はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『重甲ビーファイター』感想42

◆第51話「光と影の終止符(ピリオド)」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
キャストクレジットも随分と寂しくなり、いよいよ迫る宿命の対決。
完成したジャマールホールの作用で冒頭から割とカタストロフな映像が入り、これが出来るなら3話ぐらいかけて、拡大するジャマールホールの影響で広がっていく被害……みたいに映像で危機感を煽っていっても良かったような。
莫大なエネルギー総量を誇るジャマールホールを破壊する為に、いっそ内側に飛び込んで中心核を叩く、という作戦を思いつくアースアカデミア。
「待って、そんな事したら……」
「こちらも、次元の塵と化す可能性が高い」
「けど……それしか方法がないなら」
「やるしか、あたし達がやるしかないわ!」
「そして、それが出来るのは俺達ビーファイターだけだ」
ビーファイター死すとも、昆虫魂は永遠に不滅だ!
にしても、どうして(本編)最終回の盛り上げにかかる所で、拓也と舞はこんな初歩的な台詞被りをしているのか(^^;
ところがそこへ投げ込まれる、セントパピリアの羽文(便利なホログラフ機能つき)。
「もはや、傷の痛みを分かち合う必要もない。ひとり生き残るのはどちらか、雌雄を決する時が遂に来たのだ」
タイミングの悪すぎるシャドーからの挑戦状に対し、今は特攻作戦を優先すべきだと既読スルーしようとする拓也だったが、大作と舞はブラックとの決着を優先しろと促し、グルに至ってはいきなり、このままではブラックビートはガオーム以上の脅威になると発言。
……いやシャドー、3日ぐらい放置しておくと、おきのどくですがあなたの寿命がつきました、て塵になるのではないでしょうか。
世界と生命に対するブラックビート/シャドーの怨念が、第二のガオームになりうる、という重ねは単体としてはわかるのですが、拓也との関係性やここ数話で描いていたジェラとの絡みなどがあまり関係ない所に話が飛んでしまい、見ていて困惑。
決闘優先を促すのもかなり無理がありますし、わざわざブルーvsブラックを最後に持ってきたにも関わらず、ダブルクライマックスへ至る展開が凄く雑(^^; 根本的な所で、積極的に仕掛けないといけない立場のブラックビートは悠長に挑戦状など送りつけている場合ではなかったのですが、ジャマールホール特攻作戦に割り込んで「1時間待て」「待てるか」みたいな形でブラックを改めて絶対悪(倒さざるを得ない敵)と置くとか、もう少しやりようが無かったのか。
「ゆけ、拓也。今がその時だ。存分に戦ってこい」
何かを誤魔化すかのように雄々しく、ぶち殺せとエールを送る昆虫界の長老。
かくしてブラックビートとの決闘に赴く拓也を皆で感動的に送り出すのですが、どう考えても、対戦成績で圧倒的有利なブルービートより、未知のジャマールホールに特攻をかけるジースタッグとレッドルの方が決死です。
そこから流れで重甲して、重甲基地のリフトアップからメガビートフォーメーションに繋げたのは格好良かったのですが。
ジースタッグ。レッドル。友よ、また会おう。平和を取り戻した地球で、必ず」
挑戦状に応えた拓也は決闘の場に赴き、いよいよ対峙する宿命の光と影。

「邪甲!」 「重甲!」

「この時を待っていた。今こそ見届けよう。お前達の宿命を」
戦え戦え昆虫戦士ども!
セントパピリア様に最高のショーをお見せするのだ!
作法に則り、お互いの拳を打ち合わせる所から始まるブルーとブラックの決闘を呑気に観戦する、画面手前に映る黒い球体(セントパピリア入り)が凄くシュール。
ホント、興味本位ですね……。
その頃、ジースタッグとレッドルの乗ったメガヘラクレスはジャマールホールへと突入し、早速、基本設定が違うと文句を言い出すオートパイロット機能(笑)
20年以上前の某Kさんだって、色々ポンコツだったけど、自分で火星の重力と気圧に合わせて調整したのに!
ジャマールホールの中心核を発見するも、メガヘラクレスの機能不全によりキャノンが不発に終わり、「危険です。これ以上は、危険です」と愚痴を繰り返す役立たずのオートパイロット機能を無視し、ジースタッグは船外に出てシステムの修理を敢行。だがジャマールホール内部の異常な環境は、内部に居るだけでメガヘラクレスの機能を狂わせていく……。
一方、観客を意識したブルービートは勇者キャノンを発動しないというエンターテイナーぶりを見せ、ブラックビートと死闘を繰り広げていた。
「まだ俺は死なぬ。貴様を倒すまで……俺が俺になるまで……!」
執念の刃を振るうブラックの猛攻に追い詰められ、二つの局面でビーファイター大ピンチ……から、Bパートに入った途端、いきなりのメタルフォーゼ。
なんの溜めも盛り上げもなくてビックリしました(笑)
ハイパー化したブルービートには、ブラック死にものぐるいの連射も全く通用せず、そこからファイナル勇者キャノンがあっさりと炸裂。
無慈悲。
一方ジャマールホール内部では、レッドがケーブル人体繋ぎのお約束から、ジースタッグが攻撃システムの修理に成功。遂に火を噴いたメガビートキャノンが中心核を破壊し、メガヘラクレスはジャマールホールを消滅させると地球次元へと帰還する。
平常を取り戻した青空を見上げ、勝利の余韻に浸っていたブルービートだったが、瀕死のブラックビートの執念の一撃がその装甲を深々と貫く!
「やった……これで俺は貴様に、いや、俺自身になれる! ……勝った……勝った……勝ったんだ! ぐぁぁぁぁぁ?!」
だが勝利の雄叫びをあげるも束の間、全身の細胞が限界に達して邪甲も解除され、倒れ込むシャドー。
「甲斐拓也……ブルービート。貴様が生み出した俺は、消えてなくなる……今この瞬間、永久に……」
「いや……おまえは、おまえとの戦いは、消えない。俺の、心の中だけに、生き続ける。俺は……忘れない…………永久に」
血ぃだらだら流しながらこちらも変身解除した拓也は消えゆくシャドーに告げ…………えー……「俺の心の中だけ」にしか残らないのか、シャドー(^^; この後の拓也の状況や行動を見る限り、「自分の中の闇を受け入れる」とか「自分だけでもシャドーが生きた証を認める」とかいうよりも、「自分と一緒に永遠に葬り去る」みたいな感じなのですが、結局作品としてシャドーをどうしたかったのか――脅威的なラスボスになるわけでもなく、一抹のヒーローらしさを見せて散るわけでもなく――蛇行の末にコースアウトみたいな着地になってしまいました。
シャドーは消滅して残骸と化すが、拓也もまた力尽き倒れ、ダブルノックアウト。向井博士、グル、そして異次元から帰還した大作と舞が、物言わぬ亡骸と化した拓也の姿に嘆き悲しんでいると、フワフワ現れたセントパピリアが拓也を生き返らせて去って行く。
「地球は再生する。自らの力で。あなた達の力で、きっと。それを信ずるが故に、拓也、あなたに命を」
ぴよぴよぴよー。
拓也、衝撃の死亡(そして復活)という展開なのですが、奇跡要員が横でずっとスタンバイしている為、1ミリも衝撃にならず。
拓也の死を嘆き悲しむ向井博士のややオーバーな芝居も、眠るように倒れている拓也の死を児童層に明確に伝えるというニュアンスだったのかもしれませんが、奇跡要員にわざとらしく悲しみをアピールしているような感じに(^^;
「何故……どうして……そこまで……」
(地球に……ジャマールや、ジャマールホールで傷つき、倒れた地球の生命達に、永遠の命を……セントパピリア……)
「今わかった。この次元に、地球に、拓也、あなたが必要だという事が」
一応、蝶々が拓也を生き返らせる理由として精神世界での対話があり、恐らく、自分の命よりも失われた地球の生命を大事に思う拓也の心意気に免じて勝者には報酬をくれてやろう! 的なイメージかとは思われるのですが、そもそも蝶々が拓也とシャドーの戦いに興味を持った理由が最後まで薄く、セントパピリアの納得自体が1年間の物語の積み重ねとほとんど関係ない為、“物語の集約としての奇跡”として綺麗に着地しませんでした。
……何かを思い出すと思ったらこれ、『エクシードラフト』最終回の失敗そのまんま(^^;
いっそセントパピリアは理解しがたい超越的存在で通していればまだマシだったかと思うのですが、人型にして喋らせた事で中途半端に人間的な感情が入ってしまいましたし、拓也は拓也で、失われた命の再生を通り越して、「永遠の命を」とか言い出してしまうので、主人公が最終的に不死の地球世界を求めるも、神様的存在は主人公だけ甦らせて去って行ったという、文字にするとバッドエンドみたいなオチに(笑)
拓也の、極めて正統派のヒーローであるが、昆虫魂がキマりすぎて、甲斐拓也個人としての信念がもう一つ見えにくかった、という問題点が最後の最後に出てしまった感もあります。
そして――
残されたシャドーのネックレスを巻き付けた邪甲コマンダーを手にした拓也は、海を見つめながらシャドー最期の言葉を思い返し……
(貴様が生み出した俺は、消えてなくなる……今この瞬間、永久に……)
投 げ 捨 て た !
えぇーーーーーーーーーーー?!
邪甲コマンダーはともかく、シャドー登場時より延々と意味ありげに映されていたネックレスは、シャドーの記憶と自らへの戒めとして拓也が身につけ続ける、とかするのかと思っていたら、まとめて海の底に葬り去りました。
暗黒面なんて、無かった。
うーん……作品全体としては、そこそこの満足度を積み重ねてきて嫌いではない今作なのですが、最終回単独としては、どうにも残念な出来(^^; 結局ブラックビート関連は、引っ張るだけ引っ張って巧くまとまらないまま終わってしまい、『重甲ビーファイター』ならではのテーマ的着地が特に見えないラストとなってしまいました。これから傷ついた地球再生の為に頑張るぞ、という話なら、むしろセントパピリアを介している分、メッセージ性が薄れてしまってますし(^^;
前作が、建造物どころか基礎から行方不明になって終わってしまったので、シリーズとしてはそこからよく立て直したと思いますが、そこから先の一跳ねが無いまま終わってしまって、惜しい。

「戦士達の、長く、苦しい戦いが、今終わった。それはまた、地球の再生の始まりでもあった。ありがとう昆虫たち。ありがとう、重甲ビーファイター!」

だが次回――本当のラスボスがやってくる。
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
「いったい何が始まるんだ……?」