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『ブルースワット』感想15

◆Volume19「魔少年(デーモンキッド)の正体!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
ザジの声:小峰裕一
しょ、正体ってそういう事なのーーー?!
スペースマフィア上層部からの特命により自ら動き出したムッシュ・ザジは、でこ男と六角を顎で使って、バルボレラフーズ作戦を進行する。それは、地球人の肉体を苗床に育つバルボレラ菌を用いて、エイリアンの食料となるバルボレラフーズの生産を準備するという恐るべきものであった。
急速に矮小化していたスペースマフィアですが、ここで、今のところ現場で一番偉そうなムッシュ・ザジの更に上層部が居るという設定を付け加える事で、地球上のスペースマフィアはほんの一部隊に過ぎない、という事を改めて強調。組織の転落に歯止めが利かなくなりそうだったので、早めに手を打って良かったと思います。
その頃、スミレの買い出しに付き合っていたシグは、リンゴの鮮度を超能力で透視。
「元来、武器として備わったものじゃないんです。本当は、こんな使い方の方が、合ってるんですよ」
素のシグ、が顔を覗かせて、いいシーンと台詞。
スミレはそんなシグに、宇宙ではどんな食事をしていたのかを問いかける。
「だってさ、シグも人間にインヴェードしてるわけでしょ? 本当はそういう顔や姿じゃないんでしょ。栄養とかどうなってんのかなーと思って。でもそうなるとどうなっちゃうんだろ。そのインヴェードされた人の、生活とか家族とか」
あ、急に凄く面白いボールが。
てっきりシグは、都合良くこういう見た目の宇宙人なのだとばかり思っていたのですが、割と空気読まないスミレが、非常に良い所を突っ込んできました。
シグが「いずれ詳しく説明する」と答えた時、突然の悲鳴に外に出ると、そこでは肌に謎の斑点が浮かび上がった女が倒れていた。女は救急車で運ばれるが、その救急車を襲撃するでこ男。後を追っていたシグの前に六角も現れ、駆けつけたブルースワットの前で遂に正体を見せる指揮官エイリアン。
それぞれ剣と鞭で武装したエイリアンはさすがにこれまでとは違うデザインで、ゾドー(六角)、リーガ(でこ男)と、個体名も付きました。
……しかし、本当にもう、久子さん(仮)は出てこないのか…………。
2体のエイリアンに苦戦するブルースワットだが、更にそこへムッシュが現れ、憑依していたエイリアン・ジスプも出現。
……?
六角達は「ムッシュ・ザジ」と呼んでいるし、少年の姿を見たシグも「まさか……お前は、ザジ!」と叫ぶのですが、エイリアンの本体は名前が違うという、困惑する展開(^^;
他のエイリアンより頭一つ高いというデザインが面白いジスプは火球を自在に操り、これまでと格の違う3体に追い詰められるブルースワットだが、何故か3体は人間の姿に戻ると、3人を置いて救急車で走り去ってしまう。
エイリアンの目的……それは、通りすがりの地球人に手当たり次第にバルボレラ菌を注射し、寄生に成功した個体をさらって来るべき日の為にバルボレラフーズの原料を冷凍保存しておく事にあった。
今回、演出のテンポも良くここまで迫真の展開で、見ている時はあまり気にならなかったのですが、文章にすると、杜撰だなぁ(笑) この人たち、むしろ救急車を襲うスリルに目覚めていないか。
なおここの会話シーンで、スワットアーマーに傷表現があるのは、地味に秀逸で今作らしさと言えます。
ムッシュ・ザジについて確認すべく病院へ向かったシグは、意識不明でベッドに眠る少年の姿を目にし、「やはり見間違いか」…………で済ませていいのか(笑)
シグの後を追っていたスミレは病院の地下に迷い込み、エイリアンと遭遇。エイリアンはその病院のコールドスリープ医療施設を利用して、確保したバルボレラ人間を保管していたのだ。そしてスミレは、一つのカプセルに、シグの肉体の主を発見する。
それは、1984年からコールドスリープに入った男――広瀬剛。
割と唐突に、冷凍睡眠施設が常識的なテクノロジーとして世界観の中に入り込んできますが、『特警ウインスペクター』に冷凍睡眠をギミックに使った名作回(第33話「目覚めた浦島太郎」)があるので、個人的にはすんなり受け入れてしまいました(笑) いや、世界観繋がってない筈ですが、納得感あるというか。
でこ男に見つかったスミレの悲鳴を聞きつけて地下に向かったシグを妨害するレーザー発射装置も、『ウインスペクター』では銀行に仕掛けられていましたし(世紀末のTOKYOでは一般的なセキュリティの一つです)。
結構使い回している気がするのですが、この箱形レーザー発振装置の初出はどの作品なのだろう。
シグの連絡を受けたショウ達もやってきて、病院の地下通路から伸びた倉庫で再び激突する、ブルースワットと3体のエイリアン。戦闘の中で、シグはムッシュ・ザジへと躍りかかる。
「エイリアン! ザジから出てこい! もう一度正体を見せろぉ!」
「パパ……パパ、止めて、苦しいよ……パパ」
子持ちだったー?!
思わず手を緩めたシグは、憑依しているエイリアン本体にもダメージを与えるスペースナイフで刺されるが、何故かまた、ブルースワットにトドメを刺さずに去って行くエイリアン達。だが3人は爆発する倉庫に取り残されてしまい、更に追い打ちの時限爆弾が発見される。果たしてブルースワットの運命は。そして囚われのスミレは、このままキノコ人間にされてしまうのか!
導入で面白いボールを投げてきて、後半で明かされる衝撃の事実、と今作にしては盛り上げてきたのですが、「ザジ」という名前への困惑や、不自然な撤退を繰り返すエイリアンなど、盛り上がりきれないのが今作らしい所(^^; そしてシグはまた、秘密主義でいらぬ混乱を招いている気がしないでもないのですが、次回、この盛り上がりは維持できるのか?!


◆Volume20「シグ衝撃の過去」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
消し炭寸前に追い詰められた3人は、セイジが外から壁のもろい所を見つけ、銃連射でなんとか脱出。そして語られる、シグの過去。
――3年前、地球にやってきたシグ(本体)はスペースマフィアを追う為に地球人の体を必要としていたが、おいそれと他人の生活を奪うわけにはいかないと、インヴェードの対象を決めかねていた。そんな時シグは、10年前に事故で脳死状態となり、同じ事故で意識不明の重体となった息子が目を覚ました際に臓器提供のドナーとして冷凍睡眠される事になった男・広瀬剛の肉体を見つけ、インヴェードする。ところがスペースマフィアのジスプも、広瀬の息子である意識不明の少年・ザジの体に憑依していたのだ!
…………あれ、ジスプさん、人権派
「ザジ」という名前に関しては、フランス人とのハーフなので広瀬ザジで問題ない、としてきましたが(フランス人して問題ないのかは不明)、マフィアの部下が誰も見ていない所で肉体の名である「ムッシュ・ザジ」と呼んでいる理由は不明(^^; というか、設定変わったけどそこは黙ってスルーして下さい感全開。
そして改めて光の戦士(by『特捜エクシードラフト』)であった事が判明したシグの正体ですが、この設定だとシグは本来、インヴェード被害者について真剣に心を砕かねばならなかったのではないでしょうか。
テコ入れで設定を盛ったり修正したりするのは良いとして、物語の積み重ねの薄さが露骨に出てしまっています。シグがザジを助ける事に強くこだわるのは、恐らく素体となった人間の意識に影響を受けているから、というインヴェードにまつわる設定は汲まれているのですが。
「どうして今まで黙ってたんだよ、シグ」
「そうよ、水くさいわよ」
「おまえの苦しみも、拉致されたスミレの苦しみも、言ってみりゃおれたち全員の苦しみだろ」
「私たちはチーム。ブルースワットという名のチームよ」
突然の熱い仲間意識に、草葉の陰で主任の魂が怨霊になりそうです。
ショウに至っては、初期とはもはや別人ですが、最初の軽いキャラ造形は、そんなに受けが悪かったのか(^^; 素はこう、というのは最初から変わってはいないのでしょうが、最近のショウは素しかありません。それとも寝ている間に、スペース人格改造電波でも受けたのか。
ブルースワットはエイリアンの誘いに乗り、シグとザジの戦いがスタート。
「私は! 私自身の命を懸けて、この体を、この地球を守る! そしてその子の、ザジの体を取り戻す! おまえから、スペースマフィアから!」
お父さんは脳死状態でもはや提供用の臓器扱いという事でしたが、最終的にはシグが憑依していた事でなんやかやあって意識を取り戻す、みたいなオチになるのかなぁ……。
シグがザジと戦って時間を稼いでいる間に、スミレの位置をサーチしたサラとセイジが、地下のアジトへと突入。地上では、ショウがシグのバックアップへと回る。クレジットを見ると、スワット2号の中の人は恐らく前作で地上最強の人類・マヤを演じた今井喜美子さんのようで、2号vsエイリアン2体の肉弾バトルは見応えたっぷりですし、地上での戦闘も火炎たっぷりなのですが、一方でブルースワット個々のヒーロー性が非常に薄い為、分割展開そのものが余り盛り上がりません。
ブルースワット』における、既存のヒーロー物フォーマットに乗らない作劇、を目指したのはわかるけれど、ではどこで盛り上げるつもりだったのかがわからないという致命的問題点が、テコ入れによる一山作りの中で、改めて噴出。
今作はそもそも既存のヒーロー物文法においてクライマックスの焦点となる要素を排除している為、ただでさえ焦点がぼやけがちなのですが、その代わりとなる要素が無い上で状況を分割してしまった事で、ますます散漫に。
変身しない・揃って名乗らない・そもそもヒーローネームがない・派手な必殺技もない・重火器をガンガン撃つだけ、という『ブルースワット』形式における盛り上がりの限界を、はからずも露呈する事になってしまいました。
本来は、では代わりにどこに焦点を作るのか(或いは、ウィークポイントの設定を徹底するなどリアリティの統一による説得力の強化を行うのか)、という形で今作は組み立てないといけなかったと思うわけですが(^^; フォーマットに甘えるのも良くはありませんが、やはり20分強のアクション物には、物語の焦点は必要だと思うのです。
結局今作、どんなに頑張ってアクションしても、クライマックスの焦点が無いので、ただダラダラと戦っているように見えてしまうという。
サラとセイジは冷凍睡眠装置を停止させて、キノコにされそうだった人々(これがまた、スミレ含めて3人で、絵作りによる説得力も盛り上がりも全く無し(^^;))を救出するが、ジスプは再びザジに憑依し、六角達と撤退するのであった……。
次回……これはまた、扇澤さんがやってしまうのか。