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『仮面ライダー555』感想4

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第7話「禁じられた音色」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
ヘビを助けるべく勇治が変身した馬オルフェノクは剣を振るって戦いに飛び込み、アバンから挿入歌を使ってスピード感のある格好いい戦闘。満を持しての初顔合わせという事で、かなり気合いが入っています。そして2対1とはいえ、おもむろに銃を取り出して撃つファイズ、凄く、ヤクザの下っ端感(笑)
馬は必殺円錐キックをまさかの剣ガードし、互いに吹き飛ぶと、見えない所で双方が変身解除。
キックがかすって深傷を負った勇治は海堂に助けられるも途中で放棄され、なんとか自力でマンションに。巧は啓太郎に回収され、「特訓とかしてみる?」と聞かれるも、「そんな恥ずかしい真似が出来るか」と力強く拒否(笑)
遠慮しないで巧も、山に篭もって筋トレしたり崖の上からダイブを繰り返したり丸太の上で座禅を組んだりすれば、今の自分から解脱して巧サンダーとか撃てるようになるかもしれないのに!
昭和のみならず、『クウガ』でも五代くんは定期的に剣道だったりランニングだったりしていましたが、「恥ずかしいから努力とかしない」という巧のスタンスが強調。
旧作への皮肉ギャグっぽく入っていますが、啓太郎も真理も手に技術を持っている――努力の蓄積が存在している――事が示されており、やりたい事のない巧と、目指しているものがある真理と啓太郎の根の部分が対比されており、格好いい/格好悪い、とは何だろう? という問いが含まれているとも見えます。
「俺はもう海堂直也じゃないんだ。人間を越えたんだ。……復讐だ。ふふははは、復讐してやる!」
そして、海堂は不慮の事故でギタリスト生命を絶たれた元天才ギタリスト――夢を失った者であったと判明。
真理は真理で、就職予定の美容院で無駄に嫌な感じの店長から厳しい指摘を受ける。
「夢を持つのは楽しいけど、夢をかなえるのは楽じゃないわよ」
翌日、動けない勇治に変わってスマートレディに会いに行った結花は、「知ってるわよ。あなた、人間を憎んでいる。その憎しみを、木場勇治にも分けてあげて」と悪魔の囁きを受けて煽られる事に。
一方、小太鼓叩いて中退した音楽大学に乗り込んだ海堂は、何らかの理由でかつての級友に復讐の牙を向けようとするが、その目の前で学生の一人が砂と化し、レディから海堂の素性を教えられた結花、それを目撃。
「違う! 俺じゃない。俺はまだ、何もしてない」
「どういう、事ですか……?」
「この学校にも居るんだよきっと。俺らとおんなじ……オルフェノクが」
海堂の復讐劇とそれを止めるとか止めないとか……と思わせて、他にもオルフェノクが、という転がし方が実に面白い。
その頃、家出して連絡の取れない息子を説得してほしいと馴染客のおばちゃんから頼まれた啓太郎は、巧を連れて息子が通う音楽大学へ。そこでギタリストを目指す息子が、進路を巡って親と仲違いしている事を知る。
「父さんも母さんも、俺の夢なんてどうでもいいと思ってるんだ。俺本気なのに」
「……そうなんだ。夢か。なんかわかるっていうか」
「全然わからんな。おまえ家帰れ」
家に帰ると今度は真理が特訓中で、当たり散らす巧。
「だいたいうざいんだよ。どいつもこいつも夢夢夢って! 夢持ってりゃそんなに偉いのかよ」
「あ……たっくん要するに拗ねてんだ。自分に夢が無いから」
ここですかさずツッコむのが、啓太郎、強い(笑)
如何にも、いい人&ほだしキャラポジションで、その役割も勿論持っているのですが、狂気と毒舌がパンチ力高めで立ち位置を確立してきました。
「俺はおまえらの夢の被害者だ」
「なに滅茶苦茶言ってんの。もっと大人になりなさいよ」
「ほんと馬っ鹿みたい!」
「最っ低」「最低」「「ね」」
ふたりのいきはピッタリだ!(笑)
一方、勇治は海堂の復讐を思いとどまらせようとしていた。
オルフェノクの力に溺れたら、俺達は本当のモンスターになってしまう!」
「……ふひひひ。いいね、いいね、それ。俺はモンスターだ。俺はモンスターだーーー! ひゃひゃひゃひゃ!」
勇治のスタンスも徐々にハッキリしてくるが、説得に耳を貸さない海堂は、翌日再び音楽大学に乗り込むと、廊下でスライディング。
「変・身」
海堂ならではの遊び心という感じですが、ここでオルフェノクサイドが「変身」を使用。あと成る程、海堂オルフェノクは顔に牙の意匠が入っていて、口を開いたヘビのイメージ?なのか。
ところが海堂は、聞こえてきたギターの音色に足を止めると、変身解除。
「あの音は……」
海堂が教室の扉を開けると、そこでギターを弾いていたのは、海堂に憧れて同じ大学へ入ったという、おばちゃんの息子。
「俺とおんなじ指だ……俺だって……あんな事故にさえ、遭わなけりゃ」
車に左手を轢かれてギタリストの道を絶たれた過去が回想され、素っ頓狂キャラだった海堂が、追いかけていた夢の輝きに再び触れ、ギタリストの顔を取り戻す、という落差による人物の掘り下げが実に巧い。
そんなおばちゃん息子を説得に今日も大学へ来ていた巧と啓太郎は、学生を襲うフクロウオルフェノクの姿を目撃し、変身。海堂がおばちゃん息子にレッスンをつけるシーンが戦闘の間に挟まれ、音楽に対する純粋な気持ちを取り戻した海堂が、束の間、別の世界に居る、というのが良い演出。だがそのギターのメロディはそのまま戦闘のBGMとなり、どこか不穏な気配を漂わせながら、ファイズのナックルパンチをかわしてフクロウは姿を消してしまう。
アバンタイトルの初顔合わせを挿入歌を使って盛り上げ、後半の戦闘は情感を優先して海堂のキャラクターを掘り下げていく、というのが非常に巧くはまった構成。
そして、美容院からの帰路、真理を見つめる不審な男の影があった……。


◆第8話「夢のかけら」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
「おまえわかってんのか?! 鍋焼きうどんといえば、あつっ、猫舌の天敵なんだよ! いっくらふーふーしても全然冷めないんだぞ!」
巧はそのルックスで、「ふーふー」言うだけで面白くて、ズルい。
真理に近づこうとした不審者オルフェノクはスマートレディに止められ、改めて、ベルトを狙うのが禁止されていると強調。本社命令を無視しての独断だったようですが、イカの人も「戦闘態勢に入ったから俺は撃ちたいんだ! 俺にイカスミを撃たせてくれ!」みたいなノリでしたし、持った力は振るいたくなるのがサガ、という事か。
レッスンを終えた海堂は廊下で結花とバッタリ遭遇し、勇治と結花に付きまとわれるのを面倒に思いながらも、突き放しきれないのが端々に見えて、ぐっと良くなってきました。勝手気ままな自由人のようで、他人に心配されるのが照れくさくて苦手なタイプ、みたいな。
「あんたは? 人間が好きか?」
「……それは…………わかりません。海堂さんは?」
「俺は……嫌いだ」
「嘘」
環境の違いによる、人間への想いの違いが少しずつ掘り下げられていくオルフェノク組。
「おまえ……夢を持った事あっか?」
「いや……特にないけど」
海堂はマンションで勇治と話し、説教キャラになりそうな流れになっていた勇治は、やはり基本はふわふわしている、という事が改めてハッキリしたのは良かったです(笑) ここで簡単に勇治を説教キャラにシフトしてしまわないのが、今作の丁寧な所。
「俺に言わせればな……夢ってのは、呪いと同じなんだよ。呪いを解くには、夢をかなえなけりゃならない。でも、途中で挫折した人間はずっと呪われたままなんだよ。俺の苦しみは、おまえにはわからない」
一方、美容院で課題をクリアできずに八つ当たり気味の苛立ちを巧にぶつけた真理は菊池家を飛び出していき、なんだかんだと追いかける巧。
「おまえ……なんでそんなに一生懸命なんだ?」
「夢を持つとね……時々すっごく切なくて、時々すっごく熱くなるんだ。だからかな」
「……よくわかんないけど、贅沢だよ、おまえ」
「うん。ごめん。泣いてる暇があったらもっともっと頑張らなきゃね」
「ああ、そうだな」
この前に、おばちゃん息子の再説得シーンで、死んでもいいという程の夢への想いを語られた巧に
「俺にはわかんねぇんだよ全然。まるで全っ然わかんない」
という台詞があり、格好つけたポーズではなく、巧は本当に夢というものがわからない事が強調されており、「心から切なくなったり熱くなったりできるものを持っている事はとても贅沢」という巧の本音が真に迫ります。
――「その内わかるようになるよ。たっくんにも夢が出来ればさ」――
死んだ人間が怪物となって甦る物語である『555』において、「夢」というキーワードを通して、では「生きている」って何だろう? という問いが示されるのもまた、人と人でなしの境界線上の物語、という感を強めます。
翌日も海堂はおばちゃん息子にレッスンをつけ、その音色を耳にする教授。教授の言葉に不審を抱いた結花はバイクに細工する教授を咎め、海堂を轢いたのもフクロウオルフェノクの正体も教授だと判明。
一方、真理は美容院の店長から技術の向上を認められ、やたらきつい感じが強調されていた店長が、ただの嫌な人でないのは良かった所です。
海堂もそれとなく敬意を示す教授が犯人だった、という裏の悪意はミステリとしてはオーソドックスなのですが、そこに、厳しいが努力の成果は認める店長、人間に対して危うい憎悪を抱く一方で海堂の為に泣ける結花、横暴すれすれの振る舞いを見せる真理が見せる涙、なんだかんだそんな真理を放置しておけない巧、真摯な音楽家としての海堂、他者の為に命を懸けられるのに自分の事はふわふわしている勇治……と、人には色々な顔がある、という描写が幾つも織り交ぜられる事で、物語のギミックとキャラクターの奥行きの付け方の融合がお見事。「夢」を中心に物語を進めつつ、それだけに留まらない構造が、さすがテクニカルです。
意気揚々と帰路についていた真理を、背後から狙う不審者オルフェノクだったが、木立の影から巧がすっと現れてその前に立ちはだかる。
……あ、ストーキングではなく、昨夜の気配を気にしてちゃんとガードしていたのか! 大学を啓太郎に任せて真理を見守る巧が急に優しくて戸惑っていたのですが、成る程納得です。
「何者だおまえ」
不審者の問いかけに巧は無言でコートの前を開いてベルトを見せ、鍛え抜いたカウンター技を披露。斜めに構えるポーズも決まり、真理に気付かれないように戦う姿勢といい、あれ?! たっくんなのに超絶格好いいぞ?!(おぃ)
そして音楽大学では、勇治が教授を待ち受けていた。教室に戻ってきた教授に対し、椅子に座って背を向けているのが、仕事人ぽい(笑)
「話は全部聞いている。なぜ海堂直也の夢を潰したんだ」
「ふん……私より才能のある人間は、最も重い罰を与えなければ。わかるかね? そういう人間は、ただ手にかけるだけではつまらない。才能を潰して、惨めに生きてもらわなければ」
海堂の指を潰した車の運転手が教授だと明確になり、眼鏡不審者は先への布石かと思っていたら、ここで巧と勇治が、それぞれに戦うという二局展開。
「あの……海堂さん、一つお願いしてもいいですか?」
「なにを?」
「ほんの少しでいいから、海堂さんのギター聞いてみたい」
海堂は結花に渡されたギターを手に取り、その音色をバックに激突する、巧と眼鏡、勇治と教授。

「おい知ってるか? 夢を持つとな、時々すっごい切なくなるが、時々すっごい熱くなる。……らしいぜ。俺には夢がない。でもな、夢を守る事はできる」
「知ってるかな? 夢っていうのは呪いと同じなんだ。途中で挫折した者はずっと呪われたまま。……らしい。あなたの、罪は重い」

巧パートと勇治パートのシンクロが非常に痺れる構成なのですが、ここで両者がびしっと決めるかと思いきや微妙に決まりきらない、というのがまた、今作らしい丁寧さ。キャラクターの積み重ねを汲みつつ、まだ心の底からわからないけどそれでも、自分の心を突き動かす何かの為に変身する、という二人の姿がそれでも格好いい。
同時に、夢を護る為に戦うのと夢を潰した者の罪を裁くのと、それぞれ、“他人の夢の為”ながら、巧と勇治がちょっとずつズレているという案配も絶妙。
しばらく二つの戦いが交互に描かれ、指の震えで演奏を止める海堂。
「……ここまでだ」
ここから少し空気が変わって、いきなり飛んできたバイクロボが、ファイズと眼鏡オルフェノク(牛っぽいけど牛は既に居たので何なのか)を、まとめて銃撃(笑)
「あぶねぇな。俺に当たるとこだったぞ」
ちゃんとツッコむファイズですが……そもそも味方だと認識されているのか、少々不安になります。
ファイズはバイクロボを蹴り飛ばして強制的にバイク形態に戻すと、ハンドルレバーを抜き取って剣に。バイクロボの飛行機能も新たな武器も凄くぞんざいですが、たっくんはフェリーの中でバイクの説明書も熟読したから!
フクロウクローだと思っていたけどクロウクローかもしかしてオルフェノクは馬がずんばらりん。牛のような眼鏡オルフェノクは疾風φの字斬りで、それぞれ焼却。
「俺……ようやくギターを捨てる事が出来る。俺の代わりに、弾いてくれる奴が出来たから」
おばちゃん息子に己の夢の続きを託した海堂は、ギターを窓外放擲し、砕け散ったギター、でエンド。
……演出なのはわかるのですが、海堂があまりにも雑に放り投げるので、階下の通りで新たなオルフェノク誕生のきっかけにならいなかドキドキしました。何にしろ、しっかり回収しておかないと足が付きそうで、多分、結花が拾いに行く。
前回冒頭の初激突を経て、海堂と音楽大学を軸に両サイドの動きが交錯しつつ、気がつくと巧パートと勇治パートがあれよあれよとシンクロ、二人がそれぞれの戦う理由を見出し始める、とテーマもびしっと決まり、丁寧さと技巧の行き届いた名編でした。