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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第38話&39話

うーん、一気に続けて見て感想のギアが上がってきたところで、なんだか悪い回にぶつかった気がする……(^^;
◆忍びの38「魔女っ子は八雲がお好き?」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:毛利亘宏)
前回の今回で、雑誌見ながら忍者成人式の話題でスタート……まあ、業界紙なんでしょうが。
その頃、本日の買い出し当番だったらしい八雲は、魔法学園の校長先生の娘で、学園で共に魔法を学んでいた魔女っ娘エレナと再会する。なかなかイギリスに帰ってこない八雲が気になって一人で日本に来てしまったというエレナ(小学生ぐらい)。
「ね、魔法戦隊の仲間、紹介して」
「え?」
クラウド、リーダーやってるって、手紙に書いてくれたでしょ」
君はやっぱり、そういう路線なのか。
慌てて居間を魔法戦隊風に改造した八雲は、エレナに4人を魔法使いだと紹介。「理由は云えない。聞かないでくれ」と詳しい事情には口をつぐみながら、エレナが帰国するまでは魔法使いとして振る舞ってほしいと頼み込む……。
ここでいきなり、霞ねえが八雲の胸ぐらをむんずと掴んでストレートに怒っているのが、かなり意味不明。
……いや、毛利さん的に、霞が「魔法使い扱いをされた事」ではなく、「八雲が幼女を連れ込んだ事」に反応している、というのはわかるのですが、あくまで毛利脚本基準で、物語全体の描写としての一貫性が薄いので、非常にわかりづらい事になっています。
以前からうっすら気になってはいたのですが(近い回だと、ハチ女に煽られた時に霞が少し動揺するシーンがある)、冒頭で「一緒に成人式」がちょっと嬉しそうだったりなど、今回通して見て、毛利さんの中では桃→青がやりたいというのが、確定(今回は渡辺監督、ハチ回は竹本監督、芝刈り回は加藤監督なので、演出ではなく脚本繋がり)。
……なのですが、本当に毛利さんの中だけ設定の疑惑があり、会話はもとより、演出も役者もどのシーンでどこまで感情を見せればいいのかがハッキリしていない様子で、1エピソードの中ですら描写が安定していません。
更に、ラブコメ要素を入れるなら最低限、それによってキャラクターを可愛く見せてこそ意味があると思うのですが、演出的にもそこを凄く曖昧にしている為、霞の可愛げアップに全く繋がっておらず、さりとて話の流れに影響をもたらすわけでなく、何もかも中途半端。
今作全体の、この期に及んで腰が据わっていない感じと非常に悪い化学反応を起こしており、演出にしろ脚本にしろ、キャラクターの魅力が引き出せないなら、何の意味があって入れている要素なのか。
驚くほど、誰のプラスにもなっていません。
この後、4人は八雲の頼みを聞いて忍法を魔法に見せかけたり、そこへキンジが山から帰ってきて一騒動あったり(なお、エレナが一人足りない事を疑問に思っている様子が無いので、多分キンジの存在は手紙に書かれていない)とドタバタの後、八雲とエレナのデートタイム。
キャストクレジットで扱いが大きかったり、着替えまでありで割と長めの尺でしたが、有名子役だったりしたのでしょうか。
で、前回も触れましたが最近の天晴は、みんなの力を引き出す俺ポジションが気に入ったのか「○○がそこまで言うなら、俺はやるぜ!」みたいな扱いが多いですが、“大抵の物事を相手に合わせて処理していたら、本人のこだわりが雲散霧消してしまった”という非常に困った事態に。
第2話の頃だったら、
「ばっか、俺が魔法使いとかふざけんな! 八雲もガキんちょも爺ちゃんに対して失礼だぞ。おまえら謝れ。爺ちゃんに土下座して謝れ! 謝らないならこうだ。上級手裏剣忍法・蓑踊りの術!!」
『火の術ー 木の術ー メラメラギャー』
だったと思うのですが。
……いや、これはこれで悪い例で、八雲の事情を汲み取って配慮できるように成長したとは言えるのですが、物語の積み重ねからすれば天晴から「ニンジャへのこだわり」を除いたら筋肉しか残らないわけです。本来、八雲からの魔法使い扱いに怒るのも、空気読まずに忍者衣装で姿を見せるのも天晴の仕事であって、そのリアクションをやった上で、八雲の言い分を聞いて敢えて自分を曲げる、というのならわかるのですが、物語の都合に合わせて最初から軸を曲げて待ち構えている為、すっかりキャラクターの芯がどこかへ行ってしまいました。
その後、妖怪カミキリが現れ、エレナの目を誤魔化す為に魔法戦隊風に変身した6人だが、戦闘中に八雲が魔法の杖を、天晴が忍者一番刀をちょっきんされ、更にエレナがさらわれてしまう。エレナの身柄と全員の変身手裏剣の交換を迫られた八雲は、仲間に迷惑をかけずにエレナを救う為、深夜こっそり家を出ようとするが、それを止める仲間達。
そもそも、変に誤魔化そうとしたからこんな事になったのでは……と追求された八雲は重い口を開き、魔法学校時代、ともに修行していたエレナから「立派な魔法使いになったらお嫁さんになってあげる」という手紙を貰った事、エレナの気持ちを守る為に、日本に帰って魔法使いではなくニンジャをやっている事を秘密にしておきたかったのだと告白。子供の話だから重く捉えなくてもいいのではと霞が口にするが、
「だがイギリス紳士として! レディからのプロポーズを、無視する事はできない……」
加藤・クラウド・八雲、38話にして、紳士というか、ただのバカに。
いやこれ、普段から連発していればギャグとして成立するのですが、八雲の「イギリス人」ネタが、毛利脚本回だけ(しかも芝刈り機の時だけ)しか使っていない為、全くギャグになっておらず、そして本気なら頭が悪すぎて手遅れ、という状況に。
加えて、百歩譲ってプロポーズの件は言い出しにくかったにしても、それなら本人だけ誤魔化して残りの4人はニンジャでも何の問題も無かった筈なのですが、手紙で魔法戦隊のリーダーなどを自称した為により状況がややこしくなった、という真相に関してはだんまりを決め込んでおり、いっけん八雲に正統な理由があったように見せて、実は全く正反対。
ギャグでもなく、八雲がバカでも無いのだとしたら、本当に問題のある部分を自らネタを放って目くらましをしたという事になり、物凄く悪質。
というわけでギャグが成立していない以上、無難に収める為には、八雲の脳と心は残念を通り越して手遅れ、という結論にならざるを得ません。
毛利さんや渡辺監督だけの責任ではなく、『ニンニンジャー』全体の抱える縦横の連携不足、という問題点が、ここに来て大噴火。今作、基本的に個々のエピソードによる積み上げが不足している上に、
1+2+3+4+5=15
ではなく、
1+2+3+4+5=
といった具合で、それまで描いてきた事を集約しようとすると、大抵斜め下にズレた頓珍漢な結論に着地する為に山場回が軒並み盛り上がらない(キンジに関しては、正直思考放棄レベル)というのがもはや特徴といえます。
その中で、毛利さんはまだしもネタの連動性を意識した脚本を書いているのですが、それが下山回でほとんど拾われない為にかえって仇となり、演出も演者も煮詰められない、たまに出てくる妙な(と言わざるを得ない)設定が、インターバルなど無かったかのように当然の背景扱いを受けるという、非常に困った状況が発生。
監督とは脚本会議やっている筈ですし、毛利さんと下山さんが全く打ち合わせをしていないともさすがに思えず、それらを統轄する為にプロデューサーなどが居る筈なのですが、どうしてこうなっているのか。
序盤からとかく、伏線の張り方や回収が上手くない作品でしたが、“設定に縛られすぎない自由”ではなく、単に“設定を大事にしない”作品になってしまっています。
八雲の告白に、「女の子の夢を大事にするって素晴らしい!」と乙女回路に火がついた白が突然盛り上がり、こいつもう駄目だ……と顔を見合わせる桃黄金、そこから強引にいい話にまとめようとする赤。
八雲を止める時に一番最後に出てきたり、プロボーズの手紙について「子供の話」と訴えたり、桃→青を匂わせる描写を補強しておきながら、ここで霞が凪やキンジと同じラインに下がって埋没してしまい、何の為に匂わせているのか、全く以て意味不明。3人の表情も、最大限好意的に解釈して「困ったな……」なのですが、演出も演者も困惑していて話の流れと人物の表情とその後の展開が全て噛み合っておらず、あまりにちぐはぐで笑えてくるという、悪い意味でここが一番面白かったです。
そしてそんな表向きいいシーンの筈なのに、八雲の頬に黄色っぽい粉(多分、髪を染める粉)がついていて、凄く、気になります。
翌日、5人から変身手裏剣を受け取った八雲は、色とりどりの布を身につけ、単身、呼び出しの場所へ。手裏剣を渡すも足軽兵の待ち伏せを受けるが、実は身につけていたバンダナやマフラーが魔法で変身させた仲間達だった! で反撃し、手裏剣を取り返すと、エレナを助け出して反撃スタート。
「ちょっと、天晴坊ちゃん、これを使ってくださいやし!」
天晴の一番刀が切られたままなのを変身前にわざわざ強調したのは、元妖刀の為か。……まあ、特に活用はされないのですが。そしてポンチョに関しては、存在などしなかったようにスルー。
ニンニンジャーの戦いを見守るエレナの元へ、エレナを迎えにイギリスからやってきた、小津翼(30前後)が登場。てっきり校長先生(エレナの父親)だと思っていたのですが、使いっ走りの臨時講師でした。師匠にあたる翼の登場にハッスルした八雲は電撃の魔法忍法をカミキリに炸裂させ、その腕に生じる超絶ブレス。
「なかなかやるじゃねえか、一緒に行くぜぇ」
「やるか」
で青は超絶アオへと変身し、
「クールに熱いぜぇ!!」
……あ、『デカ』ネタ入った(笑)
戦隊史における残念クール気取りの系譜として、小津翼さん(30)の先代にあたる、「Supercool(笑)でPerfect(笑)」で有名なホージーさんゆかりの『デカレンジャー』のキャッチフレーズに似た台詞が入ったのは、意図的だと思って良いのでしょうか。
それはそれとして、第22話(ヌリカベ回)の時に、獅子王に認められた上で「今はまだ、タカにぃに託してやる。俺達はちゃんと、タカにぃを乗り越えた時に使う」と理由をつけて超絶化を断ったのに、今回勢いで変身してしまうという、物凄い台無し展開。毛利さんは毛利さんで、下山回を木っ端微塵に踏みつけにしてきましたが、本合わせではいったい何を打ち合わせているのでしょうか。
マジカル手裏剣斬で両断されたカミキリは巨大化し、対するニンニンジャーは最初から激熱ハオーを召喚。……まあクリスマス回の辺りでしれっと復活しそうですが、シュリケンジンは本当にプレスされてしまったのか。超絶化でテンション高いアオ(そんな設定でしたっけ?)の指揮の下、ニンニンジャーは一気にカミキリを粉砕するのであった。
ところで、誰かがアップになる(目立つ)と、誰かが背中になる(消える)、という激熱コックピットは、作品そのものに対する皮肉という気がしてきました。深い。
「大した事は教えてねえよ。強いて言えば、勇気が大事ってことぐらいか」
戦い終わり、八雲から皆に紹介を受けた翼は、魔法であっさりと杖と一番刀を修復。八雲が何故、残念クール気取りを通り越して可哀想な子になったのかは、先生の責任だった、という事で深く納得できましたが、出番の量も含め、正直、無駄コラボ。
東映ユニバースは基本的に世界の境界線が緩い、というのはわかった上で、個人的にTVシリーズにおける過去作とのコラボは麻薬みたいなもので、なるべくやらない方が無難だと思っているのですが、今作これまでのコラボ2回が「忍者」繋がりという事でギリギリ納得できたのに比べると、『魔法戦隊マジレンジャー』10周年という要素はあったにしても、安易に世界を繋げてしまった気がします。
コラボというより、パロディ込みのサービストラックと受け止めるべきかもしれませんが、それなら予告では隠しておけば良かったのに、と思うところ。
今は魔法忍者としての戦いがあり、しばらくイギリスには戻れないとエレナに伝え、手紙の話をする八雲だが……
「でも、ごめんね。私、ボーイフレンド出来たから、クラウドと結婚してあげられないの」
「え?!」
という、定番のオチ。
ここでエレナが八雲の頬にキスした時に背後で霞が愕然とした顔をしているのですが、周囲がそれにリアクションを示すわけでもなく(要するに周囲が認識して良いのか決めていないので描けないのだと思われます)、その後はオチのギャグに紛れてしまうので、だから何をどうしたいのか。
いやこれ、1クール目、せいぜい2クール目までなら、使うか使わないかわからない布石として有りですが、もう3クール目も終わりの時期の描写としては、作品としてあまりに酷いし拙い。
しかも、少女からほっぺにちゅー程度のアプローチでも動揺するのに、途中では場を取り繕う為に笑顔で二人をデートに送り出しており、この1エピソードの中ですら描写を一貫させる事ができず、だから何をどうしたいのか。
覚悟を決めて、エレナを交えた青×桃エピソードにしてしまえばまだ良かったと思うのですが、何から何まで中途半端で、そしてそれが、このエピソードだけの問題ではなく『ニンニンジャー』全体の作劇・構成・スタッフワークの問題と思えるのが、非常に厳しい。
個々の設定を大事にしない為に様々な部分の連動性が低い、描写の一貫性が薄いのでキャラクターに与えた要素が分離・分裂している、感情の積み重ねが弱いので仕草や表情に意味を乗せた芝居が出来ない、結果として、38話にもなって実に意図せずちぐはぐなやり取りが展開するという、物語とは別の部分で、今作の悪い所が濃縮されて噴き出してしまったエピソード。
一方その頃牙鬼一味では、前回今回と奥方が苦しんでいたのは産気づいていた為だと判明し、まさかの若君誕生。…………えー……この時期の新幹部投入は、下手するとクリスマスの生け贄で終了する可能性も頭をよぎりますが、果たして若君は初日の出を無事に拝む事が出来るのか?!
次回、「最強ニンジャ霞、ついに敗北!?」
と煽りに書かれ、相変わらず、メタにラスボス扱いを受ける邪悪策士であった。


◆忍びの39「牙鬼の息子、萬月あらわる!」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
牙鬼幻月の息子・牙鬼萬月が現れ、子供達からおやつ狩りを行って暴れ回る。大口叩いて威勢は良いが腕はからっきしの萬月と、側に仕える強力な足軽親衛隊を分断する為、ニンニンジャーは霞発案のティーパーティー作戦を決行。まんまと罠にはまったと思われた萬月だが、実は真の力を隠してうつけを装っていたのであり、圧倒的な力で白と桃を粉砕。その目的は、父・幻月を復活させる為に、ニンジャの恐れを集める事にあった――!
ティーパーティー作戦が、こんな作戦にしましょう……というイメージシーンのような導入で始まり、作戦の映像とその内容説明を交互に挟んで展開する為、いつの間にか作戦が実際に進行中で内容説明は回想シーンになっている事がピンと来ず、その切り替えに戸惑っている内にあれよあれよと事態が進行してしまい、物凄く置き去りにされてしまいました(^^;
まあこれに関しては私の勘違いが悪いですし、最後まで見ると、前半の“霞が一人で考えた作戦”と後半の“みんなで考えた作戦”を対比して見せる意図だったというのはわかるのですが、これから詳細を説明しますという居間でのシーンから場面切り替わった時に作戦説明をナレーションで被せてしまい(この為、居間でのシーンの延長上だと錯覚)、謎の庭園と中途半端なコスプレに、そこにいきなり現れる萬月という流れが如何にも脳内イメージシーンすぎて、もう少しわかりやく切り替えても良かったような。
その上で、実は強かった萬月、頭悪い奴は騙しやすいぜ発言、で強引に引きずり落とされる霞、という展開自体が全く面白くなく、前半あまりに邪悪無双させすぎた霞をどうも持て余し気味な気配も伝わってきます(^^;
爺ちゃんに「策士策に溺れる」と言わせてそれらしくしていますが、霞の心理的陥穽を描くならば、霞だからこそ油断した、という状況設定をしてこそなのに全くそういう仕掛けが無い為、本当に、ただ油断していただけという事に。霞をここまで一種の最強キャラと描いていたからこそ、敗北をさせるにはそれなりの段取りが必要なわけですが、それが無い為、物語の積み重ねに対して不誠実。
で、霞が「全く油断していなかった」にも関わらず萬月の力が「それを上回っていた」のなら、霞の敗北と萬月の凶悪さがコントラストになって互いに引き立つのですが、敗北直後に霞が「相手を認める」のではなく「自分の慢心を戒めてしまう」為、どちらも引き立たない、という底なし沼。
一応、本気の萬月は超絶アカよりも強い、というアピールも入っているのですが、物語の流れ自体は霞敗北に焦点を合わせているので完全に刺身のツマな上に、超絶先日、御家老に負けたばかりという蟻地獄。
そしてこの後、仲間達がそれぞれ霞を励ますのですが、ここで、今作における根幹的な問題が改めて浮上。
やはり、
「恐れるべからず、悩むべからず、侮るべからず」って、根本的におかしい。
敵を「恐れない」されど「侮らない」、はまあ納得できる範囲ではあるのですが、色々ここまで言葉を駆使してきたものの、そこに「悩まない」がどうにも繋がりません(^^; 特に今作は明確に“未熟な若者達”の物語であり、例えば今回に限っても、ほんの数秒前に霞の敗北はそういう要素の一貫として処理されたばかりなのに、直後に「悩むな」と持ち出されると、「考えるな」と言っているようにしか聞こえません(^^;
「悩む」をここまでネガティブに扱って否定する必要はなかったと思うのですが、結局、爺ちゃんの悔恨に孫達が振り回されているというタチの悪い構図のような。
「心に、刻むが良い。優れたニンジャほど、侮り、恐れ、悩みやすいもの。故に…………修行には、果てがない」
これは、霞を諭しているようで爺ちゃんの反省というニュアンスを汲み取っていいのかもしれませんが、ここで爺ちゃんが言う「悩むな」は、力を持つが故の悩みが心の隙を生むので気をつけろ的な感じで、この後に八雲が言う「悩むな」は、気に病んで閉じこもりすぎるな的な感じで、一つの言葉が複数の意味を持つのは別に構わないのですが、それにしてもフレキシブルすぎてまとまりが悪い、という凄く今作の悪い部分がまた出ています。
それぞれの励ましで霞も前を向き、皆で対萬月の作戦を考える事で、改めてチームワークを強調しつつ「悩むな」と「考えない」は別である、というアピールも入れているのですが、作品として“忍タリティの体現者”である天晴が、イケイケドンドンの人なので、説得力は無し(^^;
更に悪いに事に天晴が「霞が「行け」っていったら行くし、「突っ込め」って言ったら突っ込むぜ」と言ってしまい、霞に対する信頼と信認の言葉ではあるのですが、最近の天晴さんは、いっけん“他者を尊重している”ようで、実は“自分が消えている”だけなので、それはもう、ただのマシーンだよ、タカ兄!
そして“みんなで考えた作戦”が、霞を囮にして相手が油断した所を、攻撃力の高い二人(赤と星)が背後から不意打ちするというのは、久々に殺伐ニンジャファミリーの闇が噴出して良い意味で今作らしかったのですが、肝心の萬月の強敵アピールが不足しているので、主題歌フルコーラスまでした割には、もう一つ盛り上がらず。
なんというか萬月、ちょっと元気な蛾眉さん程度のインパクトですし。
ライオンブレスを借りつつ、センス的に許せない、と超絶は拒否した桃(ここは良かった)は、キンジから元妖刀を借りて超絶妖刀乱れ斬り。更に全員連続攻撃を被せ、必殺技、更に必殺技、と萬月の戦闘力というか生命力はアピール。自力で巨大化までしてしまい、初日の出どころかクリスマスも拝めない可能性を危惧された若君だが、さすがに撤退。ニンニンジャーは残ったガシャドクロを粉砕してひとまず一件落着するが、霞はどこかスッキリしない表情をするのであった……。
新幹部が登場し、霞に壁を見せるイベントと絡める事で「霞を負かす事で新幹部のインパクトを増す」という発想はわかるのですが、この場合重要なのは、「霞が負ける」事ではなく「霞が如何に負けるか」であるのに、そこが抜け落ちてしまった為に、萬月のインパクトを押し出す事に失敗。その為に、続く展開が全て土台不足になってしまうという、典型的な、机上の字面だけで展開したエピソードになってしまいました。
で、前回あれだけやって、霞メイン回で、毛利さん連投にもかかわらず、桃→青を匂わせる要素は一切なしで、だから一体何がしたいのか。例えば霞を励ますシーンで、最後に霞を微笑ませるのが八雲、とでもすればだいぶ違うのに、そこは天晴のギャグにしてしまいますし。なんだか、キンジのみならず作品全体が人格分裂しているような感じに。
まあ次回も少し霞の話を引くようなので、そこでもう少し何とかするかもしれませんが。
いよいよ、クリスマス商戦を超えて年が明けたら最終決戦というシークエンスに突入した『ニンニンジャー』ですが、今作これまで、まだ前半(中盤)だから……と許されていた問題点が、すべからく何も解決しないまま終盤を迎えてしまい、物語が収束していくのに合わせて全ての膿が盛大に噴き出すという、珍しいカタストロフのパターンを迎えている気がします。
次回、若君と狐が絡むのは、面白く広げられそうな気配があるので、どうにかしてほしい。