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『百獣戦隊ガオレンジャー』感想28

◆Quest39「神が連れ去る」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希
「そもそも人間に地球を守る資格なんか無いんじゃないの」
突然繰り出される忘れた頃の環境破壊ネタ!
ラセツはガオズロックを飛び出した風太郎と接触すると、ゴミの山からオルグが生まれる姿を見せ、「この千年、星を壊してきたのは人間だ」、とチーム・オルグへの移籍を持ちかける。ガオレンジャーの前にラセツらと一緒に姿を現し、凄まじい念動力を見せつける風太郎……その正体はなんと、ガオゴッドであった!
ナ、ナンダッテーーー?!
「私は、オルグには味方しない。だが、人間に味方する事もしない」
ゴッドはさすがにラセツに取り込まれる事はなかったが、人間との訣別を宣言。
「地球を護る者として、人間を選んだのは間違っていた。ガオの戦士として、人間はふさわしい存在ではない」
急に目覚めたと思ったら好き放題言うだけ言うと、ガオゴッドはガオキングを回収、空の彼方へ消え去ってしまうのだった……。
「神は――人間を、ガオレンジャーを……見限られた」
と、ガオレンジャーは大ショックを受けるのですが、パワーアニマル教団としては神様でも、外から見ると“得体の知れないロボット”でしかないので、物語として効果を期待した程のインパクトには欠けます。
しかも戦力ヒエラルキーとしては、〔ガオゴッド>百鬼丸>ガオハンター+闇狼の邪気〕なので、絶対的な力を持っている、というわけでもありません。
ゴッドの真価は直接戦闘力にはないのかもしれませんが、ロウキの出自の為の設定であった、ゴッド>百鬼丸という戦力ヒエラルキーは、どうも延々と、足を引っ張っている気がします。
これらの要素が相まって、「神」の存在がかえって世界観をパワーアニマル教団の内輪の価値観の中に閉じ込めてしまい、本来は地球規模の筈の物語が、狭い箱庭の中に囲われてしまいました。
後そもそも、ガオレンジャー拉致った一般市民を洗脳し薬漬けにして半強制的に戦わせてきた戦隊なので、「おまえらの戦いに巻き込まれたせいで、可愛い動物たちが傷ついた、ぷんぷん」とか言われても、120%意味不明のキレ方です。気まぐれな超越者の言動といえばまさしくではありますが、人間社会全体はともかく、少なくともガオレンジャーガオゴッドの被害者だと思うのですが。


◆Quest40「天空島、滅ぶ」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希
ゴッドを説得してくる、と亀島へ向かったテトムだが、そこは見渡す限りの荒野と化しており、テトムはショックで引きこもってしまう。
これにより薬物の効果が減退し、覇気を失っていくガオレンジャーだが、人々を見捨てるわけにはいかない、とパワーアニマルの力なしでブリキオルグへと挑む(なお、何故か変身は出来る)。
ブリキに破壊された工場で、瓦礫に挟まれた仲間を見捨てて工員達が我先に逃げ出す姿に、
「見たか、これがお前達が護ろうとしている人間どもの正体だ!」
とラセツが突然言い出すのですが、人間に対する純粋悪意であるオルグにとって“人間どもの正体”も何も無い筈な上に、ガオレンジャー達の精神を揺さぶろうとする意義もあまり見えず(戦力で圧倒的に優位に立っているので)、物凄く意味不明な台詞に。
だが、逃げ出したと思われた工員達は、手に手につっかえ棒などを持って、仲間を助けに戻ってくる。
「見たかラセツ! 今のみんなの姿を!」
ラセツがこれに、悔しそうな反応をするのも、“よくある約束事”でしかなく、今作においては意味不明。
「人間は過ちを犯す。でも、自分が傷付く事も恐れず、子犬を助け、仲間を救いに走るのも人間だ! 人間は、その手で、地球を護る事も出来るんだ!」
そして、物凄い論理の飛躍を見せるガオレッド(笑)
根本的な所では、それを伝えるべき相手はガオゴッドなのですが、終始ラセツがゴッドの代理人を務めるというちぐはぐかつ悪質な展開。ラセツがラセツの思想と関係無い所で、ゴッドの代わりにガオレンジャーの矢面に立たされてダシにされるという、酷い扱いを受けました。
「たとえどんな過ちを冒しても、人間はそれを改める事が出来る。俺は、そんな人間が大好きだ!」
そして、神に見捨てられても戦い続ける、という決意表明として台詞だけ抜き出すと格好いいのですが、色々な作品で度々書くように、こういった台詞は、それまでの物語の積み重ねがあってこそ活きるのであり、今作においてこれまで“過ち”と“それを改める人間”の姿が積み重ねられてきたのかというと、甚だ疑問です。
ヒーローが理想論や希望を語るのは構わないのです(むしろヒーローはその為に居る)。しかし序盤ならともかく、終盤まで話が進んできたら、それを支える中身がここまでの物語の中で描かれていなければなりません。ですが、それが無い。
結果ただ、まとまりのいい台詞を言わせているだけになっており、大きな山場で3クール分の物語をまとめる言葉としては、あまりにも中身が空虚。
その頃、千年の友・ガオゴッドに、現代の人間達と一緒くたにされて落ち込んでいたシルバーは、「やっぱりおまえは千年の友だから、儂と一緒にアニマルパラダイスでいちゃいちゃしないか?」とゴッドから誘いを受けていたが、ブレスから響いてきたレッドの言葉に、自分も今に生きるガオレンジャーの仲間、とゴッドをフって5人の元へ駆けつける。
「みんな、俺もお前達の言う、希望ってやつを信じたくなった」
一匹狼属性のウルフ達も戻ってきて、巨大化したブリキに立ち向かうが、一方的にぼこられるガオハンタージャスティス(役立たず)。だがそこにテトムが復活し、皆のアニマルエネルギーを送る事で青い月の力により、ガオハンターブルームーンにパワーアップ。更にそこに、ガオゴッドも現れるとハンターの戦いに協力する。
「成長したな、シルバー」
なんか言い出した。
ゴッドとハンターブルームーンは、合体攻撃でブリキをガオラオ。ゴッド風太郎は白い服に着替えて7人の前に姿を現し、臨死体験した4人があの世の入り口で出会った謎の少年が、ゴッド風太郎であったと判明する。
「皆、よくぞ悟ったな。人は、過ちも犯すが、正しく導けば、この星を救う素晴らしき力を持つ。それを知ってこそ、戦士としての資格を持つ事ができる。此度の試練、お前達にそれを知ってもらいたかったのだ」
全ては! パワーアニマル教団の信徒が! 新たな階梯に進む為の! 神の試練だったのだ!!
ナ、ナンダッテーーー?!
「つまり、我々パワーアニマル教団こそが、愚かな人間達を正しく導く存在なのだ」
……とは続きませんでしたが、えー、いったい誰が、“正しく導く”のでしょうか。「正しく導けば」部分は無くても成立したと思うのですが、実は今作、自覚的に宗教戦隊やっているのか。
試練を終えたゴッドは天空に消えていき、信仰の力を更に増したガオレンジャー達は、更に強い結束を得るのであった!
えー……あー……色々と問題が多いのですが、特に大きいのが、全体の構成として、ゴッドが風太郎だった意味がほとんど無い。
長々と風太郎を引っ張っていたわけですが、ゴッドが覚醒した途端に風太郎の人格が完全に消滅しているので、覚醒後に風太郎であった要素が全く活用されていません。つまり、32話からの風太郎の存在意味が単なるミステリを引っ張る為だけの道具扱い。例えるなら指紋の無い凶器のナイフや現場の謎の遺留品のような扱いで、仮にも人格を持たせたキャラクターの用い方としては誉められたものではありません。
元々ゴッドが31話の時点から風太郎モードを持っていて、32話以降は全て演技だったとすると、ゴッドが最低すぎますし。
また仮にそうだったとしても、32〜38話の間で“風太郎として見たもの”が、39−40話の展開に活かされてこそ、記憶喪失の少年のフリをしていた意味が物語として出るのですが、それも無かったので、どちらに転んでも、風太郎の意味が無かった(極めて薄かった)事に変わりはありません。
また、39話で風太郎が持ち出した環境破壊などの問題は、現実的な問題であり、ガオレンジャーが地球の命全てを護る戦隊だとすると、現在進行形の問題に対して「後で改めるからいいよね」というのは、実は問いに対する答を全く出しておりません。人間であるガオレンジャー達はともかく、ゴッドまで「過ちも犯すが、正しく導けば、この星を救う素晴らしき力を持つ」と後回しOKで人間中心主義になってしまっており、今作で本来押し出すべきパワーアニマルの要素(自然や動物との繋がり)が吹っ飛んでしまっています。
工場の被害に犬を混ぜて、物凄く強引に動物アピールしましたけど。
未来への希望・可能性を語るなら、それを否定するものに納得させる展開が必要なのですが、ガオレンジャーが何も証明しないまま、ゴッドが「うん、儂も最初から知ってた」と言ってしまう為、そもそもテーマめいて持ち込んだ問題提起自体が、なんちゃってだった事に。これは非常に、物語として不誠実で疑問を感じます。
せめて、これまで拉致から半強制で戦っていたガオレンジャーが、自ら戦う意志を見つめ直して神を乗り越えるというような、戦士としての明確な成長要素が描かれれば良かったのですが、ゴッドの「いや、今までのは試練だったからのっぴょろぴょーん」に皆で納得してしまうので、盲信だけが増しました。そもそもガオレンジャーの5人はゴッドを信仰する理由が非常に薄いのですが(ほとんど会っていないし、助けられたかも微妙)、いつの間にかすっかり取り込まれていて、カルト怖い。