◆第20話「囮と資格と炎のコンボ」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
完全復活を期してメダルホルダーを開くカザリだが、なんとその中身は全て、セルメダル。カザリがコアメダルを狙っている事を警戒したアンクは、事前にメダルを入れ替えていたのだった。コアメダルは全て映司が隠した、とブラフを仕掛けたアンクはそのまま映司を海へと放り投げ、カザリの注意が逸れた隙にクジャクメダルを強奪。カザリはやむなくヤミーと共に映司の行方を追い、えらく久々に、頭脳戦に勝った気がするよ!
だが映司を囮に使った事に怒り心頭の比奈がクジャクメダルを奪い取って逃走。アンクは鉄鎖で比奈を鉄橋の下に吊るし、2人はメダルを巡って根比べに突入。そしてそそくさと逃げ出したヤスは、土手に打ち上げられた映司を発見。悪党にも善人にも、どちらにもなりきれないヤスは映司を見捨てる事が出来ず、映司を拾って家で治療する……。
変なチンピラだったヤスがここでひと味出すのですが、結局、最終的にもう一つ掘り下げられなかったのは残念。
『オーズ』全体における、映司の物語とゲストの物語が繋がらない、それこそ本筋がちょっとややこしくなると雑にゲストを放り投げ気味になる、というのは、前回の鴻上会長の「知らなくても、聞かなくても、戦えるのが君だろう」が示唆するように、“繋がれるから助ける”のではなく、“繋がっても繋がらなくても関係なく助ける”という映司のスタンスに合わせて意識的な造りではあるのでしょうが、どうしても据わりが悪く感じてしまいます。
その据わりの悪さ自体が、物語全体の仕掛けなのかとは思うのですが、道中のもどかしさを越える程の納得を持って機能してくれるのかどうか。
それにしても、事あるごとに湿布を貼られるヒーローだなぁ……。
カザリに吹っ飛ばされた後、戦線に復帰したら誰も居なかった伊達は、食事に寄ったクスクシエで後藤店員を発見。知世子に促された後藤から人生相談を受けた伊達は、バース銃を後藤に撃たせてみる。
「こいつがバースのメイン武器。使い勝手はいいけど、反動は半端ない」
それは、使い勝手がいい、のか?
伊達が生身で軽々と扱ってみせたバース銃だが、後藤は一発撃った瞬間に反動で吹っ飛んでしまう。
「はははははは、わかったろ? こいつ使うには、今までの鍛え方じゃ駄目なのよ。今のあんたじゃ、バースになりたくてもなれない」
以前からその能力に疑問符のついていた後藤店員ですが、バースになれなかったのはドクターに頭を下げられなかったプライドと正義感ゆえなんだと自己防衛していた所に、そもそも実力が足りない、と容赦なく延髄斬りが炸裂。
伊達さんの蹂躙が留まるところを知りませんが、これでようやく後藤店員の立ち位置が定まってきました。
――翌朝、
「映司が生きてれば必ず来る」
「あんな酷い事しておいて、一緒に戦ってくれると思うの?! きっと怪我だって」
「来る。ヤミーを倒す為ならな」
暴走を開始したクラゲライオンの咆吼を耳にしたアンクは仕方なく比奈を解放し、お姫様だっこではない所に筋力不足を感じます! そこは頑張れアンク! ボディはお兄ちゃんとはいえ!
「一つだけ、ヤミーを倒すって、一点でだけ、あいつの行動を信用できるんですよね。ホントそれだけだし。むっっかつきますけど」
ヤスと相棒の悪口で盛り上がっていた映司も、負傷を押して立ち上がる。
そして、
「後藤ちゃん。俺が1億稼ぐまでに、これ使えるようになっといて。俺がいつでも辞められるように」
バース銃を後藤に渡す伊達。
なんだかんだ後藤の人生相談に付き合って手を貸す伊達さんは、親切ではなく、あくまで自分の都合なのだ、という形を取るのが、ひたすら格好いい。
またここは、前回に続いて映司と伊達の対比になっていると思われ、例えば映司は、後藤が死にそうになっていたら間違いなく助けるし、そこで平然と命も賭けるだろうけど、あくまで“それだけ”で、そこから先には踏み込まない(比奈の事を気にしているのは、「泉刑事を助ける」というミッションが継続中だからなわけです)。
映司には、誰かかを決定的に助ける為の“何か”が欠けている――伊達さんの言い回しを借りるなばら、火野映司は「自分で自分を助けていない」から、実は手を伸ばした先で何をすればいいかがわかっていないのではないか。映司のどこか刹那的な人付き合いの本質が、じわじわと形になってきている気がします。
クラゲライオンは口から火球を放って派手に暴れ、立ち向かうオーズだが、足の負傷で力を発揮できずにまたも苦戦。バースがやってきてショベルアームで殴り続けたら中身が飛び出すが、バースもまた、動きの速くなったクラゲライオンに押され気味に。クラゲライオンは更に大量のメトロイドを放ち、電気攻撃に追い詰められていく2人のライダーだったが、そこに比奈、そして鴻上からメダルを預かった里中が駆けつける。
バイクスーツ姿の里中は、驚くべき身体能力で次々とメトロイドを蹴散らしていき、若干の悪ノリ感漂う里中無双ですが、鴻上の秘書だと思うとある程度の戦闘力には納得する部分もあります。
比奈はメダルをアンクに渡し、里中もオーズに向けてメダルを射出し、遂に揃う3枚の赤いコアメダル。
『タカ! クジャク! コンドル!』
タージャードルーー
真紅のコンボを発動したオーズは、クジャクファンネルでメトロイドをまとめて瞬殺すると、翼を広げて飛翔。胸からバックラーを取り出してクラゲライオンの火球を防ぎ、ダイビングコンドルそいやーーーでヤミーを撃破。圧倒的な力を見せつけるのであった。
今回は完全にオーズの手柄なのに、クレーンアームでセルメダルをまとめてかっさらう伊達さんも、大概セコい(笑)
そんなバースの行為に文句も言わず、アンクが3枚のコアメダルを吸収すると右肩から翼が飛び出すが、何故かそれ以上は実体化せず、アンクの姿は右腕だけのままなのだった……。
2号ライダーのインパクトに負けじとアンクのコンボフォームが登場! という事で、フォームばかりでなく、武装も追加。男声コーラスから入る、映司&アンクデュエットのテーマ曲も、大物感を醸し出してなかなかの格好良さ。割と忘れがちな、右腕だけで活動しているアンクのイレギュラーさとも関わるようで、伊達明大旋風から続けざまに弾丸が撃ち込まれてきました。
それにしても、クジャク……そうか、アンク、その髪は、クジャクだったのか……。タカの目! クジャクの頭! コンドルの根性! タージャードルーー。