◆第20話「世界の王者」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
「サイの意見を、採用した」
まさか20分積み重ねて、こんな1発ネタをぶち込んでくるとは……!!(笑)
ジニスの呪縛を脱するも、ジューマン4人の姿に極度に怯えたさわおは、大和の家で半裸体育座り。
「おまえ達の事情を聞いて、確信した。俺には……服を貸してもらう資格なんか、ない」
自分の意思でないとはいえサイ男・ワニ男・オオカミ男のジューマンパワーを奪ってしまった事を気に病むさわおは、やたら大仰なポーズで自分を責めると、大和達の善意を受けるに値しない路傍に吐き捨てられたガムのような存在で生まれてすみません、と自らを卑下し、ありとあらゆる事に自虐的な反応を見せる。
「俺には、ご飯を食べさせてもらう資格は……ない」
芝居がかった身振りと言動、果てしない自分浸り、強固すぎるマイワールド……えーとこれ、凄くネガティブな虹野明(トッキュウ6号)では(笑) トッキュウ6号の登場編は今回と同じ中澤監督で、本人の深刻な罪の意識を外から見るといっそギャグめいた形で描き、周囲にツッコませる事で雰囲気を軽くする、という手法も同様なのですが、意識的にやったのかしら。
まあ、明が自分の“設定”にハマりこんでいたのに対し、さわおは天然物のようですが。
そんなさわおを励まし、被害者として接する5人だが、さわおは突如、子供の頃から体が弱く、恥ずかしがり屋で気も弱く、あだ名で呼んでくれるような友達も出来ず、という哀しい過去を告白。そこで何とか注目される為に強くなろうとしたのだが……
「だがしかし! やっぱり孤独なままだった」
そんな時、デスガリアンに捕まったさわおは、ジニスによってサワオに改造される事に。
「抵抗、できなかった……」
ザワールドは実質的に洗脳状態であったものの、さわお自身に元々強くなりたいという気持ちはあり、そこをジニスにつけ込まれて肥大させられていた、という形で接続。
苦悶するさわおの脳裏に浮かぶ、うらめしやジューマン3。
「俺が、俺が彼らの命を奪ったんだ!」
「「「「「いやいやいやいやいや」」」」」
「君の思い込みだよ。ほら、うらめしや〜って完全に日本の文化でしょ」
サイ・ワニ・オオカミに関しての5人の反応がやたら軽いのは、物凄く慌てている人をみるとかえって冷静になる、みたいな効果なのか(勿論、さわおを責める気がない故に過剰に明るく接しているという面もあるでしょうが)。しかし罪の意識からパニックに陥ったさわおは逃げ出してしまい、追いかけた大和は、一夜明けて、ベンチで体育座りしている姿を発見。コンビニで買った食べ物を手に近づく。
「いや……俺にはこんなもの貰う資格は」
「俺が買いすぎたの。食べるの手伝ってよ。ほら」
傷ついた野生動物には、まず、餌付けから。
一方、「壊れた玩具を、放っておくわけにはいかないだろう?」とジニスはクバルとアザルドにサワオの回収を指示し、これに立ち向かったレオ達4人は完敗して捕らえられてしまう。クバルは戦うと案外格好いい系。
「君の罪悪感、俺はちょっとわかるんだ」
大和は自分がジューマンパワーを得た顛末をさわおに語る。
「一緒に守ろうよ、この星を」
「違う……おまえと俺とは違う。だって、鳥とゴリラは、自分の意思でパワーをくれたんだろう? でも、サイとワニとオオカミは、無理矢理パワーを奪われたんだ。…………怖い! この体に、ジューマンパワーが流れてるのが怖いんだよ!」
ここですんなり共感させるのではなく、自分の体に自分のものではないパワー(命)が宿っている、という未知への恐怖――さわおにとっての真の恐怖は異形と化した自分自身である――を持ってきたのは、大和とさわおの差異として面白かったです。
その時、雰囲気ぶち壊しで鳴り響く陽気な着メロ。
「ご機嫌よう、ジュウオウイーグル」
「…………クバル!」
大和くん、絶対、(え? 誰だっけこいつ? 詐欺?)って間があった。
クバルはレオ達4人を人質に、ザワールドを連れてくるように要求。電話を切るタイミングでちょうど殴られたレオの叫びが入る辺りが、細かい。
「俺を連れていけ! 俺なんかどうなったっていい!」
「良くない!! 君がどうなってもいいなんて俺は思えない!」
「何故だ……」
「だって……君と俺はもう、繋がったんだから」
ぎゅぃーーーんと上昇する、さわおのときめきゲージ。
「大丈夫。みんなは俺が助ける。だから君は、逃げて」
大和くんのそれは、ニンゲンの女子に発動してもらいたかったのに……! 野生にしか、効果を発揮しないのか。
4人が捕らえられた倉庫に向かった大和は初手からゴリラで戦いに挑み、借りがあるとバトルに応じたアザルドは、途中でクバルが乱入しても特に怒るわけでなく、クバルの攻撃でゴリラがよろけた所に横からヤクザキックを入れるなど、余計な美学は無いただの喧嘩好きと判明。
こっそりと大和の後をついてきたさわおはその光景に思い悩み、再び始まる脳内会話……前回のエンジェル大和と悪魔ジニスの囁きシーンは、この為の伏線だったのか(笑)
(だがしかし……俺にジューマンパワーを使う資格は……)
「気にすんな。わりぃのは全部デスガリアンだ」
「え? さっきと、言ってる事、違わないか……?」
「ほら、俺達、おまえの妄想だから」
断言した(笑)
……つまりこれがあれか、イマジナリーフレンドというやつか。
友達いない歴=年齢という事なので、以前から壁に向かって話しかけがちな体質だったとは思われますが、もう一つの見方としては、3人のジューマンの命が体の中にある、という現状において、それを受け入れて精神の平衡を保つ為の安全弁でもあるのかもしれません。
そう考えた場合、脳内ジューマン3は今後もちょくちょく出てきて、最終的に
「「「もう、俺達が居なくてもおまえは大丈夫だ!(さむずあっぷ)」」」
「サイ男、ワニ男、カミ男ー!!(涙)」
みたいな感じで、浄化されてくれるといいなぁ(笑)
「俺は……どうしたらいいんだ……?」
「あんまり悩むなら……両方取っちゃえば?」
デスガリアンをぶちのめせ派のワニ男(妄想)と罪を背負って苦しめ派のカミ男(妄想)が脳内で揉める中、その折衷案を提案するサイ男(妄想)。
さすがのゴリラもダブル幹部相手に変身解除に追い込まれたその時、脳内フレンズ会議が結論に達したさわおが、倉庫に立つ!
「俺は決めた! この罪を、背負って戦う! 本能覚醒!! 今日から俺は…………ふむ……世界の王者、ジュウオウザワールド!! ――この俺を、なめるなよ!」
遠回りした末に結局、罪滅ぼしの為に戦うという着地になりましたが、しかるべき煩悶を、脳内フレンズ会議というフィルターを用いる事で重くなりすぎないように描く、というのが狙いでしょうか。また、脳内フレンズ会議という形の自問自答の結果には、異形と化した自分自身の肯定、というニュアンスも含むと思われます。
なにはともあれ世界の王者として新生したサワオ改めジュウオウサワオは、赤と共にアザクバコンビと激突。
ゴリラとワニでアザルドを壁に押しつけてのラッシュは格好良かったです。同僚の危機に背後からサワオに切りつけにいくクバルのは、せこいのか友情なのか。……この後、サワオエクストリームせいやーーーの盾にアザルドを使ったので、せこかった(笑)
アザルドは15話ぶり2度目の大爆発も速攻で復活し、クバルともども撤退。そこに忘れ去られかけていたボウリング怪人が、最初から巨大な姿で登場…………というか、一度コンティニューすると、標準サイズに戻れないのか?(^^;
「そっか、まだあいつ居たんだ」
「ザワールドが助けてたからな」
「……ごめん。過去の俺が、余計な事を……」
タスクの心ない一言に、壁に向かって体育座りするサワオ。
「おまえメンタル弱すぎんだろ!」
「ある意味図太い気もするけど……」
セラ、多分、正解。
「とりあえず、過去は忘れて。今、がんばろ。ね?」
大和くんは完全に、手負いの野生動物を保護モード。
「そうか……? そうだな! ――ここは、俺に任せろ」
精神的にも肉体的にも立ち上がったサワオは、サワオロボを召喚。いちいち乗り換えながら3体のアニマルを操って戦闘機部隊を撃破すると、動物合体してボウリングを圧倒的な力で撃破する。
「おまえの世界は――ここで終わりだ!!」
パーティインと共に弱体化が予想されたサワオですが、思いの外そのままの強さを発揮。レオ達が2人がかりで幹部に完敗したのに対し、ゴリラ&サワオは見事な勝利を収めており、ジューマン4人の戦力ヒエラルキーが物凄い勢いで落ちていきます。これはさすがに、なんらかの強化展開が待っていると思いたいところ。
「助けが必要な時は呼んでくれ。必ず駆けつける。それが、俺の罪滅ぼしだ」
脳内妄想会議を乗り越え、デスガリアンと戦う事を決意したさわおは、5人に告げていずこともなく歩み去って行く……。
「結局一人で行っちゃうんだ」
「すぐには無理でも、ちょっとずつ仲良くなれるよ」
「なれるかなぁ、お友達」
その後ろ姿に、友達いない発言を思い出した大和は、しばし沈思黙考。
「みっちゃん!」
「「「「みっちゃん?」」」」
「今度、みんなで、ご飯食べようね!」
驚愕の展開に心の針が振り切れ、ダッシュで戻ってくる野生動物。
「いつ?! いつ行くんだご飯?!」
食らいつかれた大和くん、超目が泳ぐ。
「なんだ…………社交辞令か」
色々あった今回ですが、コミュニケーション能力高い人の軽い気持ちの一言が、相手によっては物凄く重い時があるんだよ! というここが一番面白かったです(笑)
圧倒的な対野生攻撃力を誇る風切大和にも、失敗はあるのだ。
「マジめんどくせぇ」
さすがに空間に限度がある為か、5人目の居候にはならなかったさわおですが、住まいに帰るわけでもなくサバイバル生活に突入しているのは、デスガリアンに狙われる身なので周囲を巻き込まないように……と、一応考えているという事でしょうか。
「楽しみだなぁ……」
川に釣り糸を垂らしながら、ジューマン達のぬいぐるみを手作りするさわお。……待てさわお、そっちはどん引きルートだ!
ここまでの流れからシリアスに行くのを期待させておいて、かなりコミカルに寄せるという予想外の展開。面白いか面白くないかで言えば面白かったのですが、何だか凄く、眩惑された気分があります(^^; 表向き明るいけど、こっそり特大の時限爆弾とか仕掛けられているのではないか、今回。……今後の展開次第では、作品全体の流れを変えたエピソードになる可能性もありますが。
あだ名、という形で名付け――仲間入りのイニシエーションを行うのを、キャラクターの設定からしっかり繋げたのは、地味に秀逸。
さわお自体は、人付き合いには問題が多々あるけれど別に孤独を愛してはいない、という事で、既存5人とは絡めやすそう。物語が「さわお真人間化計画」になりそうですが、面白く転がってくれる事を期待。
で、予告で印象的だったグラスパリーンが本編ではカットされた為(物語としては無い事になった為)、ジニス様をどう捉えていいのかは、またちょっと難しくなってしまいました(^^; まあ、予告のワンカットだけでは、“何に対するリアクションなのか”を確定できないので、
「馬鹿な……イギリスがEU離脱だと?!」
(ユーロ溶かした)
「馬鹿な……マリアライトだと?!」
(ドゥラメンテ頭で溶かした)
「馬鹿な……はーちゃんがプリキュアだと?!」
(補習メイツ押しだった)
など様々な可能性があり、見なかった事にするしかないでしょうが。
キャラクターの肉付けとして、有ると無いとではだいぶ印象が変わってくるシーンを、予告にだけ残した、というのはちょっと中途半端な事をした感はあり。早めに改めて、サワオ離脱に対するリアクションは確定してほしい所です。
次回、セラとタスク、ようやく夏服。そして面倒くさいブラザーズ結成?!