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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第11話

◆第11話「動物大集合」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
第11話でここまで詰めてきたか……!
序盤戦まとめの一山として、素晴らしい出来でした。とにかくここまで、構成と盛り上げ方が非常に綺麗で、この出来を維持していってほしい……。
「もう大丈夫だ」
相悪いが口調は優しい鳥男の声を聞きながら大和は気絶し、充電切れでギフトが機能停止している間に一時退却した4人は、家の前で転がっている大和を発見する。
「鳥男?!」
「あの泥棒が、どうかしたのか?」
目覚めた大和はタスクの言葉に思わず言葉を濁してしまうが、ポケットの中に赤い羽を見つけ、自分が間違いなく鳥男に助けられた事、そして鳥男が人間の姿をしていた事――王者の資格を持っている事――を確信する。
「なんでみんなに言えなかったんだろう……」
その夜、眠れぬ夜を過ごす大和は、自問自答。ここで、ギフトが休憩中に自分たちもとにかく寝て傷を回復だ! というジューマン達には何だか凄く動物っぽさを感じて納得してしまいます(笑)
「信じたいのかな……俺の恩人が、泥棒なんかじゃないって」
仲間達への友情と、恩人への想いで揺れる大和……みんな、タスクのせいだ。
そこにマリオ叔父さんがやってきて、部屋でホットミルクをご馳走になる大和は、『真実のワシ』と名付けられた、カラフルなワシの彫刻を目にする。
「真実って……ワシは、こんな色じゃなくない?」
「なーに言ってんだおまえ。芸術家にとっちゃ、自分の信じるものが、真実だ」
「……自分の、信じるもの」
この叔父さんの言葉を受け、正義とは何かに惑う時、自分の信念を貫く所にヒーロー性が存在する、という従来的な描写に寄るのかと思いきや、
「まあおまえは、学者だかんなぁ。学者ってえのは、自分の気持ちで、真実を曲げちゃいけねえんだろ?」
「え? ………………うん。そうだね」
ここで、芸術家と動物学者、という2人の社会的立場に絡める形で、正義の在り方を語る時に、それぞれの所属する環境がその背景に影響する、という戦隊ではオミットされがちな要素が組み込まれたのは絶妙。
さすがに酒こそ酌み交わしませんでしたが、「久々に、飲むか」という叔父さんの台詞は、そういったニュアンスを示唆していますし、大和とマリオおじさんが、大人同士として向き合う(だから仕事の話になる)という戦隊では珍しいシーンから、風切大和とは何者か?というのが浮かび上がり、普遍的なヒーロー性の手前で、その存在が、ぐっと大地に足を踏みしめて立ち上がる事になり、素晴らしい。
この、対等な大人の関係と、社会の中における自分の立場から問題に向き合う、という視点は戦隊としては割と攻めていると思うのですが、巧く用いてくれれば大きな特色になると思うので、今後も期待したい部分。
また、二つの価値観に正誤をつけない事で、おじさんのメンター性も確保。二つの価値観を並べて見せる、というのは第3話でも強調されていますが、かなり意図的に入れている感じでしょうか(全体が、ニンゲンとジューマンの交流の物語ですし)。
真実とは何か――決意のまなざしになった大和は、翌朝、皆に鳥男を見た事を教え、資格を持っている可能性を告げて謝罪。タスクに匂いを辿る為の羽根を渡すと、自分はまだ怪我が痛むから、ギフトが動き出したら連絡する、と言ってその場に残る。
「王者の資格、何がなんでも取り戻せよ」
大和の激励を受けて出撃した4人は、山中で首尾良く鳥男と遭遇。
見知らぬ連中からいきなり、羽根の匂いを嗅いできたと言われた鳥男は、内心多分どん引きです。
「大和は俺を覚えていたか」
間抜けな二人称も気にしたそぶりは無く、なんだか嬉しそうな鳥男は、自分が王者の資格を盗んだ事を明言。
「あんな世界との繋がりは、切れてしまえばいい」
資格を渡す事を拒否して4人と戦闘になり、女の子にも躊躇無く攻撃するところが素敵(笑)
一方、大和は4人に連絡する事無く、動き出したギフトに1人で立ち向かおうとしていた。
「1人で来たのですか? 仲間はどうしたのです?」
「家に帰る時間が来たんだ」
今回、地味にお気に入りの台詞。
そして大和くんは考え足らずなわけでも成り行きでもなくて、いつか来る今日という日の事をきちんと考えて覚悟していた、というのが台詞や表情、物語の積み重ねから見えてくるのが、素晴らしい。
「この世界は俺1人で守る! 本能覚醒!」
ジュウオウイーグルはナリアの生み出したメーバを蹴散らすと、翼を広げて巨大ギフトに単騎突撃。同じ頃、鳥男は自前ガリアンソードを振るって4対1でもジューマン達と拮抗した戦いを見せ、しばらく戦闘を交互に展開。だがイーグルはギフトにはたき落とされ、鳥男も本能覚醒した4人に次第に追い詰められていく。
「これが覚醒した、王者の資格の力か……!」
遂に鳥男は石状のままのキューブを懐から落とし、ニンゲンに変身は出来るが、本能覚醒は出来ない事も判明。だがその時、4人は大和がギフトと戦っている事に気付き、資格を拾うか、大和を助けに行くか、の選択を迫られる……!
一方で大和の覚悟と決断を描き、もう一方でホームシックを煽ったジューマン達に選択を迫るという二面の展開が綺麗にはまりました。葛藤と選択をしっかり組み込んでくれる物語は、好みです。
「まだだ……あいつは、俺が倒す!」
イーグルを破られた大和はゴリラに変身するも、やはり弾き返され、倒れ伏す。
「駄目だ……ここで俺が踏ん張らなきゃ……みんなが、ジューランドに帰れないんだ……」
ちょっと「さようならドラえもん」になりすぎた感はありますが(^^;、必死に立ち上がろうとする大和の耳に届く、大きな声。
「何やってんだばーか」
そこに現れる、4人のジューマン達。
「鳥男は?! 王者の資格は取り返せた?!」
「それはまた今度にした」
「……なんで?!」
「決まってんだろ! 仲間がやべぇのにほっとけるか!」
「大和くん、意外と無茶するからね」
「私たちが助けてやらないと」
「大和、僕たちはもう、帰れないからここに居るわけじゃない。僕たちの意志で、ここに居るんだ」
「…………みんな」
「大和! 五人であいつをぶっ倒すぞ!」
「ああ!」
ジューマンとニンゲンが、手を繋ぎ、再び立ち上がる大和。
お互いに決断と選択を乗り越えたからこそ、繋がる手は劇的となり、ここで背後のビルの窓ガラスを鏡に見立て、倒すべき巨大な敵と立ち向かうヒーロー達の姿を一枚の画面に収めたのは好演出。
今、一つの群れが、吼える――


「「「「「本能覚醒!!」」」」」

「大空の王者・ジュウオウイーグル!」
「荒海の王者・ジュウオウシャーク!」
「サバンナの王者・ジュウオウライオン!」
「森林の王者・ジュウオウエレファント!」
「雪原の王者・ジュウオウタイガー!」
「動物戦隊!」
「「「「「ジュウオウジャー!!」」」」」

OPがサビから流れ、ちょっと溜めが入ってからギフトを見上げるイーグルという俯瞰カットで、
「俺たちを、なめるなよ!」
も見事にはまりました。
5人揃って野生全開のジュウオウジャーは、ガリアンソードでギフトの足を止めて一斉射撃。ひるんだ所を転ばせると、その隙にキューブアニマルを召喚。
「一人じゃないんだ……俺たちは、支え合ってる!」
5人の心の繋がりに応えるかのように新たな合体システムがアンロックされ、6+2に増える火の輪。
「動物大合体!」
により、8つのキューブアニマルが合体した、ワイルドジュウオウキングが誕生する!
名前がストレートな足し算だったのはビックリしました(笑) そして、モグラとキリンの意味は。
意気上がるジュウオウジャーは、皆で景気よくキューブを回し、アニマル大集合ビームでギフトを撃破。初期の全合体で、いきなりオーラ飛ばし系の必殺技が来ましたが、今後どう、エスカレートさせていくのでしょうか。
割とギミックの理由付けをしている今作において、ロボ合体だけやたら謎の電波なのは気になりますが、この辺り、鳥男の「あんな世界」と絡めて、しっかり考えてあったりすると面白いのだけどなぁ……。
後、どうでもいい話としては今回初めて、ロボ搭乗時の青と白が、同じ内股でも違う座り方をしているのに気付きました。細かい。
「まったく……面白い星だよ。ふふははははは」
ジニス様はいきなり激昂して机を叩いたりしたらどうしようかと思いましたが、余裕の態度で良かった。次回はちょっと軽い話になるようですし、しばらくは安心できそうです。
鳥男は資格を手にして飛び去るが、果たしてその真意と目的は何なのか――? 追加戦士で強化展開かと思わせて一度はぐらかしてきたのは、近年お約束になりすぎている追加戦士に変化を与えようという意図がありそうですが、人相悪くてジューマンには厳しいけど大和には優しい、という謎めいたスタンスは案配が面白く(ここで大和にも厳しいとただ嫌な感じになってしまうわけで)、どうかき回してくれるのか、期待。
鳥男の本格的登場に加えて、大和の覚悟、ジューマン達の選択、ジュウオウジャーの結束、を一つにまとめて新ロボットに繋げ、充実の一編でした。またその中で、大和のキャラクターをマリオとの対比で広げてきた手法は面白く、今後の展開がますます楽しみです。