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『コンドールマン』感想10

◆第17話「火の海を突破せよ!!」◆ (監督:伊賀山正光 脚本:伊東恒久
火力発電所を狙うオイルスネーク配下だが、コンドールマンはゴールデンコンドルに化身してそれを阻止し、相変わらずの圧倒的怪獣感。
だがモンスター一族の思惑通りに日本の石油備蓄は底を突いてしまい、世相を語るに際して「失業者が巷に溢れている」と持ってくるのが今作らしい描き方。
正義に散った青年・次郎の墓を訪れた一心は、そこでさゆりと出会う。
「ごめんなさい、ちょっとの間……」
一心と腕を組んで来てくれたら、大好きなあんみつをいくらでもおごってあげるよ……という生前の弟の願いを、コンドール一心の腕を借りて墓前に捧げるさゆり。
さゆり自身にとって、惹かれはしても本物の一心ではない、というのもありますが、C一心に寄り添う姿も節度を保った品の良さで描かれるのは、さゆりの描写の特徴的な所で、70年代でも割と特撮作品では珍しい気がします。背景としては特に裕福な育ちというわけでもないようなので、作り手側の、美しい日本の女性像、が投影されている部分もありそうですが。
「二人っきりの兄弟が、三人に増える、お祝いだって」
「さゆりさん……許して下さい。……僕が次郎くんを」
「……弟との約束でした。それが、ようやく実現したんですもの。ありがとう、一心さん」
さゆりにとっては、一心の死と次郎の死、二つの死によって決して果たす事の出来なくなった約束を、C一心の力を借りる事により果たす、という形で、2人の死に自分の中で決着をつけているように見え、英雄的な死の影に遺されてしまった者達の姿を繰り返し描き、それが少しずつ立ち直っていく過程にC一心が関わる事で、未来へ向けた希望や勇気を与えるもの、としてヒーローの姿を描き出しているのも今作らしい所。
一方で同時に、C一心はあくまで一心にはなれず、手は貸せるけど立ち上がって歩いて行くのは個人個人、というのも明確にされており、つくづく自助と自立を示す物語です(この点は、最終的にC一心が一心化して甘めの大団円になる、という可能性はありますが)。
バタール石油大臣の周囲を監視させていたインコから通信が入り、傍目には突然鞄と話しだした人風のC一心を快く送り出すさゆりは、前回ラストも考えるとさすがにC一心=コンドールマンであると気付いていそうですが、今回の大胆といえる行動も、自分の一心が別の存在に成り果てた事を直感的に繋げて理解した故に、心の整理をつけられたようにも思えるところ。
一心/C一心と周囲の人々の関係性は、回が進むごとに整合性が崩壊してしまって残念なのですが、割とありがちなゲストキャラの死亡を、ただ勝利の犠牲として片付けるのではなく、今作の背骨にある生者と死者の関係についてより踏み込む材料にして描いてきて、痛切。
死者に対する想いを整理しなければ前に進めないけれど、しかし高度経済成長の中で死者を忘れ去ってしまったから今の日本人の心はこんなに醜く汚れてしまったのではないか? と問いかける世界で、死から新生した存在が人々に正義を見出させるシンボルとなっていく、という今作の構造が凝縮されたシーンでした。
(次郎……一心さんを見守ってあげて、お願いよ)
「こんどーーーーるまん!!」
化身したコンドールマンは、日本への石油の輸出を約束した為にモンスター一族に嬲り殺されそうになっていたバタール石油大臣を救出し、この戦いを、極めて唐突に目撃するコンドールジュニア達(^^;
コンドールジュニアは、2話に1回ぐらい出さないといけない縛りでもあったのか、話の腰にフライングニードロップを叩き込む勢いで登場し、コンドールマンが大臣を病院に送り届けている間にトラックをヒッチハイクして全員でオイルスネークを追い、コンドールサークルを使えば良いのにコンドールマンへのメッセージとして地面にバッジ文字で「タンカー」と残していくまことの奇行など、色々と無茶苦茶。
「おじちゃん、正しい事に力を貸して」と徴発したトラックがガソリン切れで立ち往生すると、それを冷たく埠頭に置き去りにし、オイルスネーク一味を探している内にコンバット部隊によって捕らえられてしまう。
大臣の抹殺に失敗したオイルスネークは、日本へ入港しようとするタンカーの直接攻撃をもくろみ、乗組員を殺害して船を占拠。船体に穴を開けて東京湾内に石油をばらまいた上で爆破し、石油の輸入阻止・大気汚染・海洋汚染、の一石三鳥を狙うが、まことのメッセージを受け取ったコンドールマンが駆けつける!
いつの間にやらカットされた左腕が再生したGS店員が、時限爆弾を抱えながら逃げる事でコンドールマンを道連れにしようとする勇姿は格好良かったですが、コンドールキックを受けて敢えなく海中で爆死。コンドールマンは逃げるスネークを追ってマッハコンドルを走らせ、アップになった運転席に水しぶきが叩きつけられ、ワイパーが盛んに動いているという映像は、残念ながら海上を走る迫力は出ず、どうにも間の抜けた感じに(^^;
コンドールマン、死ね!」
そしてスネークの反撃で海上を炎が走り、明らかに吹っ飛ぶミニチュアの車(笑)
だがなんかまあ無事だったコンドールマンはコンドールサンダーを放ち、海上で激烈な落雷を受けたオイルスネークは大爆死。……見た目は印象的だったのですが、やる事なす事出たとこ任せになってしまい、最後まで落ち着きのないキャラクターのまま退場になってしまいました(^^;
モンスター一族本社では、オイルショック作戦は中途で阻まれたものの、度重なる石油コンビナートの爆破などにより「大気汚染が進行したから、よっしゃラッキー!」とキングが次の計画を指示。不首尾に終わった作戦からも次へと繋げる材料を前向きに見つけだすのが恐ろしい組織であり、1クール目の空気を残す作劇になっています。
バタール石油大臣の厚意により、日本の石油危機は救われた……が、新たに来日したモンスター一族の幹部スモッグトンの謀略により、帰途につく石油大臣を乗せた飛行機が吹っ飛んでしまう!
ここ3話分の日本を苦しめた問題を解決に導き、数秒前にヒーローが笑顔で別れた善良な人が、エピソードのラストで悪の組織によって爆殺されてしまう、というかなり衝撃の展開。
ナレーション「モンスターの新しい挑戦は、空から突然やってきた。果たして、スモッグトンはどこに。また、その狙いはなにか!」
行動が無茶苦茶なコンドールジュニア、結局面白くならないままだったオイルスネーク、と不満点はあるものの、今作らしさが幾つかが光り、前回までよりは、やや浮上。
ところで、C一心が一心の姿のままで平然と大臣と面会したり、大臣を見送ったりしているのですが……これはもう、TVの前の視聴者には一心の姿に見えているけど、劇中では場面によって実はコンドールマンの姿である、ぐらいの解釈をしないと駄目か……(^^;


◆第18話「陸・海・空 3大モンスターの逆襲」◆ (監督:伊賀山正光 脚本:伊東恒久
前回までのおさらい……がえらく長い。そしてAパート17分。
一心は空港でスモッグトンを発見して追跡するが、毒のスモッグ攻撃を受けて見失ってしまう。スモッグトンはOPに名前のあるモンスターという事もあってか、メキシコ風の帽子を取るとツボ状の頭の上から紅い煙が噴出しているなど、デザインも活きた好演出。飛行船を根城に上空に毒スモッグを撒き散らしていたり、愛用の巨大パイプがトランシーバーになっているなど、描写も凝っています。
街の美化活動に精を出すジュニア達からピクニックに誘われる一心だが、東京上空を多う不穏な雲。その夜降り注いだ雨は多量の毒素を含んでおり、たみ子が畑を借りて育てていたキャベツも毒に汚染されてしまう。
総集編だった第14話のラスト、一心とジュニア達が海岸のゴミ拾い兼ピクニックを楽しんでいるとにわかに空がかき曇り、コンドールマンが車を走らせるとコンビナート大爆発……という展開が、第15話冒頭の花火大会に紛れた挑戦状、と繋がっていない妙な違和感がありましたが、むしろ今回の作戦の前振りが含まれているようで、この辺り、物語の予定変更などがあったのかも。
汚染された食物を人々に食べさようというスモッグトンの作戦はコンドールマンによって阻止されるが、続けてゴミゴンが出現。
「ゴミゴン! 街を幾ら汚しても人の心は汚せんぞ!」
颯爽と決めたコンドールマンはゴミゴンをハリケーンで吹き飛ばすも、スモッグトンの用意した罠に誘い込まれてしまい、大ピンチ。
基本前のめりで迂闊で何度目だ伏兵、のコンドールマンですが、注意が足りないというより、逃げられたら追いかける正義の体質なので仕方ない。
スモッグトンとゴミゴンの連続攻撃に追い詰められるも辛うじて逃げ出すコンドールマンだったが、ヘドロ地獄に足を取られてしまい、ED曲と共に登場したヘドロンガーのヘドロ攻撃を受けてしまう。更にゴミに埋められて身動きが取れなくなった所をスモッグ攻撃で燻され、大幹部3人に囲まれて文字通りに手も足も出ない大ピンチ!
太陽エネルギーで戦う正義のシンボルが、公害モンスターに囲まれて身動き取れなくなる、というのも象徴的な絵で、迫真の展開に。
コンドールマンの危地を知らぬまことだが、コンドールバッジが砕けた事に不吉を感じ、ジュニア達とコンドールサークルを作ってコンドールマンに太陽エネルギーを届けようとする。
「神様、コンドールマンの力になって。お願い、お願いです」
コンドールマン絶体絶命の時、子供達の祈りが天に通じ、降り注ぐ光から力を得たコンドールマンは最大出力のコンドールサンダーを放って窮地を脱出。
コンドールマン脱出前に、3大モンスターがそそくさと周囲から離れている、というのがちょっと変な絵(^^;
逆転劇としては都合の良い奇跡であるのですが、普段まこと達の危機をコンドールマンがヒーロー的第六感で救っているのに対し、ここではまこと達がヒーロー的第六感でコンドールマンを救うというのは、今作が、正義のシンボルに照らされて自立していく人々の物語であると思うと、普段から自分たちに出来るヒーロー的活動(美化運動)をしているまこと達が、一時、文字通りのヒーローになっているという点で面白い所。
3大モンスターはひとまず逃げ出すが、陸・海・空からの、日本全滅作戦は続く! 果たしてコンドールマンは、この大攻勢を打ち破る事が出来るのか!
色々巻きに入ってきた感じですが、主力モンスター一挙登場からコンドールマンの大ピンチに繋げ、強大な敵との対決、という雰囲気は再び盛り上がってきて、ここからの展開が楽しみになってきました。