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『仮面ライダー555』感想3

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第5話「スマートブレイン」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
東京に上陸する巧達だが真理の父親とは連絡が取れず、直接勤め先に乗り込む事に。その会社こそ、日本一の大企業・スマートブレイン。そして、真理の父はなんとその社長であった。だがそこでも門前払いを受けてしまい、突っかかる巧と、引き下がる真理。
「言ってもいいけど……場が暗くなるかも」
「暗いお父さんなの?」
「おまえは黙ってメールでも打ってろ!」
酷い連中の酷いやり取りが続くのですが、早くも3人の会話の間合いが出来上がっていて、お見事。性格に難のある男×男×女、が事あるごとに罵り合うというのは次作『ブレイド』序盤と似ているのですが、もちろん状況設定が違うとはいえ、『ブレイド』が情緒不安定かつ性格の悪さだけが前面に出ていたのに対し、今作ではどこかユーモアがあって見ていてそこまで嫌な気持ちにならないのは、演出陣が重なっている事を考えると、やはり井上敏樹の巧さなのかと思います。
真理が娘は娘でも実の両親を失って引き取られた義理の娘だと明かした所で巧は強引に会話を打ち切り、スマートブレイン社屋でそれと知らずにすれ違う啓太郎と結花、メール着信の演出がエグい。
家出女子高生をナンパした勇治は、スマートレディにより戸田英一/イカオルフェノク(演じるは隼人隊長!)に引き合わされ、オルフェノクについての説明を受ける。
「いいか、これはな……戦いなんだよ。人間対オルフェノクのな」
バイト社員を呼び出した戸田は、オルフェノクの正体を見せるとバイトの心臓をイカスミで焼却。これまでの被害者同様に一度は目を開いて動き出すバイトだが、やはり砂になって消滅してしまう。
「くじ引きでいえばこいつは外れだ」
人間に対して絶対数の少ないオルフェノクだが、勇治や結花のように自ら死後に蘇生/覚醒したオリジナルとは別に、人間を殺す事でオルフェノク化させる能力があると説明され、これまでの被害者がしばらく動いていた理由が明らかに。
……にしても、自分を殺した相手に「おめでとう! これで今日から君もオルフェノクだ!」とか言われても嬉しくない気がするのですが、まあその為の懐柔要員がスマートレディという事なのでしょうか。
ところでスマートブレインのロゴが格好良くて好きです。レディの衣装にロゴの意匠が組み込まれているのも素敵。
その頃、巧は以前に勤めていた喫茶店を訪れ、「盗んだ金」を返そうとしていた。同僚から押しつけられた濡れ衣を甘んじて受け入れていた過去と、そんな巧を信じる店主の姿により、巧の誤解されやすくて不器用だけど、根っこまで曲がっているわけではない所を補強。また、自分探しで九州まで彷徨っていた理由も、なんとなく納得できるように。
一方、住まいのあての無かった真理は、クリーニング屋である啓太郎の実家に世話になる事に。啓太郎の両親は世界中の洗濯物を真っ白にするという夢の為にアフリカに行っており、2人暮らしになるという現実に、乙女心、ちょっぴり動揺。
そこへ、スピード違反の罰金で免停を受け、金を借りたいとやってくる巧。
お金絡みで芯のある所を見せたと思った直後に、加速をつけて飛び込み台から落下してきました(笑)
「利子つけて返してやっから、ありがたく思え」
「やだね。君は信用できないからね」
「そんなこと言っていいの? 人助けが趣味なんでしょ」
「……もういい! お前の金は借りん」
「ったくもうガキなんだから!」
知らず地雷を踏んでしまった啓太郎の言葉に巧が頑なになったり、どうしようもない連中のどうしようもないやり取りの中に感情の機微が盛り込まれているのが本当に上手い(笑)
通知が来るまでは俺は自由だ、とバイクで走り出そうとする巧とそれを止める啓太郎が押し問答になり、結局、真理が啓太郎から借りた金を巧に貸す、という事で納得する巧。
「……最初からそうすればいいんだよ」
…………それならいいのか。
ところが真理には真理の思惑があり、借金の弱みを握られた巧は、菊池クリーニングで住み込みのバイトをする羽目に。
……なんというか啓太郎、いっけん人畜無害そうな一方で、顔を合わせた事もないメル友(しかも確実に年下の学生)を願望込みとはいえ「彼女」呼ばわりするなどボーダーが緩くてかえって危ない気配がするので、巧を巻き込んだ真理の判断は、たぶん正しい(笑)
翌日、人類オルフェノク化運動への協力を要求する戸田に対し、「憎んでもいない相手を殺せない」と拒否する勇治だが、戸田はその場でイカへ変身すると、喫茶店に居合わせた客に次々とイカスミを浴びせていく。勇治と結花は逃げ出すが、くしくも店を畳む前の“最後のコーヒー”を飲みに来た巧の前で、イカスミ焼却されてしまうマスター。
ベルトを菊池家に置いてきた巧は変身する事ができず真理と逃げ回り、今作におけるベルトはあくまで装備品で、持ち歩いていなければ使えない、という事をもう一つ強調。じりじりとイカに追い詰められていく巧は、逃げ込んだ公園で真理に胸の内を明かす。
「俺、怖かったんだ……あの人と親しくなっていく自分がな。だから店を辞めた」
「なに言ってんの?」
「もう最後んなるかもしれないから、お前にも一応謝っとく。おまえの親父の話、聞いてやれなかった」
「いいよそんなの」
「俺、人と親しくなんのが怖いんだ。人に裏切られるのが怖いんじゃない。俺が人を裏切んのが怖いんだ」
「なんでそんな風に思うの?」
「…………自信ないんだ、自分に」
ファイズ』も既に10年以上前になるので、近作と話の作り方が違って当然といえば当然なのですが、このじっくりした進め方は今改めて見ると既に一周回って新鮮な感があります。逆に近作になぞらえると、ここまででファイズが3つぐらいのフォームを披露した上でそれらのアピールの為に3倍ほどの戦闘シーンが入ってくるわけで、それは諸々雑になるなぁ、と(^^;
今の形で続けていく内に、いずれまた変化が起きてくるとは思いますが、先鋭化という面ではかなり行く所まで行っている感があるので、揺り戻しになるのか、新たな道が開くのか。まあこの時代はこの時代で、ポスト『クウガ』から一つ突き抜けてしまった時期とはいえますが。
「巧!」
「「遅い!!」」
電話を受けた啓太郎が駆けつけ、啓太郎なりにかなり頑張ったのに巧と真理がシンクロするのは、テンポとしては好き(笑)
「変身!」
ファイズイカを圧倒し、相手の蹴りを受け止めて投げ飛ばし、宙に浮いた所に追い打ちの蹴りを入れ、吹き飛んでいる間に必殺キックの準備行動、という流れは格好良かったです。
円錐キックの直撃を受けたイカはその場から短距離瞬間移動能力で姿を消すと、喫茶店から逃げ出した勇治と結花の前に戸田の姿で現れる。
「最後の授業だ。オルフェノクの死を、お前達に教える。完全な消滅。それが……俺達の……死だ」
戸田は2人の前で蒼い炎を噴き上げて灰となり、色々と雑な性格でしたが、この最期は格好良かったです。
その戸田がイカスミを浴びせた柄シャツの男がよろよろと現れ、新たなオルフェノクへの覚醒の兆しを見せるところで、つづく。


◆第6話「煽る煽る時煽れば」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
「こういうのって性格出るんだよね。父さんが言ってたけどさ。アイロンがけも出来ない人間は、ろくなヤツじゃないって」
隙あらば、罵詈雑言に繋げてくる『555』スタイル。
「泣きたければ泣けばいいし、怒りたければ怒ればいいじゃん」
「人の気持ち勝手に決めんなよ!」
「……怖いんだもんねー、自分を出すのが。臆病者なんだもんね」
隙あらば、煽りに繋げてくる『555』スタイル。
「人の事が言えんのか、お前だって」
「なによ、はっきり言ってよ!」
「おまえの父ちゃんの事だよ。おまえ会うのが怖いんだろ。本当の親じゃないとか言ってたけど、どっかで悲劇のヒロインぶってんだよ」
隙あらば、煽りガードキャンセルからカウンターに繋げてくる『555』スタイル。
す ご い よ!
開始3分足らずでこの応酬で、トップフォームの井上敏樹の切れ味に、クラクラしてきます(笑)
後半の、
「俺が猫舌なの知っててすき焼きなんかにしやがって!」
「別にいいでしょ。ふーふーして食べれば!」
「ふーふーしている内に俺の分がなくなんだよ!」
「なによみみっちいなぁもう。明日は湯豆腐にしてやるから。めっちゃ熱いやつ!」
「勝手にしろ! 俺は冷や奴を食う。絶対にな」
も素晴らしかったです(笑)
そんな感じで巧がクリーニング指南から罵声のコンボを浴びている頃、勇治と結花はとりあえず柄シャツの男・海堂直也を拾ってマンションへと帰っていた。
「好きなんですか、人間の事?」
「勿論だよ! 俺達だって同じ人間なわけだし」
「でも、戸田さんはもう、私達は人間じゃないって」
「そんな事あるもんか。人間だよ! 人間だよ!」
勇治はスマートブレインに向かうと黒い服にモデルチェンジしたスマートレディを問いただすが、社長の思惑についてははぐらかされてしまう。
「はーい、オルフェノクっていうのは人間という種の進化形です。人間を襲うのに罪悪感を感じる事はないんですよ。なんたって、人類の進化に貢献するって事ですからね」
レディを押しのけて最上階へ乗り込み、強引に社長室の扉を開いた勇治が目にしたのは――真っ白な壁。
「かわいー」
勇治とレディは棒読みと演技の境界線上をゆらゆらと揺れていて量子力学的なのですが、このレディの台詞は良かった。
一方、何とか真理父に会おうと再びスマートブレインを訪れた巧と真理は、社員のIDカードを盗んで内部に入り込もうと思いつき、ぼんやり出てきた勇治を標的に定める(笑)
「よーし、あいつにしよう。弱そうだ」
「そうね」
どうして君たちは、楽しそうなのか。
「……おまえ、止めないのか」
「なに? 止めてほしいの?」
「いや、別にいいんだけどさ」
巧達はマンションの駐車場まで勇治を尾行すると、ごく自然にドライバーを取り出す(おぃ)
一連の流れが完全に犯罪者で、さすがにやり過ぎ。
なお幕間では、近所のスーパーで店の広告を配っていた啓太郎が警備員に咎められて慌てて逃げ出し、商品を満載したカートを故意に店内でひっくり返す、というかなり悪質な事をやっており、これもさすがにギャグを通り越していて眉をひそめます(^^;
“僕のクリーニング店を通して皆が幸せになる為に近所のスーパーがちょっとぐらい踏み台になるのは全世界の幸福に繋がるから問題ない”という啓太郎理論では筋が通っているのですが、石田×井上のブレーキ見失いがちの悪癖が余計な所まで広がってしまったような。
車上荒らしを敢行するも管理人に咎められる巧と真理だが、人の好い勇治に許され、更に巧を無職のだらしのないお兄ちゃん扱いして、真理が泣き落とし。
「……余計なお世話かもしれませんけど、男として、きちんと自立した方がいいと思いますよ」
「…………はい」
(素敵。優しい人)
そもそも養父から始まり、どうも男運の微妙な真理の中で、勇治のポイントがアップ。
まあ勇治の場合、坊ちゃん育ちの鷹揚さに加え、現在の自分の生活に対するリアリティが欠けている面が大きく、本当の優しさなのか疑念が湧くのですが、これも意図的な齟齬かと思われます。何より、巧を諭す勇治自身が自立していないので、安きに流れる巧と、足下の定まらない勇治と、それらを見誤る真理が、均等に殴られているという。
マンションの一室では海堂が目を覚まし、
「よくわからないがお嬢さん。また会いましょう。君は、薔薇より美しい」
と思わぬ軽いノリを見せると慌てた様子で部屋を飛び出していき、それを追いかけた結花は街で啓太郎と衝突。落とした携帯電話を啓太郎に渡される、と続くニアミス。海堂は就職面接でオルフェノクとしての超感覚を発揮するが、それが原因で命を狙われる事になり、首を絞められて気を失った事でオルフェノクとして完全に覚醒。その力で襲撃犯を返り討ちに。
一方、啓太郎の夜間配達に付き合っていた巧は、仕事熱心なその姿に、徐々に歩み寄りを見せていた。
「いつか俺もシャツの一枚ぐらい洗えるようになるかな?」
「…………たぶん絶対できるよ、たっくんなら」
「たっくん言うな」
巧は真理や啓太郎の主張の強さとはぶつかる一方で、二人の技術や仕事への姿勢に関しては素直に感嘆し、どこか憧れめいた感情を見せるのは、キャラクターの愛嬌と肉付けとして上手く機能しています。
そんな2人は啓太郎の高感度オルフェノクセンサーにより、海堂の変身したサソリオルフェノクが人間(襲撃犯)を襲う姿を目撃。変身した巧は喧嘩3段でサソリを追い詰めるが、今度はそれを、海堂を追っていた勇治が目撃。
「よせ! 俺の仲間を、傷つけるな!」
無差別な人殺しは忌避しながらも、生来の人の好さと現在の居場所の無さゆえにオルフェノクへの仲間意識を持ち始めていた勇治は、“誰かを守る為に”馬に変身するとフェンスを跳び越えて戦いに割って入り、いよいよ間近で向き合うホースオルフェノクファイズ――! で、つづく。