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『仮面ライダー555』感想2

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第3話「幸せを配る男」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
見所は、真っ赤なトランクスを握りしめるヒロインと、それを顔面に投げつけられる主人公。
ゾウオルフェノクを焼却した巧は改めてベルトを返してバッグを交換するが、真理の脅迫と泣き落としを受け、しぶしぶ同道する事に。
真理の酷さが天井知らずですが、酷いけど面白く見えてしまうのは、私が井上敏樹に毒されすぎなのか(笑)
わかりやすい所では『キバ』の名護さん辺りが典型的ですが、落ち着いて考えなくても酷い性格のキャラクターが何故か面白くなってしまう、というのは井上脚本の魅力だなと改めて(人を選ぶ部分でもありますが)。
自分探しツーリングの旅から東京へ帰る途中という巧は、ベルトにも怪人にも興味は無いと発言。
「あ、君、好奇心が欠如してます? だから夢も持てないんだ〜」
ホント酷いこの女(笑)
ところが食堂でのやり取りで真理の怪我が嘘だとわかり、さすがに怒った巧は店を飛び出していき、その荒い車線変更が遠因になって、事故を起こしてしまうクリーニングの配送車。巧を追いかけていた真理はこれを見捨てていく事が出来ず、配達員・菊池啓太郎を後ろに乗せて、集配を手伝う羽目に。
株価ストップ安の真理がちょっと良い所を見せるのですが、この「捨て置けない」というのは、今作における「人間としての一線」の一つではあるのかな、と。
商品を配達に行った先で買い物を頼まれてそれを請け負うと、その代金まで自腹で払い、皆が幸せになるならそれで良いじゃない、と平然とのたまって疑問を挟む真理をむしろちょっと変な人扱いする啓太郎は、底抜けのお人好し……を通り越して、人生という名の旅の途中でネジを何本か取り落としてきた、割と危ない男。
[結花さん……調子はどうですか。僕は今、とても感じの悪い女の子と一緒です]
その啓太郎のメル友・長田結花は、いかなる事情か家庭で疎外された扱いを受けており、朝の挨拶から一緒に暮らす家族に無視をされるという描写が凶悪で、きつい。前回の勇治同様に、居場所を無くした存在という位置づけなのですが、家族からの無視と怒声に始まり、学校では金銭の恐喝をされ、バスケ部では次々とボールをぶつけられるイジメを受け……と、正直やりすぎ感あって引きます(^^;
そんな結花はメールのやり取りでは明るく振る舞っており、それを喜ぶ啓太郎。
[結花さん……僕の夢、聞いてくれますか。笑っちゃうかもしれないけど、みんなに幸せになってほしいんです。世界中のみんなに]
互いの顔も知らない二人が、メールという距離感ゆえに、片方は幻想の幸せを語り、片方は青臭く純粋な夢を語り、繋がっているのに虚構と真実がすれ違っているという……えぐい、えぐいよ井上敏樹!!
[結花さんは、幸せですか? 楽しいですか?]
配達途中に立ち寄ったコインランドリーで、真理は巧の荷物とバッタリ遭遇。パンツを巡って男達が争い、飛び出した巧を追いかける真理の前に、今回の「ベルト置いてけ」が登場。土壇場でそれを捨て置けず、またも戻ってきた巧はベルトを巻いて変身し、ファイズオルフェノクの、一連の諸々を目撃する啓太郎。
ファイズvs牛オルフェノクと、雪の中を歩く結花の“ここではない楽園”を求めるモノローグが重ねられた後、牛の攻撃を受けたファイズはベルトの携帯を外して銃モードに切り替えると、おもむろに射撃。
1−2話でベルトやポインタに関して説明書の存在が強調されていたこだわりが嘘のように、超・雑(笑)
脚本家はあまりギミックにこだわりの無いタイプなので、演出でどのぐらい補うかについては田崎監督と長石監督の色の差が出た感じに見えますが、更にファイズは、腰の装備を拳にはめるファイズナックルパンチを放って、牛を焼却。
ファイズ変身直後の、手首をこきっと鳴らす仕草が喧嘩3段みたいな具合で好きなのですが、必殺武器もメリケンサックを思わせて、どこかストリートファイト風味です。
それにしても、付属武器をやたらスムーズに使うファイズ……もしかして巧、昨夜なんだかんだ寝ずの番をしながら、夜中暇だったのでベルトの説明書を真面目に読んでいたのか。
辻褄を考えるとそのタイミングしかないと思うのですが、なんか、いい奴だ、巧……(涙)
戦闘の決着後、大きくカメラを引いていってカット切り替わると、雪の階段で足を滑らせて倒れた結花が、灰色の瞳で蘇生する――という姿に繋がるのは、オルフェノクはただの人外の怪物ではない、という今作のキーポイントを強調していて、面白い演出。
一方、砂と化してそのまま消滅してしまった千恵の姿を目にした勇治は、スマートレディによりスマートブレイン本社へと連れて行かれ、そこでスマートブレイン社長から<王の眠りは深い>という謎のメッセージを伝えられる。
同じ頃、地下鉄工事の落盤事故により不思議な空間が発見され……その奥にあったのは、小学校の教室?というホラー展開。地下35メートルの空洞に存在し放棄された教室、壁にかかった1995年のカレンダー、これらはいったい何を意味するのか……次回、啓太郎、変身?!
1−2話は、対となる巧パートと勇治パートを交互に描くという構成だったのですが、今回は、巧&真理パートに加え、対という程でもない結花パート、その結花と繋がる啓太郎、加えて引き続き勇治も描かなければいけない、と第3話にしては話が散らばりすぎて、まとめるのに苦労した雰囲気。正直、あまり面白くはない出来。
ところで、助監督に
鈴村展弘
柴崎貴行
山口恭平
と名前が並んでいるのは、今見るとなかなか壮観で時代を感じます。


◆第4話「Standing by 555」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
「なんでそういう態度なの? お腹痛いの?」
「……あの子の言う通りだね。君、友達いないでしょ」
「汚いものが側にあると、くしゃみが出るんだ。汚い心のヤツとかさ」
菊池啓太郎のみだれうちだ!
巧はじっと力を溜めている!
巧、客観的にはそこまで酷い事をしているわけではなく、むしろ付き合いの良い方なのですが、ヒーローの流儀にそぐわない行動指針の為に周辺人物からぼっこぼっこに言われるの、まず間違いなく皮肉でやっていると思うので、酷い。
オルフェノクを倒した巧はまたもベルトをぽいっとするが、今度は本当に怪我をする真理。
「ホント最低だねあなた。嘘つきで身勝手で猫舌で、その上人を信用できないなんて。どうせ友達も居ないんでしょ」
園田真理、心の鏡を持たない女。
「なんでそこまで言われなきゃいけないんだ。だいたい嘘つきはおまえの方だろうが。……おまえ……まさか、わざと怪我したのか。俺の同情引くために」
まあ、巧も巧でけっこう最低な発想ではあった(笑)
険悪な両者の間にわけもわからず挟まれた啓太郎は、骨が折れているかもしれないと真理を病院に連れて行き、渋々それを手伝った巧は、啓太郎から質問責めに合う事に。
「なんとかしなくちゃ、て思わないの?」
啓太郎が持ち出す、“よくあるヒーローの動機”を、巧は無言で受け流し、「ベルト」や「変身」という象徴を、かたくなに「ヒーロー」と結びつけようとしない今作の方向性が良く出ています。……勿論これは、長い《仮面ライダー》の蓄積があった上でこそ出来る作劇であり、一歩間違えるとつまらないパロディに堕してしまうわけですが、わかった上でそれらを解体し、大火傷覚悟でその先を探そうというのが、挑戦的。
「なんで男同士がいちいち名前教えなきゃいけないんだよ。気持ち悪い」
ベルトの力があれば人助けが出来るのでは、と盛り上がる啓太郎に対して冷たい態度を取りつつも、幸い骨折ではなかった真理には、怪我が治るまで一緒に行動するという約束は守る、と告げる巧。しかしそんな巧の、猫舌をせせら笑う真理。
ホント酷いよ!!
「私にはわかるな。こいつ今までずっとこうやって生きてきたのよ。面倒が起こるとすぐ逃げ出して。あー、やだやだ」
更に追い打ちで、巧を汚い心のヤツ扱いする啓太郎。
「おまえ喧嘩売ってんのか」
「いいよ別に。俺はこれから真理さんと一緒に人助けに命をかけるんだ」
「え? 人助け? 私と?」
「え? 違うの?」
「私は、別にそこまでは。ただ本当の事が知りたいだけで」
だが真理も、別に正義の志は持っていなかった(笑)
翌朝――消える啓太郎とベルト。
[結花さん、今日から僕の新しい人生が始まります。多くの人を助けるための人生です]
巧も真理も折角の力を世のため人のため人を幸せにするために使えないロクデナシどもだと切り捨てた啓太郎は、バイト先を辞めるとフェリーで東京へ戻る為に、宮崎港へとバイクを走らせる………………ベルトどころか、バイク盗んでいるぞ(笑)
登場間もなくから頭のネジが抜け落ちたまま消滅している感じの啓太郎ですが、何が怖いって、「みんなを幸せにする」という目的の為に、「頼み事を引き受けで自腹を切る」のも「他人のベルトとバイクを盗む」のも同じベクトルで手段が正当化されている事。
これまた、悪を倒す為なら多少の違法行為は辞さない、という“正義のヒーロー”像を皮肉っているようにも見えますが、実際の所、手にした力を用いて人を助けよう、というのは定型的なヒーローらしい姿であって、その啓太郎が現状劇中で最も狂気に近いサイドに居る、というのも何ともややこしい仕掛けです。
結花には、東京で会いたいとメールを送り浮かれる啓太郎だが、その前に、スマートレディの指示で動いている事が判明した2人のオルフェノクが立ちはだかる。
「へ、変身!」
ベルトを起動しようとする啓太郎だったが……エラー。
「馬鹿め、誰でも変身できるわけではない」
そこに追いつく真理と巧だが、サボテンオルフェノクはベルトを奪い取ると一度人間の姿に戻って自らに巻き付け……変身してしまう。
「はぁーーー、これがファイズか」
強力なマジックアイテムを敵味方で奪い合う、というのはいっそスタンダードな物語形式といえますが、その力によって怪人――それも安易に殺人を犯すいかにもな三下――がヒーローと全く同じ姿になってしまい、ヒーローの唯一性も主人公の特別性も第4話にして無造作に破壊されてしまうというのは、「変身」というシステムを活かした、衝撃的な展開。
どこが初出かと思っていましたが、ヒーロー名を最初に名乗るのが怪人サイド、というのもなかなか凄い。
サボテン555は同僚のカマキリっぽいのをあっさり焼却すると口封じの為に3人に迫り、慌てて逃げる3人だが、巧の脳裏に昨夜の真理の寝言が木霊する。
――「逃げんなよ。卑怯者!」
「……ぁんだよ! なんでこんな時にあいつの寝言思い出すんだよ!」
背を向けるのではなく、立ち向かう事を選んだ巧は、ヒーローの証明、バイクアタックを仕掛けるが、ヒーロー力の充填不足により空振り。続けて、一線越えたキチガイである所の啓太郎が後頭部を鉄パイプで殴りつけるが、逆に鉄パイプの方がねじ曲がってしまう。
絶体絶命のその時、真理の叫びに反応して……バイクが立った! 勝手に走った! 変形したぁ?!
そして、殴った。
3話ほど、何事もなく平然とまたがっていたバイクが、いきなり人型ロボットになるという、これもなかなか衝撃の展開。
園田父は、娘に何を送りつけているのか。
バイクロボの打撃でサボテン555からベルトが外れ、それを拾った巧はここまでで最高にヒロイックに変身すると、サボテンオルフェノクを必殺円錐キックで焼却するのであった……。
と、ぞんざいにベルトを扱い続けて約1ヶ月、オルフェノクの555への変身という衝撃の展開を盛り込むと共に、なんだかんだで巧がヒーローとして立ち上がり始める端緒までが収められる事に。
一方、オルフェノクとしての超感覚で車にはねられた道子を助ける結花だが、道子からは結花に突き飛ばされたと濡れ衣を着せられ、長田家を追い出されてしまう。バスケ部での度重なるイジメに爆発した結花はオルフェノクとして覚醒し、巻き起こされる大量虐殺。独り長石階段に座り込んでいた結花は、そこで勇治に拾われる。
「君の…………仲間だ」
そして、巧、真理、啓太郎の3人は、フェリーで東京へ。
「おまえ……まだ俺の名前知りたいか? ――乾巧だ」
ベルトを預かると宣言し、自分の道を選び始める巧だが…………このシーンの巧が、これまで以上に訥々とした喋りで勇治ばりにたどたどしいのですが、フェリーの甲板上が寒かったのでしょうか?(^^; 風が吹きすさんでいて見るからに寒そうではあるのですが。そんなこんなで微妙にいいシーンになり損ねつつ、舞台は東京へ――。