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はじめての『プリキュア』感想23

前回、また話数カウントを間違えていた……。
◆『GO!プリンセスプリキュア』#30◆
ロックが集めた絶望の力で生み出した、天空要塞・大絶望城が、はるか達の世界へ襲来! 極太絶望ビームが放たれるが、それをスカーレットが花火シールドで受け止める!
え? あれ?
いやまあ、幾らゼツボーグによる被害が、戦闘終了後に自然回復する設定にしても、あまり大規模な被害はどうかというのはあったのでしょうが、前回ラストでようやく盛り上がった超兵器の登場が、冒頭であっさり安い扱いにされてしまって、レッドシグナルが激しく明滅。
花火シールドが凄いのか、絶望ビームが凄くないのか、というのは判断の分かれる所ですが、そもそも花火のシールド転用が劇中初めての気がするので、色々と納得しがたい所があります。
もう少し違う形で、最初に大絶望城の威力を見せる工夫は欲しかった所。冒頭でそこに失敗した為に、全体の危機感の不足と、ロックのここまでの活動に与える意味の低下を、招いてしまいました。
既にプリキュア変身不能という危機を与えているので、これ以上はやり過ぎという判断があったのかもしれませんが、ロックがこれまで集めた絶望を利用して生み出した最強最大ゼツボーグの登場でプリキュア史上最大のピンチ! という危機感はもっと煽って良かったと思います。
合わせて、今作の一貫した短所としての悪玉サイドの魅力不足があり、突然の成長期に続いての突然の反乱、というロックの描き方があまりに唐突で感情の流れに欠ける為、善玉サイドとの釣り合いが悪く、プリンセスプリキュアvsロック、という対決の構図そのものが山場としては上手く機能しませんでした。
クローズの「考えろ、考えろ俺……!」や、トワイライトへの愛が憎しみに変わるシャットなど、三銃士にはディスピアの人形から徐々に自我を得ていく、というニュアンスはあるようなのですが、はるか達の描き方が丁寧な分、直接対決した時の格の不足がどうにも否めません(シャットはようやく面白くなってきましたが)。そのギャップを「強大な敵として描く」事で埋める手法もあるのですが、今作はその辺りも上手ではないというのが正直(^^;
スカーレットが外で緑ロックと戦っている間に、パフとアロマの力で城内に潜入したはるか達は玉座の間に辿り着き、囚われのキーの解放に成功。
……私、ここで初めて、プリンセスプリキュアへの変身は基本のキーのみで行え、それ以外のキーは必殺技とフォームチェンジ用である、という変身システムを理解しました(^^; どうして、前回手に入れたキーで変身しないのだろう、と前半ずっと思っていた事を白状します。
遂に変身能力を取り戻すはるか達だが、対する3色ロックは一つに戻ると、巨大カエルドラゴンの本性に変身。3人はその圧倒的な力に追い詰められるが、そこにスカーレットが駆けつけると、またも花火シールドで完全防御…………そういえばカナタ様も魔法のステッキでイケメンシールドを張っていたし、実は防御魔法が得意な血統なのか。
「希望を無くしてはいけません! あなた方はっ、ただキーの力を受け継いだだけでは無い筈です!!」
「そうだよね……このキーには、託された想いと、夢が――それに、たくさんの人達に、助けてもらったり、支えてもらったから、ここまで戦ってこられた」
「あたし達だけじゃ、無理だったよね」
「ええ。みんなの気持ちに応える為に、この先も、歩み続けなければいけない」
ここで、プリキュアの力がただの暴力ではない――それは、みんなの夢を守ろうとする意志と、そんな彼女たちの夢を応援する意志とのポジティブな繋がりによって成立しており、プリンセスプリキュアの戦いもまた、彼女達だけの戦いではないのだ――、と“正義の背景”を互いに補完し合う繋がりとしてまとめてきました。
「みんなの想いと一緒に!」「この手で!」「この足で!」「未来を切り拓く!」
「それが――私達の力!!」
反撃に転じた4人の、カエルを取り囲んでの連続攻撃は格好良かったです。……特にスカーレットは普段の大技のCGが微妙なので(^^;
「ほんとにもう……うるさい奴等だなぁぁ! みんなとか、想いとか、どうでもいいんだよぉ! 僕はぁ!」
「「「「私達はっっ」」」」」
「王になる!」
「「「「絶対に負けない!!!!」」」」
プリキュアの力の背景を踏まえる形で、孤独な王であるロックの絶望と、皆の心の繋がりであるプリンセスプリキュアの希望の対比を念押しで入れているのですが、上述したようにロックの積み重ねが不足しているので、あまり効果的には機能しませんでした。
また、どういうわけか戦いの舞台を、キュアフローラvsブラックプリンセス(トワイライト)の時と似た場所(城内)に設定しているのですが、これはどうしても、対決の構図が上手く行っていたフローラvsトワイライトの戦闘と比べてしまう為、二重に悪く、大きな失敗だったと思います。
プリキュア達とカエルの攻撃が衝突した瞬間、16のキーが反応。突如として絶望城が消滅し、宙に浮かんだ4人の手元に、光輝く小さな城が現れる。
……商業的な事情で割り切ってはいるのでしょうが(例えばスカーレットのバイオリンも、弦としてのリアリティを放棄して玩具に準拠したデザインですし)、激しい戦闘の末に出現したニューアイテムが、あまりにも玩具玩具しているのは、フィクションの幻想性を著しく傷つけるのではないか、というのは気になる所(^^; まあこういうのは、主要な市場層にとってその方が嬉しいなら、それが正解なのだとは思いますが。
4人がサクラ、サンゴ、ギンガ、サン、4つのキーをお城に差すと、新たな力がその身に宿り、プリキュアはドレスアップ・プレミアム。白くテカテカしたドレス姿になった4人は、プリンセスパレス空間を展開し、カエルドラゴンの動きを封じると、最大エネルギーを放出する!
「「「「響け! 全ての力!! プリキュア・エクラエスポワーーール!!!」」」」
――プリキュア・エクラエスポワールは、桜、珊瑚、銀河、太陽、の四大エネルギーを、一瞬の内に、相手の体内に注入して、爆発させる、恐るべき、必殺武器なのだ。
プリキュアァ・コバック!
な感じで、抵抗を許されずにカエルドラゴンは昇天。吹っ飛んだロック本体は森の中に転がり、思わせぶりな黒い鳥はパーカーから絶望エネルギーを回収すると飛び去っていく……。大きな危機を乗り越えたプリキュアは、必殺アイテム・プリンセスパレスを入手するのであった。
総じて、綺麗にはまとめたけど、やや盛り上がり不足。大絶望城がさして役に立たない、変身できなくてピンチは前回やった、ロックの積み重ねが足りない……と、危機感や絶望感を増させる為の仕掛けが、もう一つ機能しませんでした。そしてその、押さえつける力が足りないと、逆転のカタルシスというジャンプ力も不足してしまいます。
中盤の山場という事で、どこまで追い詰めてどこまで盛り上げるかの計算が難しかった部分もあるかもしれませんが、そういう時は、「え? ここでこれだけ盛り上げてしまって、終盤どうするの??」ぐらいのものを、見せていただきたい(笑)
山とは、受け手の浅はかな憂慮を乗り越える為にあると思うのです。
完全破壊されずに森の中に転がったロックは、意識があるような描写のあったパーカーだけ消滅したので、悪いのは衣装だったという事にされるのか。人間社会に放置されると、金無し・宿無し・戸籍無しですが、果たして生き残る事が出来るのか?
そして今頃、ホープキングダムで寂しく野宿中のシャットは屋根のある生活に戻る事が出来るのか?!
次回まさかの、あいつが虚ろな瞳で復活。