(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第33話「社長−MAX」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
「君だけは……君だけは許せない。君は俺を裏切った。そして園田さんまでも裏切った!」
「ああ……俺も俺が許せない。おまえらオルフェノクを信じようとした、自分がな!」
怒りと哀しみを互いの剣に乗せ、干潟の真ん中で激突するファイズと馬だが、それを北崎が目撃。
「へぇ〜、リキ入ってんじゃん。いいなぁ……。変身」
《平成ライダー》のままある構造的難点として、深刻に引っ張った次の回の冒頭でどうでも良さそうに問題解決、というパターンがあり、今回もそれか……と思ったのですが、怒り狂うファイズと馬が、乱入したデルタを雑に撃退するという予想外の展開(笑)
「やだなぁ……マジになっちゃって。いいよ、勝った方を僕が倒してあげるから」
見物モードに入るデルタ崎だったが、両者の死闘はダブルノックアウトで決着。興味を失った北崎は変身を解除し、ベルトを見つめる。
「ばっかみたい。……なんか、飽きちゃったな」
北崎さーーーーーん!!
「捨てちゃったんだ」
「……捨てた?! デルタギアを?!」
そして、行動が早かった。
「うん、なんかもう、飽きちゃってさ」
バーでこれを聞かされた琢磨は、表のゴミ捨て場に北崎が捨てたというデルタギアを探しに向かい、前回の今回でこの食いつきぶりが、繊細なようで実は根性太いというか、凄まじい《サバイブ》スキルの高さです。いぎたなくなければ、生き残れない!
ここ数話連続でギャグパート担当の琢磨ですが、エフェクトは使わずに、雨が降る中でゴミ捨て場を一生懸命にひっくり返して通りすがりの母子に「しっ! 見ちゃ駄目!」される、という描き方が、長石監督らしい演出。良い悪いではなく好き嫌いの問題ですが、演出ローテの中で、幅の広がりとバランスがあるのは重要であるな、と改めて。
「馬鹿だなぁ……琢磨くんも」
捨ててなかった。
だがデルタに飽きたのは本心だった北崎は、デルタギアを澤田に渡し、デルタセットにもしっかりと説明書が入っている事が判明。※用量・用法に注意してお使い下さい。
一方、ファイズギアは巧から啓太郎に渡されていた。
「昨日、ずっと、考えてたんだ。俺にはもう……ファイズである資格は無い。だから、こいつは、おまえが預かっといてくれ」
言葉を詰まらせ顔を覆い、これまでになく苦悩する巧の姿に、やむなくベルトを受け取った啓太郎は、それを草加へと託す。
メゾンオルフェノクでは海堂が火災現場で少年を助けた武勇伝を語っており、FP兄弟の髪型(色)が戻っている事にここで気付きました(笑) いや今回、巧の髪型がやたら尖っているのが気になって気になって……。
あまり引っ張りすぎるネタではないですし、「変わる」という事にまつわる前回の出来事の意味を考えると、すぱっと良いタイミング。
意識不明の真理の病室には、草加の連絡で生き残りの塾生――里奈と、新顔の男二人(太田と三原)が集い、通して二人とも名前を呼ばれないのは非常に困った所(^^;
そんな塾生達に澤田から連絡が届き、4人は人間を振り切った澤田と対面する。
「今の奴に話しかけても意味は無い。もう人間じゃないからな」
「人間であるという事が、そんなに大事な事なのか? それにある意味では君たちだって人間じゃない」
自ら人間を捨てた男はうそぶき、流星塾に関する不穏さが加速。病院では、「園田真理さんの体には、かつて特別な治療が、施された形跡があるという事です」と、現代医学では考えられないような治療で命を取り留めた経験があるのではないかと医者の口から語られ……やはり、お父さんによって改造済みなのか。
「何も知らないという事は、幸せな事だよね」
「黙れ! 貴様は俺が倒す」
吠える草加に対し、澤田は北崎から貰ったデルタセットを放り投げると、塾生全員を抹殺すると宣言。
「嫌いなんだよ君たちが。みっともない……失敗作のくせに、肩を寄せ合って生きてるなんてね」
真理との絆を切り捨てる事で怪物になった筈の澤田が、残った繋がりにも、吐き捨てるように感情をぶつけるというのが、澤田の揺らぎを感じさせます。
「悲しすぎるんだよ、君たちの存在は。この次会う時までに、戦う準備をしておいた方がいい」
不吉な響きのBGMをそのまま繋げて、クリーニング店の外観へ場面を切り替える、という映画的なシーン接続から、3つのベルトセットを広げてしばし沈思黙考していた草加は、澤田へと連絡をつける。
「澤田か……戦う準備ならとっくの昔に出来ている。ケリをつけよう、二人だけでな」
だがその澤田は、デルタギアを手放した事について、社長に詰問されていた。
「ふざけるな」
澤田の不遜な態度に激怒した社長は、遂にオルフェノクとしての姿を完全披露。皆があまりにベルトをぞんざいに扱うので、社長だけが凄く短気に見えるのですが、たぶん、きっと、そんな事は無い。
社長オルフェノクは、前頭部がプラスチックカバーのように透け、 社長の頭髪が地毛か不安に どこかメカメカしい容貌という、これまでとは一線を画すデザイン。言ってしまえばレイズナー似なのですが、澤田の驚愕の表情と合わせて、これまでとは別格の存在が登場した、というインパクト充分になりました。澤田も社長の頭髪を気にしたのかもしれませんが!
社長が次に控えているという事情もあったのでしょうが、これと比べると、北崎オルフェノクの初登場がえらく雑でしたが、そろそろ話数が詰まってくる頃合いとはいえ、北崎の前途に不吉な暗雲が漂います(^^;
初手から真っ正面半裸を披露した社長は、河童を恐れおののかせると、頭から薔薇の花びらを飛ばすという、驚愕の攻撃(笑)
ば、薔薇のタトゥな感じなのか?!
ビルの窓を突き破って逃走する河童だが、社長お抱えの黒バラ近衛部隊に追い詰められてしまう。
「馬鹿な人だ。社長の怒りに触れるとは」
「終わりです。君は」
社長の頭髪の秘密を知った者は生かしておけない、と黒服の男達は見た目からして強そうな鎧武者風のオルフェノクへと変身し、そもそも北崎さんが悪いんですよーーーという澤田心の絶叫も届かぬまま、河童を攻撃。そこへやってきた草加はカイザに変身し、とりあえず河童を守る形に。
「おまえが以前、真理を助けたのと同じだ。おまえは俺の手で倒す!」
奮闘するカイザも武者オルフェノクに苦戦してベルトが外れてしまうが、こんな事もあろうかとバイクに積んできたデルタギアをはめ、ここで草加がデルタへと変身。
……鎧武者オルフェノクは、とりあえず落ちたカイザギアを拾って、デルタのサイドカーとそれに積まれたファイズギアを強奪すれば、この場は澤田を逃しても金一封貰えるのでは(笑)
草加デルタは、ハイスペック×ハイスペックの力を見せると、円錐ターンエーキックであっという間に一体を焼却。
その頃、病院では心肺停止に陥った真理に電気ショックが試みられていたが――
「真理ちゃん!」
「真理……! 真理ぃ!!」
次回――ライジング真理・爆誕。