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『重甲ビーファイター』感想24

◆第27話「甦るトラ刈り魂」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
再生怪人に、どうして今作ここまでワーストクラスのエピソード登場のイカリボンバ? と不安を誘う次回予告だったのですが、坂本演出と扇澤脚本が思わぬ化学反応を起こし、変な面白さがひたすら最後まで加速し続けて面白いという快作。
街にイカリボンバ2が出現し、出撃するビーファイター
「奴はこの手で確かに」
と言って出てくる回想シーンがビートマシンによるで粉砕で酷い(笑)
ビーファイターは全く同じ戦法(マグネットによる吊り上げ→カブトとクワガタのビーム砲で撃破)で2代目をスクラップにするが、バラバラになった2代目は、なんとその場で再生。そしてすかさず自爆。また再生。
イカリボンバ2は何度でも自爆を繰り返すのだー。貴様等を粉々にするまでな〜」
初代同様、喋りも動きもコミカルなイカリボンバ2なのですが、死ぬ度に甦ってまた死ぬという、極めて凶悪な仕様。
敵を根絶やし尽くすまで玉砕と再生を繰り返すというのは、ある意味で、目には目を歯には歯を、昆虫魂には昆虫魂をになっています(笑) ……扇澤さんなので、きっとわざとだ。
「自慢のインセクトアーマー、さて、何回の自爆に耐えられるかな?」
「2回目の自爆、ほらほらいくぞー」
「や、やめろ!」
敵のノリが軽い割に、かなりシリアスに追い詰められるブルービート。
「まさか、俺の獲物のブルービートがこのまま粉々に」
予想外の展開に、視聴者よりも焦るブラックビート(笑)
「あんなガラクタにブルービートは渡さん」
慌てて地球へ急ぐブラックだが、ブルービートは盛大な自爆攻撃を受け、続けて大ダメージ。ところがこの光景に、今回冒頭からナチュラルに意識の存在を示される、まだ働けるのに捨てられた無念を抱える燃えないゴミ達が、強い興味を示す。
(羨ましい……期待されているこいつが、見捨てられる事のないこいつが……)
そしてその一つであるバリカンが、イカリボンバ2の再生に混ざってしまい、左手に融合。困惑するボンバだが、そのチャンスに、盛り上がるゴミの山。
(バリカン、おまえに託す!)
(積もり積もった、私たちの悔しさを、涙を!)
(その全てを今、おまえに託す!)
燃えないゴミの山から迸る謎のエネルギー(笑)
無機物が当たり前のように意識を持っていて不思議コメディ時空に片足を突っ込んでいるのですが、“社会から疎外された者の悲哀”というのは実に扇澤ワールドで、ゴミ達の悲嘆にビックリするほど違和感がありません(^^;
謎のエネルギーを浴びたイカリボンバ2は、左手が巨大なバリカンと化したイカリバリカンとなると、心の声の赴くままに走りだし、それを慌てて追いかけるシュバルツと、現場に置き去りにされたボンバの本物の左腕を回収するビーファイター
「ふん、気にするほどの奴ではなかったわ」
ピーピングブラック、ホッと胸をなで下ろして、帰宅(笑)
街に繰り出したイカリバリカンは、次々と道行く一般市民の髪を刈っていき、ブルービートはその妄言から真相を察知する。
「ゴミとして捨てられた事への、怨念だ」
「怨念!?」
「その怨念が、イカリボンバの体に入り込み、奴を突き動かしているんだ」
「バリカンに、怨念なんてあるわけ?!」
美容院に乗り込んだイカリバリカンは、最新式の理髪用具を前に、大激怒。
「俺を見捨てたおまえ等を、俺を錆びつかせたおまえ等を、俺は揺るさん! 自爆!」
「危ない、伏せろ!」
いや、市民を助けろ。
面倒な事に自爆・再生能力は保有したままのバリカンにより、思いっきり吹き飛んで瓦礫の山と化す美容院。
……えーと……店員2人、死んでいませんか(^^;
今回面白かったのですが、ここだけが、どうかと思った部分。不思議時空に片足突っ込んだ坂本演出では、これぐらいでは人死には出ないのかもしれませんが、ビーファイターに市民を助ける動きがなかったり、やりすぎでよろしくなかったと思います。
美容院を吹っ飛ばしたイカリバリカンは大作行きつけの床屋を次の標的とするが、そこでは昔気質の店長が、磨き抜かれた手動のバリカンを愛用しており、それに気付いたバリカンは「幸せ者だな、おまえは……」と言い残して退店。
「なんなの今のあれ? ジースタッグ」
「バリカンだ。……待て!」
「バリカン……?」
敵は7割ぐらいギャグなのに、ビーファイター側の対応が終始シリアスな為、謎の面白さに突入(笑)
「どうして俺に頭を刈らせない?! かなり錆びてるさ、電気じゃないさ、凄く古いさ、それでも俺は、バリカンなんだ」
「ガオーム様、どうかあの大馬鹿者の回収を」
バリカンに生まれた生き様を全うしたいと暴れ回るイカリバリカンだが、シュバルツのお願いに応えてガオームツモされ、要塞へ回収。こいつどうしよう……と頭を抱えて考え込む、シュバルツ、メガオーム、ブラックビート。あまり途中から作戦に口出しはしない(物理で手は出す)ガオーム様が会議に参加している姿が妙におかしく、個人的にはこの辺りから、何やっていても面白くなってきてしまいました(笑)
「ブルービートだけは俺がいただく。それで良ければ知恵を貸すが?」
何かを閃く嫌味エリート。
「い、いや、だ、うーん……だ〜」
プライドが邪魔をする叩き上げ常務。
「シュバルツ」
社長、叱る。
「は! その手とは?」
ブラックのこだわりと一応の知性、シュバルツとの軋轢を巧く処理しつつ、途中で割って入るメガオーム様が素晴らしいマネジメント(笑)
ブラックビートはバリカンの怨念をむしろ強化して利用しようと提案し、今日は機嫌がいいメガオーム様は自らそれを実行。メガオームのエネルギーを受けたイカリバリカンは、左手のバリカンが更に巨大化した、怨念の化身メガバリカンへと姿を変える。
塗り替え怪人という事でか3段階目の部分変化なのですが、バリカンが徐々に大きくなっていく、というのが物語のクライマックスへ向けた盛り上がりとも重なり、良いアイデア
「バリカン、教えてやるんだ貴様の実力を。今まで誰一人として刈る事が出来なかった頭を、貴様のバリカンで見事に刈れ!」
捨てられたゴミ達の怨念が怪人を暴走させて次々と市民をトラ刈りにしていく、なんてプロットから、決戦へ向けた格好いい台詞に繋がってしまう扇澤さんの台詞のセンスは、本当に恐ろしい。ブラックビートの、落ち着いて考えると馬鹿なんだけど台詞回しがやたらに格好いい機能も見事に活用されています。
「俺はバリカンだ。最高のバリカンだ。人間どもに教えてやる。俺に刈れない頭などない事を!」
向井博士がアースアカデミアでボンバの左腕を解析している間、街をパトロールしていたビーファイターの前に姿を見せたメガバリカンは、左手に鈍く輝く巨大な怨念の刃を打ち鳴らす。
「よし! こいつで刈らせてもらうのは、貴様らのその角だ!」
「「「角?!」」」
「角はインセクトアーマーの感覚中枢だ。失えばレーダーもサーチも、一切使えなくなる」
バリカンで頭を刈る→高難度の頭を刈れ! まではわかる展開として、それがギャグではなく、意外と有効な狙いだったと転がるのが、今回の面白さ。
「それが狙い?」「それが狙いか!」
「その通り! イカリボンバ2〜、ずっぽりやっておしまい」
ここ数話、3馬鹿トリオを全員出さず、作戦担当+ブラックビートという形で省エネ&出番集中期間なのですが(3馬鹿のやり取りは面白いけど黒含めて4人出すと台詞が分散しすぎるので、これは良いバランス)、今回は出ずっぱりのシュバルツが絶好調。千葉さんはアドリブ含めてお任せ範囲も多そうですが、スーツアクターさんとの呼吸も合ってきた感じで、千葉さん得意の甲高い絶叫とドスの利いた低い声の矢継ぎ早の切り替えが、狂ったマシンとしてのシュバルツのテンションにもピッタリ重なってきています。
頭部狙いのバリカンの攻撃に苦しむ緑を助けようとする青の前には、黒がお邪魔虫。
「貴様の角だけは、この俺がへし折ってやる」
ここでもしっかり、主題と絡めて洒落た台詞にしてくるのがお見事。
なんとかメカバリカンをセイバーマグナムで粉砕するビーファイターだが、やはり再生。しかしその時、本物の左腕に起こった反応から、向井博士が再生機能の仕組みを突き止める。イカリボンバ2は、各パーツが磁力波を放つ事で再結合していたのだった。これを聞いたビーファイターは、ビートマシンを呼び出すと、いきなりのメガビートフォーメーション。
「撃つなら撃て! 何度でも俺は再生する。そして貴様等の角を刈り、見捨てた人間どもを見返してやる。俺は世界一の、バリカンだぁ!」
対巨大兵器用の切り札かと思われたメガビートキャノンでしたが、怪人1体相手に、容赦なく発射。
遡れば初期宇宙刑事は頻繁に巨大兵器を繰り出していましたが、今後そういう路線で用いていく事になるのか。
「ぎゃははははは〜、この3馬鹿トリオがぁ! 無駄弾撃っちゃって〜。さあ再生しろ、イカリボンバー2ー! …………あら?」
自虐ネタと共に高笑いするシュバルツだったが、バラバラになったメガバリカンは無反応。ビーファイターはメガビートキャノンを放つと同時に、メガヘラクレスの角から反磁力波を放つ事で再生機能を妨害していたのだ。
ここまでしっかり伏線が積み重ねられていたので、角から磁力が飛び出します、は唐突になってしまって惜しかったですが、これが、科学と昆虫魂の融合だ!
主題歌まで流れだして勝ち誇るビーファイター……だが!
再生機能を失った筈のバリカンの刃が重苦しく蠢き、そのパーツがじわじわと一つに集まり始める。
「俺は、バリカン……世界一の……」
生まれてきた意味を全うできず、打ち捨てられたゴミ達の無念はそう簡単に消え去りはせず、再び形を取っていく。どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!
「なんて凄まじい執念なんだ……」
「俺は……バリカン……」
科学と昆虫魂の融合がコンセプトのヒーローですが、魂が科学を乗り越えるのも、凄く『ビーファイター』で、非常に高い納得感があります(笑)
ビーファイターはセイバーマグナムを構え、今度こそイカリバリカンを完全破壊。
「眠れバリカン」
元はジャマール怪人だがそれを突き動かした怨念は人間の身勝手さと欲望が生み出したものだ、という事で、仕草や台詞にやや情感をたたえる形でトドメを刺し、最後はちょっといい話風味に。
「どうやら勝負はまたお預けのようだな。ブルービート」
「お、お疲れ様でした」
ブラックは格好つけ、シュバルツは慌てて、ジャマール要塞へと帰還。残骸の中に残った錆びだらけのバリカンを拾い上げる大作、からその古いバリカンを手にする床屋の娘(今回冒頭では、新しい道具に買い換えれば良いのに、と言っていた)に重ねる形でシーンチェンジ。
「お父さん、そのバリカン、うちで使ってあげようね」
物を大切にする大事さを語る、ビーファイター
「なんかあったんかい、トクさん。泣いちゃって」
「ねぇよなんにも。ただこちらの3人が、こいつの二代目を届けにきてくれただけよ」
こうしてバリカンは、再び役割のある居場所を与えられ、床屋の机で光を放つのだった――。
ナレーション「見捨てられていたバリカンが一つ、この日、2度目の人生を歩き出した」
……て、無機物なのに、扇澤ワールドに完全に収まった!(笑)
社会の落伍者の諦観と悲哀という、扇澤さんの通しテーマは今作ではかなりマイルドな形で組み込まれているのですが、それが無機物に仮託される事で比喩として鮮明になり、「物を大事に」というシンプルなテーマと繋がった浄化と再生が綺麗にまとまりました。台詞回しも冴え渡り、半分ぐらい不思議コメディに足を踏み入れつつ、7割方ギャグの怪人と終始シリアスな展開の戦闘のバランスも良く、今作ここまで一番の傑作回かも。
――次回、夏の怪談回で炸裂するのは、拓也のモテパワーなのか、それとも、ウラメシエネルギーなのか?!
古くて新しい超次元の世界を、君は見たか!