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『ベイマックス』感想(ネタバレあり)


 13歳で高校を卒業した天才少年ヒロは、その頭脳を持て余し、違法のロボットファイトに楽しみを見いだしていた。そんなヒロを心配した兄タダシは、ある日ヒロを自分が通う大学の研究室に連れて行く。そこで兄達の研究や憧れの教授の存在を知ったヒロは前向きな目標を見つけ、大学入学を目指す。入学試験代わりといえる研究発表会で画期的なマイクロボットを発表するヒロだが、それが事件の始まりになるのだった……。
なんとなく借りるタイミングを逸している内に、心の中の旬が過ぎ去った今頃借りましたが、なかなか面白かったです。
凄く面白かった、という程ではありませんが、十分に楽しめる内容でした。
映像はよく出来ているし、この辺りのマンパワーはホント凄いと思います。
で、公開当時、CM(予告)の内容について色々騒がれていた記憶がありますが、うん、これは、CM(予告)詐欺って言われるなぁ……(笑)
どちらかというと、ほのぼのファミリームービーだと思って見に行った人が見終わってから怒るのではないかと。
後、予告で物凄いネタバレしています(^^;
それ、一番見る前に知ってはいけない箇所なのではないかという。
ただその上で、営業戦略としては正しかったのだろうとは思います。物語の導入は上述したように非常に地味ですし(勿論、宣伝文として書こうと思えばもう少しズルや技巧を凝らしますが)、特典映像で見たオリジナルの予告編は、明らかに日本ではウケそうにないものでしたし(^^;
宣伝と誠実さについて、何となく考えさせられる一幕ではありました。
以下、話の内容に触れながらの感想。



−−−−−
で、宣伝と内容が割と乖離しているので、そもそもどんな話か書くだけである種のネタバレ感があるのですが、兄の死に傷ついた少年が兄の遺したケアロボット・ベイマックスに心を癒やされる物語…………は、まあ間違っていないのですが、その手段は、自分の研究を奪い兄の死の原因を作ったと思われる仮面の男を追いかけ、「叩け! ベイマックス!」「あーっと!」です。
まあ、私の見る映画ですから!
兄の形見でありマシュマロマンみたいなベイマックス、登場して数分後には、アーマー着せられ、戦闘プログラムを仕込まれ、弟の手で魔改造されますから!
プログラムをスロットに入れる際、兄の入れた医療用プログラムを見て、ちょっと躊躇うシーンが入ったり、その辺りはさすがちゃんと作られておりますが。
CMだと、死ぬの前提みたいな扱いのお兄さんはかなり重要キャラで、このお兄さんが主人公にとってどれだけ大きな存在だったか、というのがしっかり描かれているのがこの作品の良い所。良い所だけに、本来は予告で殺してはいけなかったと思うわけですが(^^;
まだプログラム発展途中というベイマックスとヒロのやり取りはテンポ良く進み、特に、「診断:思春期」は面白かったです。
ベイマックスが敵の奇襲などに気付いた時に口にする「あーっと!」は、原語のニュアンスを日本語に置き換えるのが難しかったのでしょうが、微妙にサッカーみたいに。
塞ぎ込んでいたヒロは強制お節介ロボに振り回されるも機能を停止させようとするが、その時、一つだけ手元に残っていたマイクロボットの反応に気付いた事から、その元を辿って仮面の男と出会う事に。
仮面の男はヒロが開発したマイクロボット(脳波で自由に操れる超小型マシン)を奪い、独自に量産化して自在に操るのですが、波に乗るようにマイクロボットの塊の上に乗ってヒロを追う姿は怪獣感溢れており、全編通してマイクロボットの表現は格好良かったです。小さなメカの集団がずももももっと動いて自在に伸び縮みするというのは、『鋼の錬金術師』の主人公兄弟&師匠の土木系錬金術をフルアニメ化したらこんな感じかなーという印象。
仮面の男の正体を突き止めようとするヒロは、逃走劇に巻き込む形となった兄の友人達と即席ヒーローチームを結成。
メンバーの一人が実は凄い金持ちのお坊ちゃんだった、というのは飲み込む所なのでしょうが、あまりに楽な設定すぎて、展開が雑になった感は否めません。
正確に言うと、今作そもそもかなり雑な世界観であり、大抵の問題は“ヒロが超天才だから”で片付けられる物語ではあるのですが、それだからこそ、“頭脳”に“資金”が加わる所には、もう1ハードル欲しかったな、と。構造としては、“知恵と勇気”はあるけどお金が足りない、ではなく、“知恵と資金”はあるから後は勇気だ、という造りなのですが。
なおこの金持ち設定は大オチのネタの伏線になっておりまして、ネタそのものは成る程感も強く好きなのですが、それ自体が一種の内輪ネタなので、お遊びの為のお遊びになっているのは、ちょっと引っかかる所。……まあ、マーベルユニバース映画は割と、おまけオチで余計な事するので、悪い病気だと思っておくしかないのか(^^;
前半の各人の研究を伏線に、それぞれの装備を身につける学生達ですが、けっこう危険な武装をろくに標的の確認もせず使ったりして、割とヤバい(笑)
ベイマックスはバージョン2にパワーアップし、そのサーチ能力で仮面の男の所在を突き止めたヒロ達は、男の正体が死んだ筈の教授だと知るが、復讐に逸るヒロを止めている内に逃げられてしまう。教授の目的は、ワープゲートの実験を強行して娘を死に至らしめた実業家への復讐だった。ベイマックスの中に残っていた兄のデータを目にして復讐を乗り越えたヒロは、教授の復讐を止めるべく、仲間達と再び手を取り合う!
主人公の復讐と悪役の復讐を重ねて、復讐を否定するクライマックスへと突入するのですが、兄の死の原因を作った悪役である仮面の男を「倒す」のではなく「止める」事になった時点でカタルシス不足を感じたのか、教授を止めた後、教授が再起動したゲートの崩壊時に、超空間で娘が生存している事が判明。
娘を助ける為にヒロとベイマックスが超空間に飛び込むというクライマックス2へ入り、この都合により、教授の娘が生存していた為、なんとなく、物語としてはヒロのお兄さんが死に損。
最終的には、この事件をきっかけに多くの人の命を救うヒーローチームが誕生する事で、お兄さんの「多くの人々を助ける」というベイマックスに込めた想いが叶う、という事で帳尻合わせる構造なのでしょうが、そこは本編中では描かれない為、若干バランスが悪く感じます。
娘が死んでいた方が良かったわけではないのですが、娘が生存していた/救出された事に対する教授のリアクションもほぼ全く描かれないので(それがあればまただいぶ違ったと思う)、クライマックスのカタルシス作りと、ヒロとベイマックスを別れさせるという物語の都合による、ただ展開の為の生存になってしまったのは残念。……まあ、それはそれとして、ロボット好きとしてはなんだかんだラストは良かったのですが。
後この世界観だとお兄さん、実は生きていたとか普通にありそう。
そんなこんなで、面白い事は面白かったけど、クライマックスは絵の感動よりも話の計算が透けて見えすぎて減点、といった感じでした。
それと、明らかに吹き替えの合ってない二人が案の定タレント枠で、うんまあ、みたいな(^^; おばさんの方は、ああいうハイテンション独り言キャラ居るよね、というのは役柄的にも何とか誤魔化しは効きましたが、蓋を開けたら超重要キャラのお兄さんが微妙だったのは、かなり痛かった点。近年、演技に関してはかなり評価を上げているらしい俳優さんなので、どこでどう演技をするかという技術的問題なのでしょうが……。まあ、ベイマックスとヒーローメンバーの一人に枠を使わなかった分だけ、日本語版スタッフが頑張ったのは感じる所ですが。