◇『リトルウィッチアカデミア』 第6話
あ、一応、ハンサムに感心はあるのか(笑)
壁にぶつかった主人公が、自分が“選ばれた者”であってほしいという願望からルールを破って神秘の力に活路を求めるが、そこで成果は努力の先にしかない事を教えられて気持ちを入れ替える……というエピソードで、露骨にズルをしようとする主人公が視聴者に嫌われる可能性も覚悟の上で、その迷いと成長をじっくりと描いていきたい、という今作の方向性がより明確に。
下手な物語だとここで、ルールを破った上でのショートカットである事を誤魔化して肯定してしまうのですが、選ばれるか選ばれないかも日々の積み重ねの先にしかなく、選ばれている事を知りたい、というのがそもそも甘えでしかない、というのを描いてくるのが今作の良い所。
途中で“力そのものが欲しい”とちょっとズレるのですが、主人公のそもそもの動機は、自分が“選ばれた者”、いわば磨けば光る珠であるのかを知りたい――今している努力は成果が出るものなのかを知りたい(選ばれていれば努力は報われるし、選ばれていないならば努力は無意味となる)――というものであり、
つまりは
という臆病な自尊心であり、煎じ詰めると今回は『山月記』……という所まで考えて、成る程それで今回ほぼずっと主人公の顔が半分ウサギ(変身魔法の失敗の影響)だったのか! とはたと納得。
己の珠にあらざることをおそれるが故に、敢えて刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、ろくろくとして瓦に伍する事も出来なかった。
(『山月記』中島敦)
人は皆、心の中に獣を飼っているのです。
全体としては、今やっている事に実りはあるのかと悩むアッコと、現代で魔法を学ぶ事に意味はあるのか?と外部からの厳しい視線に曝される魔女学校そのもの、が重ねられているというのも効果的で、良いエピソードでした。
あと、OPにも顔を出しているアンドリューさんが、女の子先に逃がすなど、紳士度高くて良かった(出会い頭にウサ耳を鷲掴みには目をつぶる方向で)。
そんなアンドリューが、東洋人の変わった女の子に一瞬でほだされる、という展開にならないのも良かったです(多少の汚染は受けているとして)。ダイアナとアンドリューは視線や表情からすると今回の説明だけの関係にも見えないので、もう少し繋がりがあるといいなぁ。
◇『キラキラプリキュアアラモード』 第2話
「プリキュアに興味あるジャバか?」
鞄の中から飛び出したスイーツ要塞に住まう長老(霊体)が、「サイボーグにならんか?」丸出しで、いきなり超胡散臭い。
「スイーツには、人を元気に幸せにする力、キラキラルが満ちておる。そしてプリキュアとは、キラキラルを操り、世界を元気にする――」
「伝説のパティシエぺこ!」
とりあえず今作におけるプリキュアが定義付けされましたが、職業なのか、プリキュア。もしかして第1話で爆発していたのはボードで、封印していたアンデッドが解放されて、これからバトルファイトが始まってしまうのか(やめなさい)。
不思議生物たちが何者かと、現在世界に起きている異変については言及されず、この辺りの話は5人揃ってからまとめて目的を提示していく形になるのでしょうか。
新キャラとして、『スイーツの科学』を愛読する引っ込み思案の小動物系・有栖川ひまりが登場。休み時間にバスケットをしていたいちかは、シュートのミスでひまりと衝突してしまう。
……反応見る限り、この主人公、「同じクラスの有栖川さん」の事、知らなかったな……(笑)
放課後、いちかはドデカプリンを買いに行った店でひまりと再会。2人揃ってプリンを買いそびれた事から、一緒にプリンを作ろうと誘ってお菓子の家に連れ込み、この様子を別室から見つめる不思議生物二匹。
「はじまったジャバ」
……この生き物ども、容姿を利用して人間の女の子をだまくらかし、自分達のエネルギー源(キラキラル)作らせようとしている様にしか見えないのですが……。
野生の勘でカラメルソースを作り始め、材料を無駄にし続けるいちかの姿を、見るに見かねてキレるひまり。
「スイーツは、科学。分量を守り正しい行程で作れば、決して裏切りません!」
……え、なんか、「人間は心が弱い。だがマシンはプログラムに絶対忠実だ」みたいな事言い出したぞ、この子。
凄く重い子だったひまりはプリンの由来からとうとうと解説を始め、気がつくと夕方になった所ではたと我に返り、過去に同じように熱い語りでクラスメイトに引かれてしまったトラウマを思い出し、飛び出していく。落ち込むひまりは翌日、躊躇いながらもスイーツ要塞を覗き込むと、そこではいちかが『スイーツの科学』を手に四苦八苦中。思わず声をかけてしまったひまりは、今度こそ2人で協力して、カラメルソースを無事に完成。
「プリンは……スイーツは科学です。分量を計って、正しく作れば失敗しない。だから好き。でも……友達の気持ちは、私には計れません。私は……大好きなプリンの事、聞いてもらいたかった、だけなのに……」
だから重いよ!
「……うん、わかるよ」
「え?」
「有栖川さん、本当に、スイーツが大好きなんだなーって! まあ……ちょっと話長いかなーって思ったけど」
追いかけもしなかったしな!
「だから、色々教えてくれて、嬉しかったよ。さあ! 次はプリンの生地だね。一緒に作ろう!」
「はい!」
好きな物を好きすぎて周りに溶け込めなくなってしまった過去を引きずっているという、共感を得やすいキャラクターを主人公が籠絡する事で主人公の好感度も上げにいくという流れなのですが、主人公がほだし系というより、黄色い子トラウマ深すぎてガード緩すぎでは(笑)
大枠としては手堅い展開の一方で、主人公が押せ押せで攻略してしまうのではなく、ひまりが勇気を出して一歩を踏み出したからこそ、いちかからの歩み寄りに気づく――より距離を詰めていくのがひまりの方になっており、実際しばらく、ひまり主観で話が進む――というのが、面白い構成。
実は過去のトラウマシーンでも、級友がTVの話を振ってくれたのは一種の助け船だったとも捉えられ、定番の“足りない物を補い合う関係”というだけでは無しに、コミュニケーションとは相互の関係性である、というのが意識的に描かれているようにも見えます。
2人は一緒にプリンを完成させ、いちかがひまりの為にデコレートしたリスプリンに輝くキラキラを確認し、隣室で紅く輝くジャバの瞳――やはりこれ、キラキラを集めて実体化をもくろんでいる邪悪な生物なのでは。
必要なキラキラを集める事で、六身合体ゴッドジャーバになるのでは。
ところがそこに、前回の黒とは別の黄色いアンデッドが襲来し、狙われるリスのプリンを守ろうとするいちか。
「長老! プリキュアになれば守れるんだよね?」
「そうジャバ」
「なら、私、やるよ! 二人で作ったスイーツを、私は守りたい!」
冒頭で、スイーツ食べ放題につられて簡単に契約書に判子を押してしまった主人公が、ここで自分が何の為に戦うのかを見つめ、
プリキュアになる
と
プリキュアとして戦う
を自動的にイコールにしてしまわず、その決意と覚悟を改めて描いたのはとても良かったです。
変身したキュアホイップは開幕からクリームドリルキックを放つも巨大なプリン体アンデッドに苦戦。その時、腹ぺこ犬から事情を聞いたひまりが、友達を守りたいと思う気持ちから、キュアカスタードに覚醒する!
黄色いリスのカスタード、変身時のキーワードが「知性」と「勇気」で、え、何その、主人公は知力ゼロみたいな扱い?! と思ってホイップのキーワードを確認したら「元気」と「笑顔」でちょっとホッとしました(笑) 「野生」と「根性」とかでなくて良かった。
カスタードはリスの俊敏さを宿した高速ダッシュを見せるが肉体能力に感覚がついていけずに転んでしまった所を、ホイップが華麗にキャッチしてナチュラルにお姫様だっこ。
そのままの体勢でごく普通に会話を続けるホイップがやたら男前で、友情を確認し合った2人は黄色と白のダブルクリーム緊縛攻撃によりプリン体アンデッドを成敗し、奪われたキラキラを取り戻すのであった。現状、これといった決め技が無く、アンデッドも消滅するわけではないのでフィニッシュシーンは模索中という感じですが、これも落ち着いてくるのは全員揃ってからになるのか。
前作で早期リタイアしてしまったので、今作はとりあえず見出しカテゴリつけずに様子見状態なのですが(の割に思ったより長く(^^;)、今回は2人のヒーロー誕生回として、楽しく見られました。
私にとっては、ヒーロー文法で見られるかどうか、がポイントなのですが、このぐらいのテンポと雰囲気で進んでくれると、続けて見られそう。そういう点では、初めてしっかり見た《プリキュア》である『GO!プリンセスプリキュア』の田中裕太監督が、特撮ファンで富野ファンだったというのは(視聴後に知ったのですが)、つくづくタイミングが良かったのだなぁと。
ところで、この手の作品のメインキャラって、良く言えばすらりとした、ざっくり言えば棒みたいな体型のデザインが多いイメージなのですが、黄色い子は随分と容赦のない寸詰まり体型で、残酷格差社会。
そして、初登場回にして、衝突からキス(寸前)・涙目で逃げられる・お姫様だっこまでイベント回収してしまったので、もはや、ひまりルート確定なのか(待て)。
真面目な話として一つ気になったのは、前回の今回でお母さんから届いた物凄く空気読まないエアメール。……いや、お母さんはお母さんなりに、わざと明るく振る舞っているという事だと思いますし、娘は娘ですぐにドデカプリンに魂を奪われていたのでそこまで深刻な要素ではないのかもしれませんが、母子の気持ちのすれ違いが、後々いちかのメンタルに特大のダメージを見舞う展開があるのではないかと、ちょっとドキドキ。
次回――サバンナの王者はやはり声が大きいのか。野生解放!