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『重甲ビーファイター』感想10

◆第10話「激闘!!竜の剣士」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
「たまにはトレーニングしなきゃ!」
戦闘フォーメーションを考察する科学的トレーニング派の拓也@好きなプロテインはバナナ味と、ひたすら筋トレで磨き上げた筋肉こそ至高派の大作@好きなプロテインはチョコレート味が対立。間に入った柔軟な筋肉を求める実戦派の麗@好きなプロテインはイチゴ味もどっちつかずと責められて雰囲気の悪くなる3人だが、そのタイミングでジャマール戦闘機軍団が地上を強襲。
ビートマシンで戦闘機部隊を蹴散らすビーファイターだが、その前に傭兵軍団長ジュラと、その右腕バーラが姿を見せる。
「みんな、油断するな!」
「相手が誰でもインセクトアーマーさえあれば」
……先日(第8話)、自分の力が大事、と拓也が主張した矢先に、同僚の片霧大作さんが顎の下までズブズブなんですが。
侵略した先で倒した異次元生物ブラックドラゴンの首を加工した意志ある鎧・ドラゴンアーマーを身につけるバーラと、早くもマントを脱いで二の腕を披露するジュラの前に、虫アーマーの力に溺れていたビーファイターは完敗。
爆発で吹き飛ばされ、ジャマーに追われる大作と麗は、拓也が落としたコマンダーを拾い、バラバラに戦ってしまった事を反省。
「インセクトアーマーが私たちを選んでくれたのは、この星全ての命を守る為に、互いに信じ合い、共に戦う為だったのに」
「そうだ……。俺はいつしか、その力ばかりに頼っていた」
「私もそうよ」
「仲間を信じて戦う事が大事だったのに……拓也はきっと生きている! もう一度3人の力を合わせてぶつかってみるんだ」
虫アーマーと筋肉の関係をどう捉えるかはともかくとして、調子に乗ったヒーローがしっぺ返しを受け、強敵相手に仲間の絆を取り戻して立ち向かう、というオーソドックスなプロットとしては悪くない流れだったのですが……ですが……この後、どんどん蛇行して、獣道へ突入する事に。
大作が囮になっている間に麗が拓也を探し出し、3人は合流に成功。そこへ、「あの3人を倒せばジャマール大幹部の座につける」と妙に煽ってくるドラゴンアーマーにけしかけられ、襲いかかるジュラ。だがその時、アーマーは3人とジュラをまとめてファイアブレスで吹っ飛ばすと、バーラの肉体をその力で支配する。かつてジュラとバーラに倒されて鎧の素材とされてしまったブラックドラゴンは、復讐の機会をずっと待っていたのだった!
…………えー…………“絆を取り戻した3人の力で強敵を打ち倒す”のかと思っていたら、“敵が変更になってしまう”という、クロバットすぎる展開でシナリオが腸捻転
Aパートがほぼ丸々無意味になりました!
率直に、幹部+同格の実力者という事でジュラ&バーラを強く描きすぎてまともに倒しようがなくなっていたのですが、悪い意味で週刊連載の少年マンガのような解決法。
そして鎧は、ジャマールに侵略された次元の生き物だった筈なのに、現在の目的が「ジャマール最高幹部になるのはこの私だ!」でいいのか(笑)
ジュラを煽る要素として唐突に出てきたこの「最高幹部」も、これまでのジャマール幹部トリオの雰囲気にそぐわず、暴投気味ですし。
炎の中で3人は重甲し、大ダメージを負ったジュラを助けに来たみたいな映像に(笑)
信じ合う力を取り戻したビーファイターは、岩をうがつ水滴のような一点集中攻撃でドラゴンアーマーの装甲を貫通。お約束ネタとしては別に構わないのですが、冒頭で拓也が考案していたフォーメーションが何の伏線にもならずに無視されていて困ります(^^;
「バカな、どうしてこの私が?!」
「これがインセクトアーマーの、俺達の信じ合う力だ!」

〔「相手が誰でもインセクトアーマーさえあれば」→「俺はいつしか、その力ばかりに頼っていた」→「仲間を信じて戦う事が大事だったのに」→「これがインセクトアーマーの、俺達の信じ合う力だ!」〕

という流れで、力を支えるのは心である、としたかったのはわかるのですが、今作においては、この「信じ合う」範囲にインセクトアーマー(昆虫魂)を含める或いは、「心」と「力」を繋ぐ象徴がインセクトアーマーであるとしてこそなのに、その要点を押さえず一足飛びに〔俺達の信じ合う力=インセクトアーマーの力〕と台詞にしてしまう為に、インセクトアーマーの設定が全く活かされておらず、エピソードとしての積み重ねも途中で放棄されてしまっています。
そこを描いてこそ、面白くなると思うのですが。
「この女を使って、全てを我が手に入れるはずが」
て、ブラックドラゴン、復讐の為に、ジャマール内部で普通に出世街道を歩む気だったのか……?!
「おまえの好きにさせてたまるか!」
正気を取り戻したバーラは、深手を負いつつも、自ら鎧に短刀を突き刺し、ブラックドラゴンの息の根を止める。
「ジュラ……許してくれ。鎧の力などに頼ったばかりに、無念だ。――ブルービート、勝負だ。剣士バーラの、最後の戦いなのだ!」
“鎧の力”を否定したバーラが、“鎧の力”全開のブルービートに、“剣士として”最後の戦いを挑むという、しっちゃかめっちゃかで倒錯したクライマックス。
今作における虫アーマーは確かに“ヒーローの力”の一部なので、そこを台詞上で同一視するのはやむを得ない部分もあるのですが、物語の構造としてインセクトアーマーとドラゴンアーマーが対比されているのに、“鎧を捨てて誇りを賭けた敵”に対して“鎧を着たままのヒーロー”が切り結ぶので、非常におかしな事になっています。
インセクトアーマーとドラゴンアーマーの対比を描くなら、腹に一物あるドラゴンアーマーに対して、インセクトアーマーは純粋に地球を守る力、というアーマーの話にすればいいのに、むしろ前半は「アーマーの力に溺れてはいけない。3人の信頼が力を生むんだ」という内容だったので、ゴールを見失っている内にスタート地点さえわからなくなってしまいました。
オーソドックスなプロットに変化を加えている内に中心を失って虚無に還るという、実に残念なシナリオ。プロットには変化をつけているのに、大作は話の都合で安直な能なしマッチョとして描写してしまうのも、また雑。ビーファイターは筋肉を崇拝しつつも、3人とも学があるのがポイントだと思うのですが。
バーラは青との一騎打ちに敗れて爆死し、激情にかられて玉砕特攻しようとしたジュラは、ガオームツモで回収される。友の為に命がけで戦おうとする幹部、というのは要素としては面白かったですが、エピソードとして崩壊していたのが非常に残念。
広げれば3つぐらいのエピソードに出来そうなプロットを混合しているのですが、それが中身の詰まった話になるのではなく、あっちにもこっちにも手を伸ばしすぎて自爆、になっているのは如何ともしがたい。
次回――JP色の敵とかジャマールシティとか巨大な銃器を構える麗とか、修羅の世界の予感。