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『仮面ライダーエグゼイド』感想・第13話

◆第13話「定められたDestiny」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
国民に向けた大々的な記者会見で「ゲーム病」とのたまったらどうしようかと思いましたが、さすがに「バグスターウィルス感染症、通称:ゲーム病」と、ワンクッション入れてきました。
まあ審議官はこの後、マスコミからたっぷり質問責めに合うといいと思います!
同時に、仮面ライダー手術システムも図面で公開されていますが、そのシステム続行自体に衛生省の深い闇を感じるのですが(^^;
これは、硬直した官僚機構に対する痛烈な風刺なんですか!?
その頃エムは、九条の死を引きずりながら、鏡の指導のもとで外科研修を受けていた。
「集中しろ。どうせ監察医の事でも思いだしていたんだろうが、お前の事情など患者には関係ない」
「すみません……でも! ……ようやく貴利矢さんと、わかり合えるようになれたんです」

物凄くいい人である所の九条がせいいっぱい妥協に妥協を重ねて距離を詰めてくれただけで、エムから九条に対しては誠意のひとかけらも示した記憶がないのですが、どこまで頭が腐っていると、お互いに手を取り合ったみたいな美しい記憶になっているのか。
これまでも散々危惧と疑念は抱いてきましたが、あれが“わかり合えた”事になっているとすると、エムのあまりに独善的な思考回路は疑問を通り越して心配になってきます。エム、九条の背負っているものとか1グラムも慮った事ないと思うのですが、エムの中で“他人とわかり合う”ってどういう事なのか。
患者とその周囲の人々の人生を、患者を治療する為の道具としか捉えられない“命を救うだけのマシーン”である所のエムですが、この対人関係の断絶ぶりは、もはや恐怖を感じるレベル。
「ドクターは多くの患者の命を預かっているんだ。私情に引きずられている暇はない」
そんな折、消化器外科の名医がゲーム病を発症してCRに搬送されてくる。オペは無駄だと治療を拒否する男だが、魔法使い怪人LV2が登場しフィールド展開。強化された魔法攻撃苦戦するエグゼイドとブレイブだが、そこに更にゾンビが参戦。バイク侍の鎌弓を買ってしまった子供はどんな気持ちで今作を見ればいいのかと思っていたら、やったよ! 幻夢がリサイクルしてくれたよ! という展開で、やっぱりどんな気持ちで見ればいいのか。
レーザーの武器を平然と使う姿を見て激昂したエグゼイドがドラゴン召喚、という流れは正攻法のヒーロー物らしい流れで良かったですが。
怒れるドラゴンの一撃を真っ正面から受けたゾンビだが、何事もなかったかのように立ち上がる。そのライダーゲージは、最初から0。幻夢LV10は、その姿の通り、生死を超越した存在であった……!
そうつまり、相手の攻撃を受けて受けて受けて思う存分心ゆくまで被ダメージを愉しめるMのフォームこそ、ヒーローとして最強のパワぁぁぁぁぁぁぁ!! なのであった。
ドラゴンエグゼイドはゾンビを殴り続け、背後から、患者を優先してオペに集中しろ! と敵は魔法使い怪人だと怒鳴るブレイブはいっけん筋が通っているのですが、無視したら無視したでゾンビに背後から襲われるの確定なので、正解は「ブレイブが単独で怪人を倒す」だと思います!
…………あ、無理ですねそうですね天才外科医の鏡先生はいつも真っ先にリタイアするので仕方ないですね。
というこの、いっけん正論に見えるしそう見せようとしている事が、状況や演出の積み重ねと矛盾しているので言動か行動のどちらかが的外れになる、というのが実に『エグゼイド』クオリティ。
ゾンビのクリティカル攻撃・怖がらないでこっちにおいでよ! を喰らいそうになるエグゼイドだが、ブレイブがそれを横からかっさらい、フィールド解除で逃亡。逃げ足の速さが初めて活きました!
また、ここでエグゼイドを拾っていったのは、九条の死を受けての鏡の変化に見えるところで、こういう描写は細かく繋げていってほしい部分。
患者がゲーム病の治療を拒否するのは、膵臓ガンが進行していた為と判明。
「ゲーム病が治せたとしても、俺にはもう、未来がない。人は遅かれ早かれ、いつか死ぬ。ドクターという仕事は、常に死と、隣り合わせなんだよ」
九条の死を踏まえ、命を大事に守る一方で、一つ一つの死に囚われて足を止める事を許されない医者という職業をエムが見つめ直す、と繋げてきたのは巧かったのですが、1クール目、散々「医療」という要素を踏みつけにしてきていたので、今更そこを拾うのだったら初めからもっと何とかできなかったのか、とはどうしても(^^;
合わせて鏡が繰り返してきた「患者に深入りするな」とは、それによって心理的に不安定になれば多数の命を預かる医者として危険で本末転倒である、という医者としての鏡の心得であった、としてきましたが、もともと鏡は、単発の発言はそこまでおかしくないけれど、描写や行動にそれが反映されていないのがガンだったわけなので、他に修正すべき所があるというか、既に床に空いた大穴が修復不能というか。
そしてこれまで鏡を散々「人でなし」だの「医者失格」だの「切り裂きケーキ野郎」だの罵ってきたエムは、多少は反省したり謝罪したりするのでしょーか。
思い悩むエムの前にパラドが現れ、医者なんて面倒くさい仕事は放り捨てて楽しくやろうぜ、と誘いをかけてくるが、もう誰も死なせたくない、と死という運命に抗おうとするエム。
「誰も死なせたくないなら、このガシャットを使え。そいつでゲンムを倒せ。……運命を変えてみせろよ」
一方、鏡は魔法怪人に襲われ、社長をしばきに大我も参戦するが、すっかり二人とも雑魚扱いで、口だけナイトと前髪スナイパーは強制変身解除。
まあドライバーの安全装置なのでしょうが、前回、ライダーゲージの消滅による無慈悲な死を描いただけに、従来通りのダメージによる強制解除される時とされない時に関して曖昧な描写が続いているのは、根幹設定に関わるだけに残念な部分。
変身の解けた鏡と大我にゾンビの矢が向けられた時、駆けつけたエムは、パラドに渡された謎のガシャットを使用。
ええええええええええ。
「――おまえの運命が決まる時だ、エム」
「運命を変えるんだ」
鏡にガシャットを没収されているので、他に手がない、という状況ではありますし、エムは前回の九条の主な死因(悪い人に貰ったガシャットを安易に使用)を知らなくはあるのですが、それにしてもどうして、2話続けて、悪い人に貰った新型ガシャットを気軽に使うのか(^^;
ヒーローとしては格好いいシーンなのに、話の流れとしては凄く頭の悪い感じに。
と同時に、敢えて前回と同じシチュエーションを持ってきた理由を考えると、同じ行動をしても、九条は“死んでしまった”が、エムは“生き残った”という意図的な重ねに見えてしまうのですが、そう考えるとエムが生き残る理由は現状「(運命に)選ばれ(てい)た」からであり、死んでしまった九条の扱いが酷すぎるというか、「くじ引きでいえばこいつは外れだ」の世界なんですが。
幻夢社長が妙に「運命」という言葉にこだわっているので、割とそういう世界観なのかもしれませんが今作。
社長がパラド用に作成中だったガシャットを使用した事により、普通の人間なら即死レベルの大量のバグスターウィルスに感染するエムだが、その瞳が再び赤く輝くと、エムのDNAデータを読み取ったガシャットが『マイティブラザーズダブルX』へと変化。
「患者の運命は――俺が変える」
何故か感染に耐えたエムが改めてそのガシャットを用いると、トンガリ頭がオレンジと水色の二色になった新エグゼイドが誕生し、ゾンビと互角以上の戦いを見せる。そして、「だーーーーーーーーーーーーーーーーい変身!」すると、なんとエグゼイドが、
左ハゲと、右ハゲに、分裂した!
「馬鹿な……」
「え?」
ここで一度空気を変えて、そのまま「つづく」としてきたのは面白かったです。
パラドいわくエグゼイドLV10は、分裂すると明確に、左側がオレンジ色主体(暖色系)、右側が水色主体(寒色系)、となるのはつまり、キカイダー(ないしメタルダー)?
簡単に解消されえない問題点は多いのですが、詰め込みが多少緩くなったのと、エグゼイドのヒーロー性に焦点を合わせた構成で、今作としてはかなりスッキリとした出来。
前回登場したゲーマー少女も、1クール目なら一気に何の面白みもなく素性がまるまる明かされそうなところを、大我を振り回しながらの準備運動に終始。その少女と絡む事でようやく大我もキャラの幅を広げられるなど、なんだか急に余裕のある描写が続き、九条貴利矢は、色々なものの生け贄になったんだ……。
なお、大我は少女と仲良くなるほど、鏡はエムと“わかり合う”ほど、死亡遊戯ゲージが溜まっていく仕様ですが、果たして、2クール目の終わりにリタイアするのはどっちだ?!
現在の個人的なオッズは、
大我 1.3倍
鏡 20.5倍
社長 25.7倍
ぐらい。