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『侍戦隊シンケンジャーvsゴーオンジャー銀幕BANG!!』

近所のレンタル屋に入荷していたので、つい借りてみました。
見所は、ノースリーブだったりサラし巻きだったり、やたら肌色をアピールする源太。……源太、何と戦っているのだ、源太。姐さんの稀少なスカート姿が霞む勢いだよ源太!
どだい約1時間で13人を動かすのは無理があるので、『ゴーオンジャー』の世界設定を活かして各自をバラバラの世界に分け、殿と走輔を中心に進行するのですが、何故か最初から最後まで目立ち続ける流ノ介。……つくづく便利だ、流ノ介。
そしてボンパーさんの出番が多い。
前作のラストより1年弱――ガンマンワールドにおいて蛮鬼族の害統領バッチードを追い詰めていたゴーオンジャーだが、決闘に敗れ、様々な次元にバラバラに飛ばされてしまう……と、策略によるとはいえ最強無敵の磨り潰しロボ・炎神王G12敗北、でバッチードの強さを見せる所からスタート。
そこから焦点はシンケンジャーへと移り、人々の悲鳴に出陣したシンケンジャー、ウガッツと遭遇してとりあえず戦っていると、そこへ現れる見たことの無い真っ赤なヒーロー。
「おまえ、なんなんだ」
「正義の味方さ! 俺は、マッハ全開! ゴーオンレッド! の江角走輔だ。よろしくな」
同じ“戦隊”ではあるものの、片や 悪魔 炎神と契約した、庶民派正義の味方、片や先祖代々の使命に生きる侍達、とスタンスの違いから両者の間に流れる冷たい空気。そこへボンパーさんが飛んできて、とりあえず屋敷に戻って事情を聞く事に……と、こういう時、マスコット型は存在そのものが説得力になって便利。
あらゆる世界を汚染しようとするバッチードの存在と、仲間達がバラバラになってしまった事を説明するボンパーと走輔。
「正義の味方同士一緒に戦って、マッハで解決しようぜぇ!」
「……一緒に戦うつもりはない」
だが殿は、この、事あるごとにバン! バン! うるさい男と一緒に動くのが面倒くさくなっていた。
「素人と一緒に戦うのは、どっちにとっても危険だ」
派手で目立つ動きばかりで連携のれの字もない走輔を「素人」と断じる殿。この物言いに、走輔も高い所でふんぞり返っている殿を批判し、2人は喧嘩別れ。走輔はボンパーを連れて屋敷を出て行くが、シンケンジャーシンケンジャーでバッチードの動きを気にする事に。
「ま、それもそうだな……」
「なんだ」
「なんであーいう言い方するかね〜」
「ホント。初めての人ほどそうなんだよね〜。悪い癖っていうか」
そして家臣団から、一斉にただの人見知り扱いを受ける殿。
……久々に見ると、ホント面倒くさいな殿!
「プロ/素人」という『ゴーオンジャー』本編でも用いた言葉をキーワードにしつつ、『シンケンジャー』見ていると慣れてきがちだけど、「殿っておかしいよね殿って!」と改めてゴーオン側からツッコませ、二つの戦隊の特性を対比しながら展開。この辺り、ド正道を行ったゴーオンと、獣道を行くシンケンという、二つの戦隊のスタイルの差を上手く盛り込みました。
その頃、三途の川を訪れていたバッチードが、あらゆるワールドを汚染するバッチリウムプラントのエネルギー源として三途の川を使いたいと持ちかけ、外道衆と同盟を締結。手駒としてアヤカシ・ホムラコギを配下に借りると、更に三途の川の底に居る筈の“もう3人”を部下にしようとする……。
ガイアークに関係する3人といえば……そう、ヨゴシュタイン・キタネイダス・ケガレシア、復活……そして飲酒!
「冗談ではないゾヨ。いまさらバッチードの手伝いとは」
「全くナリ。せっかく三途の川で汚く気持ち良く暮らしていたというのに。ねえケガちゃん」
「そうじゃそうじゃ、行く必要ないでおじゃるよ」
感動の最期を台無しに、三途の川から甦った3大臣は、さっそくゴールド寿司でぐだっていた。
もはや、活動家としての志も失ったのか(笑)
そこへバッチードとウガッツがやってくるが、
「なんだか知らねえが、うちの客に手出しはさせねぇ!」
とゴールドが変身し、3大臣はその間に、逃亡(笑)
酷い、酷すぎるけど、確かに3大臣だ……!
そこへゴーオンレッドとシンケンジャーも駆けつけるが、強敵バッチードに7人は苦戦。レッド2人をかばって5人が別の次元に飛ばされてしまい、レッド2人は海落ち。そして彦馬とボンパーが、ホムラコギによって捕らえられてしまうのであった。
「おまえかなり信用されてるんだな。あいつら、一瞬も迷わずに、おまえの事……。ただふんぞり返って偉そうにしてるだけの殿様だったら、ああはならねぇ。おまえがそうじゃねえんだって事、よくわかったぜ」
「俺もわかった」
「お!?」
「おまえはやっぱり素人だ」
「おまえな、そこは、見直したって言うべきとこだぞ。空気読めよ」
「ただ――この世を護るのに、侍も素人もない。おまえの気持ちは本物だし、本物は……強い」
先に出た「プロ/素人」が『ゴーオン』の一つのキーだとすると(まあ、走輔は、“それを気にしない男”なのですが)、この「本物」というのは『シンケンジャー』における大きなキーワードで、殿が走輔を「偽物(素人)だけど本物」と認めるというのは、本編を考えると、重い言葉。
ヒューマンワールドに残ったレッド2人がここでお互いを認め合い、その頃、各ワールドに飛ばされた仲間達は……
〔クリスマスワールド:茉子、源太、大翔、美羽〕
〔サムライワールド:千明、ことは、連、軍兵〕
〔ジャンクワールド:流ノ介、早輝、範人〕
という割り振りで、それぞれ出会って、トラブルに巻き込まれて、とドタバタ展開。細かくやっていられないので、とにかく出会う、ドタバタで楽しませる、という事に割り切っており、ギャグ要員とヒロインパワーが活躍。その為、ギャグ要員でもヒロインでもない面々(大翔、連、早輝、範人)の存在感が微妙ですが、これはもう、致し方ない所か。
……早輝よりも流ノ介の方がヒロイン力が高かったのは事故です。
というか早輝と範人は他の面々より1シーン少ないのですが、スケジュールの問題でもあったのか。その分、合流後の戦闘シーンではやや台詞が多いですが。
なお、茉子と美羽が凄いスピードで意気投合しているのは、何か、深く頷ける所です。
仲間達が3つの世界でドタバタしている頃、彦馬とボンパーを人質に取られた赤2人は、呼び出しの場所へと向かう。人質を盾に無抵抗を要求されるが、さくっと剣を抜く殿。
「やめろ! 丈瑠、今はあいつらの言う通りにするんだ!」
「だからおまえは素人なんだ」
黙って殺されても人質は助からないし、世界は汚染されるだけ……と刀を振るう殿だが走輔はそれを止めようとして遂に変身。
「俺は人質を助ける。ボンパー達の命も救えねえのに、世界を救う事なんて出来ねえからな!」
2人の対立は遂にレッド対決へと発展し、激しい戦いの末にまさかの相打ち! ……と思われたが、それは2人の作戦通りであった。油断した敵の目が逸れた隙に獅子折神が人質を救い出し、彦馬が格闘を披露してボンパーと共に脱出に成功。
まあ仕込みだろうな……とわかってはいつつも、走輔ならそのぐらいの本末転倒はやりかねないかもしれない、という辺りは、直情径行型の走輔と、割とクールで万能型(一部に致命的な不具合あり)の丈瑠、の違いで上手く話を組みました。相打ち偽装のトリックが、冒頭のバッチードの策略の意趣返しだったり、走輔のコインを小道具に使っていたりというのは丁寧。
……そして、凄く雑に、炎神に助けられてヒューマンワールドに帰還する仲間達!
一応、炎神達が手分けして様々な次元に飛ばされたメンバーを探している、というシーンは挟まれているのですが、各ワールドでのドタバタをどう処理するのかと思ったら、炎神によって救出された事になり省略されるという、まさかの裏技。
各ワールドでのトラブルはそもそも解決シーンを描くつもりが無かった(撮影段階では、炎神に拾われるシーンぐらいはあったのかもしれませんが)、というのは作りとしては好みではありませんが、尺の問題と炎神の存在意義を、まとめて解決しました(笑)
かくして決戦の場に集った総勢13名が、お約束の名乗りで揃い踏み。
本編に無かったから仕方がないのですが、この期に及んで、「ゴーオンジャー!」と「ゴーオンウィングス!」が別々な事に、世間の冷たい格差を感じずにはいられません。
シンケンジャーゴーオンジャー&ゴーオンウィングスvsバッチード軍団&レンタル外道衆の大クライマックスバトルは、各ワールドでの振り分けに基づいて分割戦闘。
戦闘は一画面に人数多すぎてもあまり面白くならないので分割は妥当なのですが、もしかしたらそもそも各ワールドでのキャラクターの組み合わせは、戦闘における中の人の都合を考慮していたりもしたのでしょうか。
ここまで出番の無かったアルバイトコンビ(十臓・太夫)は潔く出てこないのかと思ったら、アクマロと一緒に戦いに乱入しようとして天装戦隊ゴセイジャーに阻まれるという、ゲストの踏み台要員。ゴセイジャーにゲスト補正があるとはいえ、3人まとめて正面から力負けして撤退しており、酷い役回り(^^; こういうのはまあ、割り切るしかない所でありましょうが。
ダブルレッドはウガッツバイクにナナシがまたがったアパッチ軍団に立ち向かい、モヂカラで作り出した車をゴーオンレッドが操るというのは、走輔のスキル《運転》が活かされました。…………が、よくよく考えると“殿と運転手”という構図になっている所に、世間の冷たい格差を感じずにはいられません。
主な栄養源が卵の戦隊と、寿司とか普通の戦隊の間に横たわる、暗くて深い断絶を改めて感じます。
運転手の操る車に乗りながらシンケンレッドはアパッチ軍団を切り払い、バイク変形に失敗してナナシを背負って運ぶというギャグ要員の騎馬隊も、逃げようとした背中から容赦なく斬るのが、凄く殿。
爆走モードに変形したホムラコギは、殿がゴーオン銃を借りて撃ち、恐竜ゴーオンレッドとスーパーシンケンレッドの協力攻撃の後、13人一斉攻撃で撃破。ホムラコギは二の目で巨大化し、バッチードも産業革命で自ら巨大化すると、月に設置してあったバッチリウムプラントへと向かい、それを追って炎神と折神、まさかの宇宙へ。
道中、一斉エネルギー弾でホムラコギを撃破した両戦隊は、月面で炎神王G12とサムライハオーに変形合体。1体でさえ凶悪な下駄・下駄・そしてバックバック、という馬鹿デカいロボが2体並ぶというとんでもない絵で、なるほどこれは宇宙にでも飛び出さないと並べられないなぁ、と納得しつつ、もはやどちらがラスボスなのかよくわからなくなってきます(笑)
対してバッチードはバッチリウムプラントと合体して最終形態に……てまあ、ケーブルが巻き付くぐらいなのですが(^^; せっかく忘れかけていたプラントを持ち出したのだから、もう一段階、バッチードの外見を強化して欲しかった所で、これは残念。特に、戦隊ロボ2体が凶悪すぎるので(^^;
強烈な汚染エネルギーを前に苦戦する2大ロボだったが、流ノ介発案の合体フォーメーション、侍炎神スーパー大海砲により、バッチードを滅殺。もう、何が何だかよくわからない絵になっていますが、戦争は物量と火力です。
かくして害統領バッチードは倒れ、ゴーオンジャーとウイングスは炎神達と新たな旅へ。
「なんだよ、また他の世界にいっちまうのか」
「俺たちは全てのワールドを守る」
「バタバタ〜。それが俺っち達の務めだからね」
綺麗にまとめる為に、いつの間にか、時空戦士と化しているジャー&ウイングス。
丈瑠と走輔は拳を打ち合わせ、殿に……殿に、殿に、お友達ができました!
ゴーオンジャー。まさに、気持ちの良いヒーロー達でしたなぁ」
「ああ」
旅立つゴーオンジャーを見送り、夕陽でエンド。EDはゴーオンとシンケンをミックスし、シンケンジャーがゴーオンのED(侍Ver.)で踊り、間にシンケンED風ゴーオンジャーが入るというのが、なかなか洒落ていました。
お祭り映画としては、こんなものかなという出来で、『ゴーオン』『シンケン』共に好きな戦隊という事もあり、それなりに楽しめました。後10分ぐらいあって、各ワールドでのやり取りにもう少しキャラの絡みが増えて綺麗に脱出まで描けていれば文句なかったのですが、そこは致し方ない所か(^^; 勢揃いした後で範人が姐さん&ことはに粉かけている辺りは、よく拾ったと思います。
……しかし改めて、後の『ゴーカイジャーvsギャバン』は奇跡的な出来だったのだなぁと再認識。まあやはり、基本的に世界観の違う戦隊二つ(しかも片方は完結済みで片方はクライマックス目前)を合わせて総勢10人以上を約1時間で動かすというのは条件悪すぎて、割り切って造らざるを得ない、という事なのでしょうが(^^;
この映画で一番凄いと思ったのは、甦ったガイアーク3大臣が、本当に寿司屋で飲んだくれていただけだった事(笑) 一応ケガレシアの台詞が、プラントが月にあると気付くヒントになるのですが、かつてこんな酷い、しかし納得できてしまう扱いの幹部復活劇があったであろうか。ちょっとだけ、御大将も参加してのダメな飲み会が見たかったです(笑)
以上これにて、一件落着。