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『仮面ライダーオーズ』感想27

◆第42話「氷とグリード化と砕けた翼」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子
映司を先に行かせる為にアンキロヤミーと一騎打ちにもつれ込んでいたごバースは、足下を凍結されて大ピンチ。
「ここまでだなバース、終わりだ」
「……悪いが終わるのはお前だ」
「ほぅ……その状態で、どうやって終わらせるつもりだ」
「――そろそろ俺の上司の出勤時間なんだ」
前回今回と後藤さんがフィーバータイムなのですが、終盤で初参加となった舞原監督が、密かに後藤さんを好きだったりしたのでしょうか。
アンク姫(ヒロイン枠)を助ける映司(ヒロイン枠)を助ける後藤(ヒロイン枠……?)を助ける里中(白い鳥人枠)というヒロイン連鎖反応が発生し、颯爽と現れた里中から今日もリロードを受けたごバースのセルバーストによりアンキロは撤退。
その頃、山でドクターと出会い、体内のコアメダルの反応に苦しむ映司は、ドクターに恐るべき事実を突きつけられていた。
「火野くん、君は知ってて見ないふりをしてるんですか?」
「え?」
「自分がグリードになろうとしている事に」
ここまでそれとなく匂わされてきた要素がハッキリと言明され、身動きもままならない映司を相手に、カラフルに花を散らした山の中で人形の為にティーセットを並べながら、ドクターは“グリードとは何か”について、淡々と語り始める。
「いいですか火野くん。グリードとはその名の通り欲望の塊です。が、逆をいえば欲望しかない。ただ欲し続けるしかなく、どれほどの欲望をいだこうとも、それが満たされる喜びを味わう事はできないんです」
「どういう事ですか?」
「例えば欲望が満たされたと感じるツールの一つ――感覚。見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる。つまり人間の五感。グリード達が見る世界の色は、くすんでいます。音は濁っている」
ここで、不自然に散らしてあったカラフルな花の映像にフィルターをかける、というのは印象的な演出。
「君もそろそろ、何かを感じている筈です。いや……感じなくなっていると言った方がいいですか。だからグリードは欲するんです。ひたすらに。彼らがコアメダルを揃えて完全復活した時には、人間の感じるそれら全てを貪るでしょう。人間ごと喰らって」
「人間、ごと……?」
「それを更に大きく暴走させれば、世界そのものを喰らう。それでも満たされない絶望的なまでに深い欲望で。それは、塵一つ残らない、美しい終末」
いよいよラスボスぽくなってくる、ドクター真木。かなりオーバーにギャグもさせていたキャラクターだったので、少々意外。個人的に、人形周りの演出は、やりすぎ感あってあまり好きではなく(^^; ドクターが嫌いというわけではないですし、“世界と向き合っていない”というキャラ付けとしては面白い表現ではあるのですけれど。
「……だったら、尚更メダルは渡せませんね」
「しかし渡せば、君は美しいものを美しいと感じられるままに、終末を迎えられますよ。――こうならずに」
ドクターの両腕が怪物化するが、そこで里中とバースが乱入し、映司を拾って一時撤退。
「……なるほど。ドクター真木はもうそこまで」
里中は鴻上会長にドクターの状況を伝え、後藤も泉兄妹に映司に起こっている筈の変化を伝える。
「味……味覚だ」
前回の泉家での食事シーンにおいて映司が変な表情になったのが伏線で、その事に気付く泉刑事。比奈は映司をこれ以上オーズとして戦わせるわけにはいかないと決意を固め、その映司は、河川敷で魚を焼いていた。
「なんか……味の抜けたガムみたい」
機能を失いつつある味覚で魚を頬張りながら、映司はアンクがアイスキャンディーを愛好していた理由に気付く。
「そっか……刑事さんの体使ったから、初めて味がわかったんだあいつ」
決して満たされないからこそ求め続けるしかない、というグリードの本質が明らかになると同時に、味覚を失っていく映司という展開は、体の痛みなどよりも遙かに視聴者に想像しやすいという部分も含め、酷い、実に酷い。
基本は《平成ライダー》が様々な形で本歌取りとして描いている、ヒーローと怪人が根を同じくする(していく)改造人間テーゼですが、クスクシエを舞台に繰り返し料理の映像が多かった蓄積も活き、身近な感覚の欠落というのが非常に衝撃的になりました。
同時に、これがプトティラの力を“借りて”、身の丈以上の力に手を伸ばした映司が負う代償といえ、『オーズ』の世界観にぴたっと収まったのはお見事。
「おまえちゃんと言えばいいのに」
ここで映司が幻の姫に語りかけるのは、ヤミー絡みではない内容に加えてグリードに対する理解が混ざり、二人の距離感がこれまでよりも近くて良かった台詞(物理的には離れているけど心理的には近づいて、でも姫は背中を向けている、というのがまたいい)。
「……まあ、言うわけないか」
一方、ドクター屋敷では駄菓子をうまいうまいと食べ続けながら、混ざっていた剣玉も平然と食べて同じ言葉を口にするガメルと、そのガメルに渡された駄菓子にお礼を言いながらも渡された端から投げ捨てるメズール、そんな二人を冷めた目で見下ろすカザリ、とグリード達の欠落も描写。
初期からひたすら萌え路線のガメルですが、感情表現が素直な分、むしろアンクよりも哀しい存在に見えてしまい、ヒロイン度が急上昇だ!!(待て)
翌日、オーズを誘き寄せる為にドクターの指示を受けたアンキロヤミーは、賑わう広場を襲撃し、その能力で人々の下半身を凍り付かせる。
「助けてほしいならオーズに頼め」
「オーズ?」
「早く叫べぇ!」
「オーズってなんだよぉ……」
アンキロはうろたえる男を全身凍結させた上で粉々に砕き、以前のプテラノドン回もでしたが、今作、一般人被害の描写でかなり攻めてきます。
「オーズだ、叫べぇ!」
「助けて……助けて! オーズ!」
「オーズ!」「助けて……オーズ」「オーズ……助けてぇ……」
助けを求める懇願の悲鳴は木霊となって響き渡り、存在を知らないヒーローの名前をただ闇雲に人々が叫ぶという、凄まじくえぐいシーン。
「誰でもいいから助けを求める」のでもなく「知っているヒーローに助けを求める」のでもなく、「知りもしないヒーローに助けを求める」というのが、実に凶悪。
認知されたヒーローを大衆が応援する事でヒーローに力を与える――「守る」ヒーローと「支える」大衆の関係性――というテーゼのシチュエーションを裏返した上で、無辜の誰かが害されようとする時に駆けつけるというヒーローの意義を破壊し、わけもわからずにその名を呼ばせる事でヒーローを強制するという、実に残虐非道な展開で、ここに来て物凄い弾を撃ち込んできました。
火野映司は、
助けたいから助けているのか?
助けを求められているから助けざるを得ないのか?
その境目がわからなくなっているのが火野映司という主人公であり、その映司を更なる地獄の底に引きずりこまんとする、声・声・声。
「心配しないで……大丈夫だから」
「なんで……なんで笑ってるの? 映司くんの事だよ!?」
広場へ向かおうとする映司をしがみついて止める比奈だが、そこにも助けを求める懇願の叫びは怒濤のように打ち寄せる。
「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」
「やめて……勝手に呼ばないで。映司くんは神様じゃない!」
しかしその映司に助けられているので、ちょっと複雑な表情になるお兄ちゃんがワンカット入るのが秀逸。
「オーズ」「オーズ……」「オーズー」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「助けてぇ……」
「……やめて……やめて! やめて!!」
「比奈ちゃん。ごめんね。でも……ありがとう」
姿なき群衆に向けて叫ぶ比奈の心を受け止めながらも、映司は走り、オーズ@ラトラータに変身。ラトラータの挿入歌がイントロから入り、広場に飛び込んだオーズがライオンフラッシュで人々を解放する、といういっけんカタルシス全開の演出なのですが、凄く、えぐいです。前半の映司の変化も強烈なのですが、今回は、ここがとにかく凄かった。
アンキロヤミーは、呼ばれもしないのに走ってきたごバースが、ヒーローの重要な階梯であるバイクで跳ねるをキめて一騎打ちに持ち込むが、オーズの前には悪アンクが出現。
「アンクの気配が……」
「そう。随分抵抗したけど、消えたよ。でも、一つだけ気になってる。ねえ、アイスって美味しいの?」
「さあ……でも、一つだけ言えるのは、あいつはそう簡単に消えるほど、素直じゃないって事かな」
「じゃあ、僕を倒して確かめてみれば? でもその前に……僕のメダルを返してよ!」
「違う。おまえのメダルじゃない。――あいつのだ!!」
オーズはプトティラを発動し、激突する氷と炎。その戦いを見つめる、泉兄妹。
「結局、俺達が望んでる通りに戦うんだな、彼は」
「なんで?! わたし映司くんに戦ってだなんて」
「比奈は、アンクの事だって助けたいと思ってたんじゃないのか。同時に俺の事も助けたい。けど映司くんが戦うのは嫌だ。俺も同じだよ。さっきの人達もそうだ。みんな勝手な望みを言う。それを黙って、全部引き受けるんだ彼は。そんな事が出来る人間だけがきっと……」
「オーーーズ……!」
ラスボスの座はまだまだ諦めない、と嬉しそうに吼える鴻上会長が1カット挿入。
第1話以降、基本的に比奈ちゃんフィルターのかかった状態でしか登場していない泉刑事ですが、ここで中間地点からの個人の意見をしっかり言わせて存在感を出したのは巧みで、この後でも効いてきます。
私の映司観は「はぐれ外道」なので、映司が黙って全部引き受ける事、を映司の善良さとしては受け止められないのですが、この辺り、個々の映司観によってだいぶ見え方の変わってきそうな展開。
ごバースは零距離ブレストキャノンでアンキロを撃破するが、オーズvs悪アンクの激闘は続き、咆哮するプトティラの姿を見ていられなくなる比奈。
「しっかりしろ! 比奈が映司くんの手を掴むんだろ?! このまま彼を、都合のいい神様にしちゃいけない」
「……うん」
ああそうか、映司は自分の欲望が無いから、他人の欲望を受け入れてかなえる無限の器になれるのか。
境目のわからない映司はヒーローという姿さえ虚ろに届く響きを反響させているだけの空っぽの器であり、そして中空には神が宿るがゆえに。
思えば度々、会長やドクターが「器」という言葉を口にしていましたが、その意味がようやく理解できた気がします。そもそもヒーローとは、神様仏様の代理システムとしての側面を持つわけですが、そのヒーローから個人の欲望を消していき、システムが遂行する「行為」だけが残った時、それは限りなく神様仏様に近い存在になるのではないか。
比奈ちゃんが映司を守ろうとするのは基本的に親しい人間への感情論なのですが(それも否定されるわけではないですし、映司にとっては必要なものなのですが)、ここで近い時間を共有していながらも違う距離感を持った泉刑事が、“誰かを人身御供にして都合の良い神様に仕立て上げてはいけない”(そういう社会を肯定してはいけない)という理屈で現状を否定してくれたのは、泉刑事の立ち位置が活きて秀逸でした。この最終盤で、泉刑事というピースが物語の中に綺麗にはまってくるのは、小林靖子がさすがの手腕。
余談ですがこの、「システムに従い行為だけを遂行する限りなく神様仏様に近い存在」は、東映ヒーロー作品にも数多く参加している會川昇のヒーロー愛が濃縮された超人幻想アニメ『コンクリート・レボルティオ』(2016)に登場するアースちゃんといえ、アースちゃんは魔女に夢(個人の欲望)を与えられる事でシステムに変調を来してしまうのですが、個人の欲望を失う事で神様に近づいていく映司とは、鏡面的な描写と言えるかもしれません。
もう一つちなみに、今回ちょっと思い出したのが、『特捜ロボジャンパーソン』(1993)第1話のこのやり取り。


「最悪だ、絶望だ、神も仏もないのか!」
「助けてぇ、誰か、助けて!」
――風を切るJPカード。
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス」
レスキューポリス>の陥った行き詰まりを打破する為に、古典的なヒーロー像への回帰を目指した作品ですが、それ故に、シンプルなヒーローへの希求とヒーローの理念が初登場シーンにストレートに凝縮されています。この作品が、紆余曲折の果てに、とんでもない所へ辿り着いてしまったのも、面白い所(ちなみに小林靖子の脚本デビュー作)。
プトティラと悪アンクは空中戦に突入し、プトティラは悪アンクの翼を切り裂くと、落下した悪アンクの核となるコアメダルを両断。
「まさか……僕の、コアが……僕のっっ!!」
断末魔の悲鳴を残して悪アンクは大量のセルメダルと化し、色々ひっかき回した割に、意外とあっさり消滅。グリード勢初の完全リタイアとなりました。存在のしぶといグリードも、人格部分のコアメダルを直接破壊すれば倒せる事が判明しましたが、とにかくグリードは、腹のガードが甘いなぁ(笑)
悪アンクを倒すも苦しみもがくプトティラが無意識に伸ばした手を比奈が掴み、何とか元に戻る映司。そして……散らばったセルメダルの一部が集合するとアンクの右手だけが再構成され、復活した姫は、更に残りのコアとセルメダルを使ってなんと泉刑事@クジャク頭のボディを作り上げる!
「映司……今度ばかりは礼を言ってやってもいい。目障りな偽物が消えてくれたからなぁ。……後は……」
悪い王子から解放されたのも束の間、何故か泉刑事に迫る姫、でつづく。
個人的に、非常にえぐみの強いエピソードでしたが、今作初参戦の舞原監督が手を緩めずにまとめて、お見事。実質新キャラに近い泉刑事に関しては、アンクをあまり意識しないで撮れる監督の方が逆に良かった、みたいな面もあるのでしょうか。基本的に好青年要素で構成されている泉刑事ではありますが、真っ当な大人の男の姿が劇中のバランス的にも良い案配でした。その内、身に覚えの無い倉庫の上に立っていた案件とかで職務質問されるかもしれないけど!(おぃ)
後合わせて、そんな信吾に育てられた比奈ちゃんが真っ当であるがゆえの身勝手さを自覚し、そこから目を逸らさずに映司に手を伸ばす、というのも良かったです。
果たして映司はいったいどこへ辿り着くのか、その空虚を埋める事が出来るのか、最終盤の転がし方が不安とともに楽しみ。
次回――ヤクザ復活! そして、ヤクザとヤンキーが手を組んだ?! これだけやっておいて、心を一つにしたアンク姫と映司達が一致団結してドクターの野望を打ち砕く! みたいに簡単に行かない所が徹底していて凄い。