『腕貫探偵』、読了。

- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2011/12/03
- メディア: 文庫
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不思議な雰囲気の公務員が、市民からの相談を受けてその真相を解き明かす、というシリーズ短編集。悩める相談者が貼り紙を見る→腕貫男に自分の体験を語る→腕貫男がその真相を解き明かす(ヒントを与える)、というフォーマットで、ちょっと変化をつけた安楽椅子探偵ものの構造。
市民サーヴィス課臨時出張所 櫃洗市のみなさまへ 日頃のご意見、ご要望、なんでもお聞かせください 個人的なお悩みもお気軽にどうぞ 櫃洗市一般苦情係
大学の事務室で奇妙な貼り紙を目にした蘇甲純也は、寝不足の頭も手伝って、その窓口――まるで戯画化された公務員のような、年齢不詳で感情が読めず、ひときわ目立つ黒い腕貫をはめた男に、自分が巻き込まれた不思議な事件の事を相談してしまう。ところが純也の話を聞いた腕貫男があっさり告げたアドバイスが、事件の真相を言い当てて――?!
探偵役が櫃洗市一般苦情係という事で、語り手は櫃洗市民を基本とし、各エピソードは連作というほど密接に関わっていないものの、登場人物や地名などで緩やかに繋がっている、というのがミソ。完全に個別の物語よりも、あの時の語り手がまた出てきたけど、今は何をしているのだろう、など、思わせる所が面白みを添えています。
また、そう思わせるキャラクターへの肉付けの仕方が巧み。
短編集という事でピンキリはありますが、様々な市民からの相談という形式にする事で内容のバリエーションもあり、なかなか面白かったです。シリーズが数冊出ているという事で、他も読みたくなりました。