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『仮面ライダー555』感想21

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第32話「君の気持ちがわからない」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
真理に直撃しそうになるカイザキックだったが、巧がバイクで割って入ってこれを阻止。実質的にカイザキックを跳ね返したバイク、強いぞバイク。
澤田は無言で歩み去り、真理はオルフェノクに襲われた所を澤田に助けられたと説明。
「俺賭けてみようと思ってる……真理の気持ちに」
「賭ける? 何を」
「真理は、澤田の事を信じてる。真理の言う通り、澤田が人間として生きられるなら、俺はもう一度木場の事を信じたい。そういう事だ」
オルフェノクと人間の心の境界、誰を何を信じればいいのか悩みつつも、一縷の希望を持とうとする巧だが、事が思惑通りに進まないと困る草加は、声を荒げて立ち上がる。
「わからないなぁ?! 君の気持ちが!」
……もしかして、次作『ブレイド』で炸裂する序盤最強の迷言「俺の気持ちをどう思う!」は、これのアンサーだったのか(待て)
「俺に言わせればオルフェノクは全て敵だ。そう思わなきゃ戦える筈がないだろ。君は今までどんな気持ちで戦ってきたんだ? え?」
ここで沙耶の死後に巧が踏み込んでいた思考放棄を草加に口にさせる事で、それが望ましくない道である事を暗示するのは上手い。
「なぜオルフェノクに肩入れする? 何か特別な理由でもあるのかな」
「別に。俺はただ……」
「そういえば君、俺の過去に随分興味があるみたいだけど、自分の事は何も語らないよな。聞かせてほしいな、その内。君の過去を」
そして、ここまでずっと伏せられていたので、そういえばすっかり忘れていた巧の背景に草加が言及したのは、前振りの予感。
よれよれの折り紙を見つめて真理との思い出に浸っていた澤田の元には、ホストが冴子と一緒に現れて冴子の命令で真理を狙ったと口にし、激昂した澤田は冴子へと詰め寄る。
「どういうつもりだ、余計な事をするなぁ!」
「私にそんな口の利き方は、許さない」
初めて怒りの感情を見せた冴子は、澤田に平手打ちを連打。
「ラッキーですよ君は。冴子さんに お仕置きしていただけるなんて こんな風に目をかけてもらえるなんて。ハッキリ言って、羨ましい限りです」
連続ドラマ要素が強まって以降は、一層扱いが雑になっているやられ役オルフェノクですが、ここで冴子の下僕が登場したのは、冴子のキャラを深めるのに良いアクセントになりました。
「あんた達には手出しはさせない。俺の生き方は、俺が決める!」
真理からの電話を受けた澤田は改めて会う約束をかわすが、待ち合わせ場所には一足先に巧が姿を見せる。
「今の俺なら……まだ人間に戻れる。そして、俺を人間に戻してくれるのは、真理だけなんだ」
澤田の真意を知ろうとする巧はその言葉に胸をなで下ろし、そこに真理も到着するが、更にホストが登場。河童は真理を助けようとホストに立ち向かい、ファイズも参戦。二刀流を用いてなかなかの使い手だったホストをアクセル流星剣で斬殺するも続けてエビが乱入し、巧に促された澤田は真理と共にその場を逃走する。
「ありがとう澤田くん、これで二度目だね、助けてくれたの」
子供の頃に戻ったかのように微笑みをかわす二人、だが……澤田は思い出の折り紙に真理の眼前で火を点け――
「俺が君を助けたのは、君を守る為じゃない。俺の手で、君の命を奪う為だ。そうすれば、俺は完全に、人間の心を捨て去る心ができるから」
――オルフェノクへと変貌する。
思い出の折り紙がキーとなり、澤田の心が人間に傾いているのかと思わせておいて、本格登場となった第27話の、
「俺は真理を助ける為に来たんじゃない。命を奪うために来たんだ」
と重ねた台詞で、澤田の行動の一貫性を示す(同時に、一貫して澤田は揺らいでいる、という事でもある)、というのは秀逸。
腹部に河童パンチの直撃を受けた真理は派手に吹っ飛び、倉庫から出てきてそれを目撃したファイズは(エビは……?)猛然と河童に躍りかかる。
「澤田ぁ! やっぱりおまえは、もう人間じゃないのか?! ふざけやがって、真理の気持ちを!」
その頃、勇治にはP啓太郎→F海堂経由で、巧から伝言が伝えられていた。
「えー確か…………あれ? え、……馬鹿だ馬鹿、馬鹿」
「馬鹿?」
「馬鹿」
「……馬鹿?」
正しくは「おまえを信用した俺が馬鹿だった」から絶妙に圧縮された伝言に、『宇宙戦艦ヤマト』ネタ?と困惑する勇治。
またその頃、琢磨は廃車置き場で眠る北崎からデルタギアをちょろまかそうとして……勿論気付かれていた。
「やだなぁ、琢磨くん。いつから泥棒になったの」
思わずムカデに変身して北崎に殴りかかるも平然と受け止められたムカデは、ごつい見た目の北崎オルフェノクにぐりぐりと踏まれてお仕置きを受け、どうせなら冴子さんにお仕置きされたーーーいと、心の中で悲鳴をあげつつ、苦痛に呻く。
「どういうつもりだい、琢磨くん。やだなぁ」
「だって、ずるいじゃないですか。北崎さんだけデルタの力を使うなんて。僕も……ちょっと、使ってみたかったんですよ」
北崎の性格を知っている故なのか、それとも天性のものなのか、「ずるい」「ちょっと使ってみたかった」など、絶妙に北崎の心をくすぐる命乞いで、琢磨のハイレベルな《サバイブ》スキルがクリティカル発動。
すっかり色物扱いですが、これはこれで凄い。
「駄目だよ、琢磨くん。そんな我が儘言っちゃ」
河童パンチで重傷を負った真理は意識不明で病院に運び込まれ、激怒する草加になじられる巧。
「おまえの甘い心が、真理をこんな目に遭わせたんだ!」
「……ああ、わかってる。……俺のせいだ」
だが草加は、この状況すら悪用して真理を襲ったのは巧だと勇治に吹き込み、お互いへの不信感が頂点に達した所で、出会ってしまう二人。
「……君のせいで、園田さんが」
「……ああ、それがどうした。おまえには関係ないだろ。オルフェノクである、おまえにはな」
巧のぶっきらぼうさも自然で、草加が真理すら利用するという、すれ違いの一押しが充分以上に絶妙かつ強烈なだけに、前回今回と、伝言ゲームのくだりは無くても良かった気がしてなりません(^^;
もともと複数の挿話を同時進行していく形式ですし、エピソードのテンションに緩急をつける為には、気を抜けるシーンも必要ですが、FP兄弟のパートは少々ギャグもやりすぎで、前回今回に関しては全体のノイズになってしまったように思えます(本人ばかりではなく、石田監督−田村監督後編と、くどめのギャグ演出が続いて食傷気味、というのもありますが)。
二人で人気の占い屋に向かったFP兄弟が火事に巻き込まれ、取り残された子供を助けようとする啓太郎に対し、一旦は先に逃げるも戻ってきて二人を助ける海堂を描く事で、前回、巧を助ける為に思わず飛び出した啓太郎と同様、「変わりたい」ともがく二人の中に、「変わらない」人間としての善良さがある、というのが描かれているのですが、多少の迷走ギャグ+そこを描けば充分だったような。
「――場所を変えようか」
病院を離れた巧と勇治は向かい合ってそれぞれ変身し……つづく。
もともと鈴村監督とはあまり相性が良くないのですが、前回今回とそれほど効果的だったとは思えない口元アップの連発、やたらなフィルター使用、流血真理をあそこまでアップで見せる必要は無かったのでは、と画的にノれない所が多々。それから、これは監督責任では無いかと思われますが、前回今回ともに、予告にほぼラストカットが含まれていたのは見せすぎだったような。
事情は色々あるのでしょうが、予告の映像というのは、それがどこに来て、そこからどう展開するのだろう、と思わせるものなので、予告で見せた映像が出た所で次回へ続く、というのは次回予告としてよろしくないと思うわけなのです。
伝言ゲームは脚本の問題もあったでしょうが、少々バランスを欠いたように感じる2話でした。
次回――戦う準備ならとっくの昔に出来ている。ケリをつけよう。
巧vs勇治で引いておきながら、草加のモノローグがやたら格好いいのですが、そのジェラシーの行く末やいかに。