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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第1話

◆Space.1「宇宙一のスーパースター」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)


地球は、侵略者の手に落ちた。
宇宙を形成する88の星座系は、全て、宇宙幕府ジャークマターによって支配されている。

 幕府?!
 予想外の単語が飛び出してきましたが、宇宙幕府ジャークマター……って、なんかこう……田中天さん(TRPGリプレイの著書などを持つフリーライター。「クレオパトラ・ダンディ」とか「ヴィーナス謙信」とか「アフター・イエヤス40,000年」とかの酷い飛び道具の使い手)的言霊だな……。


――だが、希望は絶たれたわけではない。


 ジャークマターに立ち向かう3人の戦士が登場し、一番最初の変身メンバーに非人間の牛ロボットを入れ、初回からしっかりOP映像で9人の戦士を見せ、と新たなヒーローとしてどうすればワクワク感が出るか、を意識した作りになっていて、秀逸な入り。
 今回この、アバンタイトル〜OPまでの、「今度の戦隊はこうなんだ!」という掴みが良く出来ていたと思います。
 圧政に苦しむ人々を救い出す3人だが幕府軍に囲まれてしまった所で、激戦の渦中に落っこちてくるスペースバイクと1人の青年。
 「よっしゃラッキー! 着陸成功!」
 「え? あれ? 墜落だよね? でも、道が出来た!」
 このシーンで、『烈車戦隊トッキュウジャー』第4話の、

「嘘? 本当に味方の烈車?!」
「らしいな。凄いチャンスになってる」
 を思い出したのは私だけではないと思いたい(笑)
 「つぇー! 決めた。俺もあれになる!」
 3人の戦いに感銘を受けた青年・ラッキーは、母艦オリオン号に招かれ、宇宙を支配するジャークマターに抵抗する、反乱組織リベリオンの存在を知る。
 「宇宙が心なき者の手に落ち、人々が涙する時、キュータマに選ばれた9人の究極の救世主、キュウレンジャーが宇宙を救う、そう言い伝えられています」
 体に刻まれた星型のアザを探して回るとかでは無いのか……!
 どうやら辺境の出身で銀河の事情に詳しくなかった様子のラッキーは、手段を選ばず宇宙を支配する幕府に怒りを燃やし、キュウレンジャーになると宣言。
 「俺はやりたい事は絶対にやる! よーーーし、運試しだ!」
 変身アイテム・セイザブラスターを奪うと、キュータマを手に入れてやると飛び出していったラッキーは手近の惑星に向かうが、スペースバイクが故障してまたも墜落し、そこで出会ったオオカミ型の宇宙人といきなり争いに。
 1話で2回も墜落しているラッキーは、幸運は幸運ですが、持ち前の豪運で何もかも解決してしまうというわけではなく、難事に直面してもその中にある希望を見つけ出し、だから自分は幸運だと状況を前向きに捉えていくという精神性の描写が交えられており、これは今後も意識を期待したいポイント。
 事前の設定情報からは、なんでもかんでも主人公の「ラッキー」で処理してしまう事を危惧していたのですが、主人公力の理由付けとしてのそういった要素もある一方で、“不屈のメンタルを具体的な表現に落とし込んでいる”ともいえ、この辺りは宇宙を舞台にした近年のヒット作である、映画『オデッセイ』などが意識されているのかも。
 ……というかラッキー、宇宙辺境の地獄のような環境で生まれ育ち、「今日は荒野を半日探し回って種籾を一粒見つけたぜ、よっしゃラッキー!」みたいな背景を持っていたりするのでは。
 青いキュータマを持つも力を発動できないオオカミ戦士は、かつて幕府と戦って一族を全滅させてしまった過去を引きずっており、それを忘れられないならこそ戦うべきだ、と顔面に強烈な一撃を叩き込むラッキー。
 「よっしゃラッキー! おまえ、俺と戦えて運がいいな」
 「な?!」
 「俺はおまえより強い! つまり、おまえより先には死なねぇ! 俺が一緒に戦ってやる! だからお前は、思う存分戦えよ!」
 クリティカルヒットで頭がぐらんぐらんしている所に続けて放たれる馬鹿の馬鹿説得! オオカミは混乱している!
 そこへキュウレンジャー抹殺をはかる幕府軍が続々上陸し、ラッキーからセイザブラスターを取り返しにきていた3人は変身するが、生身で戦いに加わっていたラッキーが宇宙空間に放り出されてしまう。
 (俺がここで終わるわけねぇ……何故なら俺は絶対に、キュウレンジャーになる男なんだからな!)
 なんだか凄く、この台詞回しに覚えがあったのですが、思い出せないので自分の日記を検索してみた結果、「幸い俺は、マイティー・ソーだからな」(マイティ・ソー)と、「天ノ川学園の全員と友達になる男だ!」(如月弦太朗)が脳内で悪魔合体していた疑惑(おぃ)
 前作レッドの大和くんが真人間&知性派路線だったので、力を手にする場面での差別化として、馬鹿っぽい思い込みの強さをかなり意識した節のある言い回しで、このラッキーの強い意志に反応して、天に獅子の星座が輝くと、その光が集まって赤いキュータマに。
 キュータマ、青は最初から持っていたし、赤は突然宇宙空間から出てくるし、黄が「手に入れるのは大変」というだけで他の3人がどうやって見つけたのかは触れられませんでしたが、いったいぜんたいどういう物なのか、今後何か言及あるのやらないのやら。
 赤いキュータマを握りしめたラッキーは、流星に乗って地表へ帰還するとスターチェンジし、シシレッドとして究極の救世主の一員に。
 「覚えとけ、俺が宇宙を救う男だ!」
 キュウレンジャーの基本装備はかなりごつめで、これは一つで全員分の特殊武器になるのでしょうか? 9パターンあるのだとしたら、結構凄い。黄と緑はボイジャーマシンを召喚して幕府戦闘機と空中戦に入り、続けて赤も召喚。
 この召喚シークエンスを通して、如何にも弱点な剥き出しのコックピットが、実は防御力が高い(バリア?)というのを明確に見せていたのは、地味に上手いというか今風。
 「こりゃあちょっと、数が多すぎねぇかー?」
 一人地上に残されて幕府軍雑兵に囲まれる黒だが、基本、軽めのノリ。赤が宇宙に吹っ飛ばされた時も、「ひでぇ真似を」で済ませていましたし、正義があるからいざとなったらサイボーグに改造すれば大丈夫!
 ラッキーの初対面の台詞で「ロボットなのに筋トレしてる」と、牛型宇宙人ではなく、牛型ロボットと示していたのも地味に上手い所だったのですが、敢えてロボット設定にしたからには、今後ロボットならではの特色が物語に組み込まれるのは期待したい。
 「泣くなみんな。チャンプは、死んではいない。機能が一旦停止しただけだ」(待て)
 黒が戦う姿と、ラッキーの言葉に、戦士の魂を取り戻したオオカミに、青いキュータマが反応。
 「戦いてぇ……戦って、ジャークマターをぶっ潰しちゃる!」
 オオカミは放置してあったブラスターを拾って変身し、ここに5人目のキュウレンジャーが誕生する!
 「ビーストスター・オオカミブルー!」
 オオカミブルーはスーツの一部が毛皮のような素材になっている、斬新なデザイン。毛糸の短パンはいているような見た目ですが、動きはキレキレ。
黒と青は一気呵成に雑兵を全滅させ、宇宙空間では獅子ボイジャーを中心に3体のメカがドッキングして巨大ロボットの上半身に。今回はこの変化球で片付けるのかと思ったら、巨大化した幕府旗本に氷の衛星に叩き落とされた所で牛メカと狼メカが両足となってキュウレンオーが完成し、今年もしっかりロボ戦までねじ込んできました。
 「さあ、おまえの運、試してやるぜ!」
 主題歌をバックに各パーツごとの特殊攻撃を決めた後、「俺には見えた。おまえの終着駅」以来のバイオレンスな決め台詞で、必殺攻撃が炸裂。ビーム剣に合わせてミサイル?が連続で敵に突き刺さるのが格好良く、衝撃で崩壊する氷の大地に巨大旗本が沈み込みながら爆死する、という映像もスケールの大きさと迫力があって良かったです。
 かくして、不屈の豪運流れ星・ラッキーと、仁義なきもふもふヤクザ・ガルはリベリオンの一員に。
 「とにかく戦ってぶっ潰しちゃる!」
 「よっしゃー! この調子で、ガンガン、宇宙を解放しようぜ!」
 「残りのメンバーを探すのが先」
 「フルコースを作るには、料理人が足らないというわけだ」
 「俺の運で、あっという間に見つけてやるよ」
 「正義があれば必ず見つかる……いち!」
 「「「にぃ! さん!」」」
 「がっきーん!」「もぉーーー!」「がるーーー!」
 早くも意気投合する、ステータス偏り気味の3人。
 「ははは、はは、この人達、超ウケる!」
 5人となるキュウレンジャーだったが、その首には賞金がかけられ、お尋ね者となるのであった……と、これはもう、宇宙で無法者なら、必要なお約束で嬉しい(笑)
 ところでクレジットと公式サイトによると、某黄金の腰を持つ男が、宇宙ポップス界の帝王役で友情出演しているらしいのですが……最後の酒場のTVにちらっと映ってる映像か……?(^^;
 基本設定の説明、レッドとブルーの誕生、ロボット戦、とみっちり詰め込んだ中で、正義のレスラーである牛、広島弁の狼、事あるごとに料理に例える黄色、事あるごとに「ウケるー」の緑、そして「よっしゃラッキー!」の赤と、とにかく特徴になる台詞を連発する事で限られた時間の中でキャラクターに特徴付けしたのは良かったと思います。
 オリオン号のピンクだけ薄かったですが、後々変身する事を考えると、後で割としっかりメインになる回が来るという事か。……にしても、かつてメインの一角を担っていたシリーズに声優として戻ってきたという環境にも関わらず、聞いていて全くゴーカイイエローの顔が浮かんでこないM・A・Oさん恐るべし。
 狼の説得は多少忙しくなったものの、新ヒーローとしてのインパクトも、大宇宙を舞台にしたスケール感も良く出ていてまずは上々の第1話でしたが、今後の不安点としては、予算的にスケール感が落ちてからどう表現できるか、と「よっしゃラッキー!」を雑な奇跡と切り離して描けるか、でしょうか。
 前者は企画時点で何か工夫は考えているだろうとして、後者はいつでもどこでも落とし穴になりうる要素なので、より大きな不安要素。今回に関しては上記したように、“ラッキーの言う「ラッキー!」とは何か”についてかなり意識したと思われる構成になっていましたが、ほんのちょっと踏み間違えると大爆発する危うい要素だと思われるので、「無謀な行動の全肯定」「積み重ね無視の安易な解決」「人事を尽くさない逆転劇」に簡単に繋げてしまう作劇にならない事を、好みとしては期待したいです。
 もちろん逆に、宇宙一の強運男、を徹底して見せる事で出す面白さ、というのもあるわけですが、それはそれで積み重ねが必要なわけで、どちらに転がるにせよ、中途半端にならないで欲しいところ。
 次回、キャラクターとして期待している金銀コンビがメインのようなので、宇宙に生きる多彩な種族、の雰囲気をどこまで出せるか楽しみ。