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『重甲ビーファイター』感想6

◆第6話「森の叫びを聞け」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
タカミネ山で発見された未知のエネルギー鉱石オメガストーンの鉱床がジャマールに襲撃される。資源開発局の井崎からの依頼で、ジャマールを撃退に向かったビーファイターの前に立ちはだかる、傭兵戦士ザイキング。
バイキングというかガイキングというかなデザインのザイキングですが…………て、あれ、ガイキングってバイキングだったのか?!
(今頃気付く衝撃の真実)
重甲した3人はひとまずジャマールを撃退するが、タカミネ山の地下に広がるオメガストーン鉱床の開発が、樹齢1000年を越える木もある貴重な森林を破壊する可能性に思い至り、井崎に噛みつく大作。人類のエネルギー問題を解決するかもしれないオメガストーンと比べれば、森一つなど比較する問題にならない、と井崎はそれを冷たく撥ね付け、ここで前回触れられた大作の背景である、自然と文明(開発)の問題が浮上。
「さっさとタカミネ山に戻りたまえ。ジャマールの脅威から人類の未来を守る。それだけが君達、ビーファイターの使命じゃないのか?」
「…………進んでビーファイターなんかになったんじゃねえよ俺は」
自分が戦う事で、森が失われてしまう事を知った大作は、コマンダーを置き捨てるとビーファイター脱退。
「一度は引き受けた仕事を、投げ出すのか」
「俺が一生の仕事として選んだのは木を守る事なんだ。ジャマール退治なんかじゃありません」
ここで第2話における大作の、知り合いの子供の為に戦うのであって、無条件に正義のヒーローをやるつもりはない、という要素も拾われ、個の信念と世界の大義をぶつかり合わせつつ、キャラクターを肉付け。やはり扇澤さんはこういった個性の膨らませ方が上手く、本当にどうして、前作の第7話はあんな事になってしまったのか、不思議で仕方ありません(^^;
ここで面白いのは、仮にタカミネ山のオメガストーンによりエネルギー問題が解決するならば、長期的にはそれは環境保全に繋がる可能性も高く、必ずしも井崎が一方的な悪の理屈を振りかざしているわけではない事。拓也さえ、「残せるものなら、博士だって俺だって、この森を……」と、気持ちはわかると言いながら大作に全面的には賛同していません。
勿論、現実は数字の塊ではないので、簡単に損得のトレードオフで割り切れる筈もなく、森というものに交換できない価値を感じている大作が愚かだと描かれているわけでもないのですが、ここで扇澤ワールド的には、ヒーローチームの一員である大作が、“社会から疎外されたアウトロー”という位置に置かれ、同じヒーローである拓也と麗とも距離が生じている事で、単純に「ヒーローの正解」を描かない構造が巧みです。
一方ジャマールでは、傭兵軍団長ジュラは、かつて腕自慢の戦士を片っ端から血祭りにあげるレッド・ファイターであり、ザイキングはその首を狙った賞金稼ぎだったが、返り討ちにあって半殺しにされてから服従している、と今回もやや強引な背景語り。……これはやはり、前作のジスプが引っ張った挙げ句にぐだぐだになった反省からなのでしょうか(^^;
山へ戻った拓也と麗は再びザイキングと戦闘になり、ガオームは要塞を突入させ、戦闘機部隊の爆撃で鉱床を掘り出そうとする、と要塞突入の理由づけ。
ビーファイターを退職して街路樹を治療していた大作は激しい胸騒ぎを感じるが、そこに向井博士がやってくる。
「大作! ジャマールが、タカミネ山に爆撃を」
「爆撃?! …………どうせ、あの森はもうお終いなんだ」
「それでいいのか?! 本当にいいのか、大作! 大作!」
「なろぉぉ!」
何の研究をしているのかよくわからなかったり、周囲の狂気に押され気味でもう一つ影の薄い向井博士ですが、ここで大作の背中を押し、年長者としての役割を一つ。
(森は生きてるんだ! 生きてきたんだ何千年も。それを殺させやしねぇ!)
大きな流れの中で無駄かもしれないけれど、それでも守る為に戦う――ヒーローらしいバイクの疾走シーンが入り、山へ駆けつける大作。
「森が、森が泣いている……今、今助けてやるからな! 重甲!」
3人揃ったビーファイターはビートマシンを召喚し、戦闘機部隊を撃破すると、山火事を消火。青と緑のマシンがほぼ使い回しの映像なのに対し、赤マシンは今回も新アクション(風を起こして消火活動)を披露しており、3機のマシンの中で一番活躍度が高い状況が続きます。どうにもカブトムシが一番印象薄いのですが、青いカブトムシとか黙っていても売れる筈、みたいな扱いなのか(笑)
エネルギー鉱石欲しさに大サービスのガオーム様はガオームゾーンを発動し、苦戦するビーファイターだったが、森を守りたいという執念で立ち上がったジースタッグが、個人必殺技・レイジングスラッシュに覚醒し、ザイキングを撃破するのであった。
問題のオメガストーンは、気になる数値を発見して博士が追加分析した所、エネルギーが最大でも半月ほどしか保持されない上に排煙がオゾンホールに致命的なダメージを与えるなどの問題点が多数発見され、使い物にならないので採掘は中止になりました、でオチ。
ややパンチ不足ですが、これはまあ、穏当に済ませる形として仕方ない所か。……急に欠点盛りすぎで、博士がデータねつ造していないか少し不安になりますけど(笑) 博士からすると、「地球を守る為のビーファイターの戦力保持(大作の退職阻止)」に比べれば、「エネルギー問題」の方が大事の前の小事、という物事の価値観の有為転変が盛り込まれているようないないよーな。
……このオチの結果、一番間抜けなのは、そんな地球産エネルギーでひゃっはーしようといていたジャマールですが。本当に、大丈夫かジャマール。
頭が悪くて戦力を活かせないのではなく、台所事情が苦しそうな悪の組織として、とても心配になってきました(笑)
簡単な正解のない問題を軸に、大作の寄って立つ信念を描き、成り行きヒーローだったビーファイターに「個」の要素が入ってくれたエピソード。出来れば、自然は自然だから大切、ではなく、なぜ自然が大切なのか、という所まで踏み込んで欲しかった所ですが、ちょっと惜しい。ただ、前作での低調ぶりと、王道一直線の今作に合うかの心配があった扇澤さんが、きっちりとキャラクターを広げる“らしい仕事”を見せてくれたのは嬉しく、最低限、この水準がキープされれば、今後も楽しみ。
次回――麗はやっぱり、肉弾戦担当なのか。