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『コンレボ』第21話「鋼鉄の鬼」感想

センパイ、心身共に袋だたき。
神化49年6月――里見顧問から逃げる元IQの女のシーンで、コブラステッキがうねうね動くという里見顧問の超人的能力が初描写。現時点では、里見自身が能力を持っているのか、マジックアイテムの使用者なのかはわかりませんが。
元IQの女は帝都広告に雇われて新宿擾乱をあおっていた事が判明し、元・超人カフェに逃げ込むも歓迎されなかった女は、里見に捕まって超人ヘルメットを被せられてしまう……。
超人カフェには、隠れ潜む羽目になっている訳あり超人達として、光速エスパーの友達や元BL団のメンバーがちらり。
そして神化49年8月――爾朗はメガ子に腕をねじりあげられていた(笑)
「確かにこれによって超人の弾圧が激しくなる」
「だからといって、政府が導入したものを破壊するのは単なる犯罪、テロリズムだ」
「言われるまでもない。俺だって、何度も説得したんだ」
アメリカから輸入されたスーパーロボットであり対超人兵器・NUTSへの対応を巡り、亀裂の入る爾朗軍団。テロ上等なライトとアキはナッツ輸送車を襲撃しようとし、再び激突するライトとメガッシン。
「「あなたの中に正義と悪があり、それが私を混乱させる。だが今夜のあなたは、悪だ!!」」
「上等!」
一方、爾朗はアキを止めようとするが、
「国家と戦う事が、正義と云えるのか」
「正義……。ねえ爾朗、あんた幾つになった? そろそろ三十路でしょ」
ツッコんだーーーーーーーーーーーーーー!!
爾朗に対して好意を持たない女、としてのアキが、皆が遠巻きにして押さずにいたボタンを容赦なく踏みつけ、説得するならもっとマシな説得をしろ、という虫を見るような目が素晴らしかったです。
ここでは正義そのものが否定されているのではなくて、説得に持ち出す言葉がふわふわした「正義」しかない三十路手前の男が否定されており、勢いで公権力を否定して飛び出してきた割に国家に逆らうのも間違っている気がする爾朗の背骨の無さ具合が容赦なくサンドバッグに。
スケール感の違いを盛り込んだ異種超人バトルが格好良く展開し、戦闘中、ナッツ1号の燃料がバイオデストロイヤーの転用と判明。負傷したアキをグロスオーゲンが拾って超人達は各自撤退し、遅れてやってくる超人課。
「爾朗! とうとうやっちゃったのね?!」
……なんだろうセンパイのこの、どうせテロするほどの思い切りはないから放っておいても大丈夫だと思われていた相変わらずの家出少年的扱い(笑)
「坊や…………時間を戻してほしいか?」
「俺は、ライト達を止めようとしてたんだ。それよりあのロボットの燃料を調べろ。なにかが」
助言めかした言葉を残して立ち去ろうとする爾朗を、思い切り殴り飛ばすジャガーさん
「僕は襲撃を止めなかった事を怒っているんじゃない。帝告の機械人形に、腹が立つのはご同様さ。だが爾朗、おまえがした事はなんだ?! あいつを倒したわけでも、鋼鉄探偵達を止めたわけでもない。その間に挟まれて、立ちすくんでいただけだ!」
「俺は犯罪者じゃない」
「いつまで坊やでいるつもりだ!!」
ようやくジャガーさんが正面から説教してくれたのですが、世の中何かの決断をできない時がある、というのはわかった上で、“せめてより良く”するチャンス(時間を戻す)を与えた上で、それにすら手を伸ばそうとしない爾朗に対して本気で怒る、というのがとても良かったです。
かくして第21話にしていよいよ、自らが戦争の生んだ破壊の意志/怪獣であるが為に、“何かを決めてしまう”=“それによって物事が変わってしまう”事を恐れ、他者の持つ確固たる正義に生き方を依存しようとする爾朗の逃避が、十字砲火で炙り出される事に。
これまでも書いてきましたが、爾朗の負の部分に対して、物語として向き合わないまま済ませてしまう可能性は危惧していたので、まずそこにしっかりと焦点を合わせてくれた事が良かったです。
最終的に今作が、“何かを決断して大人になる事”を是とするのか、“みんながそういう大人にならなくてもいいじゃないか”とするのかはわかりませんが、爾朗の物語に対してしっかりとした決着を期待したい。
ところで、割と、多少社会的に道を踏み外しても「でも超人だ」で許せる部分を見つけてしまう危うさを抱える爾朗が、今回やたらに(爾朗なりに)法にこだわる姿を見ていてようやく気付いたのですが、爾朗があくまで「自分は超人ではない」と言っているのは、爾朗の中でのストッパーでもあるのだなー。
爾朗の場合、「(超人として)自分ルールを発動しない」と「何かを決断しない」が混ざりきってしまっているのが大きな問題なわけですが。
ジュダスの元に運び込まれたアキは爾朗の血液によって治療され、爾朗の血液が超人の細胞を活性化する未知のエネルギーを有している事がジュダスの口から語られる事に。いつの間にか右手がマシン化しているし、随分やさぐれた雰囲気のジュダスは、孫竹こそがG血液研究の第一人者である事も明言。
「巨大化しても、大していい事ないぞ」
白田さん、神性が発揮されるのがグロスオーゲンになっている(巨大化している)時だけという事もあり、心情的に爾朗に賛同できない所もあるけど、なるべく命の恩人の役に立ちたい、という善良さが滲み出ていて、すっかり和みキャラに(笑)
一方、国家の為に作られた機械の正義は、明確に爾朗を否定する。
「俺たちは超人の為に戦う仲間だ。それで十分だろ」
「仲間?」
「人吉爾朗。むしろ私には今、君達が悪の組織に見える」
そこに飛んでくるアースちゃん。
「面白い。機械だらけだな。それでおまえはどの味方なんだ」
「誰も君を呼んではいないぞ」
「助けを呼ぶ声がした。だから来た」
アースちゃんは、心の中で助けを求めているのは爾朗だと告げ、メガッシンはその場を去って行く。
「私たちは平和の為、この国の為、合体するように造られた。ここには居られない」
「……我々は、平和の敵か」
元より、爾朗が求めた超人達の正義は統合されうるものではなく、特に“国家の為の正義”をプログラムされたメガッシンと、超人個々の正義とは折り合いが悪いものだったのですが、そこを都合で押し切らず、破綻すべき関係性がしっかりと破綻してくれたのは、物語の流れとして安心しました。
爾朗は東崎倫子と接触すると超人ヘルメットを被り、その中で過去の自分の姿を目にする。
「俺の中に、怪獣が居る……何故だ!」
幻像は更に遡り、神化21年2月――
「本当は新型爆弾は成功し、おびただしい被害を出す。それが、正しいとしたら」
爾朗は、里見が孫竹に“もう一つの歴史”を語る姿を目にする……。
ここまで引っ張ってきて、爾朗がマジックアイテムで過去と直面する、というのはちょっと安直になってしまった気もしますが、いよいよ物語の全体像に迫る展開に。
今回はっきりと里見の目的が「超人の居ない世界」と口にされましたが、“正しい歴史”(神化に対する昭和)を語る里見の正体は何者なのか。実のところ、パラレルワールドとか歴史改変の類いは大ネタとしてはあまり好きではないのですが、どういう形でまとめてくるか、純粋に楽しみです。
「ナッツによって我々は、神にも等しい力を手に入れるんだ」
「それでは、超人という存在自体、必要がなくなるという事ですか」
「君が超人になるんじゃないか」
里見の言う「超人の居ない世界」というのが、純然たる異能存在の居ない世界を指すのか、超人の定義を破壊する事で区別が必要なくなった世界を指すのか、はまだわかりませんが。
ところで今回、スーパーロボットが劇中で“神に等しい力”となぞらえられる一方、サブタイトルでは「鋼鉄の鬼」とされており、“仮面を被った人間”が鬼を制御して神と為す、という祭祀的な構造でスーパーロボットの操縦が描かれているのも興味深い点。
で、その観点で見ると爾朗の中の怪獣も両義性を持っていると考えられるのですが、その上でむしろ爾朗を神とするよりもむしろ鬼となす――爾朗の理想の世界を実現する為には、“正義を統合する為の悪”が存在すればいいわけで、爾朗自身が、あらゆる超人の正義を担保する悪になるという着地を今更ながら思いついたのですが、某作品と似すぎか。
今回も超濃度で、いつにも増して感想がまとまっていませんが、爾朗の問題に作品がしっかり向き合ってくれたので、ここから爾朗が立ち上がってくれるクライマックスに期待したいです。