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『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦)、読了

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)


 小学4年生のぼくが暮らす郊外の街に、ある日突然、沢山のペンギンが現れ、そして消えた。おそらく日本で一番ノートを書き、それによって頭角を現してきた大変かしこい小学4年生である所のぼくは、憧れのお姉さんとの約束でこのペンギンの謎に挑む事になるが、それは大変むずかしい問題なのであった。これは、あと三千と八百八十八日で大人になるぼくが、“世界の果て”を探す物語――。
 こまっしゃくれた小学4年生のぼくを語り手にした、ボーイ・ミーツ・綺麗なお姉さんで、海とコーヒーの香りがするファンタジー
 基本構造は、ペンギン事件以外にも幾つかの問題があり、学校での人間関係があり、友達との自主的な探検ありを交えつつ、少しずつ大人になっていく少年の“一夏の冒険”を中心に置いた純正のジュブナイルなのですが、そこは森見作品なので、小学4年生にして一癖も二癖もある主人公の造形が特色と面白さ。
 さすがに小学4年生なので、京都に生息する駄目大学生達ほどまだねじ曲がってしまってはいませんが、真摯さが半周回って間違った道に行きそうな辺りの案配が実に森見さん。
 基本的には真面目な少年なのですが。
 真面目というのは優等生とはちょっと違う、という辺りの書き分け方が、巧くて柔らかい。
 ヒロインである不思議な雰囲気のお姉さん、クラスメイト、ぼくの家族もそれぞれ鮮やかに描かれ、また、主人公が誰かを憎むのではなく、常に「科学の子」として研究・理解しようとする姿勢は気持ちいい。
 大人の為のノスタルジーというより、十代に向けたジュブナイルだなーと思うのですが、良く出来たジュブナイルを読むのも久々で、面白かったです。