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『ブルースワット』感想8

◆Volume9「プリティガール」◆ (監督:小西通雄 脚本:曽田博久)
新たに地球に派遣されてきた、スペースマフィア1の美女を出迎える久子さんと六角(まだエイリアンだった!)。新エイリアンは“美女”という事で差別化を図ったのか、そろそろ怪人の押し出しを強くしようという事になったのか、全身金色で、これまでとは一線を画すデザイン。
エイリアンが新たな侵略計画を練っているとはつゆ知らず、金欠に苦しむブルーリサーチでは、1億円という桁外れの高額報酬に目がくらんだショウが、御曹司の理想の花嫁捜しを引き受けてしまうが……その条件、ざっと500項目。
女子大に潜入し、調査名目でセクハラを繰り返してははたかれるショウだが、そこへシグとセイジがやってくる。
「やったやったー! やったー! 見つけたよ1億円の美女」
「どうやって?」
「日本中の病院のコンピューターにハッキングして、健康診断のデータの中からぴったりの人を探し出したんだよ!」
今までで一番、セイジが面白かったです(笑)
「さすがコンピューターオタクのせいじくん」
「オタク? ハッカーと呼んでほしいなハッカーと」
セイジは便利キャラであるが故に特性を絞ってほしかったのですが、ここでようやく、3話以降ひたすら散漫になっていたセイジの特技と性質が固まる方向に進んでくれました。元々ブルースワット本部をハッキング盗聴していたのですが、そういった面を補強せずにただの天才便利キャラになってしまっていたので、ここで「コンピューターに強い」「目的の為なら倫理観は踏み外し気味」という2点が強調されたのは良かったです。
セイジから情報を得たショウは、条件に合致する女性が働く保育園へと向かい、盗撮。…………そう、エイリアンから地球を守るという使命の為なら、軽犯罪の1つや2つは見逃されるべきなのです。…………エイリアンから、地球を守る……ため……?
「そう焦らないで。第一まだ、一番肝心の美人かどうか」
「お! おお〜。百点満点。文句あっか?」
「……(無言で首を左右に振る)」
呆れているようで、意外とノってるシグ(笑)
こうしてブルーリサーチは御曹司の理想の花嫁として、澄田瞳(なお演じるは、後に『仮面ライダークウガ』でゴ・ジャーザ・ギを演じた、あらいすみれ)を紹介し、予想外にすんなり報酬の1億円をゲット。
乗り気でなさそうだったのに、山と積まれた札束を見て目の色を変えるサラ(笑)
勇気と志だけでは、ご飯は食べられないのです!!!
思わぬ莫大な収入にブルーリサーチは沸き返り(地球を守る為だから仕方ない、とセイジがコンピュータースキルを駆使してナチュラルに脱税しそう)、そんな地球人達をにこやかに見守るシグ。……そもそも2話でごくあっさりと事務所を用意したシグですが、この人、地球における金銭の感覚がわかっていないだけで、実は莫大な預金が銀行に眠っていたりしそう。
バー○星の宝石は地球で売り捌くと一つ一千万円ぐらいになりますし。
そして瞳に求婚する御曹司だが――
「探していたのよ、おまえのような女を」
なんと御曹司は、美人エイリアンに憑依されていた! 全ては、自分が乗り移るのにふさわしい人間の美女を探す為の、美人エイリアンの侵略作戦の一貫だったのだ!
これは面白かった。特に、敵対するエイリアンとエイリアンハンターがお互いに全く知らず面と向かって接触しつつ、ブルースワットがエイリアンの侵略計画に関わっていく、という流れが秀逸。御曹司は複数の興信所に調査を依頼しているという事に言及して都合が良すぎる度合いも下げていますし。
「宇宙の美女と地球の美女が1つになれば、誰もその美しさにはかなわない」
「美女探しの500項目の条件というのは、エイリアンがインヴェードし、最高のパワーを発揮できる女を捜す為だったんだな」
「エイリアンと瞳は、最高のインヴェード美女コンビというわけ」
瞳の肉体を手に入れた美人エイリアンは魔性のウインクで次々と科学者達を籠絡していき、ここに、美女×美女の、地球の男を引っかけよう作戦が発動する!
作戦の馬鹿馬鹿しさがまた素晴らしいのですが、ここでエイリアンが自分たちを「エイリアン」と呼んでいるのはどうにもおかしくて勿体なかった点。美人エイリアンに固有名詞を与えていない為に苦し紛れだったのでしょうが、もう、固有名詞を与えても良かったような(^^;
ブルーリサーチに保育園の同僚と園児達がやってきて、瞳が姿を消している事を知ったショウは御曹司の家に向かうが、御曹司はブルーリサーチの事を全く覚えていない。異常に気付いたショウは生物科学研究所から白衣の男を連れ出す瞳を見かけで後を追うが攻撃を受け、エイリアンが瞳に憑依している事を知る。
美人エイリアンは優秀な科学者達を集める事で、魔性の美女を大量に増殖して地球の男達を籠絡する、インヴェード美女クローン計画を推進していたのだ!
それを逆手に取り、博士に変装して待ち伏せするショウだったが、物の見事に魅了されてしまう。セイジがさらわれた博士達の目撃情報からアジトの割り出しに成功し、ショウを置いて乗り込む2号と3号だが、瞳様に貢ぎ物をしようとしたショウが、1億円の金庫をかついで現場にやってきてしまう。必死にショウを止めようとした末、サラは平手打ち連打からまさかの抱擁。そしてこぼした涙が触れた時、我に返るショウ。
割と強引にサラのヒロイン推しが投げ込まれてきましたが、これまでのサラの描写を考えるとこれ、
「ジョニー! 気をしっかり持つんだジョニー! この戦争が終わって故郷へ帰ったら、おっかさんに新しい暖炉を作ってやるって言ってただろ! じゃがいも農家のあの娘はどうするんだ、おいジョニー! ……畜生! せめてモルヒネを打ってやれれば……!」
的な。
正気を取り戻したショウを加えたブルースワットは、完全装備でアジトへ突撃。
シグ「この世にはおまえより美しいものがあるんだ」
「なに?」
サラ「あ・た・し!」
「そんな馬鹿な」
サラを中心に3人が手を繋ぎ合うと、美人エイリアンの特殊スキル《魅惑のウインク》は無効化。
ショウ「このぬくもりが通い合う限り、負けるもんか!」
シグ「おまえの負けだ!」
エイリアンに立ち向かう力として人間の絆がどうこう、みたいなものがこれまでも描かれていれば良かったのですが、全くそんな事は無いので、どうにも強引(^^; 例えば第3話で娘を前にした父親がエイリアンの憑依を解いていましたが、そういった、人間のある種の感情がエイリアンに拒否反応を起こさせる、みたいな要素ないし作品としてのテーマ性が積み重なっていればまた違ったのですけど。
チャーム攻撃が効かないと悟り、正体を現すエイリアン。
「スペースマフィア1の、美女を見よ!」
「「「見たーくない!」」」
ここで主題歌→バトルに持って行けないのでギャグを入れるのは、演出陣の良く言えば試行錯誤、悪く言えば悩みと迷いが見える所。
「貴様ら、ただの人間じゃないなぁ!」
「エイリアンハンターのブルースワットとは、俺たちの事だよ!」
名乗りっぽい事をしつつもショウはおどけたポーズ、というのもパターン破りの意欲は感じますが、同時に破ったパターンに変わる芯の不在が、今作の弱みになっているのも見て取れます。複数の型を一度に破ろうとしすぎて八方破れ、とでもいうか。お約束の型を崩した代わりとなる面白みが、なかなか見えてきません。
意外と強かった美人エイリアンは念動で鉄条網を操り、引き裂かれて血まみれになるサラの足、そのサラをかばってエイリアンの攻撃を受けたシグは踏みにじられて緑の血がこぼれる、と続けての流血表現。靴を脱いで隠密不意打ちを行ったショウも超音波で破壊されたガラスを踏んで血だらけに……というのはアクション面でハード路線を保持したかったのかもしれませんが、エピソード内容からは正直浮いてしまいました。
と思ったら、ショウ、靴を両手にはめて逆立ちでガラス地帯を脱出すると反撃に転じ、久々にウィークポイントを撃ち抜いてエイリアンを撃破。
この辺りもどうも、演出面でのバランスの取り方――作風の方向性が一致していない気配を感じます(^^;
1−9話までで既に作品の雰囲気が二転三転しているのですが、これといった統一した指針無しに、担当の監督と脚本にお任せしているのではないかという疑惑。バラエティ性を否定する気はないのですが、どうも振れ幅の中心軸が見えません。
ブルースワットは爆発した基地から瞳を救い出して(各博士は正気を取り戻して個々に逃走)事件は解決するが、金庫の中の1億円は、記憶に無いけど確かに小遣いが1億円減っている、と御曹司が取り返しに来るのであった……でオチ。
最後ギャグにしてしまいましたが、エイリアンに操られた人のお金を貰うわけにはいかない、とこっそり返却するブルースワット、みたいな格好良さを見せても良かったような……ホントあなた方、インヴェード被害者のその後の人生とか全く興味無いな!
これはこれで、貫けばスタイルですが(笑)
前年、『特捜ロボジャンパーソン』でキレキレのトンデモエピソードを連発していた曽田博久が参戦。前半の切り口はかなり面白かったのですが、問題解決〜クライマックスへの流れで、急減速してしまいました。もう一繋がり、欲しかった所です。
次回、予告の映像が妙に<レスキューポリス>シリーズ風味。


◆Volume10「ザ・ミッション」◆ (監督:小西通雄 脚本:小林靖子
見所は、シグさんの各種コスプレ。女装もあるよ☆
シグはがっしりした体格なので、背広の似合う二枚目なのが素敵。また、私服の茶色の袖無し革ベストも似合います。サラもショウもかなり衣装には気を遣っている感じで、お洒落路線なのは今作の良い所。ショウがミサンガをつけているのも面白い所ですが、これは単なるワンポイントなのか、後々背景に繋がるのか。
中身が荒らされるだけで何も盗まれないという謎の倉庫荒らしが連続して発生。評判が傷つくのを恐れて警察沙汰にしたくない貸倉庫会社の社長が提示した成功報酬500万円に目がくらんで……もとい、被害に遭った日、倉庫の係員の記憶が消えているという情報からエイリアンの影を感じたブルーリサーチは調査に乗り出す事に。
前回と冒頭が被り気味ですが、むしろ上がってきた脚本を見てわざと並べたような感じ……にしても、小西監督はどうして札束をそんなに強調するのですか(笑)
社長がブルーリサーチに調査を頼んできたのは、「会社の評判に関わるから警察沙汰にしたくない」という理由をつけてきたのは、小林靖子らしい丁寧さが既に見える所。
ブルースワットの推測通り、謎の倉庫荒らしはエイリアンの手によるものだった。係員に憑依して何やら仏像を探す2体のエイリアンの前に思いっきり完全武装で姿を見せるブルースワット。逃げたエイリアンを追い、凄く楽しそうに「いただき!」と引き金を引くサラはやはり、血と硝煙の匂いに酔っているハッピートリガーなのではないか。
戦う理由? エイリアン野郎に好きなだけ鉛玉をぶち込めるからに決まってるじゃねぇか!!
連係攻撃で1体を撃破するブルースワットだが、空き倉庫で取引中だった見るからに怪しげな男達をこの戦いに巻き込んでしまい、3人を警察と誤解して銃撃してくる男達。
ショウ「何なんだよあいつら?!」
シグ「ただの、通りすがりでしょう」
サラ「ただの通りすがりが拳銃持ってるわけ?!」
まあ、世紀末TOKYOディストピアなら常識。
むしろ手榴弾を取り出さない辺り、ランクが低いとさえいえます。
(※「世紀末TOKYOディストピア」とは、バイオレンス溢れすぎる『特警ウインスペクター』〜『特捜エクシードラフト』の世界観につけた、個人的な呼び名です)
予告が微妙にそれっぽかったのですが、やはりどうも、<レスキューポリス>シリーズを意識しているような。作品コンセプトが違うので話の内容が似ているというわけではないですが、『特警ウインスペクター』がきっかけで脚本家となった小林靖子の、<レスキューポリス>へのオマージュを感じます。
部下は銃を振り回しているけど、気の弱そうな故買屋の社長・須藤が逃げていたエイリアンにインヴェードされてしまい、突然の銃撃を回避させる為に左右から腹を蹴飛ばすという新アクション。
男達はそれぞれ車で走り去るが、そこでエイリアンは、探し求めていた仏像を両者が取引しようとしていた事を知り、話は思わぬ方向に。実はその仏像には、10年前に研究資料が破棄された、人間の思考能力を抑制する薬品の化学式が収められたマイクロフィルムが隠されており、エイリアンはより効果的なインヴェードの為に、その薬品を作り出そうとしていたのである!
男達の素性と仏像の秘密を知ったブルースワットは、決裂してしまった両者の取引を成立させる事で、仏像と須藤エイリアン、2つの問題を一度に解決しようとする。だが思わぬ出来事で余計な手を出すまでもなく取引が再開した事でシグが須藤一味に捕まってしまい、エイリアンと関係なく、普通にゴロツキに袋だたきにされるシグ(^^;
須藤一味はシグの通信機を餌に、3人まとめて粉みじんに吹っ飛ばそうと罠を仕掛けて待ち構え、もくろみ通りに大・爆・発。
主導している須藤の中身はエイリアンなのですが、平然とワイヤートラップで倉庫丸ごと1つ吹き飛ばす威力の爆弾を仕掛けている部下A(地球人)の姿が、凄く世紀末です。
改めて仏像の取引を行う須藤だが、そこへ警察に扮装したブルースワットが現れる。ワイヤートラップに引っかかる寸前、シグがテレパシーで内部の状況を伝え、サラとショウは罠の回避に成功。シグを救出した後、目くらましの為にわざと爆弾を起爆させていたのである。
相変わらず便利すぎるシグの超能力で割と台無しですが、これはもう、シグの特殊能力として目をつぶるしかない所でしょうか(^^; シグの場合、普段から有能な上で超能力まで持っていて、他にこれといって弱みが無い、というのが困った所なのですが。
3人は正体を現したエイリアンを撃破し、回収した仏像からマイクロフィルムを抜き取ると、それを破壊。インヴェード被害者は元々後ろ暗い人だったので、取引相手と配下ともどもお縄にして警察に通報、というのは巧くオチました。
こうしてエイリアンの侵略計画をまたも未然に阻止したブルースワットであったが、事務所でくつろいでいると、スミレが報酬の500万円が入るつもりで、高級ホテルにケータリングサービスを頼んでいた。
「スミレちゃん……ナンナノコレ」
「おまえどうするんだよ支払い!」
「嘘でしょーーー」
「早く次の仕事探しましょう」
段々、貧乏くささが板に付いてくるブルースワットであった。
……まあ、そこのメガネにちょちょいっとどこかの政府機関をハッキングさせて、機密資料でも売りさばけば(待て)
ところで今回、警察官の扮装の為にメガネを外しているシーンがあって始めて気付いたのですが、セイジは『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)の川崎省吾役の人か! 猿顔だけど彼女持ちで、同じ猿顔系の主人公を絶望の淵に落とした川崎省吾!(その覚え方はどうかと思う) 『ジャンパーソン』第15話で街工場の職員でゲスト出演していたのは、この流れがあったのかしら。
前年『ジャンパーソン』第40話でデビューしたメタルヒーローシリーズの虎の子・小林靖子2本目の脚本。デビュー作は面白いけど少々詰め込みすぎて尺の不足を招いている感じがありましたが、それに比べると今回はスッキリした内容。抜群という程ではありませんでしたが、インヴェード被害者に関する工夫、戦闘に巻き込まれた通りすがりの一般人?から思わぬ方向に転がる展開は光り、佳作といっていい出来。
次回――なんか、凄いの来た!