「五代雄介、こういうの知ってるか?」 (EPISODE12「恩師」)
◆EPISODE11「約束」◆ (監督:長石多可男 脚本:荒川稔久)
- 桜のアップから入って枯れた花壇映して、ジャングルジムの間からロングで神崎先生を抜くとか、冒頭から長石多可男すぎて素敵。
- 五代の恩師にして、ちょっと仕事に疲れ気味のベテラン教師・神崎昭二が登場。
- おやっさんの姪っ子、ようやくポレポレに到着。こんなネタに3話がかりという、ある種の粘着質は、高寺プロデューサーぽい感じですが、つくづく良し悪し(^^;
- ハチの回で助けた女の子、長野でジャンの発掘作業のお手伝い。傷心の少女がヒーローに救われて、立ち上がって再び歩き始めた姿を、少し間を置いた上でしっかり描写するという、この辺りは今作の偏執狂めいた部分が良い方向に出た、丁寧な部分。
- 警察では、前回のアジト強襲で手に入れた未確認生命体の遺留品を分析中。いつ見てもあのホワイトボードがホワイトボードすぎて、どうしても笑えます。
- 亀山(鬱陶しい)、再登場。
- 車の排気音に興奮する体質のサイ怪人が暴れ、珍しく茨城出張。
- 神崎先生との約束の場所に向かっていた五代、未確認生命体出現の報に、桜子さんに代理を頼む(笑)
- 「ここではリントの言葉で話せ」と、日本語に堪能になっていく未確認生命体達。
- バラのタトゥの女の、黒・白・赤、という色彩は素晴らしい。
- 工場で暴れるサイを止める五代。今作の優れた所の一つは、怪人による理不尽な惨殺シーンと、それを止めるヒーローのシーン、がバランスよく織り込まれている事で、理不尽な死を阻む存在としてのヒーローの意味性が、基本に忠実かつ丁寧に繰り返されています。
- 近年は惨殺シーンの規制問題などもあり、なかなかバランスを取るのも難しいようですが、今作において何を持ってヒーローなのか、を繰り返し描く事により、タイトルに歌われていれば自動的にヒーローなわけではない、という今作のテーゼも見せています。
- この辺りからテコ入れで井上敏樹の参加など動きが出てくる、という話を聞いた上で見ている影響もあるかとは思いますが、全体的にややテンポアップしている感。
- これにはサイの攻撃が派手めというのもあって、アクションが激しいとストーリー進行上の強弱が強調されやすくなるわけですが、その辺りの入れ方含めてかなり意識的に、演出サイドでテンポを上げていると思われます。……単に私が長石演出と生理的にリズムが合うので、そう見えているだけという可能性もありますが(^^;
- サイ怪人のパワーに苦戦するクウガ。刺さったー?! で続く。
◆EPISODE12「恩師」◆ (監督:長石多可男 脚本:荒川稔久)
- 掴んだー! で回避。起死回生のキックを決めるが倒しきれず、そこへピラニアが乱入して水入り。
- サイに通常のキックが通じなかった五代、自前の技を応用して新必殺技を考えるという、古式ゆかしい特訓編(セルフ)。物語としては神崎先生と繋げつつ、「
19992000の技を持つ男」五代雄介の補強。今見ると思ったより流し気味なのですが、当時、ネタとしてはこれは遊びやすくて良い設定でした。 - サングラスの謎の男から、書類鞄を受け取るバラのタトゥの女。バラのタトゥの女の、“とりあえずコウモリをひっぱたいておく”事でキャラ付け、というのも大胆ですが、演出とキャスティングの勝利。
- 約束の待ち合わせ場所である小学校に辿り着く神崎先生と桜子さんだが、そこは廃校になって取り壊しの準備が始まっていた。諦めて戻ろうとする先生を「この門、乗り越えてみませんか?」と止める桜子。
- ヒーロー物の現状打破を目指した『クウガ』の作品性と、その登場人物達(五代ウィルス感染者)の精神性を現している感じがあって、好きな台詞。
- 潜り込んだ校内で、おじさん教師の悩みを聞かされる桜子さん(笑) 大丈夫、五代くんで慣れているから、大丈夫。桜子さん、たくましい。
- サイ怪人を誘き寄せる為、囮作戦を始めてから、五代に連絡を取る一条さん。
- 「君の方はどうだ?」って、貴方の脳味噌は飾りかーっ!?
- 一条さんの脳の配線は、唐突に断線して怖い。
- 一方廃校では、「2000年までに2000の技を身に付ける」という五代の約束を神崎が思い出し、そんな神崎に桜子がサムズアップを向ける。
- 「これ、知ってますか?」「これは…………これは……」
- 今、遂に明かされる、全ての元凶!
- 「五代雄介、こういうの知ってるか? 古代ローマで、満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草だ。おまえも、これにふさわしい男になれ。お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。でもそんな時こそ、お母さんや、妹の笑顔の為に頑張れる男になれ。いつでも誰かの笑顔の為に頑張れる、凄く素敵な事だと思わないか。先生は……先生は……そう、思う」
- 五代くんが繰り返してきたサムズアップと、「みんなの笑顔を守りたい」という言葉の背景が明かされ、“ヒーローの正義の背景”を、英雄的大義でも、無自覚な大衆の支持にも置かず、個人の軸とする事で、正義の味方と「正義」の意味を再構築しようという、『仮面ライダークウガ』の象徴的なエピソード。
- 子供時代の辛い時に支えとなった言葉が、成長してもそのまま人格の屋台骨になっている、人間ってそういう部分があるよね、という延長線上にヒーロを置く事で、人間性とヒーロー性の融合を図り、個人の体験が「正義」と呼ぶかもしれない何かを支える、というフォーマットを提示する事で、現代に立脚しうる新たなヒーロー像の確立という第1クールの流れを集約。
- 神崎先生の好演もあり、非常に良いシーンとなりました。
- 一方、サイ怪人の元に駆けつけて一条を助けたクウガは、折角都会を離れたので、バイクでモトクロスアクションから、新たに編み出した回転キックでサイを撃破。
- そもそも発注していないのか、本当はあるのだけどオーダーで使用禁止だったのかは知りませんが、今作は戦闘で如何にもな盛り上げBGMが無いのは、演出陣にちょっと苦労が見える所です。主題歌のアレンジっぽい盛り上げBGMが一つありますが、山谷がハッキリしていて、使い所が限られますし。
- 1クール目の締めに、静のシーンの間合い作りと動のシーンとのバランス配分に長ける長石監督でこのエピソードを、というのはかなり狙い済ました綺麗な構成に見えるのですが、果たして計算通りだったのか、色々あった上ではまってくれたのか。