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『重甲ビーファイター』感想1

◆第1話「昆虫戦士だ!!」◆ (監督:澤井信一郎 脚本:宮下隼一)

動物学者・トレーナー 羽山麗
樹木医 片霧大作
昆虫学者 甲斐拓也

と、メインキャラクターの基本情報についてはどんどんテロップで説明。
世界各地で昆虫の異常行動が観測され、亜熱帯のジャングルに調査団の一員として派遣された甲斐拓也(ちなみに演じる土屋大輔は、『五星戦隊ダイレンジャー』でキリンレンジャーを演じた土屋圭輔の、双子の兄)は、洞窟の中で巨大なカブトムシと出会う。
「侵略者が来る……異次元から、侵略者が……」
「カブトムシが喋った!」
「地球を征服し、支配する為に」
「そうか。それで昆虫たちは逃げ出そうとして、異常な集団行動を」
適応はやっっっっっ!
「違う。戦う為だ。たとえ地球上の昆虫が絶滅する事になろうと、最後の一匹まで戦い続ける」
そして昆虫たちは、超前のめりであった。
拓也は巨大カブトムシに、人間も一緒に戦える筈だ、と告げ、日本では向井博士を中心として異次元からの侵略者に対抗する研究チームが活動を開始するが、政府や国連はその報告を当然相手にしない。
「世界的な昆虫の異常行動は異次元からの侵略者と戦う為! 動物や植物も同じ反応をしており、人間もこれに協力して戦うべきだ!」という主張を聞き入れられずに憤る博士ですが、その場で病院に連れていかれなかっただけマシだと思うのですが。
どう考えてもジャングルの奥地で危ないキノコに手を出してしまったと思われている研究チームは、こうなったらもう政府には頼らない、と独自に強化アーマーの開発を進めるが、時既に遅く、異次元から地球に巨大な手が迫り来る――その名を、侵略者ジャマール。
巨大な右手の形をしたジャマール要塞から、侵略の先駆けとしてとりあえず戦闘機部隊が侵攻してくるというのは、凄く戦隊シリーズですが、これに昆虫達が立ち向かう、という絵で独自性を出しました。
ジャマールは、首領ガオームの元に、傭兵軍団・戦闘メカ軍団・合成獣軍団それぞれの団長が居るという組織構造で、その前線基地として新宿都庁を早々に占拠(OPで、各幹部のスーツアクターが明記されているのはかなり珍しいか)。
「狩れ! 狩り立てよ。モルモット用の人間を捕獲するのだ」
近年になるほど基本的に戦闘員に人格を付与しない傾向になりますが、ジャマール戦闘員は初回からかなり喋るのが特徴的。しかも仲間の仇だとカブトムシを踏みつぶそうとするなど、けっこう人間的。
そのカブトムシを守る為、麗と大作はどさくさで戦闘員と戦う事になるが、捕まってしまう。一方その頃、向井研究所では科学の粋を集めて開発したアーマーの起動実験に失敗していたが、決して諦めない拓也の心に応えるかのように姿を見せた巨大カブトムシが、アーマーに昆虫の生命エネルギーを注ぎ込む。
「何億匹もの昆虫が、自ら捧げた生命を圧縮した、昆虫の能力の結晶だ」
怖い、なんか怖いよ昆虫界……!
「アーマーに、命が宿った」
モノトーンだった3つのアーマーが青・緑・赤の3色のアーマーへと姿を変えて起動すると、更に手のひらサイズの変身アイテム・ビーコマンダーへと変形。
人類の科学+神秘のパワー、とする事で、一方的なマジックアイテムの授与となる事を避けつつ、「変身」のオーバーテクノロジーの理屈を付け、ある程度勝手に動く(だからいきなり決めポーズも取れる)、自らふさわしい装着者を選択する自意識、を綺麗に収めた上でアーマーそのものを人と昆虫が手を取り合ったシンボルにするというのは上手い設定。
拓也はその1人として選ばれ、「重甲!」の掛け声でブルービートに変身。
レスキューポリス>3部作も掛け声と変身バンクはあったのですが、車という巨大転送機に乗り込むのが必須だったのに対して、掛け声&ポーズでその場で変身するというのは、実に『超人機メタルダー』(1987)以来。<レスキューポリス>3部作が基本的に椅子の上であり、『ジライヤ』『ジバン』『ジャンパーソン』『ブルースワット』と全て、いわゆる「変身ポーズ」が無かった、というのは中期《メタルヒーロー》の特徴的な要素。
この辺り、シリーズ内での変遷や、例えばゴレンジャーは瞬間変身だったとか、系統立てて追っていくとまた面白そうではありますが、横道に逸れすぎるのでとりあえず割愛。変身における、手持ちアイテム型/掛け声型/手持ちアイテム+掛け声型/気がつけば一瞬型/その他、などの分類は探すと先行研究がありそうな気もしますが、アイテム+掛け声型が主流を占めるようになるのは、実は90年代半ばになってからだったりするのでしょうか(作品数が減っている作用がありますが)。
平成ライダー》の途中から、ベルトが体内から生えるものではなく外装するものに変化したのは割とイメージに対して大きかったのではと思われるのですが、『555』は外付けで『クウガ』は内蔵型として、『龍騎』と『アギト』はどうだったっけ……。
話戻って、処刑されそうになっていた大作と麗も装着者に選ばれ、変身・爆発・脱出で、ジースタッグとレッドルが誕生した所で主題歌イントロが流れ出し、ブルービート登場に合わせて歌が入るド直球のヒーロー演出は素直に格好いい。
「何者だ?!」
「重甲・ビーファイター!」
拓也以外の2人は、超巻き込まれて困惑中ですが、とりあえず力強く名乗る!(笑)
スーツは適度に勝手に動くから問題無しだ!
これを見た首領ガオームはガオームゾーンを発動し、巨大な手によって異空間に飲み込まれる3人の戦士。
ナレーション「ガオームゾーンとは、首領ガオームだけが発生させることの出来る、超次元のバトルフィールドである。ガオームゾーンの中では、ジャマール怪人たちのエネルギー変換率が高まり、異次元兵士としての最高のパワーが発揮できるのだ」
しばらく魔空空間なバトルが続いてピンチに陥る3人だが、ブレード、クロー、プラズマーの各種スティンガーウェポンが発動し逆転。カブトダイナミックにより傭兵サーベル怪人(なお声は鳥居誉也)を撃破する事でガオームゾーンを脱出し、さらわれた人々を助け出す事を誓うのだった……!。
スティンガーウェポンはいずれも回転ギミックが付いているのが特徴で、ストレートに格好いい系。レッドルのプラズマーが回転しながらビームを迸らせてなかなか凶悪。ブレードはなんだか、どこかで見た事ある気がします。
ナレーション「地球に生きる、全ての生命を守る為、新戦士、重甲ビーファイターは誕生した。だが、ジャマールの侵略作戦は、着々と進行している。戦え、重甲ビーファイター!」
やたらに昆虫・植物・動物に親和性の高いメンバー構成で、あらゆる命を平等に扱う姿に説得力を持たせ、テーマ性の押し出しもストレート。
宇宙刑事シャイダー』以来の特撮作品参加となる澤井監督をパイロット版に迎えて雰囲気の一新を狙った上で、
鉄板の昆虫モチーフ・メタリックな3色ヒーロー・ヒロイックな「変身」の復活・わかりやすい異次元からの侵略者・原点回帰の魔空空間ギミック
と、なりふり構っていられないという姿はいっそ潔く感じます。
歴史の位置づけとしては、《メタルヒーロー》シリーズ“終わりの始まり”といえる今作、以前の配信で見た時は時代を巻き戻しすぎではないかと思ったものですが、前作が前作だっただけにやむを得ない仕儀と納得してみると、この思い切った原点回帰と王道路線で果たしてどこまでストレートを投げきれるのか(そしてどんな変化球を混ぜてくるのか)、楽しみにしたいと思います。