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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第32話

◆第32話「心は裏表」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:下山健人)
今週から『ゴースト』が終了して『エグゼイド』がスタートした事で、スーパーヒーロータイムの開幕映像が変わったのですが、各キャラクターが飛び出してくる所で、サワオ、体育座り。
強烈な掴みでした(笑)
ジュウオウジャー一同は森家でパンケーキパーティを開き、自由に振る舞うメンバーに、今日も口やかましい小舅のタスク。ひたすら大和に焼かせて美味しい所だけいただくアム、我慢ができなくてほぼ液状の生地をひっくり返そうとするレオの2人は概ね平常運行として、ホットプレートいっぱいに生地を流し込むセラがなかなかハイレベルで、これまでなかなか崩せずにいたセラも軽いギャグに巻き込んだのは良かったと思います。
そして初めてのパンケーキパーティに食べる前から胸一杯のさわおは、ドリーム溢れるデコレーションの山を築き上げており、そちらへ向けられるタスクの矛先。
「パンケーキの事をわかってなさすぎる!」
「俺に……パンケーキを焼く資格は、ない……」
がっくりと生クリームの泥沼に沈み込むさわおの姿に、タスクが言い過ぎを反省し、大和達が慌ててフォローを入れている頃、デスガリアンではジニスがブラッドゲームの再開を宣言。
「では諸君。ブラッドゲームを、再び楽しもうじゃないか」
その一番手として送り込まれたのは、人間の裏の顔を増幅させるリバース光線を放つ、オモテウリャー。心の裏に隠している悪意を増幅された人々は喧嘩を始め、その光景に変身するジュウオウジャーだが、ライオン、シャーク、イーグル、タイガーが、次々と光線の餌食になって心の裏面を増幅されてしまう。
青「ちょっと。頼む、とか言ってるけど、ちゃんと頼んでなくない?」
赤「被害妄想だよ。セラはプライド、高すぎるんじゃないの?」
白「確かに。セラちゃんはクールビューティを気取ってお高くとまってるし、大和くんはいい人ぶってる偽善者に見えるかな〜」
赤「偽善者? 俺が?」
青「お高くとまってるって、腹黒いあんたに言われたくないんだけど」
赤「可愛子ぶってんじゃないよ」
青「何よこの偽善者」
マスクのゴーグル部分に赤い吊り目マークの入った赤青白は早速身内で揉め始め、シャークの顎をくいっとやるイーグルの本性は、やはり鬼畜属性だと思います。
黄「お、みんないい所突いてくるね〜」
そして約1名、あまり変わらなかった(笑)
腰に細い手(中身入ってない)を当てた陽気な道化師風の怪人は、背中を向けると凶悪な本性の顔が露わになり、合わせて巨大な腕が飛び出してくる、というのは秀逸な造型。裏表怪人はリバース光線で人間関係を破壊すると嘯くが……
「そんなの全然大した事ねぇなぁ。だいたい、裏の顔ぐらいで、俺達の関係は壊れねぇよ」
同じ光線を浴び、ゴーグルに吊り目は入っているものの、凄く普通に、緑の肩を抱く黄色(笑)
まこと、馬鹿と大器は紙一重です。
ところがやたら大げさなジャンプでサワオが3人の仲裁に入ろうとした事で、事態は燎原に広がる炎のごとく大炎上。
青「操の事、面倒くさい、と思ってるくせに」
ぐさっっっ(笑)
青「中途半端に優しくするとことかね」
「なーにが悪い。喜んでんじゃねぇかよ」
白「そういうセラちゃんだって、操くんに巻き込まれないようにしてない?」
「面倒くさいから仕方ないじゃん」
赤「アムこそなんだかんだ、一番距離を置いてるように見えるけど?」
「ちょうどいい距離取ってんの」
長丁場の戦隊シリーズでは、途中参加の脚本家が、シリーズそこまでの問題点や不足部分を外からの視線で汲み取って本編に組み込む事で良いスパイスになる事がしばしば有りますが、BD−BOXの特典映像で脚本を担当していたという下山さんが、本編初期から入っていると書きにくい所を、鮮やかに突いてきました(笑)
特に大和くんがさわおに対して若干引き気味なのは明確に繰り返されていたので、増幅された暗黒面という形とはいえ、ここでハッキリと触れたのは、大和くんといえども決して無敵のコミュニケーションモンスターではない、という宣言にもなって今後を考えても良かったと思います。
下山さんはどうも、その場のノリの面白さ優先でキャラクターの積み重ねを二の次にする印象があるのですが(これは、面白さの違いであって、必ずしもどちらが正解というわけではないですが)、今回はその“ノリの面白さ”を怪人の特殊能力と繋げ、「キャラの崩し」=「裏の面の増幅」とする事で、上手くコントロール
パンケーキパーティの時の慰めの言葉の裏を感じたサワオはショックのあまり逃走。裏表怪人が自分の能力を確認して高笑いしながら姿を消すと特殊能力が解除され、赤青白は気まずい表情で顔を見合わせる事になり、5人は一度、森家へと帰還。
「みっちゃんと仲間になって、だいぶ慣れたと思ってたけど、結局俺達は裏表を使い分けてたって事」
「やっぱりレオくんみたく、裏表無いのが一番いいのかな〜」
「みんなが俺みたく言ったら、それこそあいつへこみまくって、もっと面倒くさくなるんじゃ」
今回凄かったのはこの、“人間同士の付き合いには多少の裏表や、それぞれの適切な距離感がある”という事を、否定しなかった事。
怪人の特殊能力は善意を悪意に変えるのではなく、あくまでも“心の裏で考えている事の増幅”であり、実際、大和達もそれぞれちょっぴりは考えていたからこそ、多少気まずいわけで。さわおに対する態度への言及も、自己申告ではなく他人から指摘される……つまり、実は大和はこう考えているのではないかとちょっぴり思っていた事がちょっぴり的を射ていたけど、普段はそこは敢えて口を出さない関係、を描いた上で、誰もその部分は否定しない。
善い悪いの観念とは切り離した所で、“コミュニケーションとは何か?”という今作の中心テーマが描かれたのは、切り口として非常に良かったと思います。
「そんな事は無い。僕だって面倒くさいけど、みんな僕には気を遣わない」
「それはタスクくんと操くんの面倒くささは違うじゃない。それこそ、表と裏っていうか……」
「まあ……きつい事言われても、本心じゃない時は、わかるしね」
「僕と操は同じように不器用だけど、みんなと一緒に居た時間が長い分、表と裏、どっちが本心か互いにわかる。その違いだ」
「もう少し時間が必要って事か……」
「それと……互いの心に一歩踏み込む勇気、一歩踏み込まれる勇気、かな。みっちゃんなら大丈夫。俺は信じてる」
まあ、さすがにそのまま剥き身だと刺激的すぎると判断したのか、一緒に過ごした時間が長ければストレートな言葉をぶつけても互いの本心がわかるから大丈夫、と裏も表もあるのが人間という話から少しマイルドな方に論点をずらすのですが、下山脚本だけに、配慮としてずらしたのではなく、素でずれた可能性もありそうな気は若干。いや今回に関しては、ずらして良かったと思うわけですが。
というかこれはこれで、タスクはタスクなりの理解であって、大和・セラ・アムは、もう少し別の事を考えていそうな気もします(笑)
マリオおじさんが顔を見せ、TVで国際会議の話題を知った5人は、裏表怪人の狙いが各国首脳にリバース光線を浴びせる事で国際紛争を誘引する事だと気付く。会談で掴み合いを始める首脳達の「この野郎! こうなりゃ戦争だ!」の字幕というか吹き出しは面白かったです。
そうはさせまいと怪人の行く手に立ちはだかる5人だったが、心に深い傷を負いながらも懸命に姿を見せたさわおを気にした隙に、まとめてリバース光線を浴びてしまう。
赤「何で来ちゃったんだよみっちゃん」
白「一番ダメなタイミング、わかってないの!?」
青「足手まといになるでしょ」
さわおに向けて次々と言葉の爆弾が炸裂し、字幕と効果線のエフェクト付きでさわおの受けた精神的衝撃を表現する、という演出は個人的には好きではないのですが、効果音と吹き飛ぶさわおの姿だけで精神ダメージを描写するのはちょっと難しかったでしょうか(この前のシーンの、足を手で強引に動かすようにして姿を現すさわおの姿は、心の傷と怯えの表現として秀逸だったのですが)。
黄「その通りだけど……おまえら、容赦ねぇな」
レオは概ねいつも通りなので、特に深刻なダメージ無し(笑)
「大丈夫だ……時間と勇気!! さえあれば、俺も、みんなの本心が、わかるようになるんだろ」
実はドアの外で5人の話を聞いていたさわおは、自ら覚悟を決めてそれを受け止めようとする。
「俺はみんなの本心が知りたい!! ……何でも言ってくれ」
緑「……わかった。操は驚くほど面倒くさい。独りよがりで、必要以上に、ネガティブだ!!」
リバース光線の影響による赤い目元の裏面増幅化粧が妙に似合うタスクの攻撃がクリティカルヒット
「おいタスク! それは俺より言い過ぎだろ!」
「本心だ。でも僕は……そんな操が好きだ! 大好きだ!!」
「なんだー! いきなり素直になって」
「ああそっか。普段なかなか素直になれない不器用なタスクの、裏の顔が表に出たんだ」
「裏の裏は……表……て、事?」
ここで、油断すると単に性格が悪くなっているだけになりそうだった怪人の特殊能力を丁寧に活用し、タスクの“裏の顔”が状況を変える、というのは上手く決まりました。大和くんがタスクを率直に「不器用」扱いし、裏面が出っぱなしなのも秀逸(笑)
「俺は今、力が漲ってるぞぉぉぉ!!」
タスクの告白を受けてテンションゲージがレッドゾーンを振り切ったさわおは本能覚醒し、怒濤のラッシュを怪人に浴びせた事でリバース光線が解除。
「大丈夫か操!?」
「大丈夫だ! むしろ、みんなに色々言われるのが、気持ち良くなってきた……」
やはり、そっちの道に本能覚醒してしまったか……。
そして、白い歯を見せて苦笑しながら、また大和くんが、1歩下がった(笑)
5人も本能覚醒するが、心だけではなく他者の向きを物理的に裏返す怪人に苦戦。しかしその時、緑がサワオと背中合わせ(どっちも表)になって攻撃するという妙案を思いつき、緑&サワオ、赤&黄、青&白が、それぞれ手を取り合って2人1組で攻撃を仕掛けるという、変則戦闘タイム。連続アタックで裏表怪人を痛めつけると、トドメは番長ファイヤー。……なお残り5人は、なんとなく身構えているだけでした。…………この次の一山(ジニス様の新たな遊び)で何らかの手が入るかと思いますが、さすがにこれはどうか(^^;
「なかなか面白かったよ。まあ、我々まであの能力で、裏の顔をさらさないで、良かったじゃないか」
最近、『プリキュア』を卒業して、『ガール○&パンツァー』にはまっている事は、部下には秘密のジニス様であった。
コンティニューした裏表怪人はクジライガーとサイキングをリバース光線で回転させるが、クジラが水をかけると何故か回転解除されたのは、海の浄化と共通した、状態異常の回復作用……という事でしょうか? トドメはW必殺技であっさり片付け、戦力ヒエラルキー的には、次の新展開までは、ロボ戦はおざなりになりそうな(盛り上げようが無いというか)。
かくしてリバース騒動は一件落着し、改めてさわお提供のパンケーキに皆が素直な感想を言う事に。
「これも、本当の友達となる為の第一歩だと……わかったからな」
「その意気だ操。不器用な者同士、頑張ろう」
絆ゲージを高める不器用コンビであったが……
「タスク…………言いづらいんだが」
少しずつ自分の言葉を口にする勇気を身につけてきたさわおは、本当は大和とコンビを組みたかったと発言。
「……え、俺?」
その告白に、本気で距離を取りたそうになる大和(笑)
大和は及び腰になり、さわおは甲斐甲斐しく大和に寄り添い、告白されたので告白を返したら何故かフられたタスクは不条理を噛みしめるのであった……でオチ。
前年、正直シリーズ構成としては力不足を見せた下山健人ですが、30話越えての本編参加なものの特典映像で作品には関係していた、という適度な距離感が良かったのか、ここまでの積み重ねをしっかり汲んだ上で、今作のメインテーマに大胆な切り口からアプローチする良い仕事。監督の差配なども出る部分ですが、前作では1エピソードにつきキャラクター2人ぐらいしか動かせていなかったのが嘘のように、ジュウオウジャー6人全員を生き生きと使いこなし、改めて、メインライターとサブライターの適性の違いというものも感じる1本になりました。
後、前年から気になっている事ですが、周囲の期待やオーダーはあるのでしょうけれども、正直、下山さんは無理にナンセンス寄りのものをやろうとしない時の方が、脚本のまとまりがいいように思えます(^^;
次回――ネコ科、というくくりはありなのか。