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『動物戦隊ジュウオウジャー』構成分析

 ……の前に、リスト作成の為に過去の感想を読み返していて気付いたのですが、第6話冒頭の会話で
 ジニス「お帰りアザルド。どうだい? 地球で体を再生した気分は」
 アザルド「気分? 別に、いつもの通り爽快だ」
 て、この時点で伏線張っていたのか!!!
 伏線、といっても視聴者に引っかかりを強く意識させるタイプではなく、見直してはたと膝を打つ(覚えていてもらわなくてもいい)というタイプですが、しっかり見直すと、こういった仕掛けが他にも色々とありそう。
 簡易放映リストは左側から、話数/監督/脚本/メインキャラ/簡易評価/備考、です。

  1. 柴崎貴行/香村純子/――/◎/デスガリアン襲来
  2. 柴崎貴行/香村純子/赤×緑/−/ジューマンズと同居開始
  3. 加藤弘之/香村純子/赤×白/○/キューブキリン登場
  4. 加藤弘之/香村純子/青×黄/○/
  5. 中澤祥次郎/香村純子/赤/−/ラリー登場・ジュウオウゴリラ覚醒
  6. 中澤祥次郎/香村純子/赤/○/ジュウオウワイルド誕生
  7. 竹本昇/荒川稔久/緑×白/−/『仮面ライダーゴースト』コラボ
  8. 竹本昇/香村純子/黄/−/
  9. 柴崎貴行/荒川稔久/赤×青/−/キューブモグラ登場
  10. 柴崎貴行/香村純子/――/○/大和と鳥男、再会
  11. 柴崎貴行/香村純子/――/◎/ワイルドジュウオウキング誕生
  12. 中澤祥次郎/田中仁/緑/−/
  13. 中澤祥次郎/香村純子/赤×黄/−/キューブクマ登場
  14. 加藤弘之荒川稔久/白/△/
  15. 加藤弘之荒川稔久/黄×緑/○/
  16. 竹本昇/田中仁//赤×マリオ/○/
  17. 竹本昇/香村純子/青/○/ザワールド乱入
  18. 中澤祥次郎/香村純子/――/−/トウサイジュウオー登場
  19. 中澤祥次郎/香村純子/赤×サワオ/−/キューブパンダ覚醒・ザワールド解放
  20. 中澤祥次郎/香村純子/――/◎/ジュウオウザワールド誕生
  21. 加藤弘之/香村純子/緑×サワオ/−/キューブコウモリ登場
  22. 加藤弘之/香村純子/白×サワオ/◎/ワイルドトウサイキング誕生
  23. 竹本昇/香村純子/――/−/バングレイ登場
  24. 竹本昇/香村純子/赤/◎/
  25. 柴崎貴行/田中仁/黄×サワオ/−/
  26. 柴崎貴行/田中仁/赤/○/
  27. 杉原輝昭/荒川稔久/青×緑/×/夏の総集編
  28. 加藤弘之/香村純子/――/−/スーパー戦隊通算2000回記念SP
  29. 加藤弘之/香村純子/――/○/〃・ジュウオウホエール覚醒
  30. 竹本昇/香村純子/青×サワオ/−/キューブホエール登場
  31. 竹本昇/香村純子/青×サワオ/○/ドデカイオー誕生
  32. 柴崎貴行/下山健人/――/○/
  33. 柴崎貴行/下山健人/黄×白/×/
  34. 加藤弘之/香村純子/――/○/
  35. 加藤弘之/香村純子/――/◎/ワイルドトウサイドデカキング誕生・バングレイ死亡
  36. 加藤弘之/田中仁/緑×白/△/
  37. 柴崎貴行/香村純子/――/−/キューブオクトパス登場
  38. 柴崎貴行/香村純子/赤×バド/−/
  39. 杉原輝昭/田中仁/青/×/
  40. 杉原輝昭/田中仁/黄/△/
  41. 加藤弘之/香村純子/――/○/シン・ジニス覚醒
  42. 加藤弘之/香村純子/サワオ/◎/クバル死亡
  43. 加藤弘之/香村純子/――/△/
  44. 杉原輝昭/香村純子/――/−/年明け総集編
  45. 杉原輝昭/香村純子/赤×白/○/レガシーアザルド覚醒
  46. 杉原輝昭/香村純子/赤/◎/アザルド死亡
  47. 加藤弘之/香村純子/赤/○/サジタリアーク崩壊
  48. 加藤弘之/香村純子/――/○/デスガリアン壊滅


 (演出担当/加藤弘之:16本 柴崎貴行:11本 竹本昇:8本 中澤祥次郎:7本 杉原輝昭:6本)
 (脚本担当/香村純子:34本 田中仁:7本 荒川稔久:5本 下山健人:2本)

 柴崎監督が夏映画と次作パイロット、竹本監督が冬映画、中澤監督が『エグゼイド』へ、と次々と演出陣が抜ける中、最初から最後までローテに加わり中盤以降の山場回を軒並み担当した加藤監督が最多演出で、最終回も締めて獅子奮迅の大活躍。非常にいい仕事でした。
 今作、近年の作品としては3話持ちが多い印象(年間5回)なのですが、特に最終クールには杉原・加藤の名前しかなく、〔2−3−3−2〕のローテで約3ヶ月を乗りきっており、一体どういう状況だったのか少々心配になります。劇場版にVシネマにネット配信にスピンオフ作品にと、発表媒体の増加でやりくりが厳しい事になっていたりするのでしょうか。
 そんな中で、仮面ライダー畑で育ち、戦隊参加では『特命戦隊ゴーバスターズ』立ち上がりのやらかしが印象に強かった柴崎監督が、再びの戦隊パイロット監督として健闘を見せ、今作でデビューとなった杉原監督ともども、新しい刺激を与えてくれる事になりました。次作『キュウレンジャー』もパイロット監督を務めるという事で、戦隊で新たな力となってくれるのを期待したいです。
 戦隊ローテの中ではベテランのグループに入りつつある竹本監督は、大和くんの幅を大きく広げた第24話(お盆回)が素晴らしかったです。冬の劇場版の後は『帰ってきた』担当となるようで、次作に参加するにしても、しばらく先でしょうか。
 中澤監督は前半だけの参加となりましたが、改めて見ると、ジュウオウザワールドという恐ろしい置き土産を残していったのか……(笑) 中盤以降も中澤監督が参加していたら、サワオはいったいどんな事になっただろうか……というのはちょっぴり気になる所です。
 脚本は、メインライター香村純子が約7割を担当し、ベテラン荒川稔久がサポートに入った所で、前年『GO!プリンセスプリキュア』でシリーズ構成を務めた田中仁が特撮作品初参加、前作メインライターだった下山健人がスポット参加、と香村さんの負担を軽減しつつ、新たな戦力も加えて、といいバランスになったと思います。前作は脚本家2人で回してしまいましたが、戦隊シリーズの場合、3〜4人+ゲスト参戦、ぐらいがバラエティが生まれて良いかなと思うので。
 勿論デメリットもあって、今作でいえば、中盤以降はアムが香村さんしか使いこなせないキャラクターになってしまっていましたが、この辺りは仕方が無かった所かな、とは思います。
 感想本編でしばしば書きましたが、香村さんは本当に、初の戦隊メインにして予想を遙かに上回る筆の冴え。活き活きしたキャラクター、丁寧な好感度付け、物語の手堅い積み重ね、痒いところに手の届く目配り、ここぞの鮮やかな盛り上げ、とお見事でした。特に、香村脚本の大きな持ち味である、決め台詞に向けた綺麗な線の引き方が、年間通して作品の中で一本通っていた、というのは脱帽。ある意味では、書けすぎて最終的に手が回り切らない部分も出てしまいましたが、紐解くほどに美しい作品でした。この経験が生きる次のメイン作品がある事を、心から期待したいです。
 今後も見据えての器用だったと思われる田中さんは、特撮初参加としてはなかなか良い仕事。今季は再び《プリキュア》シリーズのメインに戻りましたが、次の参加の機会も楽しみにしたいです。
 荒川さんは担当回からも完全に後輩のサポートという感じで、そこまで出来は良くなかったのですが、やはり、セラ×アムのアイドル回を書かせてあげるべきだったのか……!(おぃ)
 前年色々あれだった下山さんは、第32話がかなり良かったのですが、第33話ではシリーズ最低レベルの1本を繰りだし、なんというか、こう……下山さん。
 メイン回の配分は、以下。()内は単独メイン。
 〔赤:14(6) 青:7(2) 黄:7(2) 緑:7(1) 白:7(1) サワオ:7(1) マリオ:1 バド:1〕
 見ている時はどうもセラ不遇のイメージが強かったですが、数字にしてみるとなんとまあパーフェクトな配分(あくまで私主観の判定ですが)。
 折角なのでもうちょっと細分化してみると
 赤〔単独6 青1 黄1 緑1 白2 サワオ1 マリオ1 バド1〕
 青〔単独2 赤1 黄1 緑1 白0 サワオ2〕
 黄〔単独2 赤1 青1 緑1 白1 サワオ1〕
 緑〔単独1 赤1 青1 黄1 白2 サワオ1〕
 白〔単独1 赤2 青0 黄1 緑2 サワオ1〕
 サ〔単独1 赤1 青2 黄1 緑1 白1〕
 で、基本は1人1回ずつ絡むという形になっており、青×サワオが2回なのは、30−31話が前後編構造の為です。キューブホエールとドデカイオー登場エピソードでもあるので、キャラメイン回としては2話で1話分ぐらいの内容ですが、おまけ。青×白回だけありませんでしたが、これは普段からある程度距離感が近いというのと、やはり後半にアイドル回の予定があったのか?!
 メイン回の出来不出来や諸々の要因による充実度の差はそれぞれありますが、非常に計算が行き届いていた(そしてそれを実行できた)作品であった事は、この配分からも明確に。
 一方で、この偏りの無さからは、非常にバランスが良い代わりにそれ以上の遊びを入れる余裕が無かった、という今作の長所と裏表の短所もハッキリと浮かび上がってきます。
 メイン回以外でもそれぞれのキャラクターの個性をワンポイントで見せるのが上手く、キャラの魅力、使いこなし方としては不足無く良く出来た作品であるのですが、こと相互の関係性においては、全員が友好度LV3止まりというのが、今作の良し悪しだなと(そう考えると、セラ×アム回が無かったのは、最初から友好度LV3だったから、と思えます)。
 まあ第32話はタスク×サワオ回に近いので、この2人だけ友好度LV4と考えても良いのですが(この回はサワオのみならずジュウオウジャー全員の関係性が掘り下げられた回なので、キャラ回としてはイーブン扱いにしました)。
 で、ちょっと面白いのが、大和×サワオのメインといえる回が、サワオ洗脳中しか無い事で、もちろん親身になってずっと絡んではいるのですが、仲間になってからのサワオに対して大和くんが終始若干引き気味、というのが裏打ちされてしまいました(笑)
 「なんだ…………社交辞令か」
 全体は大まかに4部構成で、
 第1部(1〜11話):消えた王者の資格を探す過程でキューブアニマルを見つけたりラリーと出会い、ジューマン達が大和と共にデスガリアンと戦う事を選び、ワイルドジュウオウキング誕生。
 第2部(12〜22話):王者の資格を持つ鳥男を捜しながら続くデスガリアンとの戦いに、ザワールド参戦。ザワールドを解放してジュウオウザワールドが仲間になり、13の力を合わせたワイルドトウサイキング誕生。
 第3部(23〜35話):巨獣ハンター・バングレイが地球に。大王者の資格を得たジュウオウジャーはジューランドの過去に触れ、伝説の巨獣を巡る戦いの中でワイルドトウサイドデカキングが誕生し、バングレイを撃破。
 第4部(36話〜最終話):バドの過去とジューランドの暗部が明らかになり、二つの世界の関係に戸惑いながらも希望を見るジュウオウジャーはデスガリアンを壊滅させ、平和の戻った地球は新たなスタートを迎える。
 こう見ると、第3部に当たる部分で、バドを軸にジューランドとニンゲン界についての掘り下げ中心にするか、大和vsネガ大和を軸に進めるかの二択があって、後者を選んだのだろうか、と思えます。
 評価として◎にしたのは、出来のいいパイロット版だった第1話、最初の山場にして王者の群れが一つになる第11話、ジュウオウサワオ誕生の第20話、サワオのキャラが弾け爆弾も弾けアムがその恐ろしさを見せつけた第22話、折り返し地点で大和くんの厚みがぐっと増した第24話、バングレイ撃破の第34話、「変わるんだっ!」の第42話、アザルド撃破と大和の抱える問題を同時進行でやってのけた第46話。
 山場山場を非常に盛り上げてくる作品なので、それを基準にすると◎までつけにくい……というエピソードが結構あったのですが、◎に近い○といえる評価が、結婚式の第26話、ドデカイオー誕生の第31話、裏表の第32話、ラスト2話、といった辺り。
 ×をつけたのは、クイズがふざけすぎた第27話、レオの言行があまりに破綻していた第33話、演出が踏み外してしまった第39話、でこれが個人的なワースト3。
 通して非常にアベレージが高く、その上で山場に外れ無し、というのが素晴らしい作品でした。出来の良い作品でも、1年間やっているとポイントポイントで、え、そっちに着地するの?! というのが1回か2回は出るものですが、最終盤に若干の回転不足こそ感じられたものの、通して着地ミスが無かった、という点においてはシリーズ史上でも希有な作品になったと思います。