジャーはガオキングという新たな力を得るが、その一方で地下深くの闇の吹き溜まり・マトリックスでは、強力なオルグ、ハイネスデュークが目覚めようとしていた……。