自称“スター・ロード”を名乗るちょっと痛い銀河の無法者が、緑の肌の暗殺者、全身入れ墨の巨漢、樹木型宇宙人、改造アライグマ、というメンバーと宇宙を駆け回るSFアクション。
1986年、アメリカのとある州で、母親を亡くしたばかりの少年が宇宙船によってさらわれた――。26年後、立派な宇宙のアウトローに成長した青年ピーターは、仲間を裏切って大金をせしめようとした事がきっかけで、秘宝<オーブ>を巡る、銀河の命運をかけた争いに巻き込まれる事になる……。
見るまで知らなかったのですが、これもマーベル・コミックス原作で、一連のマーベル・ユニバース映画の一翼をなす作品という事。
『アベンジャーズ』では宇宙の先進文明の存在がほの見えましたが(まあそもそも、光の国から神様が降ってくる世界観ですが)、今作の時代設定が2015年というのはその辺りで繋がっている模様。とはいえ、とりあえず今作においてはその辺りは全く気にする必要なく、単独のSFアクションとして楽しめる作り。
とにかく非常にハイスピードで進んでいき、緩む事ないアクション映画となっていますが、筋立てがしっかりしており、展開に呆然、というのが無いのがいい所。敵側の背景説明が端折られているのが若干わかりにくいですが、テンポ重視でどんどん先へ先へと進んでいく構成になっています。
で、スピード感とシナリオの整合性を両立させる為に、基本、駄目人間しか出てきません。それを徹底する事で、展開に説得力を持たせるという手法。
話を転がす為に間抜けな行動をする人物が出てくるのではなく――登場人物の大半が間抜けでトラブルメーカーなのだ!
この開き直りが凄い(笑)
(一応、後半に出てくる軍人さん達はまともですが)
その上で、敷くべき伏線は敷いて、抑えるべきツボは押さえて、しっかりとまとまった作り。
またSFの雰囲気を出す為の細かいガジェットの見せ方も魅力的で、特にお気に入りは、某デモニカっぽい赤い目玉が特徴的な主人公のヘルメットと、宇宙盗賊団の親玉の使う口笛で扱う矢。
スケール感と爽快感の両立した良質のアクション映画で、楽しかったです。
以下、クライマックスまでの内容に触れる感想。
・
・
・
基本的に、ああだこうだと登場人物の思惑がぶつかりあってスッキリ話が前進しない、といった展開をされると面倒くさくて苦手なので、それぞれ目的が違って敵対していた駄目人間達が、欲望を中心に手を結ぶまでの展開がスピーディだったのがまず良かったです。
まあ、ガモーラはちょっと立ち位置が違いますが、あの人も一見まともそうで実のところ改造戦士なので、割と成り行き任せですし(笑)
しかしパーティが困った連中ばかりだなぁと思っていたら、困った人の困った行動で困った事になる、というのも説得力があって秀逸。大物然として登場してきた仇役も、終わってみればただのハンマー馬鹿でしたし(メイン武器が悪いのか)。
そんな困った連中が、何かを「守る」為に一念発起、というのも納得できる流れでしたし、そこに欲得で絡んでくる宇宙盗賊の親玉さんは、終始いい味。
上述しましたが親玉の特殊武器が好きだったので、しっかりクライマックスに見せ場があったのは――しかも予想以上に格好良く――とても良かったです。で、考えてみるとピーターが最後に使ったセクシーコマンドー(久仁彦さん〔http://twitter.com/fadotsu〕のツイートに、超納得)は、親玉の口笛の応用なのかしら、と何となく二人の精神的繋がりを勝手に見て取れるのも好き。
クライマックスといえば、ザンダー星防衛部隊の戦闘機が連結してバリアを張るのが、ハッタリが効いて格好良かったです。で、戦闘機部隊の隊長さんが、最初「ハムスター」呼ばわりしていたアライグマの事を最期に「ロケット」と呼ぶのも、良かった。そういうツボが、小さなものから大きなものまで、きちっきちっと要所で抑えられている作品。
冒頭の、繋げなかった手、がクライマックスに関わってくるのも王道ですが、それを混成駄目人間チームが銀河の守護者となる、という流れとしっかり重ね、盛り上がりました。
好き嫌いでいえば、これといった偏愛ポイントはないのですが、まとまりのよいハイスピードアクションの良作。すっきりまとまりすぎて、いい意味で書く事が少ないというか、あらすじが数行で済んで、そのまま爽快で楽しいというそんな1作。