はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第4話

◆Space.4「夢見るアンドロイド」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:毛利亘宏)
 視聴者からの意見でも多かったのか、OPのスーツ組にキャラ名が入るようになり、落ち着く画面に。
 惑星ニードルを後にしたキュウレンジャーは、ワープ航法を用いて、銀河の辺境でありながら大量のモアイ基地が存在する惑星チキュウへ(この表記は良かった)。
 「諸君の任務は、この星の解放だ」
 案の定あっという間に終了したスペースロードムービー展開ですが、プラネジウムに関して何やら地球に秘密があると理由付け。また、割とざっくりワープできる事が判明したので、途中で急用が出来て別の星に、というのはありそう。ロケの問題などありますが、折角の世界観なので、慣れた絵作りに落ち着いてしまわず、今後も定期的に変化をつけてくれるのには期待したいです。
 その点では今回、地球に降り立った混成チームに住民が特別注目しない、というのは、幕府に支配されて荒廃した街の姿以上に、現代地球とは別の世界観である事を示せていて非常に良かったです。
 上陸チームはガラガラポンで5名が選抜され、これも早くも制限を加えてきましたが、無理を通してあちこち穴が空いてから後手後手に回って手を入れるよりも、ざっくり割り切ってきたのは良かったと思います。今回に関しては居残り組(金銀)もしっかり描写して、むしろ無理に一緒に行動させるより個性が出せましたし。
 また劇中では、キュウレンジャーのパワーの源、神秘の力・キューエナジーの節約の為、と理由付け。
 レジスタンスが物資の問題で苦労する、というのは物量に勝る幕府軍との対比にできそうですし、ここぞという時に全力を出す、というのは上手く話を転がせれば面白く描けそう。……逆にそこを面白く描けないと、大がかりに煽った末に新味を出せずがっかり、となってしまいますが(^^;
 「おまえら、気張れやぁ」
 「だから、てめぇなんで仕切ってんだ」
 と、チャンプがガルにツッコんだり、スパーダがラプターの様子を気に掛けていたり、1−3話では不足も感じた個々人のリアクションが、今回しっかり出ていたのも改善点。
 赤黄緑青黒&司令官に桃缶のお使いを頼まれたラプターという一行は、悪代官が子供の夢を食べてしまう光景に遭遇。10歳前後ぐらいに見える子供の夢が、「おなかいっぱいご飯食べたい」というのは、子供らしいというよりは幕府の圧政による地球人の困窮が感じられて地味に良かったポイント。
 戦いが始まり、物陰で自分も戦う妄想を膨らませていたラプターはバク代官に目を付けられてしまい、カジキが助けに入って代官はひとまず撤退。
 「君はこんな危ない所に居るべきじゃない。すぐにオリオン号に帰るんだ!」
 その危ない所に、桃買ってこいと送り出したの、偉い人なんですけどね……。
 スパーダの叱責を受けたラプターは別行動でオリオン号へと帰っていき、どこかで見たようなカレー屋で、面々はラプターについてスパーダの話を聞く事に。
 「みんな知らないと思うけど、ラプターいつも、一人で妄想してるんだ」
 スパーダが年長者としての気遣いを発揮するのかと思ったら、乙女の秘密を大暴露して、紳士度がどん底に。
 「ホントは僕たちと一緒に、戦いたいんだ」
 だがラプターは、パイロット兼秘書アンドロイド。戦いで傷つくような事があってはならないと、敢えて厳しい口調で帰船を促したスパーダであったが、ラッキーは不満の表情を見せる。
 「戦いたいなら、戦えばいいじゃねぇか」
 それで死んだら、それだけの事だから。
 「アンドロイドだって、壊れたら取り返しがつかないんだ。僕たちが守りきれない時だってある!」
 「……話になんねぇな」
 1−3話までの言行を総合すると、“それが本当にやりたい事”であるならば、その為に相応の対価を賭けるのは当然であり、そこに四の五の言う必要はない、というラッキーの死生観が透けて見えてきて、私の中のラッキー像がどんどんトンデモになっていきます。
 ……てあれ、今作の隠しモチーフに明治維新が入っているのではないかというコメントをいただいて成る程と思っていたのですが、今頃気付いたけど、「シシ(獅子)」レッドってもしかして、「志士」がかかってる?!
 ラッキーは一人カレー屋を出て行って「サファリ」という看板が映り、誰のアイデアなのか旧作ネタ(『サンバルカン』&『ゴーカイジャー』)なのですが、子供が「おなかいっぱいご飯食べたい」という夢を奪われた直後に、カレーを頬張るヒーロー、というのは正直無神経で、もう少し考えて欲しかったシーン。
 宇宙船に戻ったラッキーはラプターの妄想日記を背後から覗き見。
 「なるほどね! それがラプターの妄想か!」
 どいつもこいつも、最っ低(by園田真理)。
 この宇宙には、絶望的に紳士が足りていない!
 「私……壊れてるんです」
 キュウレンジャーの一員として戦う妄想を日記に書き留めながらも、自分に設定されているのはパイロットと秘書プログラムだけだと自覚はあるラプター
 「なのに、戦いたいって妄想を止められないんて」
 内なる戦いの衝動に赴くままに……つまり、フォージャスティス!
 「……私、修理してもらった方が、いいのでしょうか?!」
 上の台詞だけ抜き取ると、修理してもらった方がいい気はします(笑)
 「やめる必要なんてねぇよ。それは妄想じゃなくて、夢だ!」
 「夢……?」
 「夢があるって、すげぇ事なんだよ」
 ラッキーの言葉に勇気づけられるラプターだったが、そこへ地球から通信が入り、ラッキーは無理矢理ラプターを連れて再び地球へ。そこではバク代官が大量に集めた子供達の夢を食べており、キュウレンジャーが余計な反抗をした為に代官の圧政が強まったと、ラッキー達は地球人の親たちから詰られる。
 「手を出すな! 夢が奪われるだけだ……死ぬわけじゃない」
 「ふざけんな! 死ぬわけじゃない? 夢を無くして生きるのなんて、死んでるのと同じだ!! 覚えとけ!」
 ラッキーにとって命というのは、何かを得る為に賭ける為のものなので、ただ漫然としているだけの生など、死んでいるのも同然なのです!
 キュウレンジャーは人々をかき分けてバク代官一味と戦闘になり、再び狙われるラプターを守る赤と、二人の無茶を止めようとする黄。
 「ラプターは絶対夢を叶える! 俺は信じる!」
 「君が信じても!」
 「俺達が信じなくてどうすんだよ?! 仲間だろ! スパーダ、おまえの言っている事は、夢を奪っているこいつらと同じだ!」
 「……僕が? ……同じだって?」
 愕然として自身の言動を振り返った黄は、ラプターを守ろうというあまり、その夢を踏みにじっていた事に気付く。
 「教えてくれラプター……君は何がしたい?」
 「私は……私は……私は…………みんなと戦いたい!!」
 ラプターが絶叫すると、その妄想の強さに反応して、ワシ座のキュータマが覚醒。ラプターは、スピードスター・ワシピンクへと変身する!
 ……途端に凄く朗らかに
 「ラプター、一緒にあいつを倒そう」
 と言うカジキが、なんだか凄く現金な人に(^^;
 今回ここまで、地球編スタートにともなうモード切替をしつつ、カレー問題を除けば細かい描写やメンバー間の意見対立を盛り込むなどは良かったのですが、肝心のクライマックスで致命的なボタンの掛け違いが発生。
 スパーダが自身の言行を反省してラプターの夢を認めるならば、それは“ラプターが力を手に入れる前”にその姿勢を見せなければならず、ラプターが変身した後に受け入れてしまっては、ラプターの“力”を認めただけになってしまいます。
 黄がラプターの夢を認めて信じる→黄が何らかのアクションを取る→それに対するリアクションの結果としてラプター覚醒、なら話の筋が通るのですが、黄からラプターへの問いかけの時点で「夢を認めて信じる事にした」というのは描写として厳しく、そこで一気にラプターが覚醒してしまう為に、黄の反応が「力があるなら夢を見てもOK」みたいな事になってしまい(間違ってはいないのですが、今回のテーマとはズレている)、この後、黄×桃コンビで戦う姿もどうも気持ち良く納得できない事に(^^;
 同時に、「力が無くても夢は大事だ」(というかその為に命をベットしてこその人生だ)というラッキーと、「現実は見るべきだし、夢より命が大事だ」というスパーダの、「夢」を重視するか「現実的な力」を重視するかという考え方の食い違いが、ラプターが「力を手に入れて夢を叶えた」事で解消された扱いになってしまっていて、酷い論点ずらしが発動。
 話の過程でラッキー、スパーダにけっこう酷い事を言っているのですが、そこを流すのが年長者の度量なのか。
 金銀コンビによってセイザブラスターからアビリティキュータマをいつでも転送使用できるようになり、望遠鏡キュータマでのスナイパーショットはらしくて良かったです。
 バク代官はモアイロボを起動し、テンション高い桃は一足先にワシボイジャーを起動。「俺達も行くぞ!」の所で、残り5人ともボイジャー起動しているのに、合体にあぶれたカメレオンは一切画面に出てこず、どこで何をしているのか……(笑) 多分、「私、余ってる……」が尺の都合でカットされたのかなとは思うのですが、露骨に粗になってしまいました(^^;
 「ワシ座に代わってお仕置きです!」
 桃が妄想日記に書き溜めていた決め台詞で更にテンション上がり、トドメはメテオブレイク貫通射撃でモアイロボは破壊するも、バク代官は逃亡。ラプターは8人目のキュウレンジャーとして迎えられ、スパーダがお祝いに桃のケーキを作成、というのは関係改善の象徴になると同時に、司令官が土産に頼んだ桃缶が伏線と機能して、こういう細かい所は良かったのですが今回……。
 ラプターが日記に綴っていた「おじさま」は先への伏線かと思っていたらオリオン号であると判明し、「おーりーーおーーん」とか喋るおじさまが、ちょっと怖い。恐らく互いに関係する工場でロールアウトしたという事なのでしょうが、おじさまはその内、巨大ロボに変形したりしてしまうのか。
 「キュウレンジャーが地球に」
 「よもやあの星の秘密を。なんとしてでも息の根を止めろ!」
 「ギョイサー」
 「奴等が地球に……」
 射手座御家老は将軍様から新たな命令を受け、鼻をひくひくさせるスティンガー、でつづく。
 職務に忠実でリベリオンのブレーキ役と思われたラプターが実は陰で妄想乙女日記をつづっていた……と声優×アクターさんの演技もはまり(率直に今回、M・A・Oさんに恐れを抱きました(笑))、ラプターの可愛げアップ回としては成功したと思うのですが、それと絡めたスパーダの方は着地失敗して捻挫気味(^^; これでメイン回扱いだったら、だいぶ不遇ですがどうなのか……。
 そして、
 「こいつはおったまげたねぇ!」
 「もしかして、司令……こうなる事をわかって」
 「知らないよ? 僕ちん」
 ラプターの変身についてナーガからつつかれて誤魔化すロンポー司令官は、いっけん軽薄で適当なようで実は先を見通している(?)、というツッコまれてそれを回避するまで前提の為にいじりにくいキャラクターなのですが、リベリオン汎用アンドロイドであり「パイロットと秘書、二つの機能をプラグラムされて生まれました」ラプターがワシピンク要員だったという事はつまり、最初から戦闘用プログラムが仕込まれていたという事なのでは。
 敵をミナゴロシにせよ……という内なる衝動が妄想という形でアウトプットされている事から恐らく、キュウレンジャーの増員などにともなって内部に蓄積されたキューエナジーが一定値を越えると、戦闘回路が覚醒する仕様ではないかと思われるのですが、仮に今回ワシピンクに目覚めなかったら司令は繰り返しラプター心理的負担をかけて覚醒を促した可能性が高く、物凄いド外道では。
 夢を持つ大事さをテーマにし、ラッキーが地球の親達に啖呵を切るにも関わらず、どうしてアンドロイドがプログラム以外の夢を持つようになったのか? という点については一切掘り下げられないのですが、予定されたプログラム通りだったという、腐れ外道案件なので仕方ない。
 まあ今回バク代官が生き残ったので、「夢」というテーマは次回もう少し踏み込む可能性はありますが、さて。