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『逆転裁判』第1話を見た

OP、

冬の海の砂浜を独り歩く御剣

そこにぜえはあいいながら追いついてくるなるほどくん

見つめ合う2人はチェーンデスマッチ開始

2人の間に浮上する巨大な天秤

突然満開のひまわり畑

に大爆笑して、しばらく続きを見る事が出来ませんでした(笑) 読売TV公式で1週間無料配信中なので、気になる方は是非。
本編の方は、駄目なアニメ化の見本、みたいな出来。
元々の『逆転裁判』は、警察の捜査・事件と証拠品の関係・証人の証言、のそれぞれに幾つも穴を開けて、プレイヤーに能動的にツッコませる所にゲーム性を生じさせているわけですが、それらザルの穴が、受け手が能動的に関わらないアニメ媒体においては、ただの「ザルの穴」になってしまっています。
その為、プレイヤーとなるほどくんの共同作業の到達点として無罪に辿り着くカタルシスが、このアニメ版では一切生じていません(^^;
そこでアニメとしてのカタルシスを生じさせる為には根本的に構造を組み替える必要があると思われ、改めて、どうして今までアニメにしなかったのか? ではなく、何故アニメにしてしまったのか、というのが強烈に浮き彫りになる形に。
企画そのものへの疑問は脇に置くとしても、基本的にゲームをそのままなぞっているだけで、アニメならではのカタルシスを生もうという工夫がありません。アニメとしてやった事といえば、アバンタイトルのなるほどくんの住まいの描写と、ドラマ性を深めようと(考えたと思われる)安易な回想シーンの挿入ぐらいで、正直お粗末。
アニメ版でまずしなくてはならなかったのは、今作を特徴付ける超即決裁判について説明する事だったと思うのですが、この説明が無い事で、圧倒的に不利な状況の眼前の裁判によって矢張の運命が決まってしまう、という緊張感が一切伝わってきません(ここが、嫌でもゲームオーバーになるゲームとの大きな違い)。
また、超即決裁判の存在と承認というのは、今作の世界観と様々なザル具合に対する大きなエクスキューズになりうるのですが、そこが組み込まれていません。
そしてもう一つ、矛盾を見つけて証人を追求していくクライマックス、開き直った証人(真犯人)に逆襲を受けて瀬戸際に追い詰められた所で、発想を「逆転」させてトドメの一撃を叩きつける、という部分のテンポがそれまでの追求シーンとさほど変わらない為、「逆転」の重みが印象的になりませんでした。
ここで千尋さんから「逆転」を教えられるというのは、第2話以降の展開で意味を持つと同時に、本編タイトルとも繋がる非常に重要なシーンなので、もっと明確に区別して意味づけなくてはならなかったと思うのですが、物語の緩急が足りない為に流れの頂点がそこに向けて組み上がっていません。
結果として、“崖っぷちの状況をハッタリとツッコミで切り抜けて最後に「逆転」によって逆転する”という、今作の基本構造の中にある面白さの提示に失敗(これもまた、ラストのカタルシス不足に繋がっています)。
アニメとしての新しい面白さがあるわけでもなく、かといって『逆転裁判』としても重要な魅力が抜け落ちており、これはもう、尺の都合云々では言い訳できないレベル。
いっそ、全編OP以上のノリで過剰なトンデモ演出が飛び交うアニメにした方が面白かったのでは……。
まあ、何となく見ただけで(ちなみに元のゲームは『4』の途中で脱落)別に期待していたわけでもなんでもないのですが、だいぶ残念な出来でした。