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『ビーファイターカブト』感想19

◆第29話「暴れん坊ムカデ将軍」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
宮下さん5連投。
ヤンマの参戦によりビーファイターとビークラッシャーは4対4で対峙し、「また会おう、また戦おう、ビーファイター」と、せっかく引きこもりを卒業したので戦いをじっくり楽しみたいと嘯くビークラッシャーは一時撤退。
ビークラッシャーの一応リーダー格はスコーピオンという扱いになっていますが、声が稲田さんなので私が得(2回目)。
逸るカブトンを制止するヤンマは、テントウにどこからともなく取り出した花を一輪捧げて姿を消し、あれはヤクザ先輩の差し金ではないかと基地に戻ると、そこにはマックの姿が。
「改めて紹介する。向こうでその甲斐くんに見出され、ビーファイターヤンマに抜擢された、マック・ウィンディだ」
強化展開から置き去りの小山内博士は今回もまた平然と情報を止める役割を担っており、無能さと絶妙に調和したこのあっけらかんとした人間味の薄さこそ、博士が日本支部長として抜擢された理由である気がしてきました。
情報が与えられない自分の立場、或いは部下に情報を秘匿している状況そのものについて煩悶する事も、状況を変えようと下手に動く事もなく、情報が与えられない事にもそれを最前線で戦う部下に伝えられない事にも、疑問を抱かない姿勢が適材適所なのだな、と。
全ては、新帝国ビートルの為に!
ビークラッシャーに対抗したヤンマの力の秘密……それは、5枚目のスペースメダルにあった。実はメダルは、5年前のジャマール壊滅時にも、次元の裂け目から地球に飛来していたのだ。
「それをコスモアカデミアが密かに回収。5年間トップシークレットとして、甲斐くん達が分析を続けてきたんだ」
コスモアカデミアが今回のメダル騒動に即応できたのは実は前例があったからである、というのが繋がりましたが、それを頑なに秘密にしていた事にはどうも後ろ暗い気配が漂い……やはりこの人達、新帝国ビートル建設の為に水面下でずっと準備していたのでは。
「いわばこのメダルは、昆虫の精の結晶体、というわけだな」
謎のスペースメダルですが、前作におけるブラックビートの出自や、メルザードが絶滅怪人軍団である事を考え合わせると、その正体は、異次元で絶滅した(させられた)昆虫種族の生命エネルギーの結晶という事で、ほぼ確定か。
BFヤンマは、そのスペースメダルをエネルギー源とした最新型ネオインセクトアーマーの昆虫戦士。前作において自分の影(闘争本能)と向き合う事を余儀なくされ、それを葬り去って海へ沈める事で始末をつけた拓也が、ブラックビートと同種といえる新たな絶滅昆虫エネルギー(推定)を、地球を守る力に変換したとすると、自分自身の光と影の戦いに本当の意味でピリオドを打って乗り越えたといえるのかもしれません。
マックは、スポーツ万能で熱血漢の“アメリカ版甲平”を基本としつつ、女性に対して積極的、健吾からは「フェミニスト」と言われるのですが、回転寿司屋のシーンで、皿に伸ばした蘭の手をはたいており、フェミニストなのかどうか非常に疑問が湧きます。ビーファイターテントウに対して花をプレゼントしていた事を考えると、アーマーにしか興奮できない変態なのか。
ゆいちゃんに粉をかけたり、店を出た所で通行人の女性に声をかけたりする姿も描いているのですが、軽いギャグ演出がキャラクターの一貫性を著しく欠けさせてしまっており、小さなミスですが、東條監督が今作ではどうも冴えないという印象を強めてしまいます。
助けを求める乗客の声にバスに飛び込んだマックだが、それはムカデの罠。暴走するバスに閉じ込められたマックを追って甲平は歩道橋からバスの屋根にダイブを敢行してしがみつくも、バスごと崖から転落危機一髪に。そこに現れた冷血鎧将ムカデリンガーはヤンマに一騎打ちを挑んでくる。
ビークラッシャーはいずれも自分の実力に自信を持つタイプのようですが、ムカデが正面から一騎打ちを申し込んできてこれといってバスを人質に使うわけではない為、ヤンマvsムカデの戦闘と、転落危機一髪の甲平&バスのスペクタクルが分離してしまう事に。この後、クワガーとテントウがバスを助けに向かい、ヤンマを支援できない理由付けとはなるのですが、あまりスムーズな流れにはなりませんでした。
(もう駄目か、限界なのか……)
ムカデに追い詰められて弱気になるヤンマは、文字通りの崖っぷちで
「ふざけるな、負けてたまるか……諦めてたまるか!」
と叫ぶ甲平との対比なのですが、それにしても早すぎます(^^;
「メルザード、絶体絶命でも、俺たちは決して勝負を捨てない。その中でこそ、俺たちは、燃える、戦う。地球に生きる、全ての命を守る戦士として、ビーファイターとして!」
甲平は自ら飛び降りて崖に引っかかったビーコマンダーを拾う起死回生の超重甲を決め、黒、紫と共にバスを押し戻す事に成功。洗脳した人々をけしかけてくるムカデだがヤンマが洗脳システムに気付いてそれを破壊し、似たもの同士の二人はガッツとスピリッツで意気投合。勢いでリタイアが危ぶまれたムカデだが、ビークラッシャーが勢揃いし、今度こそ4対4のバトルになるとカブトンがヤンマから借りたトンボウガンを乱れ打ち。その攻撃を受けたビックラッシャーは、「どうやら、闇の扉を開けた甲斐があったようだ」と負け惜しみを言うと、余裕のポーズを取りながら帰宅するのであった。
「どんな時でに勝負を捨てず、諦めない。見直したよ、カブト。君にこそ、このトンボウガンを使ってほしい」
「や、だ、だけど……!」
「ビークラッシャーは強い。恐ろしいほど手強い。一刻も早く拓也に報告して、新たな戦いに備えなければならない」
こいつ、逃げたぞ(笑)
ヤンマはカブトにトンボウガンを託し、他にも3人、メダルの戦士が居るらしい事を伝えて帰国。
シルエットのイメージ映像によると、
蛍の彫刻家・蝉のダンサー・蝶のお嬢様
という陣容に見えますが…………大丈夫なのか。
特に蝶が宇宙的に物凄く不穏なのですが。
新レギュラーかと思われたマックは、善玉サイドの総合的な戦力増強を示しつつ、強化武装を譲渡する役割という事になり、レギュラーにするには難しそうなキャラだったので扱いには納得。……肝心の強化武装であるトンボウガンのデザインが、強化アイテムとしては凄く微妙ですが……。
BFヤンマの登場は、ドラゴンレンジャー→キバレンジャー→ニンジャマン→キングレンジャー、と戦隊シリーズの方では定番化しつつあった追加戦士の文脈を汲む形ですが、常に使われないけど複数の予備戦力が存在する、という見せ方は『タイムボカン』シリーズのお助けメカなども思い起こします。正確にどのシリーズ作品か覚えてはいないのですが、何体か居るメカが回によって違うのが出てくる、というのは子供心にワクワクした覚え。


◆第30話「輝けゲンジ大地の力」◆ (監督:石田秀範 脚本:鷺山京子)
「鋼に会っては鋼を切る! 風に会っては風を裂く! 俺は全てのものを切り裂く地獄の剣客だ!」
柳生十兵衛みたいな事を言いながら白昼の街に出現して鎌を鳴らすキルマンティスよりも、公園の真ん中に突っ込んでくる乗用車の方が映像として怖い(笑)
どうしてカマキリ娘とモチーフが被っているのか非常に疑問な切り裂きマンティスの刃はしかしネオインセクトアーマーの装甲すら易々と切り裂き、倒れるカブトンとクワガー。逃げ遅れた老女を助けて後から合流したテントウも苦戦し、弱点を探ろうとハイパービートスキャンを起動するテントウだが、その背後に老女に化けてビーファイターを分断していたハチの一刺しが迫る!
テントウ危機一髪のその時、煌めく光がハチとマンティスの動きを止め、やたら格好良くヒーロー歩きで現れたのは、新たな昆虫戦士――
「光の戦士! ビーファイター・ゲンジ!」
ヤンマは、大きすぎるゴーグル・相撲のまわしに見える腰回り・水色+緑の軽すぎる配色、とどうも微妙なデザインでしたが、ゲンジは、黒ベースに銀と赤のラインが映える引き締まった配色・ややブラックビートに似た鋭めの目元・黒ゴーグル+銀マスク+赤ヘルメットというファイヤーを思わせるヘッドデザイン、が合わさってなかなかの格好良さ。
右手の サイコガン ライトニングキャノンでマンティスを撃退したゲンジは、インセクトアーマーの自然治癒能力を強化する、テントウ専用のメンテナンス装備・ブライトポインターを取り出すが、テントウは何故かそれを起動する事ができない。
「今の君に、これ、渡せない」
プログラムを解析して手を加えようとするテントウからポインタを取り上げたゲンジの変身者は、南米支部から来た男、フリオ・リベラ(なお演じるのは、後に平成のライダーアクターとして名を馳せる高岩成二)。
「起動しない原因は、君だ」
大事なメダルを堂々とリストバンドにはめているのが気になるフリオは、問題はメカニックではなく、スキャンに気を取られて背後からの敵に気づかなかった蘭の昆虫魂の不足と指摘。この後繰り返し、「お前はまだ明鏡止水の域に達していない」と蘭に駄目出しを行う事に。
恐らく蘭が第3話で、交通プログラムの修正を優先するあまり助けを求める子供の声を聞き逃した事を踏まえて、ヒーローとしての意識は身につけたけれども、マシンに頼りすぎて戦士としての本質を見失っているという位置づけにされたのかと思うのですが、蘭が機械文明に溺れているというよりフリオの野生の勘が発達しすぎに見えて、少々不条理。
また、ハイパービートスキャンがテントウアーマーの特殊機能である事も含め、一つの事に集中すると周囲への注意がおろそかになるというのは確かに短所ではありますが、同時にプログラマーとしての蘭の特性でもあり、そこを潰してしまっていいのかは疑問が浮かびます(^^;
しかしまあ考えてみればフリオ、南米支部から来たという事はマスター・ウララの弟子である可能性が高く……仕方がない気がしてきました。
「流派昆虫不敗は!」
「王者の風よ!!」
メンテナンス機能を逆に用いればインセクトアーマーを粉砕できるのでは、とマンティスとハチはポインター奪取の為に蘭を罠にはめて捕らえ、ハチが蘭に変化。うまくフリオを騙してポインタを入手しかけるが、そこに縄抜けをした本物の蘭が駆けつけると、フリオに治療を受けた手の甲をかざし、キング・オブ・ビートルへの目覚めを語る。
「あなたの言ったことが、やっとわかった。大切なのは、心!」
20話あまり忘れ去られていた昆虫魂が再浮上した途端に世界をあっという間に侵食し、すっかり別の作品のような事に。
蘭は生身のまま、強烈な衝撃波を出すポインタの攻撃機能を発動してマンティスとハチを吹き飛ばし、なんだか、ご町内の平和を守る美少女仮面のような。
「自然と一つになって生きる。メカだけに頼らず、心で判断する。それが昆虫戦士、ビーファイターよ!」
この数話の間に、重甲ビーファイター』→『ビーファイターカブト』→『重甲ビーファイター2』とタイトル変更レベルで作品世界のルールが変化しており、今作オリジナルとしては何の蓄積もない為に強引もいい所なのですが、前作を踏まえると理解はできるという、凄まじい荒療治。
メイン3人が次々と、真・昆虫戦士という名の鋳型に、後ろから蹴り飛ばされて填め込まれていきます。
テントウが今度こそスーパーメンテナンスを発動させてカブトンとクワガーのアーマーが復活。インプットマグナムとトンボウガンを合体させるのは定番ギミックですが、30話近くなって出てきた追加装備にしてはどうも冴えません(^^; テントウもポインタをマグナムと組み合わせ、インパクトフラッシュでマンティスとハチを撃退。3戦士に個別の追加武装が与えられるというのは好みの展開ですが、その為に、一つ一つのデザインやボリューム感が犠牲になったのでしょうか。
「3つの武器揃った時、最強の銃、完成する。インプットライフルだ」
全ての追加武装が揃った時、最強の合体武器が誕生する事を伝えて、フリオは帰国。甲平は蘭とフリオの間の雰囲気をからかい、何故かケーナをプレゼントされた蘭はフリオを見送りはにかむのであった……。
新章突入し、敵のテコ入れと味方の新武装に追加戦士を絡めて世界観を広げ、その追加戦士をゲスト扱いする事で国際色豊かな設定を可能とし、コスモアカデミアの背景とも繋げる、というのは面白い転がし方。ヤンマもゲンジも安っぽい作りにせずヒーローとしての姿をしっかり見せているのも良い所です。
ただ、何を芯にして何を描きたいのか不明瞭だった『ビーファイターカブト』が突然、これまで劇中にほとんど存在していなかった要素で主人公達の後頭部を殴りつけて反省を促すという展開には、どうにも困惑(^^; その為、ポインタ起動のくだりに説得力の生まれようが無いのですが、この路線修正が上手い形に結実してくれるのを期待したいです。
次回、最近、没個性化の激しい健吾はやはり女性キャラと絡むのか?! と思ったら、まさかのお笑い要員? 予告の限りでは扇澤さんの匂いが濃いですが、さて。