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はじめての『プリキュア』感想17

◆『GO!プリンセスプリキュア』#23◆
見所は、スカーレット、まさかの「GO!」担当。
前回から引き続き寮で生活していたトワに気晴らしをさせようと、夢ヶ浜ニコニコツアーと称して街へ連れ出すはるか達。
「こちらに来てから、ほとんど部屋に閉じこもっていたでしょう?」
それは、専門用語で監禁というのでは。
もはや何を一番にツッコめばいいのかわかりませんが、食事とか、どうしていたのですかね……。第19話で「学園と学園寮という舞台」に物語上の意味を与えたのは良かったのですが、やはりどうにも、全寮制という設定を持てあましている感はぬぐえません。さすがにこれをファンタジー居候の延長線上で納得しろというのは厳しく、根幹設定には責任を持って物語を作って欲しい所です(^^;
今作のこの、非常に丁寧に組み上げている部分と、物凄く雑な扱いをしている部分の落差は、あまりに大きくてどうしてこんな事になっているのか。全体的に雑ならそれで強行突破できる部分も広がりますし(それで面白くなるかはまた別として)、或いは雑な部分が面白さに繋がっているなら話は変わりますが、今作の面白い部分って概ね丁寧に組み上げている所から生じているので、雑な部分の問題がよりマイナスに目立ってしまっています。
とにもかくにも、きららのコーディネートで素面では少々恥ずかしいトワの衣装をチェンジ。
「決まりね。お願いします」
私達からのプレゼント、と言っていますが、明らかにみなみ様が背後で顔パスしています。
一行はトワを引きずり回すと、それぞれの好きな場所に案内してトワを楽しませようとするが、罪の意識に悩むトワは浮かべかけた笑顔を押さえ込む。
ホープキングダムを救うまで、わたくしは、楽しい思いなどしてはいけないの。……わたくしが奇跡的にキュアスカーレットになれたのは、天が償うチャンスをくれたからです。あなた方とは、違うのです」
これが70年代なら、「おのれディスダーク! わたくしはこの力を使って、おまえ達を殲滅する!!」となって新しい仮面を身に付け「我が名は復讐の炎・怪傑スカーレット! 貴様等にくれてやるのは希望でも絶望もなく――死だ!」とかやる所ですが、そこまで女の子を捨てられなかったトワは、前向きに夢を目指す為ではなく、あくまで罪を償う為の奇跡、と変身を内省的に捉える。今作これまで居なかったタイプで、新鮮な位置づけになりました。
ドーナツ屋を1人飛び出すトワだが、そこでこの世界の常識を知らない事と、自分の生活能力の無さに気付く。……と、定番のギャップギャグとトワ様可愛げキャンペーンなのですが、トワの場合、いってみれば幼少期に誘拐被害に遭っている人なので、“異世界のお姫様の戸惑い”として素直に笑いにくい所があります(^^; むしろ、あまりギャグにしてはいけないような。
そんなトワは通りすがりの望月先生と遭遇し、幼少期の反省もなく甘味につられて会話をかわすが、そこへロックが現れ、望月先生からゼツボーグを生み出してしまう。プリンセス忍法・火の鳥を受けたディスピアが湯治の為に絶望の森へ一時帰還し、ロックは絶望を集める闇の鍵をディスピアから受け取っていたのであった。
「おまえが関わった者はみーんな不幸になる。ホープキングダムも、プリンス・カナタも。次はこの世界の番かな?」
変身して戦うもロックの揺さぶりを受けて動揺したスカーレットは、ロックに強化されたゼツボーグに追い詰められるが、そこへトワを探していたはるか達が駆けつける。
「そいつと居ると、みんなどんどん不幸になるんだね」
「そんな事、無い!」
正拳突きを放つもロックに弾き飛ばされ、地面に叩きつけられるフローラだったが、駆け寄ったスカーレットに向けて満面の笑みを浮かべてみせる。
「笑おう、スカーレット」
思った通りの笑顔と台詞だったのですが、思った通りで、少々ぞっとしました(^^;
怖いよ、この娘!
「嬉しい事、楽しい事、夢とか、希望とか、そういう、あったかい気持ち、みんなでいっぱい作ろうよ。あいつらに何言われても、笑い飛ばせるぐらい……いっっぱい作ろう。一緒に、強くなろう。ね?」
魔女を恐れぬ強さ、相手を思いやる優しさ、世界に花咲かせる心の美しさ――強く優しく美しく、あらゆる負の感情をより大きな正の感情で呑み込む事で常に笑えるならば、我、なにものにも屈する事なし!
“理想のプリンセス”を目指す事で、はるかがヒーローとして物凄い領域に到達してしまいました(笑)
更にそれを他者にも適用する事で、罪を許すのでもなく許さないのでもなく、己の中の罪悪感を、己の中の幸いで乗り越えろ、と助言しており、ネジの数本抜けた娘だとは思っていましたが、その内、善悪の観念とか簡単に飛び越えそうです。
持って生まれた小市民的良識がストッパーになっているように見えていましたが、思えばそもそも、「犬を飼ったら駄目なら寮のルールを変えたらいいじゃない!」という娘だったので、あれは割と壮大な伏線だったのか……?!
「マーメイド。トゥインクル。そしてフローラ。今までの事、本当にごめんなさい! 今更謝った所で、わたくしの罪は消えません……それでも! わたくしはあの方を、ディスピアに苦しめられる人々を、助けたい。だから、どうかわたくしに、力を貸して下さい!」
一緒に戦わせてほしい、ではなく、私に力を貸せ、な所にナチュラルな女王属性を感じます(笑) 新参者の癖に、上に立つ気満々だ!
スカーレットが参戦して4人となったプリンセスプリキュアはスカーレットのフェニックスでゼツボーグをどりーみんし、望月先生を無事に解放して、ロックは撤退。
少し気になるのは、前回今回と、はるかとトワの関係に集中した結果、みなみときららが完全にはるかに追従する形になってしまった事。今作の特性としては、両者のトワに対するスタンスは早めに描いてほしい所です。
まあ、根本的な所として、“祖国侵略の責任を感じている異世界のお姫様の罪悪感”に対して、当然はるか達が今ひとつリアリティを感じられていない為に対応が軽い、というのはあると思いますが。その辺りのギャップを調整するのかしないのか、というのも気になる所ではあります。
そういう点で、どだい測りきれないものに対して、社会的な善悪の観念を振りかざさなかったのは良かったとは思います(トワの罪を許すとか許さないとか言える立場に誰も居ないので)。お陰で、はるかがだいぶ遠い所へ飛んでいってしまいましたが。
あと個人的にスカーレットには、今作らしさを出す意味でも、罪と贖罪よりも、夢と責任感の持つネガティブ面、をテーマにして欲しいのですが、さて。
スカーレットとの戦闘中、「ロック! いつの間にこんな力を」「さあ、いつからだろうね」と思わせぶりな発言のあったロックは、ディスピア不在の玉座にしれっと座ると、
「楽しくなってきたんだね。さて、それじゃあ僕もそろそろ、本気を出しちゃうんだね」
という台詞と共に、ふぉぉぉぉぉと気合いを入れてパンプアップ! すると、その姿がこまっしゃくれた少年から、バタ臭い美形(例:広瀬匠)に…………!…………ならなかったぁぁぁぁぁぁ。
元のデザインほぼそのままに等身だけを上げた結果、むしろ格好悪くなったよーな(^^; 動いてみないと何ともいえない所はありますが。
登場時から別格扱いされていたロックが、ようやくその理由(の一端?)を見せたのは良かったのですが、さて、ここから面白くなってくれるかどうか。そして、どんどん燃えないゴミに近づいていくシャットの明日はどっちだ。
その後、とうとうトワを寮に監禁、じゃなかった、軟禁、じゃなかった、匿っている件ではるか達は学園長に呼び出しを受けるが、学園長=望月ゆめがトワを学園に誘い、一件落着。……まあそもそも、白金さんから報告を受けた望月先生が意図的にトワと接触したのではありましょうが。
うーん、望月先生って、ノーブル学園設立の資金を手に入れる為に此の世ならざるものと契約を結んでいて、色々と奇矯な要件を満たさないといけない人生なのかもしれない。筆を置いて50年、幻の作家になっていたりとか。