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『仮面ライダー555』感想5

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第9話「社長、参上!」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
「君、ふーふーして差し上げろ」
社長も、ふーふー派なのか!
スマートブレインから連絡を受けた真理は、新社長・村上峡児と面会。村上社長から父が行方不明になっていると知らされる。
これまで謎のベールに包まれていたスマートブレイン社長は、別人になっていた、と判明。ベルトを巡るスマートブレインの動きは、どこまでが前社長で、どこからが村上の指示だったのか、社長という肩書きにより、上手く誤魔化されてしまう事に。
パワフルな青年実業家めいた風貌の村上は、ファイズギアはオルフェノクと戦う為に開発したものであり、より有効活用する為に返却してほしいと要求。レディやイカの人の活動を見るとスマートブレインはオルフェノクと密接な関係にありそうで非常に怪しげですが、そんな事を知るよしもない真理は、躊躇いながらもベルトを返却してしまう。
……まあ、裁判になったら負けそうですしね!
帰路に立ち寄った喫茶店で、真理の両親が火事で死亡し、しばらく施設で暮らした後に養父に引き取られた事を知る巧だが、そこで勇治とニアミス。
「なんとなく気に食わねぇんだよ、あいつ」
そそくさと店を出ようとする巧だが、会計時にお金が足りない事が発覚し、レジで真理と揉めている声を耳にした勇治、不足の200円を支払ってくれる(笑)
「前にも、会いましたよね。……まだこんな生活をしていたんですか」
前回格好良かったのに電光石火で蹴り落とされた巧を踏み台にして、真理は返金の約束にかこつけて勇治の電話番号をゲット。
ちなみにそのぼんやりした男は、お金は泉から無限に湧いて出てくるものと思っているから気をつけて!!
(叔父が手を付けられなかった、自分名義の通帳ぐらいあったのかもしれませんが)
そんな勇治は海堂に対して、
「俺は……人間を守っていこうと思っている」
と宣言。
オルフェノクは人間を襲って仲間を増やそうとしている。でも……俺は人間として人間を守りたい」
「は?! いきなり正義の味方かよ、ふざけんな。俺はどっちかといえば、人間を襲う方に回りたいね」
「ふ……君には無理だよ。理由もなく人を襲うなんて。君は、俺達の仲間だ」
海堂に人の心を見る勇治だが、それに反発した海堂は今日も元気よくマンションを飛び出していき、海堂を気に掛ける結花は菊池クリーニング店で啓太郎と再会。
「長田さんか……いいな」
この再会に気を良くした啓太郎は、近所で連続している空き巣の情報を聞いてハッスル中。
「ねぇねぇ決まったよ次の人助け」
……いつの間に、そういう組織に。
啓太郎はその内、世界の平和とみんなの幸せを守る為に店で集めた個人情報を有効活用という名の不正利用して「ねえたっくん、3丁目の○○さんは明日から一週間ハワイ旅行だそうなんだけど、脱税で溜め込んだお金を家の金庫に隠してあるそうなんだ。悪いお金は僕たちが手に入れそれを正義の為に使うべきだと思わないかな?」と裏口から侵入しようとした所を添野刑事に逮捕されて(以下略)
なおベルトを返しに行く前の巧と真理、
「だいたいあなた正義の味方なんだから、バイクに乗って颯爽と現れるのが普通でしょ。免停なんかなるもんじゃないって」
「……俺、正義の味方なのか?」
「違うの?」
「……びみょーな気がする」
と、相変わらずの作風です(笑)
その夜、啓太郎の旗振りで町内パトロールをしていた3人は、問題の泥棒と遭遇するが、なんとその正体はオルフェノクであった! ベルトがなく戦えない巧だが、そこに現れる、正体不明のファイズ。どうやら“ファイズを助ける役目”を持つらしいバイクロボも参戦して戦闘となり、ナメクジは逃亡。そしてベルトを外したファイズの正体は――海堂直也!
一方、村上社長は社内の反対勢力により襲撃を受けていた。
「わかっていますか? 私はね、眠っている所を起こされるのが、一番嫌いなんですよ」
自ら暴漢の前に立った社長、浮く。
「下の下、以下ですね」
社長は巨大な火の玉を放って刺客達を瞬殺。以前に結花が人間の姿のまま超人的ジャンプ力を見せているように、オルフェノクの能力はある程度人間の姿でも発揮できるようなので、変身こそしないもののやはり社長はオルフェノクなのか。そして、新社長が不愉快だから闇討ちしてしまえ、というスマートブレインはどういう社風なのか!(笑)
真理父の人格が、大変心配だ!!
新キャラ登場から不穏な要素を散りばめつつ、前回あれだけ格好良く決めた巧が1秒たりとも変身しないという、ねじくれたというか、人を食った作劇。……まあ、質流れに比べれば、返却は200倍マシですが!


◆第10話「早く真人間になりたい」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
「はーい、わかりましたか? 役に立たないオルフェノクは始末します。これが新しい社長の方針です。あなたは再三の警告にも関わらず、今まで一度も人間を襲った事がありませんね。そういうオルフェノクには、怖い怖いファイズさんがお仕置きに来る事になったんです。あ、でもあと一度だけチャンスをあげてもいいですよ。ラストチャンスです」
逃げたナメクジはレディに見つかって煽られ、なんだかんだマンションに帰ってきた海堂は、落ちこぼれのオルフェノクの始末屋をやる事になった、と勇治と結花にファイズギアを見せる。
ここで遠回しに勇治に警告しているのが海堂に残った人の好さであり、どうもそれを見透かしている感がある勇治は、村上社長と個人面談。
「私が社長になった今、君の生き方は許されない」
「なぜあなたに許されなきゃいけないんですか?」
君の生活費をスマートブレインが出しているからだ。
「この会社の狙いはなんなんです?」
「さぁね。ただ、これだけは言えます。人は泣きながら生まれてくる。これはどうしようもない事だ。だが、死ぬ時に泣くか笑うかは本人次第だ」
まだ手探り感の見える社長ですが、この台詞は非常に格好良かった。
「僕は……」
ためらいつつも、顔を上げてハッキリと社長の目を見て告げる勇治。
「――人間です」
最初の「僕は……人間ですから」の時はうつむき加減だった勇治がここでは決然と村上を見据えており、どこかぼんやりした勇治の、しっかりした芯の部分が、スマートブレインとの対立によって表に出てくる事に。
「ふぅー……下の下ですね」
その頃、マンションの部屋で海堂はわざとらしく人間を悪し様に罵っていた。
「海堂さん、なんだか無理してるみたい」
「なんだって?」
「海堂さん、本当は木場さんの事が好きなんじゃないんですか? 本当は、海堂さんも人間を信じたいんじゃないんですか?」
「なにを馬鹿な。くだらない」
「じゃあ、なんでここに居るんですか?」
人類の敵として生きる事を自分に言い聞かせようとする姿を結花にさえ見透かされ、勇治を否定しようとしながら離れられない核心を突かれて目を逸らした海堂は、走って逃亡(何度目だ)。
それを追いかけた結花は途中でタチの悪いチンピラ達に絡まれるが、人気の無い場所に誘い出した上で……男達を虐殺する。殺戮を終えた結花は笑顔を浮かべており、人の悪意に追い詰められてからの暴発ではなく、恐らくは既に何度か、確信的に力を振るっていると見えるのが、凶悪。思えば前回、音楽大学の教授に対して非常に堂々と挑発していたのは、オルフェノクの力を扱う事に自信がついていたからか。
勇治も結花も既に殺人を犯しているとはいえ、その背景に重い事情が描かれた上で、なんとなく“いい人”側のオルフェノクとして見せられていたのですが、ここで、一見薄幸のヒロインポジションの結花が抱える、明確な憎悪を示す強烈な一撃。
結花は人間を憎んでいるからこそ、海堂が人間を憎めないでいる事がわかり、その上で結花個人の人間に対する考え方とは別に、海堂(と木場)個人を嫌いではない、という屈折した描写でキャラクターの奥行きも増しました。
菊池家では、ファイズギアを失った上に自分とは違うファイズの姿を見せつけられた巧の奇行を、真理と啓太郎が遠巻きに見守っていた。
「あ、またなんか見てるよ」
「違うよ。今度は何も見てない。浸ってるんだよ……」
動きにキレが無いのを心配しながらも、容赦ない(笑)
「おまえら……優しくすんな!」
同居人達の生暖かい視線にいたたまれなくなった巧は、ようやく免停解除で乗れるようになったバイクで風になりに行くが、同じくバイクの海堂に煽られ、しばらく生身バイクアクション……というのは割と珍しいか(まあ、フルフェイスのヘルメットになってしまうので、画的にもう一つ盛り上がらない、というのがあるのでしょうが)。
「あれでファイズかよ。俺の方がまだマシだったぜ」
海堂は途中で社長に呼ばれて去って行き、その後ろ姿を見つめてこぼす巧が、ここでほぼ初めてパンツ以外のものへの執着を見せ、7−8話を経ての巧の変化も積み重ねられていきます。
その頃、真理と啓太郎は結花の元へ商品を配達し、そこでバッタリ勇治と遭遇するという、軽い修羅場を展開していた(勇治と結花は「親戚のようなもの」と説明)。
「なんとか、真人間として立ち直ってもらいたいものです」
巧について、素でこれ言う勇治が、たぶん人間として一番酷い(笑)
2人は紅茶をご馳走になり、返信のないメル友より近くの美少女、と結花に鼻の下を伸ばす啓太郎は、住所その他も手に入れ、ストーカー化しないか大変心配です。
最近この辺りに空き巣が多発しているし、長田さんの私生活を24時間見守るのが僕のジャスティス!
つまりこれは正義であり人助けでありみんなを幸せにする為の活動であり僕は犯罪者ではなくてバイクを盗んだ事なんてありません!
と容疑者の男は意味不明な供述を続けており……
一方、真理は真理で勇治にぼうっとした視線を送っていたが、その勇治は海堂に呼び出しを受ける。
「君に倒されるわけにはいかない。きっと君は立ち直れなくなるから」
「ふざけろ! 俺はんなヤワじゃねぇ。――変身」
海堂ファイズと馬オルフェノクが激突し、しばしの殴り合いの末、ファイズナックルを放とうとするも寸前で止めてしまうファイズ
「言っただろう……君には無理だって。頭を冷やしてよく考えた方がいい」
勇治はそんな海堂ファイズを割と思い切り馬ブレードで吹っ飛ばすと去って行き、入れ違うようにそこにやってきたのは、海堂を心配した結花と、結花の為に車を運転してきた啓太郎。
海堂(オルフェノクにしてファイズ):結花がオルフェノクだと知っている・啓太郎については不明(巧の関係者として情報は得ているか?)
結花(オルフェノク):海堂がオルフェノクだと知っている・啓太郎がメル友だとは気付かずただの親切なクリーニング屋さんと認識
啓太郎(狂人):海堂がファイズだと知っているがオルフェノクだとは知らない・結花をメル友だと気付いていないしオルフェノクだとも知らない
という、実にややこしい関係が、遠慮なく展開します。
「君は正義の味方じゃないのか! 酷いじゃないか」
「正義? ……は? 馬鹿かおまえ」
結花を突き飛ばした海堂に怒りを燃やす、無駄に行動力を備えた狂人であるところの啓太郎は、落ちていたベルトを拾得。
「これは君には渡せない。たっくんの方がまだマシだ!」
さりげなく酷い台詞と共にベルトを持って逃げる啓太郎だが、よりにもよって人殺しの壁を乗り越えた直後で昂奮状態のナメクジオルフェノクと遭遇してしまう。だがその時、現れた巧が颯爽と、ヒーロー度の高まりを見せるバイク轢きでアタック。人間関係とそれぞれの思惑がややこしく交錯する中で、第8話・第10話と、それぞれ後編クライマックスでは巧がすっぱりとヒーローらしく決めてみせるという構成。
「それはたっくんのもんだよ。やっぱファイズはたっくんじゃないと!」
「……ああ。かもな」
啓太郎からベルトを受け取り、“ファイズである事”に自分の居場所を見つけ始めた巧は、いい笑顔から「変身!」し、必殺円錐キックでナメクジを焼却。
紆余曲折の末に巧の元へ戻ってきたベルトだが、果たして次回、スマートブレイン法務部は動くのか、動かないのか――そして、この戦いを見つめる、一つの影があるのだった……。
新展開かつ社長登場に加え、連続怪死事件を気にかけるも上層部にかかる圧力を感じる添野刑事、地下35mの謎の教室で生き延びていた作業員2人、友人から同窓会の写真をメールで受け取る真理、と先への布石も盛り沢山で、近作とは別の形でぎゅうぎゅう詰めの内容。
その為、前回今回と、あちこち場面転換が多すぎて一つ一つのシーンがぶつ切れ気味な印象になってしまい、全体のテンポも悪くなってしまっていたのですが、錯綜に錯綜を重ねた上でそのピークにクライマックスバトルを被せ、力技でカタルシスを生んでしまうのは、さすがの手腕(^^;
地下35mには教室どころか丸々一つ学校があったと判明し、作業員2人が絶望的な状況で出口を探す中、一体どうやって入り込んだのか、それとは別の懐中電灯が教室の壁を照らすと――壁に飾られた絵に記されていた名前は、園田真理。
顔はほとんど見えないのですが、クレジットによると作業員の若い方は、後の闇の皇帝ゼットこと大口兼悟さん。……さすがにもう、ここから奇跡の救出で、再々登場は無いか?(^^;
現状、ヒロイン度で圧倒的に結花に後れを取る、横暴系ヒロイン真理の周辺も何やらきな臭くなってくる中、次回、上の上、そして――!