(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第27話「捨てる心、得る力」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
「乾さんの趣味は? なんですか」
「無趣味だ」
力強いな、巧。
カエルを焼却したデルタは、巧達の前には姿を見せずにその場を去り、カエルに襲われていた塾生・河内は「澤田……澤田……」と言い残して砂になって消滅する。その光景にショックを受ける真理に対し、気にする素振りも見せない徳本と新井は里奈や真理を突き飛ばしてデルタギアを持った澤田を探しに行こうとし、これまで比較的好青年風に描かれていた徳本の豹変ぶりが、デルタギアの魔力をリアルに感じさせます。
以前に勇治の彼女のお兄さんも、歪んだ愛情の果てにオルフェノクとして暴走する結末と、その前の好青年ぶりが好対照でしたが、こういった脇キャラのキャスティングが平均して秀逸。
徳本と新井はベルトの権利者を主張して譲らず、
「俺たち流星塾生の絆も、だいぶ怪しくなってきたなと思ってね」
草加にまで言われる。
「真理もいい加減、縁切ったらどうだ」
巧すら呆れる(笑)
そして2人の争いを草加でさえ止めに入る、という地獄絵図が展開し、前回、血を流して倒れていた塾生の1人について全く言及されないのも、凄く不穏です。
菊池クリーニングでは、新人バイト・沙耶になにかと自分の存在をアピールする啓太郎だったが、沙耶を助手席に乗せての配達中、街で結花を見かけて思わず顔を隠すという安定の最低ぶり。
身近に可愛い女子が居たら、その気はなくてもとりあえずお近づきになろうとするよね?!(ただし真理は横暴なので却下) というのは、ある種のリアリティであるのかもしれませんが、ナンパ系の性格設定でもないのに、ここまで“女性にだらしない”というキャラはなかなか珍しい感(笑)
両手で買い物袋を抱えた結花は、啓太郎に満面の笑顔を浮かべて去って行き、啓太郎はそれを「ふーん、私に声かけてきた癖に他の女の子とも遊んでるんですね〜」と解釈して落ち込むのですが、この後に出てくる海堂の様子を見ても、結花は啓太郎の事は99%どうでも良くて、機能停止した海堂に甲斐甲斐しく尽くす事への充足感でいっぱいという狂気すれすれの笑顔に見えるわけですが。
メゾンオルフェノクでは、派手に啖呵を切って飛び出すも今回もあっという間に出戻りした海堂が、人間としても怪物としても何にもなれない自分の不甲斐なさに打ちひしがれて石化中。ギャグっぽい描写になってはいるのですが、その結末は知らずとも1人の男(ワカメ後輩)の道を誤らせた事についての悔恨も含まれているように見えるのが、海堂のいい所。
そんな海堂を元気づけようと、譫言で口走った酢昆布を買いに外出した勇治は、琢磨と遭遇。
「あなたを倒すのが僕の最初の仕事でした。決着を付けさせてもらいますよ。僕のプライドの為にもね」
馬を追い詰める活躍を見せるも逃げられてしまうムカデだが、何かの気配を感じて動揺し――草むらからひょっこりと覗くデルタの顔(笑)
どうしてそんな、変質者みたいな登場の仕方なのか。
この戦闘に巻き込まれ、沙耶を先に逃がして巧に助けを求めた啓太郎だったが、駆けつけた巧が目にしたのは、炎をあげてくすぶる樹木という戦いの痕跡だけであった……(ムカデ、戦闘カット、通算2回目)。
流星塾一行は澤田に連絡を取ろうとし、澤田を思い出す真理の回想では、流星塾に外から陽が射し込んでいるような描写。画面には回想フィルターがかかっているものの、前々回の今回なので光の演出は意図的に思えますが、さて。
「人間を変えちまうんだ、デルタの力は。それだけ凄い力なんだ」
「ああ。おまえらを見てればよくわかる」
すっかり柄の悪い男2人と比較すると草加がまともに見えて騙されそうになるのですが、草加は、デルタギア無くてもねじれてるからな!
徳本と新井は澤田を呼び出す為に真理を拉致するという強硬手段に訴え、実力行使でそれを止めようとする草加だが、2人が生身で放ったビリビリを受けて、敗北。
「馬鹿め。知らなかっただろ。一度でもデルタに変身すると、その力は体内に残る。変身しなくても人間以上の力が出せるようになるんだ」
これは今作的にはレベルアップしたオルフェノクと同様の状態といえますが、カイザギア、デルタギア、と呪いのアイテムすぎて、今ではファイズギアが凄く良心的な装備に見えます(恐らくその分、基本スペックが低いのでしょうが)。
折り紙を燃やす男――河童、どう見ても河童オルフェノクは体育館を舞台に虐殺を行い、その残忍な行動に満足した冴子は、河童をラッキークローバーへと推薦。
「でもあの子、その前にまだする事があると言っていたわ」
「ほう。どんな事を」
「人間の心を捨てる事。――完全に」
「素晴らしい。まさに上の上ですね。きっと彼なら、デルタのベルトを手に入れてくれるでしょう」
その横で、戦闘シーンをカットする事で生き延びる、という特殊能力持ちの琢磨はデルタを思い出して子犬のようにプルプルしており、最近殴られすぎて壊れた……? みたいな目配せをかわす冴子と社長。
前回のカイザ、今回のムカデと、デルタは直接の戦闘を見せずに、その気配だけで他者を怯えさせる、というじんわりとした強者演出。もしかしたら精神操作系の特殊能力の類いかもしれませんが、シルエットだけを見せて脅威を煽るという、ホラー映画のモンスター的な描写が続きます。
廃墟に拉致された真理は、澤田を待って苛立つ徳本と新井の目を盗んで巧にメールで助けを求める事に成功するが、そこに一足早く、澤田=折り紙を燃やす男が現れる。
「俺は真理を助ける為に来たんじゃない。命を奪うために来たんだ」
デルタと同じくシルエット的な演出が続いていた澤田はここで遂に顔を上げ、目元にハッキリ特徴がありますが、演じるのは今や超人気俳優の綾野剛。主演作品は特に見た事ないのですが、たまたま目にした旅番組で「好きな食べ物は、のびる」と言っていたのを見て以来、変な好感度があります(笑)
ダメンズハーレムの一員から脱皮をはかる澤田はデルタギアを持っているのは自分では無いと告げると、折り紙に火を点ける。
「デルタの力の代わりに、俺は新しい力を手に入れた。真理の命を奪う事で、俺は完全に人間の力を捨て、新しい力を、自分の物にすることが出来る。――見せてやるよ。新しい力を」
勇治達が何かにこだわる事で人間である事にしがみついている一方、そのこだわりを自らの手で破壊する事で人間を捨てようとする澤田は、河童オルフェノクへと変身。
徳本と新井はろくな抵抗をする間もなく河童に首をねじられ、超あっさり死亡。出番は飛び飛びかつちょっとずつなものの足かけ1クールほど出演していた徳本ですが、容赦なく惨殺され、作業員ズに続いての継続脇役のリタイアとなりました。……次は、沢村刑事あたりが危ない。
真理からのメールで駆けつけた巧と草加は河童を目撃して変身するが、2人の攻撃をいなして優位に戦いを進め、上の上の上の上ぐらいの強さを見せる河童。いよいよ真打ち登場かと思われたが、その背後にぬっと姿を見せるデルタ――果たして、その正体と狙いは?! で、つづく。
名前からも顔ぶれからもデルタの正体は明確なのですが、巧=ファイズの人となりを執拗に気にし、「もっと優しい人だと思ってました。……みんなを守る為に戦ってるっていうから」と呟く沙耶は、“力”に何を見ているのか? という要素で興味を引きます。
なお巧の表に出せる優しさは、頬についた洗剤を指摘する、が限界でした! 啓太郎は“女にだらしない”けど、たっくんは“女に弱い”のが、なんだかんだヒーロー属性(笑)
地味に今回の被害者は、酢昆布を買いに出かけたら落ち目のラッキークローバーに絡まれて良い所なく逃走する羽目に陥り、一方的に株の下がった勇治。ラッキークローバー救済キャンペーンなのかと思いきや、直後にムカデの株が産業廃棄物レベルまで落ちるので、つまり産廃以下の扱いです。3時間後ぐらいに、泣きながら車の回収に戻ったのでしょうか。
オルフェノク、そしてデルタギア、人間を人間でなくす力に翻弄される者達の、転がり続ける運命の車輪はどこへ向かうのか。熾烈な死闘が過熱する中、次回、遂に北崎登場?!