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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第47話

◆第47話「最後のゲーム」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 前回生まれた問題はOPのナレーションでも追い打ちされ、さわおがコックピットの中で見た光景をジューマンズに伝え、ようやく温度差が共有される、というのが今作らしい作り。
 「あたし余計な事しちゃったかな……」
 「いや、背中押してくれて良かったよ。僕は、小さい大和の避難所だったから。あいつが踏み出すには、なにか他のきっかけが必要だったんだ」
 そんなタイミングでジニス様、地球全土に最後のゲームをプレゼント宣言し、弓矢基地から地球に向けて矢を打ち込むというまさかのギミック(笑)
 「今から地球に、私の細胞を注ぎ込む。果たして地球は、耐えきれるかな」
 巨大化エネルギーの元なので過負荷をかけるという事なのか、地球崩壊の危機に力技で矢を引き抜きに向かう5人だが、その前にギフト軍団が立ちはだかる!
 母の墓参りをしていた大和も空に浮かんだジニスの告知を目にし、戦いに向かおうとした所で父と再会。
 「バドから聞いた。戦いに行くつもりか」
 無言で横をすり抜けようとした大和だが、父に引き留められる。
 「もう危ない真似はよせ。母さんが悲しむ」
 「あんたに言われたくない!」
 ……お父さんもお父さんで、自分からは言えないけどバドが喋ってくれたお陰でしこりが取れたぞこれ幸いと、急に父親やろうとして距離を詰めてしまうので、それは大和くんもキレます(笑)
 だが、花をはたき落としてしまった事で大和は少し冷静さを取り戻し、墓前で改めて話し合う父子。
 「なんで黙ってたんだよ。バドさん助けてた事」
 「バドを護るためだ」
 「嘘だ」
 「……嘘じゃない」
 「父さんはいっつもなんも言わないだろ! 母さんが元気だった頃から、いつも……いっつもずっと! 仕事仕事で家に居なくて、たまに帰ってきたと思ったら、黙って怖い顔してるだけで」
 「……母さんはわかってくれていたよ」
 お父さん、典型的な仕事は出来るけど家庭で駄目な人だーーー!(笑)
 コミュニケーションをテーマの核にしてきた今作ですが、最後に“不器用な親子の断絶”を中心にしたのは近年の東映ヒーロー作品らしい所ですし、そこに“いい子が抱えた欠落”を絡めてきたのは、わかりやすい問題点を改善する構造の方が圧倒的にやりやすい中で、やりにくい故にやりたかったテーマなのだろうな、と思います。
 出来のいい大和くんを殴った体勢から振り向きざまにお父さんまで殴りつける所が、まさに『ジュウオウジャー』の面目躍如。
 「俺にはわかんなかったよ!」
 「幼いおまえに話したところで、わからなかっただろう?」
 「それでも……聞きたかったんだ! もっと知りたかった……そしたら……あの日もきっと、怖くなかったのに」
 母が死んだあの日、大和が感じた怖さは、母を失う事だけではなく、父との繋がりを信じられなかったからこそだった、というのは巧くまとめ、そして自分の本当の過ちを知る大和父。
 「大和……」
 「……ごめん父さん。母さんはちゃんと言ってくれてたのに。あんなに繋がりが大事だと思ってた癖に、一番身近な繋がりを、俺は……」
 「いや、母さんに叱られるのは、俺の方だ」
 何故なら、大和父も、生き物はどこかでみな繋がっていると、信じているからこそ。
 「大和……すまなかった」
 「……母さん、今頃呆れてるよ。「あんた達、似たもの同士ね」って」
 互いの素直な気持ちを吐き出して父子は和解し、仲間達との関係を含めて前回かなり深刻に描いた割には、大和の混乱については思ったよりさっくり円く収まって解決。やや物足りなく感じましたが、きっかけこそフィクションらしく派手な救命イベントだったものの、そこから先は消化期間を経て、現実に可能なアプローチで解決に至る、というのは、物語としては多少地味になったものの、『ジュウオウジャー』としての誠実さであったように思えます。
 それは対話であり、“向き合う事でお互いが理解しあえるように努力し続けていく”事。だから、この父子の関係も、まだまだこれからなのでしょう。
 「じゃあ俺行くから」
 「大和!」
 「……一人じゃない。この星の生き物はみんな、どこかで繋がっている。父さんがバドさんを助けたから、俺は仲間と出会えて、戦う力を持てた。だから今度は、俺がみんなを護る番なんだ」
 「わかった。必ず戻ってこいよ」
 「ああ。今度ジューマンの友達を、連れて帰る。そん時は、ちゃんと家にいろよな」
 過去の呪いを解き一歩成長して“大人”になった大和が、この台詞一つで示されていて、実にお見事。
 「……本当に、つまらんとこばかり俺に似てきた」
 光り輝く王者の資格に呼ばれたセラ達は、ギフト軍団との戦いを中断して、リンクキューブの元へ。そこでラリーとバドから、王者の資格を用いてリンクキューブを起動し、かつてジューランドを生み出した時の応用で、地球を他の世界から切り離した安全な空間に隔離するという策を提案される。
 だがそれを実行に移せば、ニンゲン界とジューランドの繋がりは完全に切れてしまう。4人とラリーを先にジューランドに帰し、後に残ろうとするバド。
 「王者の資格を渡せ」
 だが、ジューマン達はその提案に頷く事が出来ず、一つの答を出す。
 「……渡せません」
 「このまま大人しくジューランドに引きこもってろって?! 冗談じゃねぇぞ!」
 「外の世界との繋がりが切れたジューランドになんて、帰りたくない!」
 「せっかくニンゲンと繋がったんだもん。これで終わりなんて絶対嫌!」
 「これから僕たちが築くんです。ニンゲンとジューマンの新しい関係を。だからこれは、渡せません」
 バドの過去が明かされたエピソードで、バドが行った世界の切断は逃避であって、それ以外の解答が欲しいと書きましたが、ここで若者達が、閉じこもるでも切り離すのでもない、未来志向の関係を望む。
 「おまえ達、二度と戻らないつもりか」
 「違う! いつでも帰れる世界を作るんだ」
 そこへ遅れてやってくる大和。
 「これからもぶつかる事はあると思う。理不尽な目に遭うかもしれない。でも! 繋がっていればまたやり直す事も出来る。……だからこれ以上、世界を閉じる事はしたくない。未来の地球と宇宙の為にも、俺達はデスガリアンと戦い抜きます! この星を、護ってみせます!!」
 大和父子の関係と、ニンゲン界とジューランドの関係、繋がっているから帰れる、繋がっているからやり直せる、とミクロとマクロが綺麗に重なり合って着地。
 そしてすべからく、理想郷も、一足飛びの相互理解も否定しながら、それでもみんなどこかで繋がっている事を信じたい、世界はそうやって、良くもなれば悪くもなる、けれど閉ざしてしまえばその可能性すら無くなってしまう、だから自分と、そして他者と向き合い、高め合い変わっていくんだという、『ジュウオウジャー』のテーゼを貫きました。
 映像的にちょっと、大和の台詞がバドに対する選手宣誓みたいになって、若干間抜けになってしまいましたが(^^;
 この辺り、バドが、二つの世界を繋げたくない存在、としてそこまでジュウオウジャーに敵対していたわけではない(逃げ回っていただけ)ので、ジュウオウジャー側から見て、意志をひっくり返す存在(精神的敵対者)、とまでならなかったのが惜しかった所。
 もう少し余裕があったら、バドはもっと強硬手段を使ってくるようなキャラクターになっていたのかも。
 ラリーとバドは大和達に地球の運命を託すことを決め、送り出された6人は再び矢へと向かうが、立ちはだかるナリアとギフト軍団。
 「俺達はこの星の力を預かった、王者の群れだ!」
 揃い踏みして名乗りを決めるジュウオウジャーを嘲笑するナリアですが、様子を見にと理由はつけたものの、わざわざ前線に戦いに出てくる必要は薄く、一番強引なしわ寄せが来る事に。
 「ジニス様の前では、しょせん下等生物です」
 「俺達を、舐めるなよ!!」
 鬼畜大和くん、いきなりの動物全合体でワイルド(以下略)を召喚し、ギフト軍団を無視の暴挙(笑)
 ワイ(中略)キングはケーブルに直接攻撃を仕掛けるが通用せず、ナリアはギフト軍団と自らを巨大化。背後からの攻撃で一度は撃墜される(前略)デカキングだが、ギフト軍団を圧倒すると、再びケーブルに攻撃。
 「大和! 切れない管なら」
 「……そうか!」
 発想を逆転させたジュウオウジャーは、ケーブルを切断するのではなく、それを引っ張る事で、デスガリアンの本拠地を直接叩くという荒技に打って出る!
 慌てて背後からヌンチャクを振るったナリアはカウンターの百獣乱舞で爆散し、これならレオと因縁作らなくても良かったのではないかレベルで雑にリタイア(^^; もうちょっと何とかしたかったのかもしれませんが、残念な最期となりました。ジニス様のリアクションすら無かったですが、最終回で言及はあるやらないやら(あったらあったで雑そうですが)。
 コックピットで野生解放したジュウオウジャーは全力全開で弓矢基地を地上に引きずり降ろす事に成功し、「なんだと……?!」と初めて若干の焦りを滲ませるジニス様。
 「「「「「「この星を、舐めるなよ!!」」」」」」
 遂に地表に叩きつけられ、弓矢基地は大爆発。ジニスのゲームは阻止され、そしてジニスも倒れた……と思いきや、迸る閃光がジュウオウジャーを襲う!
 「悪いね。ゲームのクリアは、まだお預けだ」
 再びジュウオウジャーの前に姿を見せるターンジニス! 未来の地球と宇宙の為に、次回、命の繋がりをかけた最終決戦!!
 これまで長らく手の届かない高みから見下ろし続けていたジニスが、地球と“繋がって”しまった事で足下をすくわれる、というのは鮮やかな展開で、「帰る」「繋がり」を中心に、本編の主要なテーマやキーワードを織り上げて、非常に綺麗な最終回1話前。
 前回が波乱の予感を残しながらの引きだったのに対し、あまりに綺麗にまとまりすぎて既にジニス様に負ける気がしなくなっており、最終回1話前としては落ち着きすぎてしまった感もありますが、今回、地球サイドのテーマは大体まとまったので、次回これをどういう形でジニス様にぶつけるのか、楽しみです。