はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2019〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第39話

◆第39話「カロリーとネックレス」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:田中仁)
杉原監督デビュー2本目。
前回のクイズ総集編だけでは何とも言えない感じでしたが、今回と合わせて考えると、諸田監督の影響が強いのかなぁ……。実際に誰の弟子筋にあたるのかはわかりませんが、『オーズ』−『フォーゼ』頃からの諸田演出風味をかなり感じました(この時期に助監督で入っているのは確か)。
その諸田監督がよく用いるような、CG加工による過剰なデコレート演出は個人的にはあまり好きではないのですが、児童層にわかりやすくて面白がってもらえるならそれで良いのだろうとは思いつつ、それにしても、工事現場での爽やかスプラッシュは、意味不明の領域。演出効果だけならまだともかく、セラがそれを手で弾くので、マンガの世界になってしまってましたし。
今回クライマックスで一つ、致命的な事をやってしまうのですが、面白かろうというノリ優先で、作品の中で積み重ねてきたリアリティラインをあっさり踏み越えてしまう傾向が見え隠れして、正直、この先けっこう不安。
作品にもよるわけですが、少なくとも、比較的堅実な『ジュウオウジャー』のラインからは少々外れているという印象(制作サイドとしては、将来を見据えてプラス敢えて不純物を入れて幅を持たせる意図はあるのかもですが)。
チームクバルのプレイヤーが、久々にブラッドゲームに参戦。
「チームクバル、天丼やで」
と最初聞こえて何事かと思ったのですが、シェフードンでした。
シェフ怪人はカロリー1000倍フードを強制的に人々に食べさせ、それを口にした人々は巨大なボールのような体型になって地面を転がってしまう。途中でアザルドが「おい、クバル? 地球人太らせて、どうするつもりだ?」とツッコむのですが、今回クバルの目的がブラッドゲームから逸れてしまう為にそこが説明されず、私もどうするつもりだったのか知りたかったです(笑)
そんなクバルは、自らに移植したバングレイの右手の性能を実地試験。「自分の記憶は具現化不能」「具現化した存在の記憶を重ねて読み取る事は出来ない」と、基本出鱈目だった右手の能力に、改めてある程度のルールを設定。
若干、実験まで間が空きすぎてしまった感がありますが、恐らくタコを挟んだ事情なので、物語としては移植した右手が馴染むまで時間がかかった、と思っておけば良いでしょうか。
クバルが通りすがりのカップルの記憶から何者かを具現化し……逃げた怪人を手分けして追っていたセラとアムは、気取った男(ゲスト:岩永洋昭)にいきなりのプレゼント攻撃を受ける。
「……どうなってんの?」
「……任せて」
男が購入して差し出してきたネックレスを受け取るだけ受け取って、連絡先の交換をにこやかに拒否するアム。
「……今の何?」
「ナンパじゃない? 顔はまあまあだし、お金も持ってそうだけど、ちょっーと軽すぎるかな」
そのままネックレスだけいただいてしまおうとするアムに対し、ネックレスを返そうと1人で追いかけたセラは、男が工事現場でバイトしている姿を目撃。そこに天丼が出現し、男にかばわれた事もあって何となく好印象を抱いたセラは、ナンパ男に名前を教える事に。だがその男――零(れい)は、ジュウオウジャーをかき乱そうと、クバルが記憶から具現化した結婚詐欺師であった。
定番のフォーマットの中で、
「借りを作りたくないからネックレスを返す」(倫理観では無い)
「自分は強くて守られる女ではない」(侮られたくない)
と、セラらしさが出ている部分があったのは、今回の良かった所1。
セラと零は、なんか勢いで東京ドームシティデートを敢行し……そういえば、今季はまだやっていなかった気がする遊園地回。アムから事情を聞いた面々はそれを尾行し……
「大人だ……」
「なんだあいつ。俺がデートに誘っても、無視する癖に」
「それはレオがいつでも誰でも見境ないからだろ」
「あぁん? それの、何が悪い」
久しぶりに、レオのナンパ癖に対してタスクが吐き捨てるように言及するのですが、やはり、レオの性癖はジューマン的にはアブノーマルなのか。
「ええと……あの男がそうなの?」
一方、同行している大和くんが妙にネガティブな反応を見せている理由がさっぱりわからないのですが、そもそもニンゲンとジューマンに恋愛関係が成立するかどうか、何かあった場合に事情を全部説明するの俺……? と、ひとり真剣に悩んでいるのか。
ここは今作の欠点(ファンタジーとして突っ込んでいない部分)なのですが、ニンゲンとジューマンの種族差、ジューマン同士の種別差について一切踏み込んでいない為、「よく考えろ! 相手は本気なのか」と前のめりに突っかかってくるタスクが、どこを一番の問題点にしているのかなどが、わかりにくくなってしまいました。
基本的には、耐性の低いセラが悪い男に引っかけられているのではと心配している、と描きたかったのだと思うのですが、アム(と大和?)以外の男連中のピントがズレているというギャグを入れてしまったがために、物語全体のピントも合わなくなってしまいました。
こっそり尾行してきた仲間達の反応に激怒したセラはレオに正中線突きを決めると零と一緒に立ち去ってしまい、零が案内した海をバックにいい笑顔のセラを可愛く撮ったのは、今回の良かった所2。
改めてネックレスを受け取ったセラは零から告白を受けるが、そのタイミングで遊園地に天丼が登場。
「私、行かなきゃ」
「さっきは、友達よりも俺を選んでくれたよな?」
「ごめんなさい! 気持ちは嬉しいけど、私、みんなをほっとけない」
「純粋すぎるんだよ……」
零はセラが返してきたネックレスを海に投げ捨てると、自分は結婚詐欺師であり、化け物に命令されてセラに近づいたと告白。零をひっぱたこう……として結局ひっぱたかなかったセラは苦戦する仲間達の元に復帰し、天丼に怒りの連続攻撃を浴びせるが、カロリー1000倍寿司の直撃を受けそうになってしまう。だがその時、シャークをかばって寿司を食べたのは、水もしたたるいい男モードの零。
「零! あなたいったい」
「今頃になって、おまえの事、可愛く思えてきてな」
「はぁ?! …………嘘つき」
「やっぱりこれ、貰っておいてくれないか」
「……うん」
攻撃からかばった点よりも、捨てたネックレスを海に潜って捜してきた、というのが割といいシーンなのですが、太った零の表現として、台詞をこもったもごもご音にしたのが、大失敗。
ここは面白くする所ではないですし、台詞が聞き取りにくくて無駄なストレスになっただけ。
そして続けて、球体になった零が天丼にホームランされて空の彼方へ吹っ飛んでいくというのが、致命的失敗。
一応シャークが吹っ飛んでいった先を気にしてはいるのですが、今作ここまでの被害描写のリアリティラインでいうとギャグでは済まず、必死に捜しに行かないといけないレベル。前半ならともかく、第39話にもなってこれは極めていただけません。
天丼はファイナル番長キャノンで撃破し、コンティニュー。
「一時の感情で私に逆らうとは。なぜ自分が詐欺師だと、ばらす必要があるのです?」
「この星の人間の考える事は、おまえにはわからないさ」
その戦いを見つめていた零はひっそりとクバルに消され、それを知らぬまま、ジュウオウジャーは天丼を百獣乱舞で倒すのであった。……まあ零に関してはあくまで記憶具現化なので、本人はどこかで生きているのでしょうが。というか、冒頭のカップル女性は、零に騙された過去があったのだろうか、というのが割と闇。
「どっかで、また女の子騙してんのかな……」
セラはケーキをドカ食いし、遠巻きにそれを見つめる男衆だが、セラの胸元には零から受け取ったペンダントが光っているのであった……でオチ。
コミュニケーションの物語である今作のコンセプトから言うと、セラ×ナンパ男、という題材は面白かったと思うのですが、そこに記憶具現化を絡めてしまった為に、セラとの交流で変化する零は偽りの存在に過ぎないしその事をセラが最後まで知らないまま、というのが何やら中途半端に混線してしまいました。
クイズ回を踏まえて、たとえ記憶から生まれた偽の存在でもそこに人格を認めるんだというならば、最後にセラがそれを知ってこそだと思いますし、クバルがバングレイの能力を手に入れた事を隠さないといけない都合に加えて、種族を越えた恋愛感情をどこまでシビアに描くのか、という踏み込み加減を見定められなかった感。
基本設定や脚本にも隙があったとは思いますが、この、ところどころギャグに逃げている内にエピソード全体のバランスを見失う、というのがクイズ総集編の失敗ままなので、監督の見極めの甘さが出たのかなという印象。
根本的な所では、ジューマンとニンゲンの色恋話は避けておいた方が無難だったかなと思うのですが、やるのだったら、ニンゲンの男がサメ顔のセラを見ても好意を持ち続ける事が出来るのか、という所まで覚悟を決めてやるべきだったのではないかな、と(遡れば、ラリーさんのトラウマとかもあったわけで)。
やろうと思えばそういう話も組めただろうに(いい雰囲気になったセラがやむなくジューマンの姿をさらして怪人と戦うとか)、デリケートな要素を取り上げたにも関わらず、デリケートさに配慮しないまま作品として“逃げてしまった”感があって残念でした。
次回、タコに出番が。