◆第3話「帰りたいけど帰れない」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
改めて、よくある“サバンナの地平線に昇る朝日”カットに、「1人のニンゲンと、4人のジューマンが出会い、一つの群れが生まれた」と被せるOPの入りは作品をびしっと現していて格好いい。
下宿先にタスクが合流し、本格的に王者の四角探しに励むジュウオウジャー。大和は街でビラを配り、セラは川に潜り、レオは不燃ゴミの山を漁って回る。
「見つかるのかじゃない。見つけるんだ」
「げ。めんどくせぇのが来た……」
現状、一番演技の危なっかしいタスクと、一番こなれているレオ(公式サイトによるとデビューは『仮面ライダーW』最終回のチンピラ役との事!)を絡めて掛け合いをさせるなど、短い時間でそれぞれの個性を出しつつ、細かい配慮が見えて気持ちのいい作り。
そんな中、一人ニンゲン世界の方に興味津々のアムは、王者の四角探しにかこつけて、大和を巻き込んでショッピング。
「アムはジューランドに帰りたくないの?」
「……だって馬鹿馬鹿しくない?」
「え?」
「何の手がかりもないのに毎日毎日手当たり次第。そんなんで見つかるわけないじゃん」
「そんな事思ってたの?」
「うん」
いい笑顔を浮かべるアム。
「いや、だって……いつもニコニコしてるから……笑顔の裏で、まさかそんな……」
まだ女の子に夢一杯のお年頃だった大和くん(今回のレッドは、なんとなく“くん”)は、経験値10000を手に入れた!
ニンゲン(男の子)としてLVが上がった!
スキル《望遠視力》が使えるようになった!
心の傷から野生が覚醒し、急に遠くの物がくっきり見えるようになった大和は、キューブに似たものを手にしているカップルを発見して、そちらへと急ぐ。
<仮面ライダー>シリーズぽくなってしまいますが、この先話を重くするなら、徐々にジューマン化していく大和、という展開も出来そう。
その頃、新たなプレイヤー・ボウガン怪人が地球に降り立ち、道行く自動車を次々と破壊していく。今後どうしていくはわかりませんが、とりあえず立ち上がりは割とざっくり被害路線で、むしろ第1話が一番、被害が少なかった感じ。
邪悪の気配に気付いて現場へ向かった青・黄・緑だったが、ボウガンの高速射撃に苦戦して逃げられてしまい、ライオン、崖転がりを披露。
「大丈夫?」
「セラ……肩貸して」
「甘えんな」
レオの愛嬌とセラのびしっとした所が出て、非常に良かったやり取り。
キャストが決まってからレオをそういう位置づけにしたのか、レオの位置づけに合わせてキャスティングしたのか後先はわかりませんが、今のところ、メンバーの中では演技経験のあるレオに、演技経験の少ないメンバーを絡める事でキャラの彩りをつけていくという構造で、脚本と演出による役者のフォローが、良く出来ています。
ハッタリの効いた衣装の効果も活かしていますが、レオは一歩間違えると凄く雑な馬鹿になってしまう所にうまく愛嬌をつけていて、好キャスティング。
「ブラッド・ゲーム……勝利の条件は、私を最も楽しませる事」
「出撃回数が少なくとも、アザルドより面白い物をお見せすれば、貴方の勝ちです」
デスガリアンでは改めてブラッド・ゲームの目的が明言され、地球の支配でも人類の滅亡でもなければ、何かの利益を得る為ですらないという非常に嫌な感じの悪になりました。これまでも、支配などの為の過程を「ゲーム」として楽しむ悪の組織はありましたが、「ゲーム」そのものが目的である、というのは今後の自由度を確保すると共に、隔たりのある邪悪さが良い形で打ち出されました。
後は設定のハッキリした所で、ジニス様が何を喜ぶのかというゲーム中の姿を、早い内に1カット描写してほしい所でしょうか。
目指すカップルを発見した大和とアムが王者の四角っぽい石について問うと、男が旅先で見つけてプレゼントに渡した石を、あっさりくれるという女。
「いや……あんな石貰っても、ぶっちゃけいらないし。どうせ帰ったら捨てるつもりだったし」
アムだけ嫌な感じになるのを回避しようとしたのでしょうが、日曜朝から女には裏の顔があるんだよ!と魂から海に向かって叫ぶ『仮面ライ○ーW』路線なのか(笑)
ところが女はそれをバスの中に忘れてきており、慌てて乗り込んだ二人は、座席でキューブを発見するが……
「やった……王者の四角だ! ほら! 手当たり次第でも、馬鹿馬鹿しくても行動して正解だったんだよ!」
「なんか、小さくない?」
一回り、小さかった。
「そんな悲しい目で見ないでよ。これでも前向きに言ってるんだからあたし。あのね、私だってジューランドに帰りたいの。でも現実的に考えて難しいじゃん。だから腹くくってニンゲンの世界に馴染む。そういう事」
ぬか喜びさせたと沈む大和を元気づけるアムだが、そこへボウガンが襲来し、バスの横からのカメラ視点は面白かったです。バスの上に乗ったボウガン相手に大和は変身し、アムは下から射撃、という結果的連携でボウガンを振り落とす事に成功。
「もう、危ないよ?! 俺まで撃たれる所だったよ?!」
あ、割と普通にツッコむ路線なのか(笑)
「無事だったからいいじゃない。ほら、前向き〜。うふっ」
ほっぺを両手で挟まれたりしてしまう大和くんが、獣人に目覚めないか、ちょっと心配になります(待て)
……今後、大和くんを憎からず思ってたりするニンゲンヒロイン(たまに出てくる)の登場には期待したい。
2人は、ボウガンを追いかけていたレオ達と合流し、王者の四角には通話機能ないのかと思ったら、あったけどアム以外はわかっていなかった、と判明。ちなみに、受話器のアイコンが人間界とジューマン界で共通なのがちょっと笑えます。
5人は揃って変身して戦闘となり、ライオンがさらっと、木に飛びついて反動バック宙で着地からシザースとか、凄い事していたり。再び高速射撃に苦戦するジュウオウジャーだったが、イーグルの視覚が覚醒し、迫り来る矢を見切ると鞭剣で撃墜。ちょっと勿体なかったのは、矢サイドに視点を置いてしまって、いまひとつ、矢がスローに見えている、というのが映像からわかりにくかった所。
合体技・ジュウオウスラッシュはシンプルだけど格好良く、前作が派手な単独技主体だったのと差別化。この流れだとその内、飛び道具が出てきそうな感じではありますが。
ボウガン怪人はコンティニューで巨大化され、ジュウオウジャーはキューブ召喚するが、ボウガンの攻撃で起きた崖崩れにゾウとトラが埋まってしまう。残った3匹は助けに行くのかと思ったらいきなりの動物合体でジュウオウキング123。
「このサイズなら、埋めらんねえだろ!」
そういう事か(笑)
救援より攻撃を優先する辺りにそこはかとなく野生のドライさを感じますが、そのジュウオウキングも下半身を土砂に埋められ行動不能になってしまう。だがその時、4と5がキューブ形態で土砂の中から復帰。
「どうだ! キューブに変形していれば」
「このぐらいの土砂なんか平気なんだから!」
第1−2話ではワシがキューブ形態に変形して敵の攻撃を跳ね返していましたが、謎の便利さ、キューブモード。
そこから1キューブが離脱して、145に合体を切り替え、先着3匹ロボットの変形ギミックを鮮やかに活用し、これは非常に巧かった。
ジュウオウキング145は回避力の高さを見せるが攻めあぐね、その足下で燃え広がっていく森。
「駄目だ……どんどん自然が壊されていく。早くあいつを倒さないと!」
この、巨大ロボの回避によって周辺被害が拡大していく描写、というのはリアリティバランスを難しくしてしまう要素なのですが、「街」ではなく「森」とする事で、今作の特性を出しつつ、あくまで自然破壊であって人的被害ではない、という形でギリギリ収めました。
自然破壊なら良いわけではないですが、“明らかに人死にを増やす描写はしない”というのは明確な線引きであり、ブラッド・ゲームで割とラフに被害を出している事を考えると、描き分けが意識にある部分だと思われます。
その時、大和の叫びに反応するかのように、あの小さな四角(一応、拾ってきたらしい)が変形し、キューブキリンが誕生。
「そうか! 王者の四角じゃないけど、ジューランドのものだったんだ!」
巨大化したキリンは飛び道具でボウガンを痛めつけ、更にバズーカモードに変形。ジュウオウキングはキリンバズーカ連射で、ボウガン怪人を地球の大地に葬り去るのであった。…………バズーカ?
前半の戦闘のBGMがちょっと8bit風味だったのですが、今回使われたジュウオウキング挿入歌の締めも、少し昔のゲームを思わせるメロディで、そういうラインを押していく模様。
第3話にしての追加アイテム登場となりましたが、
「ニンゲンの世界にもジュウオウキューブがあったなんてね」
「繋がっているんだな……ジューランドと」
と前回のキーワードを持ってくる事で、強引さを減じると共にタスクの存在感も出して巧み。ニンゲン界とジューランドの繋がりというのは世界の背景に関わる重要な要素でもあるので、ニンゲン界にジュウオウキューブがある意味、という強化アイテムの出現理由もかなり良い形で物語の中に収めたと思います。
そして大和は、掃除機に興味津々のアムに言葉をかける。
「両方やるんじゃ駄目かな? その、王者の四角探しも続けるけど、ニンゲン界の勉強もする。これが一番、前向きだと思うんだけど」
「いーんじゃない?」
“手当たり次第でも馬鹿馬鹿しくても行動する事”にも、“現実を考えて置かれた状況に対して腹をくくる事”にも、それぞれの意味と価値がある事を描き、二つの価値観がしっかり物語の中に入っているのも秀逸。
アムの返事に手応えを得た大和は、張り切って他の3名に向き直る。
「ハイちゅーもーく! これからみんなにも、ここでの家事のやり方を勉強してもらいます!」
「「「え? ……え〜〜〜?!」」」
あ、この3人、どうせジューランドに帰るからを理由に何もしないつもりだったのか(笑)
まずは順調だったパイロット版から、どう広げていくか注目の第3話でしたが、ギミック・テーマ・物語が融合して見事に折りたたまれ、良い出来でした。キャラクターの絡め方やロボットの使い方など細かい所にも配慮の見えるしっかりした作りで、この丁寧さが維持されてくれれば、今後も期待大。後は敵方が組織としての存在感は明確ながら、個々のキャラクターがややパンチ不足なので、話数一桁台の内に、もう一つインパクトを付けておいて欲しい所です。
次回、なんとなく絡みの多かったセラとレオをメインに据えて、「リングに吼えろ」。サブタイトルは今作の決め台詞だった第2話を別にすると、どこかで聞いたようなタイトルやフレーズ(ちょっと古い)のもじり路線でしょーか。